配信映画の採点 その2

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『ペンギンが教えてくれたこと』

【採点】D

【監督】グレンディン・イヴィン(ラスト・ライド~最後の旅立ち~)

【制作国/年】オーストラリア/2021年

【概要】家族とタイ旅行へ行った先で事故に遭い、下半身不随となったサム。夫と三人の息子に囲まれ新生活を始めるが、絶望感が押し寄せる。そんな中、家の敷地に迷い込んだ傷ついたカササギに「ペンギン」と名付けて可愛がり始めることで、少しずつ彼女は前向きな気持ちを見いだしていく。

【感想】

 ナオミ・ワッツの一人芝居を見せつけられる感じなのだけれど、サムの家が裕福感たっぷりでどうも危機感を共有出来ないのと、結局ペンギンと出会えたことで何を乗り越えたのかよくわからなかった。サムと息子、どちらに視点を寄せていいかもわかっていない様子。最後にカメラが飛翔する瞬間に、なにがしかのカタルシスは生じて欲しかったが…

 

『ラブ&モンスターズ』

【採点】A

【監督】マイケル・マシューズ(ファイブ・ウォリアーズ)

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】隕石落下の危機を乗り越えた人類。しかし今度は地球上の人間以外の生き物が巨大モンスターと化し、地上を跋扈し始める。他の生存者たちとシェルターに隠れた青年ジョエルだが、7年間も過ごしているとシェルター内のカップルから余ってしまう。そんな中、遠くのシェルターに恋人エイミーが生存している事が判明。ジョエルは野生の王国と化したアメリカを渡る決意をする。

【感想】

 『ゾンビランド』のノリを流用してるので新味は薄いのだけど、青年と犬のシンプルなアドベンチャーを楽しく見せて、結果その旅が彼の心に何をもたらすのか、という着地が綺麗。真ん中に一本筋が通っている作品は強いなという当然の気づきを抱く。いかにも同行者となりそうな出会いにも潔く手を振り別れるのはただしく旅情があった。

 

『ミッドナイト・スカイ』

【採点】C

【監督】ジョージ・クルーニーグッドナイト&グッドラック

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】人類が北極を大移動してどこかへ向かう時代。余命いくばくもないオースティンは一人、基地に残ることを選んだ。しかしその基地にもう一人の闖入者を見つけ、奇妙な共同生活を始める。一方、そんな地球の状況を知らず帰還を目指す宇宙探査船のクルーは、それぞれ物思いに耽るのだった。

【感想】

 人類の黄昏の時代。一向にテンションの上がらない淡々とした北極/宇宙の同時進行が、これといったサプライズ無く繋がる(あるにはあるが、予想の範囲内)。面白くはないが、そもそも面白がらせようとさえしておらず、『アド・アストラ』などもそうだったけれど、「宇宙」というのは一見壮大な舞台のようで、作家の趣味性を発揮させる非常にインディーズな空間なんだなぁと再認識。

 

『密航者』

【採点】B

【監督】ジョー・ペナ(残された者 ー北の極地ー)

【制作国/年】ドイツ・アメリカ/2021年

【概要】二年間の研究ミッションに出発した宇宙船。搭乗員はマリーナ船長、学者のデビッド、狭き門を越え合格したゾーイ。しかしそこに第四の搭乗員、マイケルの存在が明らかになる。宇宙船打ち上げスタッフの一人だったが、気がつけば船内で倒れていたのだ。船内に残された酸素は三人分しかないのだが…

【感想】

 「冷たい方程式」と呼ばれるSFジャンルのパターンに、映画から名乗りを上げた一作。究極の選択が命題としてあり、逃げ場があってはいけないので演出は非常に生真面目。それ故に葛藤さえ優等生の域を出なかったが、ホラーでも観念でもなく無慈悲な空間としての「宇宙」に徹し、ちゃんと嫌な息苦しさを覚える。

 

サンダーフォース ~正義のスーパーヒロインズ~』

【採点】C

【監督】ベン・ファルコーン(スーパーインテリジェンス)

