禁密の映画の採点

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映画の採点第2弾です.

しばし続けようかなと思います.

ルールを設けていきましょうね.

・自宅鑑賞(とは言え最近では移動中含む.非劇場鑑賞作品)

・今回からネトフリ視聴作品も含む(間に合わなかった『その住人たちは』Aです).

・実写/アニメ 邦/洋を問わず、同列の基準上で採点.

・何を見ようが絶対に最低限一言の感想は残す.

・短編、場合によって中篇はスルー.

・当たり前のことなので、わざわざ「独断と偏見による」って書かない.

・一つの記事につき20作品まで.

・映画に点数を付けるべきものではない.

 

前回2本オーバーしたので、今回は18本です.ストックは沢山あるので第3弾も早いかも.

 

 

 

ブルーサンダー

【採点】B

【監督】ジョン・バダム

【制作国/年】アメリカ/1983年

【概要】極秘開発された攻撃用ヘリコプター『ブルーサンダー』。ベトナムでベトコンをヘリから落としたトラウマを持つ警察航空隊のマーフィーは、ブルーサンダーパイロットを務めながら、やがてこのヘリにまつわる米国政府の陰謀に気がついていく。

【感想】

 三宅隆太監督の『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』で逆バコ起こしが行われていた作品がネトフリに入っていたので観賞。無駄のない構成だけど、派手なシーンに挟まれて、三宅監督が指摘していたポイントの良さみは本読んでないと見落としてたかも。良い意味で、普通に面白い。

 

ノーベル賞殺人事件』

【採点】B

【監督】ベーテル・フリント

【制作国/年】スウェーデン/2012年

【概要】華々しいノーベル賞受賞式パーティーアメリカの女アサシンが現われ、堂々と銃撃。狙われた博士は無事だったものの多くの犠牲者が出る。巻き込まれた新聞記者アニカは、この事件がただのテロではない可能性を疑い、調査を始めるが……?

【感想】

 みんな大好きノーベル賞、すべてに意味がある関係者たちの証言、定期的に襲い掛かる真犯人、背景にある歴史の勉強、あとちょっとの社会性。俺たちの見たかった「北欧ミステリー」を地でいき、そこから一歩も逸脱しない。ジャンルに徹するプロの仕事を見た。

 

『鉄男』

【採点】

【監督】塚本晋也

【制作国/年】日本/1989年

【概要】伝説の自主映画。自身に肉体改造を施した「やつ」と、やつをひき逃げしてしまったサラリーマン。全身を鉄に蝕まれていく二人の男の、運命の邂逅とバトル。

【感想】

 今見るとこのテンションは流石にキツいが、80年~90年代の邦画に通底する都市性への眼差し、憧憬にも似た憎悪と妄執が最後に愛となって叫ばれる様は感動。編集の音ハメは気持ち良く、それだけでも拘りの細かさは知れる。でもキツい。

 

 キョンシー

【採点】

【監督】ジュノ・マック

【制作国/年】香港/2013年

【概要】清水崇プロデュースの香港映画。アーティストのジュノ・マックが脚本・監督を務め、キョンシー映画への愛を詰め込んだ一作。落ちぶれた元子役スターが辿り付いた貧乏アパートで、忌々しい恐怖が幕を開ける。

【感想】

 キョンシー映画のキャストを再結集させながら、キョンシー映画の持つユーモアを排し、ひたすらに寒々しく痛々しく禍々しい残酷美が展開していく。リメイク版『死霊のはらわた』のストイックさを更に膨れ上がらせたような快作。かつて見た悪夢への憧れが、すべて幻と消えるような虚無性。久々に映画でヤバいビジュアルを見た。

 

アイム・ソー・エキサイテッド!

【採点】

【監督】ペドロ・アルモドバル

【制作国/年】スペイン/2013年

【概要】上空へ飛び立ったその飛行機のCA達はゲイで、機長はバイ、副機長は自分にゲイの気があるのか興味がある。乗客は処女を憂う超能力女や怪しいメキシコ人etc……個性的な人々ばかり。そしてその飛行機の着陸システムが故障している事が判明して!?

【感想】

 アルモドバルでもこんな弛緩した映画を作る、という点で安堵する艶笑喜劇。『トーク・トゥ・ハー』を見て十数年経つのに主演俳優さんが出てきた瞬間「あの人だ!」って即座に判りましたね、顔の印象が強烈。

 

『滝を見にいく』

【採点】

【監督】沖田修一

【制作国/年】日本/2014年

【概要】ワークショップで集められた四〇歳以上の女性たちを主演に据えて描く異色作。それぞれの事情から滝を見に行くバスツアーに参加した7人のおばちゃんたち。しかし無能ガイドとはぐれ、深い山中でサバイバル生活を余儀なくされる……。

【感想】

 まったく知らないおばちゃん達がギスギスしたり愚痴り合ったりするだけなのに、不思議と面白く見れてしまう。これといってスペクタクルは起こさない、起こせないあたりの限界は少し感じた。このおばちゃん達、他の作品でも見てみたいな。

