アニメ映画の採点 その2

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「映画の採点」第7弾、「アニメ映画の採点」としては第2弾となります。

前回こちら。

 

pikusuzuki.hatenablog.com

 

 10年分の見逃しアニメ映画を落ち穂拾いしようと始めて、流石に前回と合わせて40本も見ればそれなりにフォロー出来るだろうと思ったのですが、まだまだ終わりそうになく。

 採点は『アニメ映画の採点』シリーズ内での相対的なものなので、若干甘め。と言いつつ今回平均点低いのですが、つまりは長年スルーしてきた作品群で、あまり積極的に見たかった訳ではないタイトルが多いので、イコール日本のアニメ映画が凄く駄目ということでもないのです。と思いたい。

 

『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』

【採点】B

【監督】大森貴弘・伊藤秀樹

【制作国/年】日本/2018年

【概要】緑川ゆき原作、人気アニメシリーズ『夏目友人帳』初の劇場版。夏目の心中に様々なものが去来していた。嘘をつかれたまま別れた友人との再会、レイコを知る妖怪、レイコを知る人間との出会い。そんな中、タキが記憶を失い、ニャンコ先生が3つに分裂する奇事が発生。夏目はことの正体を探ろうとするが……。

【感想】

 シリーズを総括し夏目、レイコそれぞれの人生に触れ、(的場一門除く)オールスター映画にしつつと、いつもの『夏目』を一廻り大きな円(縁)で包んで改めて描きだす丁寧な劇場版.複雑に絡まってるように見えた筋が気付けばスッキリしている村井さだゆき脚本が光るけれど、もっと暴れてくれても良かったような。

 原作が持つ「妖が出現した時のゾワッとくる感じ」をアニメでも味わってみたいなぁと100回くらい言ってる。

 

『劇場版 はいからさんが通る 後編~花の東京大ロマン~』

【採点】

【監督】城所聖明

【制作国/年】日本/2018年

【概要】伊集院少尉の生存を諦めきれない紅緒は、正体が元日本兵だと噂の馬賊を確かめに満州へ向かう。しかしその正体は伊集院の戦友・鬼島だった。日本に引き返した紅緒は、次第に出版社の上司で女嫌いの青江冬星と惹かれ合う。そんな折、伊集院にそっくりな男がロシアからの亡命貴族として日本にいることが判明し……。

【感想】

 前作から監督が交代、脚色は引き続き古橋監督。前作は明らかに尺に合わない詰め込みっぷりで、だからこその異常なほどのメリハリが面白かった。今回は話そのものはすんなり飲み込める一方、「ただあらすじを眺めている」といった地味さが否めず。

 何より紅緒の「はいからさん」といった響きに相応しい快活さが、冒頭の満州を最後にあまり感じられなかったのが物足りない。

 

『パンドラとアクビ』

【採点】

【監督】曽我準

【制作国/年】日本/2019年

【概要】『モンスターストライク』に登場するパンドラと、『ハクション大魔王』に登場するアクビが共演する特別篇二本。保安官と盗賊団がいる西部劇の街、精霊と怪獣の噂がある街、2つの街をパンドラとアクビが旅していく。

【感想】

 タイトルを飾るにしては知名度怪しくないかという二人。実はタツノコプロのもっと有名なキャラたちが本編には沢山混ざっている。スタジオは違えど、クレジットされる見覚えある会社名からしてTRIGGERの一連の「懐かしいタッチ」のアニメのあのラインで作られてるんだと思う。

 丸くて柔らかくて愛らしいキャラがよく動くが、あまりにこの世界、この物語へのとっかかりがなく、「アニメらしいアニメをやってる俺たち」というスタッフの自意識以外に感じ取れるものがない。

 

『えいがのおそ松さん

【採点】C

【監督】藤田陽一

【制作国/年】日本/2019年

【概要】同窓会に呼ばれたおそ松さん達。二十歳越えて職歴ゼロでニートかつ童貞、実家暮らし。その事実がバレた途端同級生たちにバカにされ、悔しさから荒れる6人だったが、翌朝目ざめると高校時代の自分たちがいる「思い出の世界」に飛んでしまう。誰かの未練によってここにいるとしたら、それは一体誰の……?