【制作国/年】アメリカ/2021年

【概要】一部の人々に超能力が目覚め、ヴィラン(ミスクリアン)として暴れだす世界。中年のリディアは学生時代に喧嘩別れした天才エミリーの会社を訪ねる。そこは一大企業に成長しており、リディアはエミリーの開発した人工的に超能力を得る力で「怪力」を獲得する。「透明」を獲得したエミリーと共に、ミスクリアン退治を始めるが…

【感想】

 オクタヴィア・スペンサーがいつものように「やれやれと見守る目」をし、メリッサ・マッカーシーがいつものようにアドリブを連発。別にアメコミ映画に参戦!といった雰囲気ではない。

 ヴィラン側は鬼舞辻無惨のパワハラ会議よろしくボスが「いかに不機嫌に部下を殺すか」を少し演出して考えてたり、「横走り」を得意とする怪人カニ男がジェイソン・ベイトマンだったりで、むしろこちらの方が笑える。

 

アイリッシュマン』

【採点】A

【監督】マーティン・スコセッシグッドフェローズ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】その男の名はフランク・シーラン、アイリッシュアメリカ人。通称アイリッシュマン。フィラデルフィアで食肉を運ぶトラック運転手をしていたが、イタリア系マフィアのラッセル・バファリーノ、全米トラック協会の委員長で大統領に次ぐ権力者と言われたジミー・ホッファとの出会いを通じて、伝説のヒットマンとなっていく。

【感想】

 夢のような布陣。上映時間が長いが余計な装飾はなく、しかしいつも以上に必要な「間」が、分断され点で配置された「とある旅行」の道中に割かれることになる。

 切れでいうとスコセッシの中では一枚落ちると感じたが、ラストシーンがあまりに見事で感嘆。脚本ザイリアンの案だろうか、スコセッシの案だろうか。本作と被る映画群やアメリカ史を勉強しながら繰り返しねぶるともっと味が出てくるだろう作品。

 

『嵐の中で』

【採点】A

【監督】オリオル・パウロインビジブル・ゲスト 悪魔の証明

【制作国/年】スペイン/2018年

【概要】1989年嵐の夜。自宅で留守番していた少年ニコは事件を目撃する。その25年後、同じ家に今は看護師のベラが夫、娘と共に暮していた。ある夜、25年前と同じような嵐が訪れ、ベラは不思議な現象に遭遇する。それは複雑に流転する運命の起点だった…

【感想】

 活気づくスペイン映画から、繊細なSF映画の傑作が誕生。あらすじ何も知らずに見始めたので冒頭から翻弄され、話が次にどこへ向かっているのかという予測を何度もミスリードされる。ゴールを少しずつズラして推進していくのが巧み。効率的な省略そのものに潜む意味。内容説明したくない。見て損なしです。

 

『ボイス ー深淵からの囁きー』

【採点】B

【監督】アンヘル・ゴメス・ヘルナンデス(長編デビュー)

【制作国/年】スペイン/2020年

【概要】引っ越し先の家をリフォームしているとある一家。父ダニエル、妻サラ、そして息子エリック。やけに「蠅」がうるさいこの家に、不思議な気配を感じるエリックを両親は心の病気と理解し、カウンセラーを迎える。しかし間もなくカウンセラーは不審な事故死を遂げ、やがて両親も異常を察知し始め…

【感想】

 定番フォーマットの見せる順番を変えるだけでこうも凶悪なホラーになる。冒頭の移動俯瞰ショットが印象的で、それを回収するラストショットもまた凶悪。襲いかかる「それ」の抱える恨みもまた強いものであるからこそ、事態の最悪さに説得力が帯びる。エンドロール後の続編への色目で「え、そっちで続くの?」とちょっと笑う。

 

『ブレスラウの凶禍』

【採点】C

【監督】パトリック・ヴェガ

【制作国/年】ポーランド/2018年

【概要】美しきポーランドの街ヴロツワフで、猟奇的な連続殺人事件が発生。鬱々とした想いを抱えた女刑事ヘレナは、ワルシャワからやってきた知識豊富な刑事イウォナと共に、この殺人が毎日夕方6時、かつて疫病が流行った時代、それを鎮める為に行われた見せしめの処刑をなぞらえたものだと突き止める。果たして犯人の思惑とは…

