2020年劇場鑑賞映画100タイトル ベスト50とワーストまで

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2020年、コロナ禍のロックダウンで二ヶ月間映画館へ足を運べない日が続いたにも関わらず、振り返れば劇場鑑賞作品ちょうど100タイトルもありました(『FateHFⅢ』と『2分の1の魔法』は二度観賞してるので、回数だけなら102回 ).

これは個人的に例年より多い数字.

大作映画の公開延期が相次ぎ、普段ならミニシアターまで足を運ばないと観賞できない、どころか、ものによってはビデオスルーされるかどうかも怪しいマイナーなタイトルがスクリーンの穴埋めに大量に輸入され、ほとんど闇鍋気分で知らない映画に身を委ねる新しい映画体験を出来たと思います.

イオンシネマのワンデーフリーパスポートを存外活用出来たのも功を奏しました.利用する前は一日何本も映画見れないよと思うのですが、当日いざ購入してみると不思議と楽しくなって何本でも観れてしまうのです.再び施行される日があれば皆さんも是非ご利用してみて下さい.

 

観賞した100タイトルの概観としては、月並ですが「バラエティ豊か」.決して水準が高いとは言えない、と言うかハリウッドという中心線が抜けたことでむしろ水準が存在しない無秩序な表現がただ「映画」という枠組みに無理やり収まっているだけに過ぎず、実際は広大な宇宙にてんでバラバラに点在している印象です.

 

ベストを選ぼうにもそれぞれ体験のベクトルがバラバラ過ぎて同じ評価軸を持ちようがないので、単に10本選ぶよりも簡易であれ個別に感想つけて記録しておこうと思いました.

 

細かい数字よりも、大まかな4ブロックで別れています.

実質1位から4位までですね.

 

1位~50位  = ベスト.全部1位!

51位~70位 = 普通に楽しめました.

71位~90位 = 一長一短アリ.

91位~100位 = ごめんなさいワーストです.

 

 

1位~50位 = ベスト.全部1位!

 

1位.透明人間

真相がわかるまでのあの怖さ.真相がわかってからの「あああそうくる」という感動.

そこから先の展開の読めなさ.事態が動くときの昂揚感.

何より全編を覆う撮影、演技、音響の一体感.ありがとう.

 

2位.鵞鳥湖の夜

映画の世界に迷い込み、耽溺し、酩酊する魅惑.

鵞鳥瑚に惚れ込みながらもロケ地の距離的に鵞鳥瑚での撮影が不可能だとわかったので武漢市を鵞鳥瑚に見立てて撮った、という本末転倒なメイキング秘話を知ると、よりこの世界のいかがわしい見世物感が増す.

そしてそこにはもう帰れないのだ.行きたくもないあんな恐ろしい場所なのに、その世界は時代の趨勢の影に消されていくだろう.そのことがうら寂しく、けれど新しく開かれた世界が女性達を出迎える.

 

3位.薬の神じゃない!

くすぶっている駄目人間たちが、私欲の延長上で社会正義を成す.そのリアリティと娯楽性のバランス.本作は中国映画だが、ここ十数年間韓国映画が得意としていた部分を、ひと味変えてより地に足をつけた描写力で、そして非常に高い完成度で魅せる.

カタルシスだけで全てを浄化出来ないくらい現実に則したしんどさも刻まれていくだけに、最後のロマンチックな飛躍で涙腺を刺激されてしまう.顔に人生刻まれた俳優陣といい、総じてレベルが高い.

 

4位.ナイブズアウト/名探偵と刃の館の秘密

スター・ウォーズ』から解き放たれたライアン・ジョンソンが、自身の大好きな古典的ミステリーに映画の形で挑戦し、ちゃんと良く出来た王道ミステリーとして成立している.当たり前に完成しているので当たり前に受け止めてしまうけれど、この王道っぷりは異常なレベルでは.100年前からある古典かのように堂々振舞っている.それでいて正に現在の話にもなる.完成度もさることながら、その心意気に感動してしまう.

彼のフィルモグラフィでもここまで何からも逃げなかったのは初めてではないか.

 

5位.喜劇王

久々に観たチャウ・シンチー作品.香港映画界の系譜の意地.合間合間に知らないオッサンの女装コントを延々と見せつけられつつ、ここまで一本の映画で喜怒哀楽の振り幅を描くことが出来るのかと驚愕する.明らかに昨年映画館で一番感情を弄ばれた映画.ネタバレなしで見て欲しい.

 

6位.ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(MX4D上映)

人生で最も劇場で鑑賞し、恐らく映画史でもっともアトラクション型を極めた作品が、文字通りのアトラクションに進化して帰ってきた.噴水と煙つきのスターツアーズ.エヴァのコックピットに揺られて、確かに使徒と戦ったんですよ! 俺が! 同じ劇場にいたみんなと! そしてその臨場感を持続させる為、ショットの連鎖が、音が、舞台の構造が、劇伴のタイミングが、台詞の抑揚までもが、如何に緻密に構成されているか.改めて吃驚する.

 

7位.サヨナラまでの30分

『37セカンズ』と合わせて、技術的な面に於いて日本映画にまとわりつく見えない壁を打破したエポックメイキングな一作.それでいてここ十年ほどの日本映画史を(アニメ/実写問わず)引き連れていて、「過去の記憶を引き連れている」ということ自体がカセットテープの両面を描くテーマとも重なる.心に爽やかな一陣の風が抜けていった.

 

8位.囚われた国家

綺麗なラストシーンへ向けて一直線に向かっている物語なのだけど、個人的にはそのラストシーンは無くても構わない.宇宙人の支配が進行する街の片隅で反逆者たちが殺風景の中を移動していく、その映像の移ろいそのものに心地良く鼓舞される.「経過」こそが素晴らしい一作.

二ヶ月ぶりに劇場鑑賞した映画が本作で本当に良かった.

 

9位.青くて痛くて脆い

あまりに卑小な大学生の自意識の問題を、あたかもスパイ映画か何かのように大胆に演出されて訳のわからない笑いが止まらない、2020年最大の大穴作品.「ここ」に焦点を当てて映画として、それもエンタメ映画として成立させるという奇跡.誰か個人の野心によるというより、偶々生まれた快作なんじゃないかと思う.これだけ多彩な映画を観賞出来た年に本作をそんな評価して良いのかと迷うのだけど、横断歩道のクレーンショットが決まっていることが最後の一押しとなってまぁいいかとほだされた.

 

10位.ティーン・スピリット

こちらは『青くて痛くて脆い』と違って決め手となるショットさえ特になく、ドラマはキャラメルとかを包んである食べられる紙よりよっぽど薄い.ついでに画面が暗くて何が映ってるのかもよくわからない.褒められる箇所なんて何一つ無いと言っても過言ではない.

それでもこの映画、ただ一点「ティーンのスピリット」だけは全編に投影されていた.こんな風に不安で朧気に世界が見えていることは確かにあると共感し没入出来たので、忘れられない一本.「青くて痛くて脆い」はむしろ本作の為にある言葉では.

 

11位.ストックホルム・ケース

映画を観る、映画と共犯関係になるということ.

 

12位.ひつじのショーン UFOフィーバー!

台詞など無く、パロディだらけなのにこの完成度.

 

13位.空に住む

マンションポエムの文句なき具現化.青山真治最高傑作.

 

14位.レ・ミゼラブル

ドローンがこんなに印象に残る映画もなく、この魔境「団地」は世界中に溢れている.

 

15位.思い、思われ、ふり、ふられ(実写)

典型的な少女マンガであり乍ら、撮影ひとつでここまで多くの陰影が浮かび上がる.

 

16位.スパイの妻

切り上げ時は間違っている気がするが、そこまでの切れ味は完璧.

 

17位.ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語

「過去であり現在である」という主題が今の流行りだとして、その最高峰.

 

18位.魔女見習いをさがして

アニメ映画では珍しい、どこに連れて行かれているのかわからない変な話術.

 

19位.劇場版ポケットモンスター ココ

運動によって画面を誘うのだという原理主義的な意思による脚本の小さな手間暇が一貫してて凄い.

 

20位.フォードVSフェラーリ

ノスタルジィが過ぎる気もするが、存在しない郷愁を植え付けられて抗えない.

 

21位.ブラッドショット

時期が功を奏してULTIRA環境で観賞出来たのだけれど、普段何気なく流し見しているB級映画とは、環境さえ整えば実は凄い傑作だらけなのではという発見をくれた.

 

22位.レイニーデイ・イン・ニューヨーク

いつものように小粋でこじんまりしたウディ・アレンでありながら、何か残る印象が違って見えたのはコロナ禍だからか.しかし緑が鮮やか.

 

23位.ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(MX4D上映)

ヤシマ作戦をピークにして、ずっとコースターに運ばれて運ばれて最後に滑降する、まるで最初から4D体験の為に作られていたんじゃないかと錯覚してしまう.

 

24位.少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド

総集編.だけど凡百の劇場版アニメより余ほど「映画を観ている」快感があった.

 

25位.風の谷のナウシカ

劇場初観賞.前シーンの反転攻勢だけで紡がれる流れ.宮崎駿の天才ぶりを改めて.

 

26位.はちどり

鑑賞中はどうにも画角が小さい気がしていたが、振り返ると余りに巨大な印象が残る.

 

27位.パラサイト 半地下の家族

瞬間的な沸点で言えば2020年最大級の面白さ.ただ終盤はポン・ジュノの手垢が目立つ.

 

28位.ムルゲ 王朝の怪物

歴史劇+怪獣映画という珍しいジャンルをこうも軽快に乗りこなせる地肩の強さ.

 

29位.2分の1の魔法

2020年もっとも美しいクライマックス.ピクサーの「スカし」の美学の頂点.

 

30位.映画 クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者たち

水島努降板以降で初めて黄金期に比肩しうるところまで持ってきた快作.

 

31位.37セカンズ

後半の展開で物凄い疑問点が一個浮かんだのがノイズだけど、でもエポック.

 

32位.わたしは金正男を殺してない

己の無邪気と無知を糾弾されたような気がして忘れられない.

 

33位.Mank/マンク

依然フィンチャーは絶好調.にも関わらずこの順位という豊作ぶりです.

 

34位.シチリアーノ 裏切りの美学

死者カウントテロップと刑務所融合型裁判所.大巨匠の映画なのに発明だらけ.

 

35位.悪人伝

バイオレンスとアクションを駆動させる為だけに全てが淀みなく機能する.

 

36位.劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel. Ⅲ spring song

絵としては単調になりがちな展開に空間の構造的緩急で視線を誘導する創意工夫.

 

37位.ジョゼと虎と魚たち

全てのセクションが自分にとって心地良い「理想の邦画」を描いてくれた.

 

38位.滑走路

希望と絶望と未来と過去がワンショットに収まる、そしてはみ出していくラストショット.停止ボタンは絶対に押せない映画館と、人間の目が二つしかないことが、こんなにも残酷に思えたことはない.

 

39位.エクストリーム・ジョブ

観客の人情への共感を誘う大衆娯楽映画として昨年度屈指の出来.愛おしい.

 

40位.リチャード・ジュエル

イーストウッド以外に誰がこの主人公をここまでスリリングに切り取れるのか.

 

41位.his

映画的快楽を奪われた法廷という場が痛ましく胸に残る.

 

42位.犬鳴村

怖くは無いが、Jホラーのアドベンチャー的興味を大いに満たしてくれる.

 

43位.ルース・エドガー

白黒つけない作りはズルいとも思いつつ、あまりに時代と合致してしまった.

 

44位.SKIN/スキン

覗いてみよう、極右の生活.一度逃げ出せば地獄が待っている.

 

45位.ドミノ 復讐の咆吼

巨匠の巨匠たる個性がただのトンデモにしか見えない哀れと滑稽さ.だが愉しい.

 

46位.ザ・ピーナッツバターファルコン

「あの人」が会っていきなり自分の役割を汲んでくれた瞬間に涙腺ドバー.

 

47位.カラー・アウト・オブ・スペースー遭遇ー

意味もなく、全てがぐっちゃぐちゃになって終焉を迎える.這い寄るニャル子さん

 

48位.羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来(吹替版)

字幕版を昨年観てるので新味は薄いが、しかし複雑な余韻は増した.

 

49位.ファヒム パリが見た奇跡

特別なことは何もしてない、ただ良い映画.そして善き人の映画.

 

50位.パリのどこかで、あなたと

映画を「見守る」という映画.相対するのではなく、寄り添う映画の形.

 

51位~70位 = 普通に楽しめました.

 

ストレイ・ドッグ

無骨で愛想の無い映画があってもいい.そうだろう? 時を戻そう.

 

ワンダーウーマン1984

現実に負けないくらい映画もしっちゃかめっちゃかになってくれる嬉しさ.

 

思い、思われ、ふり、ふられ(アニメ)

ズバ抜けた要素は無いが、欠点も何も無いのだ.

 

WAVES/ウェイブス

なんか小バカにされ過ぎてて「え、これそんな駄目…?」って少し落ち込んだ…

 

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

話の陳腐さに引いた腰が、凄い美術が提示されるその都度にそちらの世界に引き戻される、の攻防を2時間繰り返されて結構圧倒された.

 

ミッドサマー

確かに観光映画だと思う.『ヘレディタリー/継承』を観た人を、その先の世界へと案内している観光映画.

 

ロマンスドール

年の初めに観たのであまり覚えていないが、良かったことだけは覚えている.題材で叩かれているのは流石に違うだろうと思った.

 

1917 命をかけた伝令

行き過ぎた長回しはゲーム観てる気分になっちゃうところはあります.

 

ジョジョ・ラビット

タイカ・ワイティティは好きなのだが、軽さを活かす為の重さとのギャップが演出上弱いような気はした.

 

劇場版 SHIROBAKO

反復と差異はわかるが、TVシリーズとまるで違う事が起こって欲しかったし、TVシリーズの頃からそうなんだけど劇中作られるアニメにあまり興味が沸かない.『限界集落過疎娘』が観たかったなぁ.

 

TENET/テネット

公開してくれた事、挑戦してくれた事が嬉しい.

 

ブラック&ブルー

出来は良くない.演出も稚拙.けれど推し.そんなアイドルみたいな作品.

 

ライド・ライク・ア・ガール

「淀みない」は褒め言葉にもなる一方、どこかで淀んで欲しかったとも.しかし女性映画の快作としてもっと評判になっても良かったのでは???

 

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

アメリカンコメディチームの流れが途絶えずアップデートまでされている歓び.ただ個人的にそこまで爆笑するポイントが無かったのはコメディとして弱いかなと.

 

映画 プリキュアラクルリープ みんなとの不思議な一日

「タイムループを起こす黒幕の正体」がアイデア賞モノだし、幼児向けと捉えると最善の出来かも知れない.昨年のプリキュア映画が凄まじい傑作だったので評価控えめ.