【感想】

 意欲作であることは間違いないのだけど、面白いかというと非常に微妙で、まず冒頭のおそ松さんたちが見下されるターンの時点ですでに「これいくつの設定?」「他の同窓生みんな成功者なの?」「属性いじりやり過ぎてて同窓生よりスタッフの見識の方が怪しく感じて乗りきれない」といった欠点が続出。例えばトト子を「謙遜しない美人」として描くのにブスをバカにするって、実はトト子のことも描けてない、ということに気付いているのかとか。

 オチも、感動の為にそういうキャラの消費をするのは個人的に物語倫理が雑過ぎると思う。いくらでも濁しようはあったし、濁せてたとしても「もっとアナーキーなアニメだと聴いてましたが、普通ですね」となってしまう。

 それでも「アニメという偶像とファンの関係性」を描いた特殊な作品として記憶に残る。

 

『劇場版 艦これ』

【採点】C

【監督】草川啓造

【制作国/年】日本/2016年

【概要】深海凄艦との戦いを繰り返す艦娘の吹雪たち。その最中、敵地で「謎の声」を聴くようになり、かつて沈んだ筈の仲間・如月が生還する。姉妹艦の睦月は喜ぶが、加賀は自分たちが繰り返してきた戦いの仕組みに気付いてしまう。そして吹雪はこの終わりなきサイクルの中心に、「自分」がいることを突き止め......。

【感想】

 話なんか作りようのないゲームを物語に仕立てる為、物語世界内にまずゲーム的な「設定」があり、その設定にキャラ達が気付いてしまうことでメタ的に絶望し戸惑うという構成が面白く、それ以上突っ込むと原作の全否定になってしまうのでその手前で切り上げるのが物凄く消化不良ではある。

 想像以上に作画アニメで、手描きの爆炎の迫力に上がる。話としては『アルペジオ』より断トツ空虚だが、アニメとして好みなのはこっち。

 

『劇場版Infini-T Force / ガッチャマン さらば友よ』

【採点】D

【監督】松本淳

【制作国/年】日本/2018年

【概要】タツノコプロ70年代作品『科学忍者隊ガッチャマン』『新造人間キャシャーン』『破裏拳ポリマー』『宇宙の騎士テッカマン』揃い踏みのタツノコアベンジャーズとして制作されたTVシリーズ劇場版。ガッチャマン生みの親南部博士、ガッチャマンNo.2の男「コンドルのジョー」を相手に、ガッチャマンたちは己の正義を追求する戦いに挑む。

【感想】

 『ガッチャマンクラウズ』との双子的存在であるというTVシリーズは気になるも未見(スタッフも異なる)。とにかく和製CGアニメが苦手ですという身も蓋も無さを正直に告白した上で、アニメ見る時にある「作画が動くのを見る愉しさ」が得られない上に、せっかくヒーロー大集結の話なのに全然ユーモアが感じられず、元作品を知らないのでありふれたキャラが揃った以上の感慨はなく、また予算の都合か背景が限られているので印象が固い。話も頭に入ってこなかった。

 

『劇場版 黒子のバスケ LAST GAME

【採点】

【監督】多田俊介

【制作国/年】日本/2017年

【概要】『黒子のバスケ』後日談番外編『EXTRA GAME』をアニメ化した作品。アメリカから極悪ストリートバスケチーム・ジャバウォックが来日。その日本人への民族差別的な発言、挑発は度を超している。これを迎え撃つため、相田監督はキセキの世代に火神たちを加えた即席チームVORPAL SWORDSを結成。かくして日米決戦が始まる。

【感想】

 民族差別的な台詞を雑に描いた他国のキャラに雑に吐かせるという民族差別に対してあまりに無防備で呆気に取られる。バスケシーンもTV版(2期だけ見ました)の方が迫力あって面白い。このラストにするならもっと黒子と火神を前面に出した話作りが必要。赤司と敵リーダーの「未来視合戦」というトンデモネタを視覚的に面白く工夫出来てない辺りが全て。

 

『劇場版 七つの大罪 天空の囚われ人』

【採点】D

【監督】阿部記之西片康人

【制作国/年】日本/2018年

【概要】国王の誕生日を祝うため幻の食材・天空魚を探しにきた七つの大罪。しかしメリオダスは誤解から空を飛ぶ島「天空宮」に囚われてしまう。その頃、七つの大罪の前にはメリオダスそっくりな少年ソラーダが迷い込む。誤解が誤解を生む中、天空宮の禁忌の封印を解こうと「黒の六騎士」なる集団が暴れ出す。

【感想】

 王道少年漫画をストーリーテリングの巧みさで魅せていくタイトル、という印象だった『七つの大罪』。流石に映画では尺が足らず凡庸な話しか出来ず、決して満足はいかなかったヒロアカ劇場一作目に比べても作画的な見せ場はなく(平均すれば本作の方が丁寧だと思うけど)、A-1のアニメとしてもFGOのCM30秒に劣ってしまう。せめて話の独自性で勝負して欲しかった。何も悪くないけど、何も面白くない。

 

傷物語 Ⅱ 熱血篇』

【採点】B

【監督】尾石達也新房昭之

【制作国/年】日本/2016年

【概要】奪われた吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの体のパーツを取り戻す為、暦は三人のヴァンパイアハンタードラマトゥルギー、エピソード、ギロチンカッターと戦う事になる。しかしその決戦の場には悉く羽川翼が居合せ……?

