GWの映画の採点

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「映画の採点」シリーズも開始から一年以上続き、今回で第11弾となります。

「配信映画」「アニメ映画」と分けて、通常の映画鑑賞の感想が本編と、現在このような形のシリーズになっております。

 

説明も野暮ですが当然「映画の祭典」とWミーニングで色んな映画見るのは楽しいよ、という主張が本シリーズの主旨であって、「採点」することにさしたる意味はありません。 

下手すると感想を書くことさえ大した意味はなく、しかし、「概要」欄に作品の粗筋を自分なりに要約して纏める作業には、最近少しずつ意義を感じ始めています。

今年劇場鑑賞した作品すら思い出せないのに、概要をまとめた作品のことは記事読み返すだけですんなり思い出せる。これは非常に大きいのです。

 

では。

 

『ザ・ライダー』

【評価】A

【監督】クロエ・ジャオ

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】アメリカ中西部サウスダコタ。現代のカウボーイとして気性の荒い馬を手なずけロデオを行う人々。その中の青年ブレイディは事故で頭部を損傷し、何本もの針で頭を縫い留めていた。落馬して身体のほとんどが付随になった友人、障害者の妹、ブレイディの将来を心配する人々。それでもブレイディのまなざしは、馬に注がれ続ける。

【感想】

 クロエ・ジャオのデビュー作。実在する人々が自身を演じるドラマ/ドキュメントの融合作品。多くのアメリカの観客の原風景に訴えかけただろう「馬と荒野」のある景色の美しさは、しかし撮影を通した嘘なのだろうと思う。それでもブレイディその人の存在感だけは真実であり、その真実を浮き彫りにするために彼に「彼を演じさせる」ことでその内面を引き出そうとする。映画的なエッジが効いている訳ではないが、この世界に潜む忘れがたい時間を確実に刻んでいるフィルム。

 

ソニック ザ・ムービー』

【評価】C

【監督】ジェフ・ファウラー

【制作国/年】アメリカ・日本/2020年

【概要】予告編で不評をウケたソニックのデザインを全面的に制作し直して完成した曰く付きの作品。ナックルズ族の襲撃を受けたソニックはポータルを通して地球に逃亡。モンタナ州の田舎町で人知れず生きていたが、保安官のトムと出会い、ソニックを捕獲しようと追跡してくるドクター・ロボトニックの追跡を交わしサンフランシスコへ逃亡の旅に出る。

【感想】

  素早さが売りのソニックに「速く動けて隠れられるからこその孤独」を味あわせ普遍的な存在にし観客の共感を誘う導入が上手い。基本的に予告編から一歩も逸脱しない、かなり古くさいノリで、しかしだからこそソニックが成立するし、またジム・キャリーの使いどころとしても適切。が、『ピーター・ラビット』や『名探偵ピカチュウ』や『トムとジェリー』と並べた時に、とにかくギャグで笑えなかったのが痛い。

 

メン・イン・ブラック インターナショナル』

【評価】C

【監督】F・ゲイリー・グレイ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】幼い頃、家に宇宙人が現れ、両親が黒づくめの男たちに記憶を消される場面を目撃した少女。以来、彼女は密かにメン・イン・ブラックの情報を集め、大きくなりとうとう強引な手段で組織に乗り込み就職する。かくして誕生した「エージェントM」は先輩の「エージェントH」と組み、宇宙人とのトラブルを解決する任務に出る。

【感想】

 メン・イン・ブラック一作目の面白さはブラックジョークとグロテスクユーモアの洗練された融合にあったと思う。見飽きたようなエイリアンと『マイティ・ソー バトルロイヤル』から遙かに後退したソーとヴァルキリーのつまらない掛け合いを見たい訳じゃなかった。ちなみに製作のウォルター・F・パークスが大幅に出しゃばり、最終的に出来上がったものは当初の脚本とはまったくの別物であるとのこと。

 

『星の王子 ニューヨークへ行く』

【評価】B

【監督】ジョン・ランディス

【制作国/年】アメリカ/1988年

【概要】自然豊かで財政的にも恵まれたアフリカの王国ザムンダ。しかし保守的な価値観に基づくその土地で次期国王の座を約束された王子アキームは、自分の花嫁は自分で探したいと願う。世話係のセミをつれ、ニューヨークへ訪れたアキーム。「『クイーンズ』地区」に女王候補がいると見初め、新鮮な貧乏暮らしを満喫し始める。