 

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

確かにこの挿話も映画で観たいとは思っていた.でも構成はオリジナルの方がスマートだったりするので難しい.

 

ACCA 13区監察課 Regards

あまりにお洒落なタッチが続くので無の心で観て、無の心になり過ぎた.

 

千と千尋の神隠し

新しい発見が無さ過ぎた.大傑作ですが.

 

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

311の記憶生々しい2012年観賞時の余韻はもう味わえないのだなという発見.でも本当に好きな心の一作です.

 

71位~90位 = 一長一短アリ.

 

ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!

いや最高ですよ.恐らく宇宙イチ幸せなラスト.

 

事故物件 恐い間取り

映画なのにバラエティ番組のような、バラエティ番組なのに映画のような.

 

FUNAN フナン

重たい史実を重たい史実のまま提示される意義と物足りなさと.

 

マルモイ ことばあつめ

日本人として真摯に受け止めるべき題材.だが演出に後一歩のエッジが欲しい.

 

パブリック 図書館の奇跡

これまたとても意義深い映画.なのだけど演出にあと一歩のエッジが(ry

 

どうにかなる日々

映画として何か感想を抱くにはやはり何か足りていない印象.

 

15年後のラブソング

とても緩くて印象に残らないが、それが欠点とも感じないのでズルい.

 

mellow

田中圭ともさかりえとのやりとりだけで最高.可愛いだけで出来ている.

 

劇場版 ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌

やー。。。。。。っと、見返すことが出来た嬉しみ。。。。。。(>_<)

 

ようこそ映画音響の世界へ

トリビアとしては面白いが、それは映画なのだろうか

 

ボルケーノ・パーク

素晴らしく中身が無くて好きです.

 

ラストレター

緩慢だが、庵野秀明の出番さえ霞む「あの二人」の使い方、そして校舎のシークエンスは強烈.

 

ディック・ロングはなぜ死んだのか?

悪意によって作られてある、ベストに選ばれることを拒否してる作品.

 

コンフィデンスマンJP プリンセス編

前半、なんなら中盤の終わりくらいまでも確かに面白かったんですよ.

 

宇宙でいちばんあかるい屋根

丁寧だけれど、何も刺さらなかった.でも振り返ると印象的な絵は確かにある.

 

バッドボーイズ フォー・ライフ

彼岸の匂いがする不思議なフィルムだった.

 

ジェクシー! スマホを変えただけなのに

明らかにここから盛り上がる、という部分で切り上げる謎.

 

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY

ハーレイ・クインは最高にキュートなので他には何も要らないけれど.

 

アルプススタンドのはしの方

体育会系的マチズモにすべて回収されていくようで、居心地が悪かった.

 

キャッツ

レ・ミゼラブル('12)』よりは面白かった.

 

チャーリーズ・エンジェル

全体に「線が細い」という感がありましたね.

 

俺たち替玉ブラザーズ!

ヴェトナムコメディに対する免疫が無かったので刺激的でした.

 

91位~100位 = ごめんなさいワーストです.

 

91位.キルバード 森に潜む反逆者

俺の理解力が足りないのか映画がサービス不足なのか.いや悪い出来ではない.でも消化不良感がハンパなかった.

 

92位.魔女がいっぱい

後半は好きなんですけど、前半ちょっと枯れ過ぎてやしないか.

 

93位.リトル・ジョー

やりたいことはわかる.でもこれは流石に寝る.

 

94位.ランボー ラスト・ブラッ

『エイリアン3』的な意味でなら楽しめるけれど、そんなにハードル下げたくなかった.

 

95位.デッド・ドント・ダイ

これが全国シネコンでかかったあの異常な週は忘れない.1位とか取らなかったっけ.死者が撮った、映画のフリをした亡霊が、亡霊と化した地球でかかっている.まるで人類が映画に乗っ取られたような… ただそれが例えば『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ』であったなら詩的で素敵ですけど、本作は流石に…

ジャームッシュならなんでも許すと思うなよ.

 

97位.劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

逆張りと思われそうで嫌なんですけど、大ヒットは本当に喜ばしいことだと思うんですけど、それでも原作の印象を塗り替える瞬間が最後まで一度も現れなかった.映画と相対したいのに、全てが目の前を素通りしていくようなもどかしさ.いや、あったはあった.石田彰の声がした瞬間.石田彰の一声に2時間のアニメが負けるんですよ.それは駄目でしょうと.

ufotableの勝負はここからだ.

 

98位.劇場版 Fate/Grand Order 神聖円卓領域キャメロット 前篇 Wandering;Agateram

俺の頭の中のFGOはこんな退屈じゃないので. 演出家にはやっぱり「嘘をつく」「ハッタリをかます」度胸が欲しい.

 

99位.アンチ・グラビティ

人生初めての映画館貸し切り体験をした思い出の一作なのでお気に入りです.

つまり、99位まではワーストと言いつつ観て良かった映画なのです.

 

100位.風の電話

自分の体調が最悪だったという特殊条件も合わさってのことですが、個人的に心底嫌いだと感じた一本.洒落臭いシネフィル的リテラシー、現実の悲劇の上にあるドキュメンタリズムも人質にしつつ、説明臭さも説教臭さも辛気くささも持ち合わせる.

誠実なツラした傲慢な映画だと感じました(そこまで言うほどなのかどうかは疑問になってきましたが、観賞時の不愉快さが今も消えない).

シネフィルが「映画らしさ」を甘やかしていくとこういう映画が生まれるという事は肝に銘じていこうと思いました.

そういう因縁の映画と出会えることも、結局楽しいんですけどね.

 

自宅鑑賞映画ベストは以下の感じ.今年は劇場鑑賞作品に絞ってベストを汲みましたが、そろそろ配信映画もベストに数えて良いのかも知れない.

 

 

 

 

似たようなドンパチ映画やアメコミ映画を並べる訳でもなく、本当に多彩な映画の記憶に思いを馳せることが出来て大変楽しかったです.

「映画ファンとしては」皮肉にもとても楽しい年だった.それは否めないことは記録として留めておこうかと思います.

 

 

大晦日の映画の採点

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晦日に間に合いました.

 

『マイル22』

【採点】

【監督】ピーター・バーグ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】CIAの極秘部隊「オーバーウォッチ」に所属するシルバは、今日も少年を含むロシア人組織を壊滅させ、苦い後味を噛みしめていた.次の任務は東アジア某国.極秘情報を抱える元警官リーを無事に国外退去させる事.不敵なリーの真意を計りかねながら、オーバーウォッチは過酷な戦闘の旅路を開始する.

【感想】

 量産体制バリバリ続行中のピーターとマーク・ウォルバーグが、『ザ・レイド』のイコ・ウワイスと組み、約90分といういつにないコンパクトさでまとめ、実話は基にしていない、と、実はかなり攻めの一本.本国では酷評されたようだけど、ブツ切りみたいな終わり方含めて、むしろアクション監督ピーターの本質が(失敗してる部分含めて)剥き出しで刻まれていて悪くない.ウワイスにちゃんと演技させてるのも好感.

 

『呪われの橋』

【採点】A

【監督】レスター・シー

【制作国/年】台湾/2020年

【概要】2020年の2月28日、落ち目の女性レポーターがカメラマンを伴い、とある大学で過去の事件を調査している.ここで肝試しを行った4人の学生が溺死し、1人が行方不明になったのだ.映画は記録映像から過去に遡る.そこでは6人の学生が、呪いの橋で禁断の肝試しを行おうとしていた……

【感想】

 幽霊出てくるかなー、まだでしたー、という緩急の技巧が大変豊かで、ジェームズ・ワン以降のホラーの形を洗練して受け継いでいる.それでいてサービスする時は堂々見せるのも厭わない.ホラーまでレベル高いのかよ加減してくれよ台湾映画.終盤で真相が明らかになると「あれ? じゃあ前半どう映してたんだ?」となる仕掛けも施されている.作り手の手腕を楽しむタイプの映画.今年一番の拾いモノだった気が.

 

ゲティ家の身代金

【採点】B

【監督】リドリー・スコット

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】1973年、ローマ.世界屈指の大富豪、石油王J・ポール・ゲティの孫が誘拐され、多額の身代金が要求される。義娘アビゲイルの懇願も聞かず、金を出し渋るゲティ。アビゲイルは交渉人チェイスと共に犯人を捜索。一方、情が移った誘拐犯の一人はなんとかゲティの孫を生還させたく、必死に要求を呑むようアビゲイルに連絡し…

【感想】

 非常に奇妙な誘拐映画。他方に富める者から奪い取ろうと画策する悪があり、他方に富を独占しようとする悪がある。『悪の法則』では見えざる世界の「システム」が人の命を奪っていったが、本作では悪のシステムが2つ運行し、まったく譲り合おうとしない。結果として「隙間」が生まれる。だから何なのかまでは受け取れなかったが、変な映画だ…と感じる面白さはあった。ケヴィン・スペイシーMetoo運動で告発され、公開直前に急ピッチで再撮影に応じたミシェル・ウィリアムズとマーク・ウォルバーグ、それに代役のクリストファー・プラマーに拍手。その再撮影時のギャラで男優と女優のギャラに圧倒的格差(千倍!)が生じ、その事実を知ったマークはミシェル名義で自分のギャラを全額寄付している。

 

『コンジアム』

【採点】B

【監督】チョン・ボムシク

【制作国/年】韓国/2018年

【概要】CNNによる「世界七代禁忌の地」に選ばれたコンジアム精神病棟跡を舞台にした罰当たりPOVホラー.人気Youtubeチャンネルの配信者ハジュンは、6人の有志を募ってコンジアムに潜入取材を開始する.一人、拠点を作り皆のカメラをチェックし指示を出すハジュンだったが、現場の6人はそれぞれに怪奇現象に遭遇し…

【感想】

 旧日本軍が拷問に使い、後に韓国人医師が引き取ってからも精神病棟として虐待が行われたというガチガチにヤバい本物の恐怖スポット、なのだけど、映画はドローンも使いつつ丁寧にPOVを使いこなしていく(でもドローンは恐怖演出には活かされない)、器用な技巧のお披露目回みたいなところがあって、『呪われの橋』の後に見ると何か話にもアクセントが欲しかった.

 でも「そこに立ってる」「振り向くたびに近づいて来る」は定番ながら怖い.

 日本軍兵士の幽霊が襲ってきて生体解剖されちゃう(『TATARI』みたいな)くらいの攻めた内容を期待していなかったと言えば嘘になる.舞台がコンジアムである意味が弱いんですよね.或いはブラッド・アンダーソンの『セッション9』のような味わいに振る方向もあった.

 

『灰とダイアモンド』

【採点】A

【監督】アンジェイ・ワイダ

【制作国/年】ポーランド/1958年

【概要】ドイツ降伏直後のポーランド。権力を握るソ連派の労働党にダメージを与えるべく、抵抗組織の構成員マチェックとアンドルゼイは党地区委員長シェーツカの暗殺を実行。しかし勘違いで別人を殺してしまう。次なるチャンスは終戦祝いのパーティ。マチェックはそこでクリスチナと運命の恋に落ちながら、シェーツカ暗殺の隙を窺う。

【感想】

 子供の頃、NHKで放送されたのをVHSに録画したはいいが画面がざらざら過ぎるし全然わからないしで脱落した映画、改めて観てみたら冒頭のシーンからして全く記憶と内容が違った! 理解不能過ぎてやたら「大きな映画」だと思い込んでしまったんだな.実際はほぼ一夜のパーティーで、酔っ払いたちの介入でまるで計画がうまく運ばないスリルとユーモアが良い塩梅。シェーツカの悲哀(検閲逃れの目眩まし要素でもあるのだが)もマチェック達も、ワルシャワ蜂起後であるという前提が結構大事。

 最初に暗殺を失敗した時点で全ては決まっていたような虚脱感と、だからこそ燃える恋と花火が儚く胸に残る。

 

バーニング・オーシャン

【採点】B

【監督】ピーター・バーグ

【制作国/年】アメリカ/2016年

【概要】メキシコ湾にある石油掘削施設「ディープウォーターホライゾン(原題。格好イイのでままが良かった)」で大爆発が起こり、百名以上の従業員が閉じ込められた実在の事件を描く。ピーター・バーグ×マーク・ウォルバーグの量産体制の中で生まれた一本。

【感想】

 ただ事故に向けて淡々と話は進み、事故が起きたらほぼ人間の活躍の場はなく、ひたすら大火に翻弄されるのみ。この「どうしようもない事態をただ見つめる」という形式が、『オンリー・ザ・ブレイブ』と本作によって生まれた新たなパニック映画の潮流となるのかも知れない。どちらの作品も無力感がハンパない。そして現にその被害に巻き込まれた人たちがいる、という事実だけが胸に爪痕を残す。それでいい。『オンリー~』に比べると若干エンタメ色が強いので、見易くはある。あちらは今も振り返ると胸が痛いし辛いので…

 

『チョコレートドーナツ』

【採点】B

【監督】トラヴィス・ファイン

【制作国/年】アメリカ/2012年

【概要】1979年、カリフォルニア。ドラァグ・クィーンのルディは検事局に勤めるポールと恋に落ちる。時同じくして、ルディの隣人の薬物中毒であるシングルマザーがダウン症の息子マルコを置いて失踪する。ルディはマルコを可愛がり育ててやれるのは自分だけだと、ポールの力を借りてマルコの養育権を獲得しようとする。3人で過ごす幸せな日々は、やがて法の力で引き裂かれ……

【感想】

 ハートウォーミングな名作と認識していたので、鑑賞後感のいたたまれなさに呆然としてしまった。言ってよ! 油断してたわ! ルディを演じるアラン・カミングの、最初から全てを知ってそれでも目の前の子供を救うために全力をベットすると決めた力強い存在感が知らず勇気を与えてくれる。「幸福な日々」をルディの歌で流す手法は映画をスマートにするが、そこをもうちょっと見せて欲しかった気もする。

 

『クリスティーン』

【採点】B

【監督】ジョン・カーペンター

【制作国/年】アメリカ/1983年

【概要】キングの同名小説を、発売とほぼ同時に全編ほとんどカーペンターによるオリジナルアレンジで脚色し、急ピッチで撮影されたというB級映画。過保護な母親の下で育つ冴えないイジメられっ子のアーニーが、曰く付きの車クリスティーンと出会い、改修していく中で見る間に自信を手に入れ、そしてアーニーの気に喰わぬ者たちが謎の死を遂げていく。

【感想】

 「B級映画」という字面にこれほどピッタリな作品もなく、主役は潰れたり綺麗になったりまた潰れたりロックナンバーの数々を流したりする車、プリムス・フューリー。一方で「お母さんが僕にかまうのは、自分が年だと認めたくないからだ!」とせめての反発を見せたアーニーのみじめで儚い栄光のひととき、ヒロインよりもアーニーを大事に思ってそうな親友デニスの奮闘も、雑然と描かれてるのにやけに印象に残る。

 素直に車の復元シーンで驚いてしまったのだけど、逆再生?