【感想】

  シャフトの空間連続性をブッタ斬っていく演出は大変苦手なのですが、『傷』は作り込んだ舞台美術を活かすので空間が断絶しない。それだけで大分見易い上、今回は計三回もバトルシーンが挟まれるので楽しめた(もっと見たかった)。話はお飾りに過ぎず、お飾りの映像を全面に出してくる人を喰った作りで、羽川との会話シーンとかは正直しんどかったけれど、映画館で観たらなかなか没入出来たのではないかと思う。

 

傷物語 Ⅲ 冷血篇』

【採点】

【監督】尾石達也新房昭之

【制作国/年】日本・2017年

【概要】かくしてドラマトゥルギー、エピソード、ギロチンカッターを迎え撃った暦。無事に満足な五体を取り戻したキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと束の間の平和な時を過ごすが、「吸血鬼を助けた」、自分がしたことの真の意味を突きつけられる。

【感想】

  奇しくも、「日本の独りよがりのオリンピック」という時代を先読みしたような虚しい映像万博が展開するクライマックス。原作にそんな匂いはゼロなんじゃないかと思うが、尾石達也の映像遊びが恐らくは偶然に意味を帯びてしまった面白さ。おっぱい云々のくだりが相変わらず気持ち悪くてドン引きするも、人体破壊ショーで取り返した。

 

『バジャのスタジオ~バジャのみた海~』

【採点】B

【監督】三好一郎

【制作国/年】日本/2020年

【概要】京都アニ自主制作アニメ『バジャのスタジオ』第二弾。アニメ会社「KOHATAスタジオ」で暮らしているバジャ、アヒルのオモチャのガーちゃん、アニメヒロインのココ、意地悪なギー。ここで働くカナコ監督たちスタッフに見つからないよう密かに遊んだりバトったりする一同だったが、ある日バジャはカナコが「海に行きたい」と嘆いているのを耳にする。

【感想】

 前作がアニメスタジオ賛美の自作自演的な空気で観客不在に感じられた一方、二作目にしてだいぶ複雑なメタ構造の話になってるのを、可愛いアニメでうまいこと誤魔化される。面白かったです。京アニのスケジュールもそれなりに闇だが『SHIROBAKO』ほどめちゃくちゃな状況にまでは陥っていなさそう、という塩梅がリアル。

 まずバジャ(マスコット)、ガーちゃん(リアルおもちゃ)、ココとギー(アニメキャラ)と、存在する位相がバラバラなので『トイ・ストーリー』とは似て超非なる。

 脚本がクレジットされてないのがとても気になるけれど、三好監督の照れ隠しだったのだろうか.

 

MUNTO

【採点】

【監督】木上益治(=三好一郎)

【制作国/年】日本/2003年

【概要】天空に浮かぶ浮島たちの世界。地上で生きる現代人には心の力「アクト」が無い為にそれを視認出来ないが、浮島でもアクトは枯渇しつつあった。結果、連合国はアクトを流出させている魔導島を襲撃し、地上へ落とそうとする。魔導国の国王ムントは、地上に生きながらアクトの力を持つ少女ユメミに協力を求めようと旅立つ。

 自分だけが幼い頃から空に浮かぶ島を見ていたユメミは、その夢だと思っていた世界から飛来したムントに動揺し……。

【感想】

  京アニプロジェクト第一弾として制作されたOVA。二年後に制作された続編『MUNTO 時の壁を越えて』と合わせて2009年のTVアニメ『空を見上げる少女の瞳に映る世界』の前半部分として再構成され、TVアニメの後半部分は『映画 天上人とアクト人最後の戦い』として劇場公開された。

 TVシリーズOVA二作目、劇場版も既に観賞済みで、およそ10年越しにやっと第一作を観賞(購入しました)。

 TVシリーズ見た時の「変な構成だなぁ」という謎がようやく解ける。

 空を見ていた少女と、空飛ぶ島の国王たる少年のガール・ミーツ・ボーイ。で、あるにも関わらず、物語序盤で最初の事件として描かれるのは、ユメミの友人で、少し頭の弱そうな少女スズメと隣り街の不良少年との駆け落ちの行方。