 

『劇場版 「K MISSING KING」』

【採点】

【監督】鈴木信吾

【制作国/年】日本/2014年

【概要】TVシリーズの劇場版。戦い終えて周防が散り、シロが消えた後。狗朗とネコはシロの姿を探していた。そんな街に狗朗を名乗る男・御杓神紫が軍勢を引き連れ暴れ始める。

【感想】

 最初にPVを観た時の興奮は忘れがたく、そしてPVがピークだったガッカリアニメとしても忘れがたいTVアニメ『K』の劇場版。よく憶えてないのもあって話は右から左へ流れていったけど、今見ても映像(作画というより映像)の美麗さは圧倒的で最先端といって過言じゃないもの。そろそろ映像に相応しい物語とマッチングしたGoHandsアニメが観たい。

 

『野火』

【採点】

【監督】塚本晋也

【制作国/年】日本/2015年

【概要】大岡昇平の小説を、構想20年、難航する資金繰りを経て漸く完成させた塚本監督渾身の一作。太平洋戦争末期、地獄のレイテ島で肺病から隊を追われた田村一等兵の地獄巡りを描く。

【感想】

 なんとなく見るのに腰が引け、気がつけば何年も経っていたことに少し己を叱責。見応えある力作で、塚本作品の近視眼的な強迫神経症カメラワークと、塚本作品では珍しい広大な引きの画とのギャップが新鮮。それでもこういう作品にちゃんとお金がかけられ、商業作品として作られる世の中であってほしい。やはり画面の手前でしか事が起こってないような安さを端々に感じてしまうのが悔しい……。

 

『エル・クラン』

【採点】

【監督】パブロ・トラペロ

【制作国/年】アルゼンチン/2015年

【概要】アルモドバル製作。1980年、独裁体制崩壊前後のアルゼンチン。富裕地区サン・イシドロで身代金目的の誘拐殺人を繰り返していたプッチオ家.その父の生粋の悪と、父に振り回され犯罪に加担する、ラグビーのスター選手でもあった息子の葛藤を描く。

【感想】

 重々しいシリアスな空気で『グッドフェローズ』的な軽快犯罪劇を描く、という矛盾した説明が実現している怪作。父の仕掛ける凶行に、音楽によって共犯関係に巻き込まれるのは息子か観客か。「有無を言わさぬ暴力の一員」であることの追体験。圧巻。

 

『あやしい彼女』

【採点】B

【監督】水田伸生

【制作国/年】日本/2016年

【概要】各国でリメイクされた韓国映画『怪しい彼女』の日本版。気の強い老婆が魔法の力で若返り、バンド活動に勤しむ孫に力を貸すことに。そんな姿が音楽プロデューサーの目に留まり…… 多部未華子倍賞美津子のW主演。

【感想】

 オリジナル版未見。リメイクであると同時に、日本の歌謡映画としてこの上ない設定。肝心のライブシーンのエキストラの演出が弱かったりするのは勿体ないけど、幕の引き方が本当に鮮やか。志賀廣太郎さんの代表作になったと思う。

 

『ファーザー・フィギュア』

【採点】B

【監督】ローレンス・シャー

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】多くのコメディ映画を支え、昨年は『ゴジラKOM』『ジョーカー』とジャンルの幅も広げた名撮影監督ローレンス・シャーが自らメガホンを取ったコメディ。陽気なカイルと陰気なピーター、正反対のまま中年になった双子が、死んだと聞かされていた父が生きていることを知り、全米を横断して父親探しの旅に出る。

【感想】

 カメラマンとして撮ってきたコメディの数々でロードムービーはお手の物なので手堅く見せる一方、むしろ移動よりも次々顔を見せる豪華スターたちの演技を楽しげに捉えていく。ゆるいコメディだけど、意表を突いてくるオチにホロリとしてしまった。

 

『ジャケット』

【採点】B

【監督】ジョン・メイバリー

【制作国/年】アメリカ/2005年

【概要】湾岸戦争の後遺症を引きずり精神病棟に入れられたジャックは、歪んだ医師によるショック療法で拘束衣(ジャケット)を着せられ死体安置所のロッカーに何日も閉じ込められる。その恐怖が、タイムリープのトリガーとなってしまい……。

【感想】

 あくまで当人たちにしかその異常が共有されないミニマムさに世界の秘密が握られているのがタイムリープ物の面白さとは言え、ここまでその「矮小さ」を感じるうら寂しいSFも珍しい。ただ今見るとキャストは超豪華。倫理的にアウトだけどタイムリープなら許される(?)合法ロリコン映画でもあって、正直その部分は引いてしまった。

 