 

スマホを落としただけなのに

【採点】

【監督】中田秀夫

【制作国/年】日本/2018年

【概要】ある日、だらしのないサラリーマン・富田がスマホをタクシーに落としたことから、富田の恋人・麻美のもとにSNSを通じた不審なコンタクトが続く。麻美は富田の先輩・小柳からのしつこい誘いかとウンザリ。一方、刑事・毒島と加賀谷は連続女性殺害事件を追っていた。そして毒島たちの追う、黒髪の美しい女ばかり好んで惨殺するその「男」は、拾ったスマホの画像フォルダに写る麻美の姿にただならぬ興味を覚え…

【感想】

 もっと北川景子が犯人に追われ右往左往する話かと思いきや意外と本筋が錯綜して何を追っているのか分かり辛く……とかいうレベルじゃなく演出がいちいちダサい……けど、普段映画を見ない層にとってこれは立派にデートムービーとして機能するだろうな、という納得感もあった.真相はちゃんと面白く、予告で抱いた印象とは全然異なる2つの「メロドラマ」が後半発動している様は中田秀夫の面目躍如で、『劇場霊』ほど暗澹たる気持ちにはならずに済む.

 

『FLU 運命の36時間』

【採点】A

【監督】キム・ソンス

【制作国/年】韓国/2013年

【概要】救急隊員のジグは、ある日とある事故に巻き込まれた研究者のイネ、彼女の娘ミルと出会う.少しずつ近付きつつある二人の仲。そんな折、彼らの暮らす町で新型鳥インフルエンザが持ち込まれ、瞬く間に辺りは地獄絵図となる.ミルを救おうとするジグ、研究を進めるイネ.しかし事態は最悪に最悪を重ねて壮絶な様相を帯びていく…

【感想】

 こんなことになる7年前とは言え、少なくとも『コンテイジョン』の後ではあるのにパンデミックによるパニックを極限まで煽る過剰なエンタメ精神が凄い.ハリウッドでも観たことのない絵を見せてやるという心意気.その前景にベタなロマンスを置いてあるので一応安心感も担保している辺りが巧み、というかキム・ソンス監督は根本的にベタが好きなんだろう.軍人役のマ・ドンソクが今と違いガチの悪役で新鮮.そしてあまりに気持ちいいラストショットからの、エンドロールの最初の一文でこんなに納得のいくメッセージは無い.ロケ地の住人たちへの感謝.そりゃこれだけの撮影に全面協力してくれたらな.

 

アウト・オブ・サイト

【採点】B

【監督】スティーブン・ソダーバーグ

【制作国/年】

【概要】プロの銀行強盗ジャックは相棒の力を借りてフロリダ刑務所からの脱走を図るが、道中で連邦保安官のカレンと遭遇してしまう.なんとかカレンを拘束し脱走に成功するが、ジャックとカレンはお互いのことが妙に気になっていた.やがてジャックは刑務所で知り合った「スヌーピー」なる男との問題に巻き込まれ、カレンは再びジャックを追いかける.

【感想】

 理由は言えないけど、同じエルモア・レナード原作のタランティーノジャッキー・ブラウン』を絶対に事前に見ておくこと.脚本は『クイーンズ・ギャンビット』のスコット・フランク.ソダーバーグの軽さ(たぶん観客にはわからないところで色々な拘りは発揮してるんだろうが結果的に軽くなるいつもの塩梅)とエルモア・レナードの会話劇が『ジャッキー・ブラウン』とはまた違ったハマり方をしていて楽しい.

  

スカイライン ー奪還ー』

【採点】C

【監督】リアム・オドネル

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】低予算インディーズ系SF映画として話題となった『スカイライン ー征服ー』が三部作として返ってきた、7年ぶりの続編.監督は前作のストラウス兄弟からバトンタッチ.宇宙人の襲来.なすすべなく攫われ、脳みそを吸われていく人類.それに立ち向かう父子と仲間たちの道中を追う.

【感想】 

 前作はインディーズ系で凄いねって話だったのに監督代わっちゃったらあまり感慨ないし、前作の語り直しみたいな展開で半分使ってしまうので退屈なのだけど、前作のラストの続きとも言うべき人類の逆襲にまで踏み込むので三作目には期待.『ザ・レイド』の二人がベトナムの戦士たちとして後半に登場.「もうこんなシェルターを作ったのかい? 凄いな」「お前ら(アメリカ)の爆撃から逃れる時に作られたもんだよ」が痛快.

 

『マザーレス・ブルックリン』

【採点】A

【監督】エドワート・ノートン

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】エドワート・ノートンが監督・脚本・製作・主演を務めた念願の作品.1957年のニューヨーク.孤児院で育ったチック症持ちのライオネルは、自分を拾い上げたフランクの探偵事務所で、やはり孤児院出身である他の探偵たちと仕事をしていた.しかし、自分が後を追っていた仕事中にフランクが殺されてしまう.真相を探るライオネルは、ニューヨーク行政と黒人地区の関係に鍵があると睨み…?

【感想】 

 原作は現代が舞台だというが、エドノートンは舞台を50年代のニューヨークへ変更.そのことによって「今日に続くあらゆる腐敗や差別が育つ根っこ」を描き出す野心作.と同時に、チック症の男が自分でも制御できない癖と共に生き、人並みに探偵としての捜査を行う困難さをどこか愛おしく紡ぐ.なかなか愛着の沸く一本.

 

スカイスクレイパー

【採点】B

【監督】ローソン・マーシャル・サーバー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】香港に超高層ビル「ザ・パール」が建設された.10年前、任務の失敗で片足を失った元FBIのソーヤーは、転職してセキュリティ監査として家族とともにイチ早くこのザ・パール高層階で暮らしていた.昔の仲間と再会していたフェリーでテロリストの襲撃に遭い、帰宅するとザ・パールはテロリストに占拠されている.人質は家族.ソーヤーは単身ビルに乗り込んでいく.

【感想】

 監督と主演ドウェイン・ジョンソンのタッグからなる前作『セントラル・インテリジェンス』が惜しいところで野暮ったく間延びしてしまったので、今作はスマートに無駄なく構造的アドベンチャーに挑戦.その無駄のなさゆえに、面白いけど物足りなく感じてしまった.『ダイ・ハード』は無駄なき傑作と言われているけど、実際は主犯格以外のテロリストと戦う全てが無駄で、無駄を最高に面白い必然として組み込んでるからこそ傑作なのだ.

 

『(秘)色情めす市場』

【採点】A

【監督】田中登

【制作国/年】

【概要】にっかつロマンポルノ伝説の名画と呼ばれる作品.娼婦の母よねから路上で産み落とされた娼婦トメ.コンドームさえ洗って使い回し、セックスしてなきゃすぐ酒を呷る世界で、トメはよりによって商売敵として母に邪魔をされながら、障害者の弟の面倒を見、したたかに生き抜こうとする.

【感想】

 大阪・釜ヶ崎のドヤ街、所謂「あいりん地区」で暮らす人々の地べたを這うような生活を生々しく、奇妙なバイタリティとして活写.実際に現地でカメラを回している生々しさと、モノクロ効果による突き放したような距離感とが、ラストで瞬時に反転し、また戻っていく時、「そこで生きている人たちが確かにいる」という実感が残される.相当数の自分が見てきた邦画が本作のエッセンスをパクr…影響受けてることがわかって「繋がっていく」快感もあった.

 やはり同地を描いた大島渚の傑作『太陽の墓場』からのクロニクルとして見ても面白かった.今の釜ヶ崎を描く邦画が生まれたら見てみたい.

 

『グッドライアー 偽りのゲーム』

【採点】B

【監督】ビル・コンドン

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】マッチングアプリで知り合った高齢の二人ロイとベティ.だがロイはベテランの詐欺師であった.血腥い手で新たな仕事を終えたロイは、ベティとの楽しい時間に若干の未練を覚えつつもすべて盗み出す算段を整える.そして二人はヨーロッパ旅行へ出かけるが…?

【感想】

 ヘレン・ミレンのターンが一向に始まらないので、どう考えても「それは来る」とわかってる逆転劇をラストまで待ち続ける.それはなんとも不毛な時間に思えて、それでもイアン・マッケランとヘレンの芝居合戦でつい見てしまう.歴史を絡めてきたオチも感心半分「後出しじゃん…」という脱力感半分.それでも二段階で別のベクトルで訪れる終幕の切れが快感.

 

ジェミニマン』

【採点】C

【監督】アン・リー

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】DIA(アメリカ国防情報局)に雇われるベテラン凄腕スナイパー・ヘンリーだが、とある一件を機に引退を決意.だが自分が最後に殺害した人物が知らされていた情報と違うと告げられ、やがて謎の暗殺者につけ狙われる.とうとう敵と対面するが、その正体はまるで若き日の自分に瓜二つで…

【感想】

 一作毎にジャンルを変えるも、独自の時間間隔を紡ぎ上げるアン・リーの作家性は変わらず、本作も前半は地味ながら個人的にとても心地良い.特にバイクチェイスは間違いなく素晴らしかった.問題は肝心のジェミニマンが登場してからの、「より地味になった『ハルク』の焼き増し」感で、流石に脚本がハリウッドに出回ってから20年以上というブランクは大き過ぎたのでは… その頃からハリウッドにいたアン・リーとウィル・スミスでの映画化というのは妙な感慨があるけれど.

 「20fpsのハイフレームレート、3Dデジタル撮影され、STEREOTEC 3D リグを装着したARRI Alexaカメラが使用され」たそうで、配信でせこせこ見たところでしょうがないのだけど、映画なんかどれも自宅で観たところでしょうがないというのはあります.

 

『タラデガナイト オーバルの狼』

【採点】

【監督】アダム・マッケイ

【制作国/年】アメリカ/2006年

【概要】ジャド・アパトー組初期全盛期のコメディの一つ.いい加減な父親の教育のせいでスピードと「一位」にとりつかれた男リッチー。いつも支えてくれる親友キャルをないがしろにしながら人気カーレーサーになるが、調子に乗って自堕落な日々へ.そこへF1から強力なフランス人レーサーが現れ、さらにリッチーは大事故を起こしてしまう.

【感想】

 ウィル・フェレル、ジョン・C・ライリー、サシャ・バロン・コーエンがボケ倒すも、その合間合間のカーレース周りの群衆、熱狂、レース、クラッシュはホンモノの迫力.実は末端でどんなアドリブをかまそうが話の起承転結もしっかり練られていて、ラストは謎の昂揚感がある.ただ時代を感じるゲイいじりのギャグがキツかった…

 昔ニコ動画に本作冒頭だけ上がっていて大爆笑した記憶があるので、今ようやくラストまで見れて良かった.あの動画なんだろうと思ったらまだありましたね.吹替え版だ! 字幕版より面白い!

 

アナベル 死霊博物館』

【採点】C

【監督】ゲイリー・ドーベルマン

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】『死霊館』ユニバース『アナベル』シリーズ第3弾.ウォーレン夫妻はアナベル人形を自宅の呪いコレクションに納め、除霊と封印を施す.そしてある日、家を空けることになる.家に残したのは幼い娘ジュディとしっかり者のベビーシッター・メアリー。そこに遊びに来たメアリーの友人ダニエラが、亡くなった父と再会したいがためにアナベルの呪いを解いてしまい…

【感想】

 『学校の怪談』みたいだと聞いて楽しみにしていたのに、『学校の怪談』の序盤がずっと続くような抑制された空気。ユニバースで下品なショックシーンが多いタイトルもあったのでその反動なのかも知れないけど(監督はリメイク版『IT』の脚本家なのに)とにかく大人しい。つまらん。言っちゃった、ゴタクはいいや、理屈抜きにつまらんw

それでいてショックシーンは普通に下品なので抑制した意味もあまり…

 

 『貞子3D2(2D版)』

【採点】C

【監督】英勉

【制作国/年】日本/2013年

【概要】安藤孝則と鮎川茜が貞子の呪いと戦った5年後.茜の出産した子・凪は孝則の妹・楓子が預かっていた.凪の周囲で不審死が続き、母の自殺を防げなかったトラウマを抱える楓子は負のイメージに囚われる.しきりに凪と遠ざかろうとする孝則.停まらない不審死の連鎖を訝しむ刑事・垣内.凪はこの世にいてもよい子なのか、それとも…?

【感想】

 「スマホと連動する3D映画」をただPCやスマホで暇な時にちょこちょこ見進めただけだったので、俺は本当にこの映画を「見た」と言えるのだろうか…? 

 前半はかなり寒々しいしつまらないのだけど、後半で真相が明らかになってくるとなかなか重層的で、それでいてイマイチ整合性の掴めない展開で結構楽しめる.エヴァ新劇の『Q』のクライマックスと『破』のラストが合わさったような、貞子というガフの扉を開くか開かないかという話が主人公のトラウマと重なっていく.オチはよくわからない.

 

オタクが選ぶ日本語ラップ2020

基本YouTubeでしか日本語ラップに触れない、それも積極的に掘り進めるのでなくホームに表示されたものくらいしか聴かない(見ない)アニオタが選ぶ日本語ラップ2020マイベストになります.苦情は受け付けません.

 

普段ラップ聴かない人にどれか一つくらい持ち帰っていただけたら幸甚です.

 

まず流石にここまで再生回数伸びてる曲を今更推してもしょうがないので除外した曲.でもいいよね.


BUDS MONTAGE / 舐達麻(prod.GREEN ASSASSIN DOLLAR)


Creepy Nuts / かつて天才だった俺たちへ【MV】

 

では順不同で10曲.

 

1.Moment Joon ー TENO HIRA


Moment Joon - TENO HIRA

 

  「数が足りません」ってなんだ 「道がありません」ってなんだ

  いつもの言い訳の代わりに俺はマイクを摑んだ

  君も見せてくれよ こぶし

  スカイツリーじゃなくて君が居るから日本は美しい

 

今に始まった話ではないし、それを殊更取りあげることが本人たちにとって不本意であることは百も承知で、しかしラッパーのルーツの多様さ、全てひっくるめて「日本語ラップ」「ジャパニーズHIPHOP」の地図を描いていく抜けの良さが、このフィジカル面での断絶を余儀なくされる年において非常に解放感を与えてくれたのはこのカルチャーの誇らしい部分でしたが(反面陰謀論や偏見に毒される残念なロートルやイキリ小僧も散見されつつ)、

けれどそんなうわべだけの楽観論に水を差し発破をかけてくるMoment Joonがもっともリアルに感じました.でもMVもっと作って欲しい

 

2.ralph ー Selfish(prod.Double Clapperz)


ralph - Selfish (Prod. Double Clapperz)

 

    日本では無理? まぁ確かに

    言い訳ばかりのお前らじゃ無理でも

    俺ならできるmakeするシーン

    準備してくれよ手のひら返し

 

この曲に出会った時の衝撃.