【感想】

 かなりの問題児らしいパトリック・ヴェガ監督。ともかくグロい。美しい街を舞台にしながら躊躇なく残虐描写を繰り広げ、それをくたびれた中年女性たちがダウナーなテンションで追いかけていくギャップの悪夢感。たとえば街中で馬が暴走したらどんな画が出てくるか、と考えて「一番嫌な想像」をちゃんと見せてしまう。

 いかにも「この先の犠牲者となる愚者です」という感じで出続ける二人の不快な脇役が最後まで特に話に絡まずただいるだけ(でも後日談まで映る)みたいな雑で謎な点もあり、変な映画を見た… 本当に変な映画を見た。

 

『エクストレモ』

【採点】B

【監督】ダニエル・ベンマヨール(サバイバル・フィールド)

【制作国/年】スペイン/2021年

【概要】日本でヤクザと過ごしてから狂ったとされるマフィアのルセロに付き従い、組織を壊滅させたマックス。しかしルセロの狂気はマックスにまで及び、息子を殺害されてしまう。それから二年。静かに牙を研いでいたマックスに、近所の悪ガキ、レオが懐き始める。マフィアたちのコンクラーベが始まる中、マックスは復讐を開始する。

【感想】

 スペイン映画が肉弾アクションでも仕掛けてきた。冒頭のマフィア皆殺しのテンションがずっと続けば『シャドー・オブ・ナイト』『ザ・レイド2』級の傑作になったかも知れないが、自動車修理工場での「その場にあるものを使った殺戮ショー」、本作の良心でもあるヤクザとのスデゴロ、日本刀を振り回すルセロとの決闘、とバリエーション豊かでありつつ、しかし迫力は話が進むごとにトーンダウンしていくのがやや惜しい。

 

『FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー

【採点】B

【監督】クリス・スミス(ジム&アンディ)

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】史上空前の大失敗とされる巨大音楽イベント、ファイア・フェスティバルの顛末を綴るドキュメント。成り上がりの自信家、ビリー・マクファーランドは大御所ラッパーのジャ・ルールをパートナーにつけ、セレブを呼べるアプリ開発と、その宣伝の為のバハマビーチ音楽フェスを立ち上げる。ノウハウなど何も持たないまま…

【感想】

 事実が面白過ぎるのでどのようにも切り取れる話ながら、クリス・スミスは簡潔に伝える。責任者が無能なまま動き始め、そのまま止まらない不出来なシステムの恐ろしさ。2021年東京に向けてこの数年間動き続けていたことは、正に本作が描いた笑うしか無い壮大な虚しいコントの国家総動員版なのだ。

 惨憺たる事態とは別に、ビリーという誇大妄想家の人間性への興味も抱く。

 

『狩りの時間』

【採点】C

【監督】ユン・ソンヒョン(視線の向こうに)

【制作国/年】韓国/2020年

【概要】近未来、国際通貨の導入によってウォンが藻屑と消えた韓国。出所したばかりのジュンソクは地獄のようなこの国を逃げ出す為、親友のギフン、チャンホ、更に賭場で働くサンスも引き入れ、暴力団の資金横領を計画する。やがて彼ら4人を追い込むためにある男が動き出し、「狩りの時間」が始まるともつゆ知らず…

【感想】

 クソ惜しい映画。ただの廃墟や町並みを序盤はSF的、次第に「逆『コラテラル」といった空気に変えていく撮影の魅惑。「たった一人のヤバイ男に追われ、狩られる」という設定の妙味。この男ハンの顔が照明でボヤかされた時の「人間じゃない」感。その全てがめちゃくちゃ気持ちいいのに、話は妙に情緒に寄り添って煮え切らない。

 追いかけっこに終始して欲しかったなぁ。

 

『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』

【採点】

【監督】アリス・ウー(素顔の私を見つめて…)

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】田舎町の駅舎で父と暮らす、中国移民の高校生エリー。当然のように疎外された存在だが、地頭の良さから代筆業で僅かな小銭を稼いでいた。ある日、いかにも頭の悪そうなアメフト部のポールから、学園のマドンナ・アスターへのラブレターの代筆を依頼される。アスターこそは、エリーが密かに想っている相手であった…