【感想】

 子供の頃、延々テレビで放映されていたエディ・マーフィー映画の中でも恐らくは未見だった一本。子供の頃見ても良さはよくわからなかったと思う。初期作の狂騒から離れたジョン・ランディスだからこその余裕で、エディとセミ役アーセニオ・ホールが何役もこなしたキャラ達が入れ替わり立ち替わり掛け合いの面白さを見せていく。決してザムンダが古くてアメリカが新しい、とはしない距離感が心地いい。

 しかしアーセニオ・ホール、こんな面白いのに先日公開された三十数年ぶりの続編までほとんど映画には出ていない(出ても本人役)のが勿体ない。

 

『メランコリック』

【評価】B

【監督】田中征爾

【制作国/年】日本/2019年

【概要】東大出のナベオカは、未だに実家で冴えない日々を送っていた。高校時代に同級生だった女性ソエジマに声をかけられたのを機に、二人の再会の場である銭湯「松の湯」で働き始める。しかし「松の湯」は裏家業で暗殺を請け負い、夜な夜な風呂場で死体を解体していた……。

【感想】

 この着想とタイトルだけで大勝利しているような映画なのに、恐らくは予算が縛りとなって想像できるようなグロテスクな映像美はなく、噂されていたアクションシーンも少ないのでピンとこない。ショットも壊滅的なまでにグダグダしている。それでも「松本君」というキャラとの出会い。「いそう」な登場シーンから、次第に彼の人となりが見え始め、最後には愛しくなるまでの流れ。こんなにキャラ個人への興味で映画を見続けられることも滅多にないのでハマってしまった。

 脚本も秀逸なので、予算さえあればもっと面白い話も作れる人たちなんだと思う。もっとビッグバジェットに挑めるよう願う。

 

『26年』

【評価】B

【監督】チョ・グニョン

【制作国/年】韓国/2012年

【概要】「今も存命の全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領の罪を糾弾する暗殺計画映画」という衝撃作。光州事件で家族を失った遺族たち、あるいは心に傷を負った体制側の男。あれから26年、事件当時軍を指揮していた虐殺の責任者である元大統領が罪の重さを否認し続けたまま社会生活を取り戻している事に憤り、彼らは暗殺計画を始動させる。

【感想】

 韓国映画の反体制・反骨心を象徴するような作品(魂としては『インサイダーズ』こそベストだと思っているけれど)。原作は漫画なので光州事件の悲惨さを冒頭にアニメーションで伝え、その表現手法が「過去では無いのだ」と何より雄弁に物語っている。これほど過激で繊細な題材を扱いながら完全にエンタメとして組み立てられている点も韓国映画らしい。「反骨心」と「エンタメ」本作に限っては後者はもうちょっと抑えても良かったかも知れない。

 

 『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』

【評価】B

【監督】エイプリル・ライト

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】ハリウッドを支えてきたスタントウーマンたち。その埋もれていた歴史にスポットを当てる。映画黎明期にはむしろ人気女優による危険なアクションこそが売り物であり、男性が後からその座を独占したこと。映画会社との裁判闘争。「アクション監督」という地位の重要性。そして、危険なスタントがもたらす快楽。

【感想】

 昨年劇場鑑賞した『ようこそ映画音響の世界へ』と同じく、映画ではなく面白トリビアを満載したテレビ番組。ただそのトリビアの内容への興味が尽きない。自身がアクション女優としてハリウッドを支えてきたミシェル・ロドリゲスが製作総指揮・ナビゲーターとして自身のスタントウーマンを紹介している、という構図に説得力と歴史が宿る。

 しかし「映画黎明期の女優の役割」「スタントで生じる快楽」についてもっと掘り下げるべきだったのではないかという不満は大。

 