何より「大言壮語ぶちかまして事実上がっていく過程を見せる」というギャングスタの魅力を今年一番感じさせてくれた人.

 

この三人の並び!


Hideyoshi - Jitsuryoku ft. Leon Fanourakis & ralph (Official Video) [Dir. by Ken Haraki]

 

番外編.ブライアン ー 日本のラッパーって・・・下手じゃね? 真似できない踏み方をみせるぉ


日本のラッパーって・・・ 下手じゃね? 真似できない踏み方を見せるぉ

 

天才的なスキルを見せつつも、バトルでもライブでも音源でもない、今まで誰も同じ土俵で闘っていないからこの動画の主張そのものは的外れもいいところなんですけど、これで多くのラッパーが乗っかってアンサーすることで、家で出来るゲームをありがとう(by言×THEANSWER)が巻き起こって、それはそれは楽しかったのは事実なので今年の一曲(?)であることは間違いない.なんならもっと多くの人に乗って欲しかったですね.

個人的にはこのゲーム、ブライアンに欠けてる音楽的な魅力をdisではなくリスペクトの中で堂々示したブルーミオの圧勝という感想.


Blumio - ブライアンへ

 

3.KennyDoes,テークエム、KOPERU、R-指定、KZ、ふぁんく、KBD、peko ー 梅田ナイトフィーバー'19


KennyDoes,テークエム , KOPERU, R-指定, KZ, ふぁんく, KBD, peko - 梅田ナイトフィーバー’19(prod. peko)

 

   人もまばらなフロア 照らしてたミラーボール

   下手くそなステップでお喋りだった俺達を

   からかったあの子 重なった足跡も

   いつまでも いつまでもずっと ずっとこのまま

 

甘酸っぱい青春ゾンビ.

おもっきりタイトルに「19」って入ってますけどMV自体は今年頭に上がってたし、CreepyNutsのお茶の間進出も嬉しい今年の曲として欠かせず.

晋平太が上げてたメイキング込みでのこの青春感.


KennyDoes,テークエム , KOPERU, R-指定, KZ, ふぁんく, KBD, peko - 梅田ナイトフィーバー’19(prod. peko)【MVメイキング】

J-POP寄りの曲調に輪をかけてベタベタなMVを合わせることで素直に曲を楽しめるのがまた良くて、stillchimiyaから離れたところでスタジオ石制作によるMVがあちこちで(愉快な方向で)炸裂してたのが楽しい一年でした.


般若 / イキそう [Pro. DJ BAKU / Dir. スタジオ石] Official Music Video ℗2020 昭和レコード


NENE - 地獄絵図 feat. NIPPS (Music Video)

 

4.DJ CHARI & DJ TATSUKI - GOKU VIBES feat.Tohji,Elle Teresa,UNEDUCATED KID & Futuristic Swaver


DJ CHARI & DJ TATSUKI - GOKU VIBES feat. Tohji, Elle Teresa, UNEDUCATED KID & Futuristic Swaver

 

   I'm super saiyaaan

   I'm super saiyaaan

   Know my name TJ,call my name TJ

   I'm super saiyaaan

 

これも再生回数結構いってるけれど、個人的にTohjiにだけはハマることはないと思ってたのに笑いながら体揺れてしまったので悔しい一曲.Tohji、動き含めて面白いのでこれもMVの力を感じた一曲ですね.あと後半の韓国人ラッパーのラップが意味わからないのにめっちゃ気持ちよい.

 

5.tofubeats ー RUN REMIX(feat.KREVA & VaVa)


tofubeats - RUN REMIX (feat.KREVA & VaVa)

 

   走らされてる奴らから今日も

   吐き出されてく溜め息まじりのCO2

   大丈夫?

   これは一生ずっと続く終わりの無い勝負

 

今年はトリックスターとしてあちこち顔を出しひっかき回したKREVAZORNの動きを追うのが楽しかったです.

特にRUNは既成曲で、KREVAが参加することで俄然意味が高まるという点でその強さを実感.「ダビデみたいに考える」は普通に間違えたそう.


KREVA 「タンポポ feat. ZORN」MUSIC VIDEO


PUNPEE - 夢追人 feat. KREVA


KREVA 「Fall in Love Again feat. 三浦大知」MUSIC VIDEO

 

6.ZORN / Life Story feat.ILL-BOSSTINO


ZORN / Life Story feat. ILL-BOSSTINO【Official Music Video】

 

   いいかい シナリオを書き上げたらすぐにキックするべきだ

   見様見真似でいいからやってみな

   それだけでした これだけで来た

   何より俺だけってわけじゃなかったからここまで出来た

 

KREVAなら「RUN REMIX」そしてZORNならこの曲.

ZORNのバースが「労働と人生やっていくぞ」になっているのに、BOSSのバースの始まりが「どんな仕事も最後クビ」なのがジワジワきます.

どんな曲のギャングスタ構文も嫁とか子供とか味噌汁とか「生活の話」で落とすZORNのリリックがネタ切れすることなくあらゆる場面で異彩を放って良いスパイスになるし、それを真っ向受け止めて太い「人生」の歌に変えたBOSSも頼もしい.


ZORN/Rep (Remix) ft.MACCHO NORIKIYO


ZORN / Have A Good Time feat. AKLO 【Official Music Video】

 


THA BLUE HERB "バラッドを俺等に"【OFFICIAL MV】

 

7.Awich ー Bad Bad


Awich - Bad Bad (Prod. Chaki Zulu)

 

   この世界の終わりもtogether

   君となら怖くはないから

   you can trust me

   酸いも甘いも見たわ

 

Mステ出演以上にビックリした、『人間発電所』を使ったトラックの心地よさ.今後元ネタに負けないくらいクラシックになってほしい一曲.滅茶苦茶聴いてます.

フィメールラッパーも着実に存在感を増して、また多様化していて、男性ラッパーが軽くネタにする雑なフィメールラップdisがもはや「どこの誰の話?」ってレベルで的外れになってきてますね.


Zoom - valknee, 田島ハルコ, なみちえ, ASOBOiSM, Marukido, あっこゴリラ


chelmico「Disco (Bad dance doesn't matter)」【Official Music Video】

 

8.PUNPEE ー Wonder Wall feat.5lack


PUNPEE - Wonder Wall feat. 5lack

 

   それでもいつもの様にまたお洒落して 遊び疲れ眠るだろう

   仮に2で割って最高 そうなれなくても

   ふわり 疎遠になるかも 終われない日々のうた

 

年老いた自分が過去を振り返るアルバム『MODERN TIMES』のコンセプトを更に裏打ちするように、家族ヒストリーを音源とMVに仕上げる.それが様になってて格好イイけど既存のどの格好良さにも当てはまらない.別に格好良くなくてすらいい.

兄弟ラッパー共演(というかこの二人は元々一緒のユニットだけど)で堂々家族への感謝を告げる点、ちょっとMummy-DKOHEI JAPANの坂間兄弟が念頭に置かれてたら嬉しい.

 

9.JJJ ー STRAND feat.KEIJU(Prod by KM)


JJJ - STRAND feat. KEIJU (Prod by KM) 【Official Music Video】

 

   deathも有りで繋ぐSTRAND

   大師の門、頭上迫る雷雲19時現在

   駅前に葛藤書き留める

   誰の言葉じゃない、俺が決める

 

もお素直にトラックが良過ぎる.ずっと浸れる.

 

10.STUTS ー Mirrors feat.SUMIN,Daichi Yamamoto & 鎮座DOPENESS


STUTS - Mirrors feat. SUMIN, Daichi Yamamoto & 鎮座DOPENESS (Official Music Video)

 

   Lemonade 甘く酸っぱい

   それぐらい君を見分けたい

   手に余るほどのemotion ay

   こぼれ落ちるslowmotion

 

これが多分今年一番聴いた曲.

「次は誰と誰が一緒になって曲を出すか」も日本語ラップの醍醐味の一つですが、STUTSとDaichiと鎮座は個人的にこれ以上ないとこありました.

 

別に10曲決めてから書き始めた訳じゃないので、以下は普通に今年ベスト級に好きだけどこぼれた楽曲群.

 

こういうのも有りなんだ! ってなった


(sic)boy,KM - Ghost of You

 

2020年夏の寂しい空気をこんなに凝縮した曲とMVも無い.


FNCY - みんなの夏 (Prod. : grooveman Spot) ZEN-LA-ROCK / G.RINA / 鎮座DOPENESS

 

レジェンドの共演 このくだらなさ


スチャダラパーからのライムスター - Forever Young (Music Video Version)

 

レジェンドの復活 この聴きやすさ


SOUL SCREAM / Love, Peace & Happiness [Official Video]

 

逮捕されても巧いことを言えたら勝ちなのだ


漢 a.k.a. GAMI feat. RYKEY / Period.

 

HIPHOPというより現代アートと称した方がしっくりくる何か


KID FRESINO - No Sun (Official Music Video)

 

笑うしか出来ないし「I REP 実家」はパンチライン


般若 / SORIMACHI [Pro. CHIVA from BUZZER BEATS / Dir. TOMOYA EGAWA] Official Music Video ℗2020 昭和レコード

 

あと唾奇、BIM、kZm、¥ellow Bucks、vividvoooy、田我流、環ROY、RAU DEF、OZworld、LEX、JinDogg、BAD HOP、NORIKIYO、ANARCHYとかとか聴きました.

浅瀬でちゃぷちゃぷ遊んでる自覚は抜けないけれど、これ以上掘るのも正直面倒臭いので、これからもイイ感じに気楽に遊んでいきます.

 

 

アニメ映画の採点

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「映画の採点」第5弾です.

自分で設けたルールを早速破りますが、今回は劇場版アニメ縛り.

数年分見逃した劇場版アニメが溜まっているので、重点的に観て行くぞと.

採点は最近見た劇場版アニメの中で相対化しており、比較的甘め.

今年はあまり劇場でアニメを観れなかったので、心が欲してたのかも知れません.

正直まだまだ未見の劇場版アニメは山積.改めてその制作本数に驚いています.

 

 

ムタフカズ

【採点】A

【監督】ギョーム・"RUN”・ルナール、西見祥示郎

【制作国/年】フランス・日本/2018年

【概要】ギョーム監督の同名バンド・デシネを日仏共同でアニメ映画化.L.Aにあるギャングと貧困の街ダーク・ミート・シティ(DMC)で生きる孤児のアンジェリーノは、ガイコツのヴィンス、半獣人(コウモリ)のウィリーとダラダラ生きていたが、少女ルナに一目ぼれしたその時から謎の集団に追われるようになる.

【感想】

 巧みに3Dと手描きの味わいを織り交ぜるSTUDIO4℃のアニメーション、木村真二の魅惑の背景美術を舞台にキャラクターが飛び回るバイオレンス・アクション、つまり『鉄コン筋クリート』の系譜で、こういうアニメがずっと観たかった.後半の勝手に解決していくご都合集団の存在とか脚本はアンバランスなのだけど、そのアンバランスさの中を動き回るアニメの楽しさが全てに勝る.

 西見祥示郎監督のキャリア、かなり遡らないと見当たらないのだけど、次回作はもっと早く観たい.吹替え版では魅力が半減するのでフランス語版での観賞推奨.

 

『劇場版 Free! -Timeless Medley- 絆』

【採点】C

【監督】河浪栄作

【制作国/年】日本/2017年

【概要】TVアニメ『free!』2期総集編2本の内1本であり、『ハイ☆スピード』と3期の間を繋ぐ架け橋でもある.岩鳶高校水泳部、三年生になった遥.同世代の真琴や凛が進路を決めていく中、才能はあっても目標の無い、ただフリーを泳いでいたかっただけの遥は、次第に周囲の期待に押しつぶされていく.

【感想】

 3期以降の、あらゆる要素をブチ込んで統一感のないオモチャ箱化したFree!の混沌を知っていると、まだ随分と話が整ってたんだなぁと懐かしい.ゆるふわモノのメインの性別を変えただけで性格にさしたる(マチズモ的ステレオタイプな)男性性を持ち込まないことが新鮮だったFree!だけど、とは言え女の子メインのゆるふわでもシリーズの途中でちょっとした「気づき」の為にわざわざオーストラリアにまで行ったりしないので、やはり面白い過剰さがある.

 

『劇場版 Free! -Timeless Medley- 約束』

【採点】C

【監督】河浪栄作

【制作国/年】日本/2017年

【概要】TVアニメ『free!』2期総集編2本の内1本であり、『ハイ☆スピード』と3期の間を繋ぐ架け橋でもある.鮫柄学園水泳部、部長となった凛は、遥たちとの確執や父の死のトラウマを乗り越え、部を取り仕切っていた.再会した旧友・宗介も仲間に加わり、岩鳶と切磋琢磨するが、宗介の態度に、そして彼の身体に異変を感じ…?

【感想】

 やはり主人公として明らかに動かし辛い遥に比べて、凛視点になると途端にスッキリした青春劇になる.ただ『絆』と比較すると浮いてるのが冒頭と終盤の「文字」演出で、これはあまりに安易なのでやらない方が良いのではないか.山田尚子石原立也武本康弘監督が演出の遊びとして使えたものを、割りと直球で説明に使ってしまっている危惧を感じた.

 

『特別篇 Free! -Take Your Marks-

【採点】B

【監督】河浪栄作

【制作国/年】日本/2017年

【概要】『Free!』新作四編がセットになった、2期と3期を繋ぐオムニバス.東京の大学へ進学することになった遥と真琴の部屋選び、温泉へ行くことになった鮫柄学園の4人、新入部員勧誘の方法を考える渚ら後輩組、そして勘違いから凛と百が水泳勝負に至るまで.

【感想】

 謂わば感情の波が無い(凛は勘違いで揺れるが)ゆるふわ回だけが平和に続く日常世界を、2時間近い新作映像で綴る(当然京アニクオリティの作画で).この感触、『映画 けいおん!』のあの衝撃を思い出す.すべてのアニメでこういう特別篇を作って欲しいくらい贅沢な「なにもない」時間だった.一話だけじゃなく、四話もあるというのが嬉しいんですよ.

 

『BURN THE WITCH』

【採点】

【監督】川野達朗

【制作国/年】日本/2020年

【概要】久保帯人が放つ新作にしてBLEACH番外編、連動する映像化プロジェクト第一弾.ドラゴンが息づく世界、それはロンドンの裏世界「リバース・ロンドン」。自然ドラゴン保護管理機関「ウイング・バインド」で働く魔女、二ニー・スパンコール、そしてニーハこと新橋のえるの騒々しい日常が幕を開ける.

【感想】

 先に原作読んでテンション上げての観賞.前日譚は飛ばしてるのでバルゴの説明足りてない気はするけど、アクションシーンはスタジオコロリドの丁寧な作画で盛り上がるし、ロンドンの町並みも綺麗.ただ「漫画の丁寧な再現」に留まり、折角のお膳立ての元に映画を作れるのに欲が少なく、「原作読んでた以上の感想」が一切湧きあがらない.漫画表現の映像的な処理というものは必要.