【感想】

 決して感情を大ぶりさせない丁寧さで、ささやかな青春を綴る。エリーがポールを見直す瞬間、ああいう優しい場面に弱い。

 ジョギングするポールと自転車に乗るエリーの掛け合い。日常的に線路上で見送る列車。この2つが最後に一つの絵としてマッチする。大傑作『ローラーガールズ・ダイアリー』の旅立ちのバスを思い出しつつ、新しい傑作誕生に胸が暖かくなる。

 

『バーシティ・ブルース作戦:裏口入学スキャンダル』

【採点】B

【監督】クリス・スミス(FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー

【制作国/年】アメリカ/2021年

【概要】大学受験カウンセラー、ウィリアム・シンガーが多くの受験生の親をそそのかし、アイビーリーグを中心に名門大学への裏口入学を行ってきた事件の再現ドキュメント。そもそもがおかしい寄付金システムの裏を突いてきたシンガーの手口が一度に50件以上バレ、事件は全米を巻き込むスキャンダルとなっていく。

【感想】

 クリス・スミス監督はここでは主犯シンガー自ら盗聴したテープを元に、リッチな映像の再現VTRを豊富に用い、視聴者を現場に誘っていく。アメリカのエンタメ型ドキュメントとフィクションの境界線の曖昧さを自明のものとしているよう。

 映画の中心に居続けるのにまったく心が見えてこないシンガーの空白が印象的で、『FYRE』と併せると、クリス監督の興味の対象が明白になってくる。

 

『13th -憲法修正第13条-』

【評価】A

【監督】エイヴァ・デュヴァーネイ(ドラマ『ボクらを見る目』)

【制作国/年】アメリカ/2016年

【概要】アメリカにおける黒人の被差別の歴史。表向きは撤廃された奴隷制が、どのようなシステムに形を変えて生き残ってきたか。一見無関係に思える法整備や、映画で見慣れた場面が持っている隠れたプロパガンダとは何か。それら全てがまったく過去のことではなく、現代まで地続きであることを冷静に暴いていくドキュメンタリー。

【感想】

 脳内で、アメリカの歴史について描いてきたあらゆる映画の記憶が凄まじい勢いで繋がっていく。映画で見慣れた、「ドラッグをやっている人間のもとに銃を構えた警官が乗り込んでいく」という場面の意味が根底から覆る。そして背後で蠢くロビー団体ALEC(米国立法交流協議)」の存在。そのまま「日本会議」と訳していいくらい。

 とにかく情報量が多く、まだ消化しきれてない。また5年後の今見てもあまりに意義深く、また現実で起こっていることを確かめる為の物差しにもなるので、今後定期的に観ていこうと思う。

 本作の次にネトフリが推奨する本作の監督デュヴァーネイとオプラ・ウィンフリーの対談も非常に面白く、オプラの知性に驚いた。誰だオプラのことアメリカの上沼恵美子って言った奴、失礼にも程があるだろ(当然オプラに)。

 

『本当の僕を教えて』

【評価】A

【監督】エド・パーキンズ(次回作『ダイアナ(原題)』)

【制作国/年】イギリス/2019年

【概要】ドキュメント。10代の終わりに交通事故で記憶を失ってしまったアレックスは、唯一覚えていた「マーカスは双子の兄弟」という事実を頼りに、マーカスに教わるままに赤ん坊レベルから人生をやり直す。けれど32歳になったある日、アレックスはマーカスから「自分についての本当のこと」は教わっていなかった事に気づいてしまう。

【感想】

 現在54歳のアレックスとマーカスがそれぞれ無人の部屋でカメラに向かって自分語りをして、次第に真相へ近づいていく。アレックスは記憶喪失によって、マーカスはアレックスに嘘をつき続けたことによって、互いに人生が欠落している二人が、「自分」を取り戻すあまりに辛い告白の三幕目。その「画面」が持つ、それを搾取する残酷性と、たしかに「埋め合わされた」と感じさせる映像の業。