 このアンバランスがTVアニメの序盤としては謎であったが、一本のOVAのクライマックスとして見ると彼岸と此岸を渡るユメミの覚悟への後押しとして効果的で、他にストーリーの類例が思い浮かばない味わいがある。

 TVアニメにする際はやはりまずはユメミ視点でのみ物語を構成して、浮島が実在する!って驚きは後半にとっておくべきだったのでは? と思うけれど、OVAとしてはこれで正解だったんだなと、TV版より楽しめた。

 

名探偵コナン 紺青の拳』

【採点】

【監督】永岡智佳

【制作国/年】日本/2019年

【概要】シンガポール名所、マリーナベイ・サンズで殺人事件が発生。やがてその地へと秘宝「紺青の拳(フィスト)」を求めて怪盗キッドが、強敵ジャマルッディンとの勝負を求めて京極真が、真を応援して園子と付き添いのコナン達が訪れる。自分の素性を蘭にさえ偽ることになったコナンは不自由な状態で殺人事件の謎を追い、キッドは秘宝強奪を目論むが、裏では連続殺人を遥かに凌ぐ巨大な陰謀が動き出していた。

【感想】

 『純黒の悪夢』以降(それ以前のコナンをしばし見てないので違うかも)ハリウッド的というよりハリウッドでもやらないようなアニメ的嘘を用いたド派手アクションをいよいよ本格的に煽る演出で使い始めたコナン。

 「今後シンガポールを舞台にしたどんなハリウッド映画が出てこようが本作を越えさせない」という、邦画でこれだけのスペクタクルを見せてくれるなら大勝利でしょう。悪役の小物に「ナカトミ」を出してる割りにダイハード感は薄かったので、恐らく当初の脚本ではホテル内部でもあれこれアクションしたんじゃないか。

 3分の1くらい英語台詞なので、イントネーションを重視したキャスティングになってるのも嬉しい。『PET』の中国語とか『ゴールデンカムイ』のロシア語とか、露骨に日本人の発音になっちゃってるとちょっと冷めたもんね。

 

 『劇場版 薄桜鬼 第二章 士魂蒼穹

【採点】

【監督】ヤマサキオサム

【制作国/年】日本/2014年

【概要】伝奇ファンタジーの世界で新選組を描いた人気乙女ゲーム劇場版後編。生きた屍のような「羅刹」を従える鬼たちと戦う新選組は、少女・千鶴を守る為自らもまた命短い鬼と化す。次第に一人又一人と息絶える中、千鶴は土方歳三を追って五稜郭へ向かう。

【感想】

 台詞の中身、或いは順番を入れ替えていくだけで大分違うんじゃないか、そういう些細なバランスの崩れによってひたすらダイジェストめいており、気持ちの流れが生じない。唐突に寝返り唐突にでも裏切ってませんでしたとなって唐突に死ぬ山南さん(その後の後くらいの場面で本当に寝返ったフリしてただけだと判る)、そんな山南さんの死を再会した仲間に即座に伝えない平助、の辺りの段取りのグダグダさが本作の全てを物語っている。

 

『劇場版 「SERVAMPサーヴァンプー」 Alice in the Garden』

【採点】B

【監督】中野英明

【制作国/年】日本/2018年

【概要】執事(サーヴァント)のヴァンパイア「サーヴァンプ」には七つの大罪を冠する者たちとそのマスターがいた。怠惰のマスター真昼はある日、夏なのに雪が降っている不思議な現象の正体を探ろうと色欲のマスター御園に声をかけるが、屋敷から出てこない。御園の屋敷を訪れた真昼一行はその空間に捉えられ、「色欲」の業を巡る御園の家の物語を知ることになる。

【感想】

 全然知らないアニメの劇場版をいきなり見る。話も設定も知らないし、今公式サイト見てどうもスノウリリィと御国というキャラを混合して見てたっぽいと気付いたけど、じゃあつまらないかというと雪の降る都市の冒頭から『劇場版×××Holoc 真夏ノ夜ノ夢』を思わせる屋敷の異界描写と作画で十分魅せてくれる。マイナスに働きがちな一時間という尺もちょうど飽きない。

 七つの大罪というけれど「色欲」は罪なのか? レッテルとしてばかりその言葉を機能させる危険性は? という話も悪くない(でも「色欲」にかられた男女の説明が足りないのでボンヤリしてた)。

 