 

『薄墨桜 -GARO-』

【採点】

【監督】西村聡

【制作国/年】日本/2018年

【概要】雨宮圭太の特撮フランチャイズGARO】そのTVアニメ第二シリーズにあたる『GARO 紅蓮の月』の劇場版.但しメインスタッフは一新し、『劇場版TRIGUN -BADLAND RUNBLE-』の西村聡監督×小林靖子脚本タッグが復活.ストーリーは一見でも理解できるよう、TVとの時系列を曖昧にしている点も『TRIGUN』と共通.

【感想】

  平安時代を舞台に、前半は陰陽師モノ、後半まさかの怪獣映画へと変貌を遂げる野心作.『機動警察パトレイバー WⅩⅢ』を思わせるストーリーと、イリス×レギオンな怪獣に変身する巨大樹・薄墨桜のカタストロフィーが平安京で展開するという新鮮さ.アニメでしか出来ない挑戦をやり遂げた.朴璐美さんの演じるツンデレヒロインに萌えるという新鮮な体験に加え、映画オリジナルのヒロインが田中敦子さんで、どの層に向けて作ってるんだ!

 

機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER』

【採点】A

【監督】松尾衛

【制作国/年】日本/2017年

【概要】OVA『サンダーボルト』の総集編劇場版第二作.一年戦争終結後、サイコ・ザクを失ったジオン軍のダリルは地球でアッガイ小隊を率い、連邦軍のイオはジオンの関節も利用した新兵器アトラス・ガンダムの試乗を開始.そんなイオの前に趣味の合う快活な女パイロット・ビアンカが現れる.その頃、連邦は連邦を抜けた何者かが開設したらしき謎の宗教組織「南洋同盟」に警戒心を抱いており、ダリル小隊は偵察を開始する.

【感想】

 特に続編のアナウンスも無い「話の途中」という無責任な内容ながら、ひたすら描写が格好良い.MSのデザインをフルに戦闘に活かしたギミックの数々、そんなギミックすら一瞬で蹴散らされる兵器の暴力性、その危険な戦場をメインキャラが行き来する緊迫感と、次第に複雑な盛り上がりを見せ始める人間関係、そしてジャズ、ポップス、ロック.ひたすら格好良いというシンプルな理由のみによって最高.早く続きが観たい!

 

PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.1 罪と罰

【採点】C

【監督】塩谷直義

【制作国/年】日本/2019年

【概要】サイコパスシリーズ、中篇劇場版オムニバス第一弾.2117年、公安の前に暴走車両が突入し、搭乗している精神錯乱を起こした女が何事かを訴える.彼女の素性が潜在犯隔離施設「サンクチュアリ」の心理カウンセラー・夜坂泉だと判明し、常守朱は監視官・霜月三佳に執行官・宜野座と弥生を付けて出向させる.霜月がそこで見た、「サンクチュアリ」が秘匿する事業とは……

【感想】

 やはり冲方丁がいないとこのテンポに戻ってしまうのか.人格変わったかな、逆にサイコパスかなというくらい霜月美佳が正義感を発揮して活躍.俺が見たかった霜月はもっと「個」としてシビュラに同調し、次第に中枢へ近付いていく、朱の負の合わせ鏡であって欲しかった……というかその為の2期だったんじゃないのか……という不満はともかく、中篇アクションとして一定の満足度.霜月も主役として輝く.サンクチュアリで秘匿されていた「それ」についてもっと突っ込んだ話を観たかった.

 

PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.2 First Guardian』

【採点】B

【監督】塩谷直義

【制作国/年】日本/2019年

【概要】2112年夏、沖縄.まだ国防軍に所属していた須郷徹平は、優秀なドローンパイロット「First Guardian」として特殊任務に参加していた.数ヶ月後、東京の国防省無人ドローンが襲撃し、多数の役人・軍人を殺害.刑事課から訪れた監視官・青柳璃彩と執行官・征陸智己は国防省の妨害をかわしつつ介入し、須郷の取り調べを開始する.事件の背後に、軍事作戦中に死んだ筈の須郷の元上司・大友逸樹の影がチラつき……

【感想】

 過去篇にすることで、死亡キャラ達の同窓会的な雰囲気に.正直アニメ1期では設定上だけ伝説の刑事でひたすら無能にしか見えなかった征陸さんがようやっと格好良い姿や渋みを見せてくれる.ただ「これが半分の上映時間で『攻殻SAC』の中の一話だったら傑作回だったんだろうな」となる、丁寧と言えば聞こえはいいが鈍重な演出が続き、結果真相は常に先読み出来てわかってしまう.作画の高品質が裏目に出るというか.世評はどうあれやはり2期のスピーディーさは大事だった.Case.1に続き、ドミネーターが黄門様の印籠みたいな良い仕事をする.

 

PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に

【採点】A

【監督】塩谷直義

【制作国/年】日本/2019年

【概要】咬嚙慎也は今もアジアを放浪していた.私怨の復讐を果たした身であり、日本に帰れば死刑だろう.やがてチベットらしき国で襲撃されていた難民バスを助け、孤児のテンジンと出会う.日本棄民の娘であるテンジンは両親を殺したゲリラへの復讐を誓い咬嚙に戦いの作法を習いたがるが、咬嚙は人殺しに反対する.次第に打ち解けていく二人だったが、この国で行われている和平交渉の背後にある陰謀に気がついてしまう.

【感想】

 舞台は日本じゃないしドミネーターも出てこない、今までで一番コパスらしさから離れながら、今までで一番オリジナリティを獲得した一篇(つまりオリジナリティの部分にオリジナリティが欠けるシリーズだったと思うんですよね).即席のチーム物でもあって、中篇ながら先の長篇劇場版よりもクライマックスのアクションの満足度は遥かに高い.何より、初めて咬嚙が魅力的な存在に思えたのが個人的に大きい.征陸さん同様、アニメ一期だとすごく思わせぶりなのに無能だったから……

 このテの役はお手の物な諸星すみれも、カラフルな旗がはためく背景美術もとても良かった.

 

『あした世界が終わるとしても』

【採点】

【監督】櫻木優平

【制作国/年】日本/2019年

【概要】クラフターによるオリジナルCGアニメ映画.元となるHuluオリジナル作品があり、キャラや一部バトルシーンは共通しながらも異なる物語となっているとのこと。

 幼い頃母を謎の突然死で失った高校生シンと彼の面倒を見る幼なじみのコトリの前に、シンとそっくりな姿をしたジン、コトリを守ると誓うミコが現れる。この世界は裏側にもう一つの世界があり、最近多発する突然死も裏側の世界の同一人物が処刑されている為なのだという.そして裏世界「日本公国」を支配する公女は、もう一人のコトリで…

【感想】

 何も知らずに見たので序盤の展開は結構面食らって面白かったし、必要最低限のキャラで回していく構成も、中盤でのヒロイン死亡もなかなか「おお」となりつつ、「で、誰に向けて作ってるんだろうこのアニメ…」という冷めた気持ちが消えなかった.なぜアヌシーはこれをコンペに入れたの.中盤まではそれでも整理されてる気がした構成も、終盤ひたすら萎んでいくのでガッカリ.どこがクライマックスだったんだろう.

 

『ニノ国』

【採点】C

【監督】百瀬義行

【制作国/年】日本/2019年

【概要】足が不自由な高校生ユウは、幼なじみのハルとコトナの仲に疎外感を覚えていた.ある日コトナが交通事故に巻き込まれ、救助しようとしたユウとハルは異世界に迷い込んでしまう.そこは現実世界の人間の分身が暮らすファンタジー世界で、コトナにそっくりなアーシャ姫が重い病に冒されており…

【感想】

 あれ? 『あした世界が終わるとしても』となんか、設定が… /但し最小要素で描こうとした『あした』と日野社長がやりたい事全部詰め込もうとして例の如く感情の流れはブツ切り、後付け設定が無数に出てくる『ニノ国』だと全然印象が異なる.どちらが正解ということもないが、映画としては後者の方が楽しい気がする.どうも倫理的に首をひねってしまうラストを大した考えもなく無邪気にやってる感には嘆息してしまうが、それでもそのアイデア自体は面白いし、聞いてた酷評ほど悪い映画とは思えなかった.ヒロインの声優は下手.

 

魔法少女リリカルなのは Reflection

【採点】B

【監督】浜名孝行

【制作国/年】日本/2017年

【概要】シリーズ劇場版第三作.惑星エルトリアが死に汚染されつつあった.父の病の進行を防ぐため、少女キリエは遺跡で出会った少女イリスと共に死の病を防ぐ「夜天の書」を手に入れようと地球へ訪れる.地球で「夜天の書」を持つ少女・八神はやてを急襲したキリエとイリスの前に、はやての友達にして魔導師、高町なのはフェイト・テスタロッサが立ちはだかり--

【感想】

 前後編の前篇ということもあって、とにかくノンブレーキで重量感溢れる戦闘シーンがほぼ全編に渡って展開する、そのボリュームで圧倒.『とある科学の超電磁砲』が溜めて溜めて放つあの重力感を、溜めも無しに浴びせられ続けるのに飽きが来ない不思議.前作はそこが上手くいってなかった気がするのだけど…? 時に一方的な迫力ある見せ場の乱打を浴びるのも映画の醍醐味で、本作にはそれが詰まってた.初登場時は謂わばDV被害者であったフェイトが、なのはとの絆とはまた別に居場所を見つけたことがサブプロットで描かれて一安心.

 

魔法少女リリカルなのは Detonation

【採点】B

【監督】浜名孝行

【制作国/年】日本/2018年

【概要】シリーズ第四弾.前作『Reflection』から地続きの前後編の後編.闘いの真相を知り衝撃を受ける一同の中、なのはだけは再びその天才的な戦闘力で場を切り抜け、みんなが幸せに収まる方法を探しキリエに声をかける.事態の鍵を握る少女ユーリは管理局のみんなを吸収していき……

【感想】

 話を収束させなければいけないので前作ほどのゴリ押しの楽しさは無いが、それでもあらかじめ何重にも真相を仕掛けておいた展開でアクションを繰り出し続ける.前篇の重機、後編のメカと、作り手もアクションの重量感を主眼に置いてるのは明白.行き過ぎて最後には誇張抜きになのはがガンダムに見えてしまった(戦闘服のせい)が、ここまで強い女の子像というのも面白い.

 ただ前篇のフェイトのエピソードと違って、なのはに人間味を与えるため最後に心理世界の話が出てくるのは唐突過ぎたのでは.アルティメットなんとかさんみたい…

 

センコロール コネクト』

【採点】C

【監督】宇木敦哉

【制作国/年】日本/2019年

【概要】2009年の宇木敦哉個人製作アニメ『センコロール』が、10年後に続編『センコロール2』と併せて公開されたもの。片腕に謎の生命体センコを宿す少年テツが巨大な怪獣や同様の能力を持った少年少女に襲撃され、彼に巻き込まれた少女ユキと共に油断ならない、けれど穏やかな日常を過ごす.

【感想】

 「感触」そのものがアニメーション化したような独自の味だった前作に様々な人の手が介入することで、ただのヱヴァフォロワーのような、汎用的な味わいに変わってしまった『2』が少し残念.それでも独自の味わいはまだ生きている。果たして『3』は作られるのだろうか.映画デビュー作でもある10年前の素朴な「声」をなんとか再現しようとする花澤香菜の声が今聞くと新鮮だし、まだこういう引出しあったんだ、と(じゃあ『かんなぎ』ドラマCDでのざんげちゃんの変わりようは一体)。

 

聖☆おにいさん

【採点】C

【監督】高雄統子

【制作国/年】日本/2013年

【概要】中村光の人気コミックをOVAと同スタッフ・キャストで映画化.立川で貧乏アパート生活を続けるイエス・キリストブッダの日常を綴る.キリスト役は森山未來ブッダ役は星野源.原作だと多数登場した神様系関係者の出番は無く、商店街の人々の中で生きるイエスブッダの姿が四季を通じて描かれる.

【感想】

 豪華スタッフが揃い、アニメーションとしては滅茶苦茶豊か、で、あることが欠点になってしまう.ずっと懇切丁寧にギャグの説明を聞かされている状態で、笑うに笑えない.原作と手法が合っていないとしか.コンセプトを日常系に絞ったのだから、いっそ「日本で暮らす外国人」という部分からテーマを膨らませられないかと思ったが(実際そのつもりで描かれているのかも知れないが、あまり伝わらず).

 鈴木慶一の挿入歌、星野源のEDテーマと音楽面は充実.MVみたいなEDこそが本編かも知れない.このスタッフでもっと刺激的な内容の映画が観たい.

 

『ちいさな英雄 ーカニとタマゴと透明人間ー』

【採点】

【監督】米林宏昌・百瀬義行・山下明彦

【制作国/年】日本/2018年

【概要】スタジオポノック制作による短編集。【カニーニカニーノ】サワガニの兄弟・カニーニカニーノが、小川を舞台にスペクタクルな冒険を繰り広げる。【サムライエッグ】卵アレルギーが発症した少年シュンとその母は、食べ物に細心の注意を払って暮らしていく。それでも恐れていた事態は起こり……【透明人間】透明人間の男は、人並みに生きている筈だった。けれど誰にも気付かれず、体重すらなく、僅かなミスで空高く吸い込まれるように浮き上がり……

【感想】

カニーニカニーノ】小さなモノの視点で世界を見上げたら子供はドキドキするだろうという点では正解なのかも知れないが、それ以外の意味が何もないし、小さな「家族」をここまで賛美することが今子供向けアニメでやることなのか、クレしんでさえそこら辺ちょっともう危ういのに。

【サムライエッグ】アシタカが自身の呪いと生きていく姿を宮崎駿は「生まれついてのアレルギーのような不条理」と語っていたが、正にそのようなものと生きて行くしかない母と子の姿が、希望はなくとも力強く描かれる。

【透明人間】透明であることをそのままズバリ孤独のメタファーとして描き、その表現が隅々まで行き届いてアニメーションの快楽と同時に共感からくるもの悲しさが胸を打つ。大傑作。

 結果として、ポノックの看板である米林監督が足を引っ張る形に………でも3本中2本が傑作なのは凄いこと.次は山下監督の長編が見たい.