『バニー・レークは行方不明』

【評価】A

【監督】オッドー・プレミンジャー

【制作国/年】アメリカ・イギリス/1965年

【概要】新生活を始めようとしたアン・レイクだが、幼稚園に預けた筈の娘バニー・レークが帰ってこない。保母さんたちの証言は要領を得ず、刑事もアンの話に半信半疑。まるで娘などいないかのように訝り始める。アンは娘を見つけ出すことが出来るのだろうか。そもそも、バニー・レークは本当に存在するのだろうか。

【感想】

 初プレミンジャー。大方のネタは大体想像つくが、しかし「バニー・レークは本当にいるのか?」という部分はかなり引っ張られる。そしてその白黒がつく以上の大胆な転換をもたらす場面がサイコ的な意味で衝撃的。あの「追いかけっこ」からの……。サイコロジカル描写、昔のほうが多分社会的にも未知の部分が多かった為に、映画としては現代よりもよっぽど面白く扱っているなと感じる。

 

『3年目のデビュー』

【評価】D

【監督】竹中優介

【制作国/年】日本/2020年

【概要】欅坂46姉妹グループとして誕生させられたひらがなの「けやきざか46」は、やがて改名して「日向坂46」として活動させられる。後輩も加わり、活動は軌道に乗り始めるが、メンバーは日向坂独自の魅力を作れているのか懐疑的であった。

【感想】

 以前にAKBのドキュメンタリーをいくつか見て、アイドルが晒される活動の苛烈さ、映画の中に不在であるからこそ募る運営への怒り、となかなかハードコアな内容が印象的だったのだけれど、それらに比べてひたすらアイドル達に優しく、そして彼女たちを囲う状況への批評精神が致命的に欠けている。映画としての緊張感が皆無。日向坂はオードリーと絡んでる時が好きなので、オードリーの出番が一瞬だったのもつまんないと結構本気でそう思う。若林にチクリと言わせるとか出来そう。

 

『シライサン』

【評価】C

【監督】安達寛高

【制作国/年】日本/2019年

【概要】若者たちが鈴の音を聴いた後、眼球破裂して死んでしまう。それぞれ友人、弟の死を目撃した瑞樹と春男は関係者の証言を辿り、シライサンという女の幽霊の呪いであると突き止める。一方、ジャーナリストの間宮もシライサンの呪いを追っていた。3人はシライサンの呪いを解く方法を探っていくが、着実に呪いの魔の手は迫っていた。

【感想】

 小説家・乙一の変名による監督作。シライサンという幽霊の造形、その見せ方、さらに「呪いの回避方法」、ここら辺は見事なキャラ立ちで面白い。一方で、それ以外の部分があまりに淡々と進むので、怖いのに眠たい。乙一さん、黒沢清監督の映画は沢山観てるかも知れないけど、もしかして『イット・フォローズ』をご存じでない……? 勿論、低予算がすべての元凶だとは思うけれど。

 

デスノート Light up the NEW world』

【評価】B

【監督】佐藤信

【制作国/年】日本/2016年

【概要】デスノート事件から10年後。地上に新たに6冊のデスノートが落とされ、再び死神を使った殺人鬼が暗躍する。夜神月の動画が拡散され、彼の後継者がいるらしい事が明らかになる中、特別捜査官:三島、Lの後継者:竜崎、そしてサイバーテロリスト:紫苑の思惑が交錯し、事件は混迷を極めていくのだった。

【感想】

 あんまり酷評を目にしてしまい敬遠していたのだけど、既に佐藤信介監督の異様に鈍重なテンポに慣れてしまっている為か、それ以上に長所が目についた。まず何がなんだかわからないくらい仕掛けが多層化してる脚本、これはもっと素早いテンポで見せられたら十分原作のノンストップ感を再現出来たと思う。そしてメインを張る東出、池松、菅田がデフォルメされたキャラに相応しい虚構的な華を持つ振る舞いが出来ること。原作キャラの使い方も思い切りがよく、過去に阿り過ぎず決着をつけてやるという覚悟を感じた。

 

『ニュー・ミュータント』

【評価】B

【監督】ジョシュ・ブーン

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】ネイティブ・アメリカンの保留地が巨大竜巻に襲われ、少女ダニーだけが生き残った。ダニーは隔離施設に保護され、そこで不思議な少年少女と同居生活を始める。私たちはミュータント。ここは次世代X-MENの育成機関らしい。しかし力を制御できる段階にないダニーたちは悪夢に苦しめられ……。