『ケイコ先生の優雅な生活』

【採点】C

【監督】城定秀夫

【制作国/年】日本/2013年

【概要】低予算邦画プログラム・ピクチャーを量産する城定秀夫のピンク映画。同僚や不良に体を求められると拒めない気弱な女教師ケイコと、彼女に憧れと嫌悪を抱く男子生徒とが、日常の倦怠を抜けだそうとする甘酸っぱい青春ポルノ。

【感想】 

 城定作品初めて観賞.効率の良い長回し長回しですよという強調ではなく、本当に語りに特化している)がコスプレ感溢れる学園場面にも有無を言わさぬ推進力を持つ。後半色々覆していくとは言えケイコ先生の人物像は古いと思うけど、ネーミングの意味には思わず膝を打った。ラブホの露天風呂の解放感。

 

『タイラー・レイク ー命の奪還ー』

【採点】C

【監督】サム・ハーグレイブ

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】ルッソ兄弟と共にMCUやそれこそ前の記事で書いた中国映画『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』などあらゆる重要なアクション映画を支えてきたアクション俳優サム・ハーグレイブの初監督作。バングラディシュを舞台に、インド人麻薬王の息子を守る為傭兵タイラー・レイクが壮絶な死闘に挑む。

【感想】

 アトラクション映画が大好物なのだけど、最初からテレビやPC画面で見るそれは引き込まれる体感には少し弱く、むしろ画面から引いて落ち着いて見れてしまう。実はNetflixオリジナルには不向きな傾向なのではないかと。『サムも出演している『アトミックブロンド』の長回しは痛々しくてハラハラしたけど、本作のそれは段取りに見えて長回しであることが緊張感を削ぐ。

 でもネトフリオリジナル大作はこのくらいで丁度良いというワガママな気持ち.

 

『最高に素晴らしいこと』

【採点】D

【監督】ブレット・ヘイリー

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】姉を事故で失い、茫然自失と毎日を生きていた少女バイオレット。自殺しそうな彼女を見かけた少年セオドアは持ち前の奔放さでバイオレットの憂鬱な気分を解放していくが、次第にバイオレットはセオドアの無邪気さこそ不安定で壊れそうなものだと気が付いていく。

【感想】

 「私をこんなに癒やしてくれる彼の心の闇に気付く」過程の捉え方が、繊細は繊細なのだけど最初からとても気持ち悪い交流に見えてしまっていたのでさしてギャップを感じない。距離感の緩急をより大袈裟にするくらいでもいいのかも知れないが、いずれにせよドラマを放棄した終盤は問題提起のつもりでも雑。

 

 『ウンギョ 青い蜜』

【採点】B

【監督】チョン・ジウ

【制作国/年】韓国/2012年

【概要】自身の老いを嘆く老詩人の下に、無邪気な女子高生ウンギョがアルバイトとして訪れる。あまりに大胆なスキンシップを平気で取るウンギョとの生活に活力が漲る老詩人だが、彼を慕う若きイケメン小説家はウンギョの存在が気に喰わず……。

【感想】

 山中の美しい家屋、詩人の夢、陽光の中でサービスシーンを繰り返す女子高生のエロス。言葉にすれば陳腐なロリータ妄想の数々が高度な照明/撮影で展開していく白昼夢に目眩がしてくる、傑作であり珍作。パク・ヘイルの老けメイク主人公のせいか、意外とエロスは生っぽくなく、戯画化された滑稽さも付きまとう。

 

『ファイ 悪魔に育てられた少年』

【採点】A

【監督】チャン・ジュナン

【制作国/年】韓国/2013年

【概要】強盗殺人や誘拐を繰り返す5人組「白昼鬼」に誘拐された少年ファイは、その後5人の犯罪者を父親として育ってきた。しかしとある凶行に巻き込まれたことから、自分の父親たちが許されざる悪人であることを直視せざるを得なくなり、反旗を翻す。

【感想】

 究極の「親殺し」の物語。ファイが敵対するのは明らかに血も涙もない外道の悪人たちだが、しかし悪人たちにとってファイだけは殺すに殺せない可愛い息子なのである。このジレンマが壮絶な復讐アクションに発展していく。先が気になって視聴を止められない。韓国映画でありがちなやや甘いエンドロールもハマったと思う。

 

『映画 としまえん

【採点】C

【監督】高橋浩

【制作国/年】日本/2019年

【概要】としまえん全面協力ホラー。大学生の早希は高校時代の仲良しグループととしまえんに訪れる。そこでいつか盛り上がった「としまえんの呪い」を実行してしまったその時から、一人また一人と友だちが消えていく。そしてここにはいないもう一人の友だち、由香の影がチラつき……。

【感想】

 器用な映画だけど、手練手管だけ見せられてるようで、魅力に欠けるヒロイン同様とっつき辛かった。『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ダイヤが幽霊となって襲い掛かるが、こちらもまたこれといって特性が無い(いや、オチはなるほどと思うのですが)。ゴールとしてのメリーゴーランドとかもっと活かせたんじゃないか。としまえんから校舎への移動が一番グッとくる演出だった。