 

『劇場版 黒執事 Book of the Atlantic』

【採点】C

【監督】阿部記之

【制作国/年】日本/2017年

【概要】3度のTVシリーズOVAを経てアニメ版『黒執事』初の映画化.怪しげな死者蘇生の儀式が行われているという噂を確かめに、シエルとセバスチャンは豪華客船カンパニア号に乗り込む.するとそこにはエリザベスが家族と一緒に乗り込んでいた。何かあってリジーを巻き込む訳にはいかない。けれど気がつけば豪華客船は蘇生した死者の氾濫と氷山衝突による沈没の二大悲劇により阿鼻叫喚の地獄絵図に.そこで暗躍する死神たちそれぞれの目的は…

【感想】

 めちゃくちゃ惜しい映画.タイタニック+ゾンビという題材は面白いし、タイタニックのパロディを例の甲板だけでなく沈没パニック含めて全部やろうという心意気も馬鹿げて良いし、中盤でのあるキャラの覚醒が本家タイタニックより進歩的な面も見せる.モブもゾンビも豪快に死にまくる.ただその題材の面白さと、実は番外編ではなく『黒執事』メインストーリーとして展開する(このアクション作画も凄いのだが)作品でもあってその如何にもマンガタッチな掛け合いの部分とが激しくミスマッチで、一本の映画を観ている気がしない.それでも鬼滅の刃 無限列車編』よりは楽しめたけれど、印象としてはとても似ている二作.

 

『LUPIN THE 3RD 峰不二子の嘘』

【採点】

【監督】小池健

【制作国/年】日本/2019年

【概要】不二子が秘書として使えていた男ランディが暗殺者ビンカムに襲撃され、自宅に火を放ち死んだ.不二子はランディの息子で病気を抱えるジーンと共に逃亡を開始しつつ、ジーンの知る秘密を狙うビンカムの雇い主と5億ドルの争奪戦を開始する.ルパンと次元も参加するが、最強にして情緒不安定なビンカムは奇怪な術を使い……

【感想】

 作画の魅力と裏腹に脚本が煮え切らない劇画調小池ルパン、今回漸く「お話」が機能した感じがする.今峰不二子を描くということはどういう事なのかを余り考えて無さそうな古臭いジェンダー観の台詞がやたら不二子の口から出てくるのはわざとなのか天然なのか、しかし最後は不二子が男を「貫く」.全体的に旧(ブロスナンより前)007の緩い世界観を基にしているシリーズである事が今回のビンカム=ジョーズでくっきりした.

 本作で小池ルパンが一繋がりの物語であることが明らかになったので、そろそろ長編をということなのかも知れないし、実際見たいが、脚本は高橋悠也さんから変えて欲しくもある…

 

『劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRYー』

【採点】B

【監督】南川達馬

【制作国/年】日本/2017年

【概要】劇場版FAIRLY TAIL第2弾.フェアリーテイルのナツ達一行は、新たな依頼として世界を滅ぼすと言われる杖:ドラゴンクライを手に入れる為、ステラ王国へ潜入する。国王アニムスの配下にして残虐なザッシュとその一味相手に苦戦しながら、囚われの魔術師ソーニャと出会うが、ソーニャにはとある秘密があった.

【感想】

 ともかく一気呵成に見せ場だけで繋いでいく、見終わって特に残るもののないB級アクションとして、監督の名前からつい過度に期待してしまった前作『鳳凰の巫女(藤森雅也監督)』より面白かった.前半のお色気要素や残虐要素が浮いてる気がしたり、終盤原作のクライマックスに繋がるという「ナツのルーツ」の一端が明かされるのにそこへ至るテーマ的な伏線が前半に無かったり、脚本はお粗末な気もするが、90分以内に納めた勢いへの好感が勝つ.同じような姿勢なら『スタンピード』や『ヒーローズライジング』の方が面白かったけどもそれはそれ.

盛夏の映画の採点

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ショートターム/ウォールフラワー


 

見づらかったので、今回からBの色を変えますね.

なぜかB=黄色で自分の能が認識していたもので.

 

GODZILLA 星を喰うもの』

【採点】D

【監督】静野孔文瀬下寛之

【制作国/年】日本/2018年

【概要】ビルサルドの裏切りに遭い、ユウコは脳死状態に.ハルオの処罰が待たれる中、メトフィエスは着々と信者を増やしていた.ハルオが唐突に現地人の双子の少女の片割れとセックスする間、メトフィエスは「ギドラ」を呼び覚ます禁断の儀式を進め…

【感想】

 CGアニメである事が裏目に出て映画史に残る退屈を刻んでしまった一作目や、メカゴジラは都市であったという斜め上の設定の特徴をただの落とし穴としてしか見せられなかった二作目の破壊的なしょぼさに比べると、ギドラのデザインは初めてCGアニメであることが活かせて、尚克つハルオの物語としてのラストシーンには微かなカタルシスが.今までで一番マシ.

 難解な語彙が多いので眩惑させられるけど、シリーズ通して映像だけじゃよくわからないと思いますが皆さん、今は驚きの事態が起こっているんですよ、と、いう説明台詞が大半なのがそもそも問題で(虚淵さんこのパターン本当多いよ)、説明なしでも驚けるようなことが画面上大して起こっていないのだ.アニメなのに.

 

モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』

【採点】B

【監督】江崎慎平

【制作国/年】日本/2016年

【概要】「モンスト」のバトルに明け暮れる高校生のレンたち.異常事態発生により、物語は過去へ遡る.小学生のレンたちは怪しい研究所に迷い込み、ドラゴンを目撃する.失踪した考古学者の父がドラゴンを求めていたことから、レンは事件に深入りし、仲間たちと旅に出る.

【感想】

 『ストレンジャー・シングス』で世界に着火したかに見えたジュブナイルなノスタルジィブーム、日本からも何か出来ないものかと思っていたけど同時期にこういう作品があったのかと.レンの気持ちにばかり寄り添うのでチーム物としての旅情には乏しいけど、東宝夏休み映画的な一定の満足感があった.

 

『ラストデイズ・オブ・アメリカンクライム』

【採点】D

【監督】オリヴィエ・メガトン

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】近未来アメリカ.人間の脳にチップを埋め込み犯罪を無くす、そんなディストピア法の執行を目前に控えた荒れた国で、犯罪者フリックが--弟の仇討ち? カナダへの脱走? 運命の女との恋? 銀行強盗? あらすじがなんなのかよくわからない.

【感想】

 必ずしも明確なゴールや演出のメリハリを持たない自由で曖昧な大作が観れるのがネトフリオリジナルの面白さなので、こういう映画も大歓迎なんですけど、それはそれとして擁護するにはあまりに面白くなかったですね.特に前半の主人公とヒロインのラブシーン、一回でいいじゃんw 演出のチグハグさによってクスクス笑える部分は多い.オリヴィエ・メガトン監督、折角のチャレンジだったのにネクストステージへ行きそびれるどころか馬脚を現してしまったのつらい…

 ※NETFLIXオリジナル

 

『泣きたい私は猫をかぶる』

【採点】B

【監督】佐藤順一/芝山智隆

【制作国/年】日本/2020年

【概要】同級生の日之出賢人に猛アタックを繰り返す無限大謎人間ムゲこと笹木美代.日之出に何度冷たくされてもめげないムゲには秘密があった.とある夜以来、ムゲはお面をかぶることで猫のタロウに変身し、そうと知らない日之出に可愛がられていたのだ.家では継母に作り笑顔でしか接せられないムゲは、いっそこのまま猫のままでいいと願い…

【感想】

 スタジオコロリドの美しい作画世界で岡田麿理脚本の全力青春劇が一気呵成に突き進む前半一時間の充実感が素晴らしかった.そこからクライマックスにかけてどんどん蛇足感が増していくのは勿体ない.あるいはいきなり猫島篇に突入しても良かったのでは.新海誠×野田洋次郎の数倍コロリド×ヨルシカの組み合わせによるケミストリーは発明だと思った.志田未来の声優業は完全に安定の域.ところでこの監督×脚本の組み合わせ、担当回とは異なるとは言え『ARIA』のケットシー回を思い出しますね.

 ※NETFLIXオリジナル

 

イコライザー2』

【採点】A

【監督】アントワン・フークワ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】タクシー運転手として生計を立てつつ、ひっそり自警活動を続けていたマッコール.読むべき本のリストも残り一冊.静かな生活は充実していたかに思えた矢先、旧友スーザンが暗殺される.誰か知らないがマッコールさんを怒らせたらただでは済まない.おあつらえ向きの嵐の日、迎え撃つ用意も周到に、奴らとの決戦が始まる.

【感想】

 雨降る夜という観賞環境が映画のクライマックスに臨場感を与える幸運なタイミング.続編なのに、金かけて嵐の街を演出してまで「敵はたった4人」というこの地味な規模感がたまらなくちょうど良かった.一作目より好きかも知れない.『ランボー ラスト・ブラッド』に見せて欲しかったのはこういう映画だったのかも知れないなぁ.

 

『Us アス』

【採点】B

【監督】ジョーダン・ピール

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】アデレートは幼い頃、遊園地のミラーハウスで鏡の中の「もう1人の自分」に出会っていた.時は経ち、夫と2人の子供に恵まれたアデレートだったが、家族旅行であの遊園地があるサンタクルーズのビーチへ再び訪れることになる.怯えるアデレートの前に現われたのは、自分たち一家とそっくりの、赤い服着た4人の人間で…

【感想】 

 ジョーダン・ピールって「とても上手くやってる松本人志」だと思うんですよね.松ちゃんがリスペクトしてたギャスパー・ノエもそうだけど、例えば本作ならベルイマンに目くばせをしたりどんなにシネフィルぶってみせても、映画の活劇的興味よりも「アイデア」の具現化の方を優先している.自分はそこまで映画原理主義ではないので本作もシュールなコントの一篇として楽しみましたが、退屈と言われても否定できない.

 

『クロール ー凶暴領域ー』

【採点】A

【監督】アレクサンドル・アジャ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】大学で水泳に打ち込むもスカラシップを逃がしかけているヘイリー.地元に嵐が来るため、どうも旧家に向かったらしい父親を迎えにいく.自分に水泳しかないのも、今家族がバラバラなのも、あの父親のせいかも知れない.旧家の地下室で再開した父娘を、浸水とワニの二大ピンチが襲う.父娘はこの「ドン底」から脱出できるのか.

【感想】

 アジャの真価を『ヒルズ・オブ・アイズ』ぶりに観た気がする快作.バリー・ペッパーの主役級抜擢も嬉しい.『イコライザー2』と言い、嵐の中というシチュエーションは滾りますね.どうしたって手作り感が表れるせいかも知れない.もしくは『フラッド』に植え付けられたフェティッシュ.限定空間での自在なアクション.素晴らしい.

 EDでSee you later alligatorかかるのは『ゾンビーバー』オマージュです???

 

デス・ウィッシュ

【採点】C

【監督】イーライ・ロス

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】『狼よさらば』から続くデス・ウィッシュシリーズのリメイク(『狼よさらば』がシリーズ作品だったとは知らなかった).外科医のポール・カージーは、もうすぐ大学へ進学する娘との別れを惜しんでいた.しかしそんな一家を強盗が襲い、妻は殺され、娘も昏睡状態に.やり場のない感情に悶々とするカージーだったが、偶然出くわした悪党を痛めつけたことから、正義の暴力の快楽に目ざめ、やがて復讐を決行する.

【感想】

 復讐へ向かう怒りも苦しみも嘆きも全部足りないからカタルシスが無い.ブルース・ウィリスがミスキャストだったのか…と思うけど別に『狼よさらば』だってチャールズ・ブロンソンそんな演技巧者だったかな?と考えると演出力の差.主演ニコラス・ケイジならありだったかも それただの『ヴェンジェンス』だけど.一般人巻き込みまくりのトイレでの攻防、黒幕かと思わせただ兄思いの良い人だったヴィンセント・ドノフリオが良い味.

 これ脚本ジョー・カーナハンなんですよね.カーナハンの演出で観たかった.

 

『魂のゆくえ』

【採点】

【監督】ポール・シュレイダー

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】小さな教会でシンプルな生活を過ごすトラー牧師は、妊娠した若い夫妻の相談を受ける.夫は地球の気候変動を憂う活動家で、この未来のない世界に子を産み落とすことに罪悪感を覚え中絶を願う.やがてトラー牧師の倫理観を何重にも揺さぶる出来事が続き、牧師は今この世界で生きる一人の人間としての己を見つめだす.

【感想】

 スタンダードサイズで質素な空間を切り取るシンプルさが、カメラが得てして豊かに切り取りがちなこの世界から本質の寂寥だけを切り取る。枠の外に神の存在を/枠の内に神の不在を証明する.ベルイマン『冬の光』の陰鬱さを現代のニューヨーク(とてもそうは見えない)に再現させて、私たち個人が余計な目眩ましなく社会や自身の諸問題と向き合うか合わざるべきかを突きつける、「個人的」な映画.大胆なラストを受け止め切れませんでした.映画に比べ自分がお子ちゃまだった.

 

チャイルド・プレイ('19)』

【採点】

【監督】ラース・クレヴバーグ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】リブート版チャイルド・プレイ.下請け工場で解雇を言い渡された工員が、子供たちの友達となるAI搭載型人形バディの一体からあらゆるリミッターを解除してしまう.バディは自分の主人アンディの心が自分から離れるに従って、リミッターの効かないままに暴走を始める.

【感想】

 オリジナル版の愛きょうが無くなった代わり設定としてはむしろ今までで一番合理的なのにいきなりチャッキーと名乗って中途半端だったり、最初の殺人が猟奇的過ぎて段階を飛ばしてるようにも見えたり(チャッキーが『悪魔のいけにえ2』の影響受けてるのは笑かす)、挙げ句クライマックスのスーパーへのブツ切りのような繋ぎ.どの方向性でも傑作になり得たのに、スタジオが編集に口出しして狙いを定めきれなかった印象を受ける.

 『アトランタ』のペーパー・ボーイが刑事役で登場.キース・スタンフィールド同様今後大量に出演作が待機中らしく、『アトランタ』の余波を知る.

 

『オールドガード』

【採点】

【監督】ジーナ・プリンス=バイスウッド

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】女戦士アンドロマケを筆頭とする少数精鋭の不死身の軍団オールドガード.新たに、米軍の女性隊員ナイルが今己の体の不死性に目ざめ、アンドロマケたちは仲間に加えようとする.一方、オールドガードの力をなんとか借りたい元CIAのコプリーは製薬会社CEOメリックに手を貸してしまう.実験目的のメリックの狂気がオールドガードに向けられ…

【感想】

 アクション映画としては非常に緩いのだけど、長寿故の苦しみや歴史との関与が次々羅列されて、伝奇的な、いやハッキリ言う、FGO的な設定の魅力は抗いがたい作品.露骨にクリフハンガーで終わるので、是非とも続編見たいところ.一番の見所はエンドロール.

 ※NETFLIXオリジナル

 

『ラ・ヨローナ~泣く女~』

【採点】

【監督】マイケル・チャベス

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】『死霊館』ユニバースの一本.1973年、L.A.ソーシャルワーカーのアンナは、母親によって監禁されている児童二名を開放する.しかし、その子供たちが揃って溺死する事件が発生.母親はアンナを「人殺し、お前のせいだ」と罵り、アンナの子供たちのもとに奇妙な泣き声と共に白い女が現われ始める.