【感想】

 公開延期の重なった、本編キャラ不在の『X-MEN』ホラー編。どのジャンルとしても中途半端な出来ではあるけれど、思春期の心の葛藤に懊悩し、それが物理的なアクションとして結実する様に惹かれた。アニャ・テイラー=ジョイ、『ゲーム・オブ・スローンズ』のアリア・スタークことメイジー・ウィリアムズ、『ストレンジャー・シングス』のジョナサン・バイヤーズことチャーリー・ヒートン、この三者が若くて旬の時期に揃って撮影していた、という事実が記録されてるだけで価値はあるし、『X-MEN』の核にある陰の部分は外していない。

 

『ベター・ウォッチ・アウト クリスマスの侵略者』

【評価】A

【監督】クリス・ベッコーヴァー

【制作国/年】アメリカ・オーストラリア/2017年

【概要】クリスマスの夜、少年ルークは憧れのベビーシッター・アシュリーに面倒をみてもらえることになり張り切っていた。けれど、どんなアプローチをしてもアシュリーはなびいてくれず、アシュリーの元彼が二人ともクズだと知っているルークはやきもきする。そんな夜、謎の訪問者の気配が静かに二人きりの家を取り囲んでいた。

【感想】

 ともかく何も調べずに見てのお楽しみ。途中で出てくる先行作品の身も蓋も無い引用。映画ファンなら誰もが想像したことがあると思うが、それを実際にやってるので笑ってしまうし感動さえ覚える。ネトフリの『ザ・ベビーシッター』と続けて見るのも面白いかも。

 

ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』

【評価】A

【監督】キム・グェン

【制作国/年】カナダ・ベルギー/2019年

【概要】株価の高頻度取引を生業としていた従兄弟同士のヴィンセントとアントン。彼らはカンザス州データセンターとNY証券取引所間のデータ通信を0.001秒早めることによりビジネスを有利に進める光ファイバー敷設工事に取りかかる。しかし彼らが裏切った元上司のエヴァが計画をかぎつけ……。

【感想】

 大事業を成した狂気の実話、ではなく、大事業を成そうとした執念の実話。あまり波はなく、一直線に進んでいく話なので物足りなさもあるかも知れないのだけど、俳優陣の好演により地味に積み上げていった話が、ラストシーンの僅かな会話に集約されるロマン。苦しいはずの状況に不思議な達成感が宿る。この一瞬の為に映画観てるよなという感慨が確かにあった。

 

『ザ・ハント』

【評価】A

【監督】クレイグ・ゾベル

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】ブラムハウス制作の一本。飛行機でセレブたちが運ぶ、気絶させられた12人の男女。彼らはだだっ広い森で目覚め、すぐそばには大量の武器が用意されていた。SNSポッドキャストで右翼的差別言説、陰謀論を拡散していた彼らは、ある噂を思い出す。金持ちリベラルによる人間狩りゲーム、「マナー・ゲート」の存在を。

【感想】

 まず90分が一瞬で過ぎるサバイバルゲームものとしての面白さに尽きるのだけれど、なぜ一瞬で過ぎるかと言えば状況も人間も予断を許さないからであり、「予断を許さない存在」としての人間を描くことがそのまま本作のテーマにもなっているので、非常にスマート。今時の醜いネトウヨ言説をエンタメに昇華できる様も素直に憧れる。

 

『ZOOM ズーム/見えない参加者』

【評価】C

【監督】ロブ・サベッジ

【制作国/年】イギリス/2020年

【概要】2020年、コロナ禍のロックダウンに見舞われたイギリスで、大学の同窓生であるヘイリーたちはZOOMで暇をつぶすより他なかった。そして今日は霊媒師を一人招き、ZOOMで降霊会を試すことに。しかし参加者の悪ふざけが「何か」を呼び寄せた状態で、霊媒師との通信が途絶えてしまう……。

【感想】

 ZOOMの機能を使った60分の体感型ホラー。コロナパンデミックの中、機を見てすぐに本作を撮影したフットワークの軽さは素晴らしい。バーチャルアバターがそこにいない存在に覆面をかぶせる様は今時の恐怖として魅力的。ただそれ以上のアイデアは無く、『アンフレンデッド』シリーズと比べるとどうにも弱い。