フレームアームズガール ~きゃっきゃうふふなワンダーランド~』

【採点】E

【監督】川口敬一郎

【制作国/年】日本/2019年

【概要】TVアニメの総集編。完全自立型の小型ロボット「フレームアームズ・ガール」を手に入れた女子高生あおは、様々なフレームアームズ・ガールと戦闘を繰り返して友情を築いてきた.そして今、不思議な箱の中身を覗いた一同は、小型ロボットなのに更にミニチュアサイズに戯画化されて、映画として投影される自分たちの過去を眺めるのだった。

【感想】

 総集編映画の中でキャラたちが総集編映画鑑賞会をしている体a.k.aキャラクターコメンタリー。新規絵も入ってるらしい。ライブシーンもある。映画としてどうというより『フレームアームズガール』というTVアニメを履修している感覚。

 『武装神姫』を思い出しますね! 『武装神姫』をどれだけの人が見ていたか知りませんが。なのにこれと言って『武装神姫』からパワーアップしてるような印象はなく、面白くなかった(『武装神姫』も面白くはなかった)。

 いっそ悪趣味なバトルロイヤルにすればまだ飽きずに見れたような。

 

PEACE MAKER 鐡 クロガネ 前篇 想道』

PEACE MAKER 鐡 クロガネ 後篇 友命』

【採点】B

【監督】きみやしげる

【制作国/年】日本/2018年

【概要】TVアニメ化された(『新選組異聞PEACE MEKER』の続編)『PEACE MEKAE 鐡』の劇場用アニメ化(TVアニメも同タイトルだが、厳密にはTVアニメ化した内容は前作の方らしい).市村鉄之助辰之助兄弟の視線から新選組を描きつつ、長州藩士の小姓・鈴なる男の新選組への執拗な憎悪も織り込む。劇場版は油小路事件後、仲間達を失った市村兄弟と山崎烝の迷走と別れを描く。

【感想】

 例の如く予備知識なしで観賞した為いきなり『進撃の巨人』がFinal Seasonから始まって、それも3rdシーズン後期のダイジェストが冒頭に着いてくる、ばりの訳のわからない映像が最初20分近く展開して大いに戸惑うも、固有名詞がわかってくると時系列が飲み込めてしまうので新選組って本当に便利。『薄桜鬼』が「ビジネス新選組」だとすると、こっちは本当にガッツリ歴史を飲み込んで咀嚼して活劇に仕立てようという、骨太な新選組愛を持った原作なのだなと伝わってくる。

 物語の途中で始まって途中で終わるので映画になってないのだけど、前篇も後篇も哀しい別れで終わってるので一応纏まりもある。ここでも中田譲治土方歳三

 

『ちえりとチェリー』

【採点】C

【監督】中村誠

【制作国/年】日本/2016年

【概要】ストップモーションアニメ。脚本に故・島田満さん。幼い頃に父を亡くし、ぬいぐるみのチェリーとの妄想の世界で生きる小学6年生の少女ちえり。父の法事の為に母と実家へ帰っても妄想の世界を手放さず意固地になるちえりだったが、チェリーと共に土蔵を探検し、猫やネズミとの会話を楽しんでいる内に抜き差しならない事態に巻き込まれる。

【感想】

 今公式サイトのあらすじ読んでちえりが小6だと初めて知ったのだけど、小6にしてこれだけ幼いという特徴が単なる教条主義の為に小さくまとまってしまうのが寂しい。『怪物はささやく』よりはまだ妄想の中の冒険が現実の命を助けるという展開にしている分マシなんだけど、どちらも子供に寄り添っているようで寄り添っていないと感じてしまう。『妄想』の力が弱すぎる。チェリーもあまりに「そのまま」だし。

 

『BATON』

【採点】D

【監督】北村龍平

【制作国/年】日本/2009年

【概要】横浜 開国博Y150に合わせて制作されたロトスコープアニメ。岩井俊二が脚本を手掛け、北村龍平が監督。アニメ制作は海外で行われた(ストーリーボードアーティストとして長濱博史監督の名前がある、その内訳もメイキングで教えて欲しかった)。人類が宇宙へ進出した時代、兵士たちの制止を振り切り宇宙ステーションから荒涼とした惑星へ跳び降りたアンドロイド。彼の残骸を拾った若い男女が見たものとは……?

【感想】

 「やあっ!」の掛け声と共にケイン・コスギが現れたり、大杉漣の顔がいくつも蠢いたり、00年代の日本映画のノリが懐かしくもキツい。全方位的に中途半端な内容ではあるけれど、明らかに本作の経験を踏まえて傑作『花とアリス殺人事件』はある筈なので、アニメ史的に無かったことには出来ない一作なのでは。お薦めはしません。