【感想】

 基本「そっちかと思ったらこっち」パターンがメインでジャンプスケア演出が次々起こり、本家『死霊館』ほど凝り過ぎない(ビニール傘の演出は良かった).ただサービス精神豊富ゆえに、「そんなあの手この手使ってる割りに子供たちに手を出すの遅いなラ・ヨローナ……有色人種の子供はすぐ殺したくせに」と、久々にハリウッドの欺瞞を嗅いでしまった.アンナ、一言くらいパトリシアに謝ったら? パトリシアはお前のせいで子供たち殺されてんだぞ? 主人公のことが好きになれないと辛いよねという話.

 『アナベル 死霊館の人形』のペレス神父再登場.そして終盤急に登場する強キャラ、ラファエル神父が良い.戦闘能力高そう.今後活躍するんじゃないだろうか.

 

『トリプル・フロンティア』

【採点】A

【監督】J・C・チャンダー

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】民間軍事会社のポープは、かつてデルタフォースに所属していた仲間たちにコロンビアの麻薬王邸急襲、そして隠し資金の横領を持ちかける.人生に光を見失いかけていた男たち5人は作戦を決行するが、事態は予想外の方向へ.

【感想】

 序盤の坂道を使った追跡劇の勾配の捉え方、伝わる役者の息切れに「これは腕のある監督だ」と構えるも、しばしどういう方向性なのかわからない.やがて金に目が眩んだ男たちのはしゃぎようで、「あぁ、これは…」とジャンルが見えてくる.演出の映画.非常にお気に入りです.

 

『ホワイト・ボイス』

【採点】A

【監督】ブーツ・ライリー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】HIPHOPバンドThe Coupのリーダー、ブーツ・ライリーの長年温めていた脚本による監督デビュー作.カリフォルニア州オークランドを舞台に、「白人の声」を使いテレアポでサクセスする貧乏黒人と、進む格差社会の中で起こる暴動を、ナンセンスな笑いで気だるく綴る.

【感想】

 キース・スタンフィールドが主演というのもあって、『アトランタ』以降だからこそ成立するような内容、かつ今日の世界の運動とも繋がっているので、これは作られるべくして作られた映画だ、という感動があった.しかしそのシリアスな核の部分を、この上なくふざけたギミックで笑いに変えている為、まったく肩肘張らずに見れる.

 久しぶりに新鮮な映画と出会えた.

 

『見えない目撃者』

【採点】A

【監督】森淳一

【制作国/年】日本/2019年

【概要】韓国映画『ブラインド』の日本版リメイク.警察学校の卒業を控えたなつめは交通事故に遭い、弟と視力を失う.その数年後、盲者として暮らすなつめの目の前で誘拐事件が発生する.半信半疑の警察や、もう一人の目撃者であるスケボー少年と捜査を進めるなつめだが、次第に猟奇的な事件の全容が露わになり…

【感想】

 先に見た中国版リメイクがポップな余韻へ至ったのと真逆の、凄惨かつ硬質なサスペンススタイル.いかにも邦画的な鈍重な芝居や説明的な台詞もあるのだけど、それらが全部終幕へと効果的に繋がっていくので感動してしまった.犯人の陰惨な儀式が犯人へのトドメの一撃のカタルシスに繋がったり、全編を覆う苦しさが主人公の一言の為に機能したり.見終わると勇気さえ沸くのだから、これは良作.

 

『ドゥ・ザ・ライトシング』

【採点】

【監督】スパイク・リー

【制作国/年】アメリカ/1989年

【概要】ニューヨーク・ブルックリンの一角.黒人街に佇むイタリア人父子によるピザ屋.その店員ムーキーの姿を中心に、周辺に暮らす貧しく傲慢な黒人たち、なあなあで全て見過ごす警察、そしてイタリア人店主の矜持などがユーモラスに綴られる.しかしその微妙な均衡は、ある日呆気なく崩れ去ってしまう.

【感想】

 発言のストレートさに反して複雑な映画の多いスパイク・リーの代表作、初見.前半の「ここには全てがあるんだ」と言わんばかりの、老若男女溢れるストリートの日常描写の多幸感が既に一本の傑作分の満足度があり、その調和が崩れるクライマックスの「一体これをどんな気持ちで見ればいいんだ?」という複雑性に前半と正反対の質の充実がある.

 しかしこれを今の日本人が見ても(お前も日本人だろというツッコミはさておき)「やっぱり黒人は乱暴だ」の一言で一蹴されてしまいそうな怖さも感じる.『サマー・オブ・サム』の混沌、暑さに浮かれて狂う人々は本作の系譜だったのか.

 若きサミュエル・L・ジャクソンがストリートと一線を画すラジオブースの向こう側で「DJ」を演じているのも趣き深い.

 

モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ』

【採点】C

【監督】錦織博

【制作国/年】日本/2018年

【概要】13年前、いきなり東京の一部が分離し、宙に浮かんだ.空の「旧東京」と地上の「新東京」に別れた時代.新東京で暮らすカナタは、死に別れたと思っていた母が13年前からずっと旧東京にいること、そして跋扈するモンスターの存在を知らされ、ストライカーと名乗る少女ソラ達と共に冒険の旅に出る.

【感想】

 オレンジのCGアニメの堂々とした質感というか肉体の存在感と色彩の鮮やかで

くっきりとした印象が、東京の実在の土地を舞台とした世界で派手なアクションを展開するので、広瀬アリスの棒読みはさておいて目に愉しい.出来れば終盤お決まりの収束に向かわせず、実写ではなかなか出来ない東京のあちらこちらでのアクションをもっと見ていたかった.地下鉄バトルで地下鉄そのものが龍のように動いて襲い掛かってくるシーンは、数多の映画の中でも初めて見たと思う.

 

『ショート・ターム』

【採点】

【監督】デスティン・ダニエル・クレットン

【制作国/年】アメリカ/2013年

【概要】問題を抱えた10代の少年少女を擁護するグループホーム『ショートターム12』を舞台に、施設のケアマネージャーのカップルに降りそそいだとある難題と、様々な心の葛藤を抱えた子供たちの息苦しさが淡々と、しかし真に迫る切実さで描かれる.

【感想】

 この一年で誇張抜きに死ぬほど見たキース・スタンフィールドの出世作.主演はブリー・ラーソンで、ラミ・マレックまでいる、低予算の小品だけど今見ると豪華.キース演じる、年齢制限のせいでもう施設を出ないといけない少年が歌うこのフレーズが全て.「普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった…」どうかこの痛みを知って欲しい、これ以上は押しつけないから、こういう子たちがいると知って欲しい.そんな、実体験を基に本作を制作した監督の想いが伝わってくる.

 

『プロジェクト・パワー』

【採点】

【監督】アリエル・シュルマン、ヘンリー・ジュースト

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】その謎の薬「プロジェクト・パワー」を使えば5分間だけ超人能力を使えるか、体内が発火して爆死する.そんな秘薬を巡り、誘拐された娘を探す元兵士アートは暴力によって、街の異変に立ち上がる警官フランクは合法的に、ニューオリンズの街を駆け回る.やがて二人は同じ少女ロビンに辿り付き…

【感想】

 『ラストデイズ・オブ・アメリカンクライム』と微妙に被ってるし、設定もアクションもルックもまるで新味に欠ける退屈な映画である一方、このテのヒロインとしては珍しい太った黒人の貧乏で犯罪者でもある少女ロビンをエンパワーメントしようという裏テーマがラストのラストで明確に浮き上がり、そう思って振り返ると贔屓したくなる作品.「この映画を見て鼓舞される観客は確実にいるだろう」という確信を持てることはそう多くない.

 

『ウォールフラワー』

【採点】

【監督】スティーブン・チョボスキー

【制作国/年】アメリカ/2012年

【概要】ベストセラー小説を原作者自ら映画化.いつも誰かわからない「ともだち」に向けて手紙を書いている、高校で友達のいない「ウォールフラワー(壁の花)」くんことチャーリー.「でもお姉ちゃんいるし…」と思ってたけど、姉にも一緒にいることを嫌がられてしまい、学食で一人で過ごすみじめな日々が続く.けれどある日、少しの勇気を出して話しかけた先輩パトリックと、パトリックの義理の妹サムと出会えたことで、彼の青春はめまぐるしく色を変えていく.

【感想】

 これぞ青春映画というベタを繊細で優しい人間観察で我がことのように感じさせてくれる愛おしい作品.でもそれだけで終わらない哀しみにも最後には触れていく.エマ・ワトソン(吹替え藤井ゆきよ様とのことで、吹替え版も見たい)とエズラ・ミラーというハリポタユニバースの共演にもワクワク.

 

 

2017年映画ベスト/2010年代映画ベスト100への道⑧

この年の秋からNETFLIXに加入しました.まだNETFLIXプリペイドカードも近所に売っていなかったんですよね.

ランキング入りこそしませんでしたが、『オクジャ』『デスノート』『ヒットマンズ・ボディガード』あたりのネームバリューに惹かれてなければネトフリ入らなかったのです.

 

候補作は135本.

 
1位.LOGAN/ローガンジェームズ・マンゴールド

2位.沈黙 ーサイレンスー(マーティン・スコセッシ

3位.パーソナル・ショッパーオリヴィエ・アサイヤス

4位.ドリーム(セオドア・メルフィ

5位.ナイスガイズ!(シェーン・ブラック

6位.SING/シング(ガース・ジェニングス)

7位.アトミック・ブロンドデヴィッド・リーチ

8位.女神の見えざる手ジョン・マッデン

9位.エル ELLEポール・バーホーベン

10位.ハードコア(イリヤ・ナイシュラー)

 

11位.ザ・ベビーシッター(マックG)

12位.マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)(ノア・バームバック

13位.クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的(アレックス・デ・ラ・イグレシア

14位.新感染 ファイナル・エクスプレス(ヨン・サンホ

15位.キングコング 髑髏島の巨神(ジョーダン・ヴォート=ロバーツ

16位.わたしは、ダニエル・ブレイクケン・ローチ

17位.夜明け告げるルーのうた湯浅政明

18位.この世に私の居場所なんてない(メイコン・ブレア)

19位.昼顔(西谷弘)

20位.ジェラルドのゲーム(マイク・フラナガン

 

 好きな監督をTOP3に並べられるのは気持ちいいですね.

それぞれのスタイルが物語にしっかり寄与して昇華されていました.バーホーベン『エル ELLE』や、もしかしたらガース・ジェニングス『SING』も.演出だけ先走ってキャラの生活が無いのもそれはそれで寂しい.逆に演出の映画として、実はそこまでヒューマンではなく「走る」「歩く」動作そのもので全編を彩った『ドリーム』は野心作であったと思います.

『ナイスガイズ!』はこれが巧い映画だの見本みたいだなと、そういう映画じゃないのにちょっと泣きかけましたね.

マックGがNETFLIXにあまり綺麗に収まった『ザ・ベビーシッター』も何気に衝撃作でした.

後に傑作『ドクター・スリープ』を生み出すマイク・フラナガンのネトフリ映画『ジェラルドのゲーム』が変則サスペンスというジャンル物を通して描いたものも、今の世の中決して見過ごせないと思います.

 

以下、ベスト候補です

 

美女と野獣
ベイビードライバー
マイティ・ソー バトル・ロイヤル
サバイバル・ファミリー
レゴバットマン ザ・ムービー
帝一の國
美しい星
22年目の告白ー私が殺人犯ですー
ジーサンズ はじめての強盗
ジョン・ウィック:チャプター2
ノーゲーム・ノーライフ ゼロ
スパイダーマン:ホームカミング
ワンダーウーマン
劇場版Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い
新感染 ファイナル・エクスプレス
散歩する侵略者
ダンケルク
アフターマス
亜人
劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~
Fate/stay night [Heaven's feel.] 第一章「presage flower」
バリー・シール/アメリカをはめた男
ブレードランナー2049
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
予兆 散歩する侵略者
gifted/ギフテッド
勝手にふるえてろ
ありがとう、トニ・エルドマン
A GHOST STORY
Death Noteデスノート
花に嵐

 

響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~』は総集編のようでTVシリーズの換骨奪胎映画として賑やかな快作.

第三の映画の採点

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Twitterを辿るのやや面倒なので、鑑賞直後の感想をまとめて残しておきたくて 備忘録として書き始めたシリーズでしたが、今回前半の感想がまとめて消えてしまって、鑑賞直後の感想を取り戻そうと取り繕って書き直しています.

それでもほんの一、二週間の差なのに、自分の感想なのに違和感が.

 

『響 ーHIBIKIー』

【採点】

【監督】月川翔

【制作国/年】日本/2018年

【概要】小説誌編集部に届いた、謎の作家「鮎喰響」の手による天才的な小説.編集者・花井ふみは人気小説家を祖父に持つ女子高生・凛夏を介して響との遭遇を果たすが、立ちふさがる障害に平気で暴力を振るう唯我独尊少女・響はコントロール不能な存在で…

【感想】

 絶対的長所である響というキャラを立て過ぎるあまりに多くの短所も内在してしまった、かなりアンバランスな印象のある原作漫画を、おいしいところだけ切り取って響爆発のサスペンスで引っ張り、話のピークで綺麗に切り上げる.完全に実写化の大勝利.初めて作品を見た月川監督、カメラワークの愉快さに留まらず、平手友梨奈という飛び道具を活かすために、むしろ助演陣の魅力に力を注いでいる演出も心憎い.

 

『A GHOST STORY』

【採点】

【監督】デヴィッド・ロウリー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】ある夫婦が暮らしている.旦那が事故で死亡する.旦那の魂は、シーツをかぶって目の部分に穴の開いた簡易な幽霊となって、家に留まる.やがて膨大な月日が、物言わぬ哀しげな幽霊の前を通り過ぎていく.

【感想】

 あまりに評判が高く、その監督の作品が好きなことも既に判っていて、あまりに好みと合致しそうな作品だったばかりに見るタイミングが遅れるに遅れ、結果いざ鑑賞しても「なるほどねぇ」止まりになってしまう。そんな経験ありませんか.僕はあります.『アンダー・ザ・シルバーレイク』と本作です.ただ『アンダー~』は映画史には残らないと思うけど、本作は残ると思う.

 

『花に嵐』

【採点】

【監督】岩切一空

【制作国/年】日本/2017年

【概要】大学に入り、映画研究サークルに入部しようとした「僕」は、いきなり「カメラ」を渡され、自分なりに回すよう先輩に命じられる.何も説明されないままカメラを回す僕は、次第に画面の隅に映り込むとある少女が気になり…

【感想】

 監督自身が露悪的な被写体となる白石晃士イズムのモキュメンタリーで大学サークルミステリー を描きながら、そこいらのメジャー邦画より遥かにクリアな映像と確信犯でトリッキーなカメラワーク、失敗気味だけどMGS的なステルスゲーム要素、ついでに無名ながら可愛い女優陣(監督マジで役得なんだよな…)と目に飽きがこないエンタメ度の高さ.あまりに調子に乗りすぎてエンドロール後のネタは蛇足.