 ラスト8分はオマケのリハーサル映像で、「ちょっと怪奇現象っぽいことも起こりました」くらいのことなんだけど、むしろそれより「リハーサルのこういうちょっとした会話を本編に活かしたんだな」と判ることが面白い。

 

エスケープ・ルーム』

【評価】A

【監督】アダム・ロビテル

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】数学を得意としているが引っ込み思案なゾーイのもとに、最近流行りの脱出ゲーム(エスケープルーム)の案内が届く。優勝賞金は1万ドル。舞台となるビルに到着すると、そこには他に5人の男女の姿。6人はやけに金のかかった脱出ゲームへの挑戦を開始するが、その内容は命を危険に晒すものであった。

【感想】 

 当記事の中でいうと『ザ・ハント』的な「このジャンルでここまで飽きさせなかったら大成功だよ」という点と『ハミングバード・プロジェクト』的な「たった一言の為に全てが機能する美しさ」という点とが合体していて、予想以上の満足度。ジャンルに逆らわず、ジャンルに抗う。その塩梅が見事。このテの海外製ホラーとしては珍しくグロが無くて品があった。

 

ザ・ファブル

【評価】C

【監督】江口カン

【制作国/年】日本/2019年

【概要】幼い頃から殺し屋英才教育を受けてきたが、一般常識の欠如した男、偽名:佐藤明ことザ・ファブル。彼に下された新たな命令は、偽の妹:洋子と大阪で一年間暮し、普通の人間の感覚を覚えること。そして、この間に誰も殺してはならないこと。言われるがまま自分なりの「普通」を実践していくファブルだったが、次第に物騒な連中が集まり始める。

【感想】

 原作漫画が実写的な「間」で見せていくのに対して、実写版はいかにもなオーバーアクトを多用していき、それは端的にスベっている。せっかく本人の振り付けも交えている(一部かなり危険なもの含む)アクションシーンも目出し帽をかぶっていて誰だかわからない。監督、もっと岡田准一に興味持って。とは言え終盤廃工場でのアクションたたみかけには勢い任せの魅力があった。岡田の体技が真にフルで活かされる映画にはいつ出会えるのだろう……。

 

孤狼の血

【評価】B

【監督】白石和彌

【制作国/年】日本/2018年

【概要】暴対法成立以前の広島。エリート新米刑事・日岡は、暴力的なベテラン刑事・大上と組まされる。尾谷組と五十子会系加古村組との戦争開始まで秒読み状態に入った危険な街中で、グレーな捜査や癒着に塗れた大上に対し、日岡の不審は募っていく。そしてとうとう、街中に弾丸は放たれた。

【感想】

 『トレーニング・デイ』的な悪い先輩モノと『仁義なき戦い』のマッチング。及第点は遙かに超えて面白いしワクワクするのだけど、一方で(例えば『ヤクザと家族』と比べると)これといった強いシーンや印象的なショットがなく、『仁義なき戦い』という先達の勢いを借りつつも、その上をいこうとする心意気までは感じられない消化不良感が燻ってしまった。うじきつよしかと思ってた人がうじきつよしじゃなくて吃驚する(中山しゅん?さんかな)。

 

『黒い司法 0%の奇跡』

【評価】A

【監督】デスティン・ダニエル・クレットン

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】80年代、貧しい土地から出てロー・スクールを卒業したブライアンは、アラバマ州で死刑囚の人権擁護の為に活動していた。そして刑務所でジョニーDこと死刑囚ウォルターに出会う。アリバイ証言者がいるにも関わらず、司法取引による別の犯罪者の証言によって死刑判決を下されたジョニーDの為、ブライアンの長い闘いが始まる。

【感想】

 実話の映画化。『ショート・ターム』クレットンの演出はひたすら慎重で遊びが無いが、だからこそ運び込める誠実なメッセージはあるのだなと。差別問題のみでなく、死刑制度そのものへの静かで強い抗議の声が刻まれている、マイケル・B・ジョーダン目当てで見たが、偽証囚人マイヤーズを演じるティム・ブレイク・ネルソンが素晴らしい。