 映画の再現ショットが箱庭療法のようにも機能していく。非常にヘビー。

 

 

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星の王子ニューヨークへ行く2』

【採点】A

【監督】クレイグ・ブリュワーブラック・スネーク・モーン

【制作国/年】アメリカ/2021年

【概要】あれから30年。国王に就任したアキームだったが、あのクィーンズで過ごした日々の中、酔わされて撒いた子種が立派な息子に成長し、今もニューヨークで暮していると知らされる。再びクィーンズへ渡り、息子ラヴェルに出会うと、次期国王候補としてザムンダ王国に連れ帰るが…

【感想】

 オリジナルを尊重しまったりコメディもやりつつ、音楽場面だけは急に軽快。アメリカの文明を持ち上げることはなく、さりとてザムンダも保守的なまま。この見事な塩梅の内に、本当の「バカらしいこと」を力まず浮かび上がらせていく。

 前作に続き、クレイグ・ブリュワーはサブスクと戯れることでハリウッドとの付き合い方の正答を見つけたのかも知れない。

 

『ウィズアウト・リモース』

【採点】A

【監督】ステファノ・ソリマ(ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ

【制作国/年】アメリカ/2021年

【概要】シリアでCIA工作員を助けることに成功したネイビー・シールズジョン・ケリー。しかし帰国後、仲間たちが次々襲撃され、とうとう身重のケリーの妻までも殺害されてしまう。ロシアの連邦保安庁FSB)への怒りに燃えるケリーは、言動の疑わしいCIA工作員リターも渋々仲間に引き込みつつロシアへ渡るが…

【感想】

 トム・クランシー原作、監督・脚本が『ボーダーランド/ソルジャーズ・デイ』コンビ、主演がマイケル・B・ジョーダン、と込み入っているが、内容はシンプルにアクションの面白さを突き詰めていて、如何に各シチュエーションを魅力的な殺し合いの場として組み立てるかにあらゆるアイデアが注ぎ込まれている。アクションの照明として今年なら『21ブリッジ』や本作みたいな陰影が個人的にベストだなー。

 

サウンド・オブ・メタル ー聞こえるということー』

【採点】

【監督】ダリウス・マーダー(『ブレイス・ビヨンド・ザ・パインス/宿命』脚本)

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】恋人と組んだメタルバンドのドラマー、ルーベン。ライブハウスを転々として生計を立てていたが、ある日突然難聴状態になる。回復の見込みは無いと知らされ自暴自棄に陥るが、聴覚障害者の自助グループで共同生活を始め、音の無い生活に馴染み始める。それでも音楽を諦めきれないルーベンがした選択とは…

【感想】

 序盤が爆音の世界、中盤が無音の世界、そして終盤に、第三の音の世界。自分自身が当事者として音の世界に巻き込まれていく得がたい体験。個人的にずっと右耳に不安を感じているので他人事ではなかったし、終盤の音の世界は言葉で説明してもしょうがない。観て聴いて。全身に焦燥感を宿すリズ・アーメッドの芝居も良い。

 

『トゥモロー・ウォー』

【採点】

【監督】クリス・マッケイ(レゴバットマン ザ・ムービー)

【制作国/年】アメリカ/2021年

【概要】突如、30年後の人類の軍団がタイムワープで訪れる。30年後の人類は謎の生物の襲撃で壊滅状態。もはや兵士の数が足りず、祖先達の力を借りたいと現れたのだ。望んでいた転職が白紙となり失意に暮れていた元軍人の生物教師ダンは参戦を決意。中高年が大半を占める市民部隊と共に、ろくな訓練もないまま30年後の戦場に飛ばされる…

【感想】

 徹底して不条理な前半が最高。スラップスティックな悪夢的事態を世界的規模で進行させる「大嘘」のブラックコメディ。最初から提示されて然るべきドラマ要素が中盤で明かされそのまま中盤で収束しちゃうのも、「見せたいのは別にそれじゃない」ってことなんだろう。ミニマルな終盤も懐かしさがあり、そこに父子揃っての格闘シーンがプラスアルファで長々付いてくるのも楽しい。