 

Ryuichi Sakamoto:CODA』

【採点】

【監督】スティーヴン・ノムラ・シブル

【制作国/年】アメリカ・日本/2017年

【概要】坂本龍一の5年間を追うドキュメント.社会問題へのコミットやガンの闘病、世界的な映画への劇伴作りと、個人的な新作アルバムへ込めた実験性の模索などの様が綴られる.

【感想】

 主題が分かり辛いのは難点だが、説明しないのは美点だろう.前半、坂本が『惑星ソラリス』を鑑賞しながら、タルコフスキーの映画の自然音は実は調整されきった一枚のアルバムのようである、彼のようなアルバムを作りたいと野心を零す.そして自然の音を集め始め、映画全体が人生を音楽に集約するような音像を残していく.

 

L.A.ギャングストーリー

【採点】

【監督】ルーベン・フライシャー

【制作国/年】アメリカ/2013年

【概要】1940年代、ミッキー・コーエン率いるギャングに支配されたL.Aで、ジョン・オマラ巡査部長は警察組織にも内密でギャング壊滅の為のチームを結成する.暴力VS暴力、戦いの行方を豪華キャストで綴る.

【感想】

 ルーベン・フライシャー監督、天然で無垢なのか意図的に無垢を装っているのかギリギリのラインを渡ってきたこの人らしく、まるで気付かないような素振りであまりにも堂々と『アンタッチャブルごっこに興じ、不正と巨悪に真っ向挑む男たちを讃える.手放しで楽しいタイプの作品.豪華キャストを若干持てあましてる印象も.

 

ドラゴン危機一発

【採点】E

【監督】ロー・ウェイ

【制作国/年】イギリス領香港/1971年

【概要】親族を頼ってタイの製氷工場まで訪れたチェン.しかし、腐敗した工場長らは横領に気付いたチェンの親族を次々殺害していく.チェンの怒りの導火線に火が点くまでは、かなり長い!

【感想】

 ブルース・リー伝説の一本とは言え、現場の混乱が続き監督も定まらず時代設定さえ統一出来なかったという逸話もあるだけあって、いくらなんでも映画としての形を成していないように思う.逆に普段見ている他の映画はどんなに出来は酷くても、映画としての形は成しているよなと妙に感慨を覚える.見え見えのハニートラップに気付かず綺麗にひっかかる流れは逆に初めて見たので、滅茶苦茶面白かった.

 

死亡遊戯

【採点】

【監督】ロバート・クローズ/ブルース・リー(ノンクレジット)/サモ・ハン・キンポ-(ノンクレジット)

【制作国/年】イギリス領香港・アメリカ/1978年

【概要】トラック・スーツ姿の男が五重の塔を登り、一階ごとに敵を倒していく。この強烈なクライマックスだけ監督してブルース・リーが亡くなった.後を継ぐ男たちがなんとか一本の映画に仕上げたのが本作.

【感想】

 この無茶な企画にもかかわらず『ドラゴン危機一発』より余ほどバランスが取れて見えるのはゴールが見えているからなのか.しかし結果としてあたかもブルース・リーの死はウソであったかのように見えるマジック.究極のロマンチックムービーかも知れない.

 

『蒼き鋼のアルペジオ ーアルス・ノヴァーDC』

【採点】

【監督】岸誠二

【制作国/年】日本/2015年

【概要】TVアニメ劇場版二部作の前篇.こちらはTVシリーズの総集編がメインとなる.地球温暖化の影響で陸地をほぼ失った人類の前に、旧大戦の軍艦の姿をした「霧の艦隊」が出現.少女の姿にも代わる彼女らの一人・イオナは人類の側につき、元海軍士官候補生・千早群像らと共に霧の艦隊に戦いを挑んでいく.

【感想】

 総集編部分をかなり手早くまとめて、オリジナル展開をスタートさせ、ここから本格的に新しい敵との戦いが…という部分まで.TVシリーズの時点で脱落している身なので面白がるにも限界はあるけど、サービス精神たっぷりなのだろうなとは伝わってくる.

 

『蒼き鋼のアルペジオ ーアルス・ノヴァーCadenza』

【採点】

【監督】岸誠二

【制作国/年】日本/2015年

【概要】霧の艦隊総旗艦代理としてメンタルモデル・ムサシが全人類に宣戦布告する.かつて慕っていた群像の父・翔像が軍人に殺された恨みを人類に向けているのだ.イオナと群像、そして戦いの中で増えていった仲間たちはムサシを止められるのか…

【感想】

 こちらは完全新作.相変わらずお話にはノレないまま、でもバトル演出はそこそこ楽しめた.しかし原作の印象が最後まで結びつかないアニメだ.声優陣がほぼアイドルマスターシンデレラガールズで声を聴く楽しさは大きかった.

 

『チャーリング・クロス街84番地』

【採点】

【監督】デヴィッド・ジョーンズ

【制作国/年】イギリス・アメリカ/1987年

【概要】第二次世界大戦後.NY在住の口うるさい女流作家が、ロンドン・チャーリングクロス街84番地にある古書店稀覯本を注文したことを機に、店主ら古書店の人々と文通を交わすことになる.いつかその店に足を運びたいと願いながら、夢は夢のまま…

【感想】

 往復書簡形式だという原作に忠実なのか、ドラマ的な波はなくひたすら手紙のやりとり、近況報告が続く不思議な構成の映画.でもその顛末のほろ苦さは冒頭で提示されている為、口の悪い女作家が文通を楽しむ様が儚く愛おしい.アン・バンクロフトの名演.そして若い(といっても老境にさしかかりかけてる)アンソニー・ホプキンス

 

関ヶ原

【採点】

【監督】原田眞人

【制作国/年】日本/2017年

【概要】豊臣秀吉が死に、五大老筆頭徳川家康が本性と野心を露わにした.今こそ理想の世を成す為、石田三成は名将・島左近、盟友・大谷刑部らと共に決起する.「不義が正義に勝ってはなりません!」.その頃、小早川秀秋が辺りをうろちょろしていた.

【感想】

 原田作品いつも感想同じだけど、「台詞が聞き取れない事を除けば面白い」ので誰かなんとか監督を言いくるめられないものか.もっと役名テロップ入れて良かった気がするな.伊賀忍者の暗躍を取り入れることで女優陣を単なるお飾りにしなかった采配は賢明.大谷刑部の見た目がひたすら格好イイ.クライマックスが弱いのは史実のせい.

 

『おんなのこきらい』

【採点】D

【監督】加藤綾佳

【制作国/年】日本/2015年

【概要】「可愛い」にとりつかれた拒食症OLキリコの、かなわぬ恋と新たな出会いを、音楽ユニットふぇのたすが劇中世界に現われ演奏し寄り添う姿も込みで可愛く綴っていく.主演は森川葵

【感想】

 いや、今時ただ男に媚びるためだけにこれだけの「可愛い」を収集してる女の子一般的じゃないでしょ…普通、自己実現だと思うんだけど.主人公の人物像が明解なようで、実は偏見に基づいたふわっとしたものになってる.ポップに始めながら、終盤長回しで辛気くさく「本音らしきもの」を吐露する流れも安易過ぎる.森川葵が見事なキャスティングだけに、勿体なかった.

 日本のインディーシーン、岡崎京子の漫画あたりまでで恋愛観が停止したままになってる気がするのですが.

 

『葛城事件』

【採点】

【監督】赤堀雅秋

【制作国/年】日本/2016年

【概要】次男が無差別殺人を犯した葛城家.絶対君主的な振舞で家族を抑圧し続けた父親を中心に、死刑制度反対を訴え塀の中の次男と結婚すると宣言する女弁護士を通して、葛城家の過去と現在が浮かび上がっていく.

【感想】

 地獄エンターテイメント.赤堀雅秋の人間観察眼がこれでもかってくらい人間の嫌な部分、直視したくない部分をえぐり出していく.ただ面白さ(と言ってよければ)がシーン単位で完結しているようで、構成としては存在している映画全体のうねりに繋がっていかない、最近の邦画にありがちな物足りなさが少しあった気が.やはりどこか演劇的なんだよなぁ.

 

クレイジー・リッチ!

【採点】

【監督】ジョン・M・チュウ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】ハリウッドメジャーでありながらアジア人キャストで固め、NETFLIXからの誘惑も拒み、全米興行収入第一位を成し遂げた記念碑的作品.シンガポール華僑の息子と交際するニューヨーカーで中国系アメリカ人レイチェル・チュウが、シンガポールでクレイジーな金持ちたちとのカルチャーギャップに遭遇する.

【感想】

 その実績は讃えられるべきだけど、本編の半分ただ色んな人に出会っていくだけの単調な展開、決して巧いとは言えないし、アジア映画のロマコメの水準からしても微妙な出来なのに、これでハリウッドで絶賛されてしまう事がむしろ哀しいというか、「ハリウッドの中のアジア人」がやはり浮いた存在であることの証左のようだった.

 

『フェイシズ』

【採点】A

【監督】ジョン・カサヴェテス

【制作国/年】アメリカ/1968年

【概要】ジョン・カサヴェテスが私財を投げ打って作った映画.崩壊を迎える夫婦の36時間の出来事を描く.娼婦役の監督夫人ジーナ・ローランズは勿論、それ以上に重要な妻役でロバート・アルトマンの秘書(!)リン・カーリンが熱演.

【感想】

 『オープニング・ナイト』は若干胃もたれしてしまったのだけど、本作は構成が明快で見やすい.役者の生っぽさ全開(それでいて表面的でない、というのはとても難しい)の姿を執拗に捉えるようで、狙い済ましたショットの挟み方、編集のメリハリがとにかく巧いんだなというのをようやく理解出来たかも.あの強烈な「咳」.

 

ご注文はうさぎですか?? ~Dear My Sister~』

【採点】C

【監督】橋本裕之

【制作国/年】日本/2017年

【概要】「木組みの家と石畳街」で喫茶ラビットハウスに住み込みで働いていたココアは、夏休みに母と姉の待つ地元のパン屋へ帰郷する.一方、残されたチノは過去のことを振り返っていた.花火大会の日、みんなは再び集えるかな…?

【感想】

 TVシリーズは世界観とリアリティラインが掴めないもどかしさと相俟って「何回見ても寝てしまう」因縁の作品なので、全部すっ飛ばしていきなり劇場版見ました.副監督にかおり監督も投入されて、完璧な可愛いを表現する豊かなアニメ世界はやはり凄い.

 『のんのんびより』の劇場版もそうだったけど、折角どんなに本編が起伏に乏しいゆるふわでも最後にそれなりの感慨をもたらせられる構成を用意してあるので、どうせならもっと中身も膨らませて長尺であれこれやればいいのになぁという勿体なさを少し感じる.『けいおん!』の冒険に続いてくれないのかな…

 

『CLIMAX クライマックス』

【採点】A

【監督】ギャスパー・ノエ

【制作国/年】ベルギー・フランス/2018年

【概要】1996年.舞踏団に参加した若きダンサーたちが、冬の雪山の合宿所に集まる.加熱する超人的なダンス.打ち明けられるセンシティブな思い.そして、みんなが食べるサングリアに密かに混入していたLSD.やがて一同に薬が効き始め、地獄のダンスパーティーが始まる.

【感想】

 一見やったもん勝ちのアイデアを好き勝手やっているようで、だったらもっと(これ以上に)露悪的にも出来たのに、終盤ののたくりうつようなカメラワークは実は観客の悪趣味とも一線を引いている.『アレックス』を例に出すまでもなく、そのカメラの導線にも意味はあると思うのだが.なので何を見せられているのか本当にわからない.或いは、LSDを服用すれば見えてくる…?(そこまでだ)

 

『ミッドナイト・ラン』

【採点】A

【監督】マーティン・ブレスト

【制作国/年】アメリカ/1988年

【概要】腐敗した警察にいやけがさし現代の賞金稼ぎとして生きるロバート・デ・ニーロが、正義感から賞金首となってしまった会計士の男を目的地まで届けるため、FBI、賞金稼ぎ、ギャング、あらゆる妨害に追跡されながらアメリカ横断逃避行の旅に出る…

【感想】

 いかにも80年代っぽい緩やかなノリでありながら、やはりいかにも80年代っぽい丁寧でウェルメイドな脚本.クライマックスの一斉問題解決の「わっ」となる瞬間やラストの幕引き等、色々と自分が見てきたハリウッド映画に影響与えてるんじゃないかと感じて、初見なのに他人の気がしない作品.

 

『灼熱の魂』

【採点】

【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ

【制作国/年】カナダ・フランス/2010年

【概要】カナダで暮らす双子の姉弟は、母の遺言状を別々に渡され、それぞれ「兄」と「父」に渡すよう告げられる.彼らは難民の子供であった.そして母ナワルの物語が、内戦真っ只中のレバノンから始まる.そこに隠されていた想像を絶する真実とは.

【感想】

 大作作家になる以前のドゥニ印の、なんでもない場面でも欠かさない緊張感に振り回されていると、実はラストの意味がイマイチピンとこなかった.もしかして頭がそれを理解したくなかったのかも知れない.それほど「うへぇ」となるオチなのでかなり覚悟して見て欲しいのだけど、一方に難民たちと共存する現実があり、そこにレディオヘッドが平然と混入してくるカナダの成熟も知れる.

 

銀魂

【採点】C

【監督】福田雄一

【製作国/年】日本/2017年

【概要】空知和秋の人気ギャグ漫画を実写化.宇宙人=天人の襲撃を受け、過去と未来が同居するSF都市・江戸を舞台に、よろず屋三人組含むお馴染みの面々がドタバタギャグを繰り広げ、暗躍する辻斬りの背後に潜む陰謀に立ち向かう.

【感想】

 「銀魂を実写映画化するにあたってしなくてはいけない100のこと」があるとして、そのすべてに手を伸ばし、どれも10点満点中3点くらい、といった印象.100のうち30くらいにしか手を伸ばさない実写化が多い中で、それは美点だと思う.

 努力と工夫の跡は目立つも、しかしその工夫が足りていない歯痒さ.せめて予算が5倍あれば見栄えもよく、ギャグとの緩急も決まっただろうに(でも寒い効果音が台無しにしてるからどうかな).1人除いて役者はみんなハマってる.菅田将暉は凄い.肝心の小栗旬は何言ってるか聞こえないし演技に照れがあってダメでした.

 例えば、なんでもない場面でも江戸の遠景にずっと都市部をCGで合成しておくとかだけでも免れたチープさはあったのでは.

 真撰組をキチンと紅桜篇でも活躍させている分、アニメ版新訳よりも脚色は良い.