アニメ映画の採点 その4

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『サンタ・カンパニー ~クリスマスの秘密~』

【評価】E

【監督】糸曽賢治(コルボッコロ)

【制作国/年】日本/2019年

【概要】ノエルはクリスマスを嫌っていた。両親は離婚、父は仕事、一人用のケーキさえ買えない。一人孤独に帰宅すると、家の中が巨大な工場になり、外はフィンランドに。ここはサンタクロース達がクリスマスのプレゼント配送を準備するサンタ・カンパニーで、父はその役職付きだったのだ。ノエルはカンパニーで働く年の近い子供たちと知り合い、自身もサンタになることを目指してプレゼント配りに取り込む。

【感想】

 冒頭から唖然とするほどの説明台詞、微妙な歌、一切観客を冒険の舞台へ誘うつもりのない気の抜けたサンタ・カンパニーの美術で、ここまで期待値を下げてくる映画も無い。娘ほったらかしにしてる父の描写に魅力が無いのも辛い。何より動的な予感を一切感じさせない平面的なカットが多過ぎる。普段当たり前に見てるアニメのカット割りがちゃんとそれを感じさせるよう作られてるプロの仕事である事がよくわかった。

 どうでもいいけどこの監督と同じ場に居合わせた事あると気づいて急に悪く言い過ぎちゃったかな、って気持ちが沸いてきました。でもダメだと思うよ。

 

『青鬼 THE ANIMATION』

【評価】B

【監督】濱村敏郎

【制作国/年】日本/2017年

【概要】歴史ある建築物の高校に集う、民俗学研究部の部員たち。彼らはOBの古い同人誌に採集された民話に記録された「桔梗鬼」なる存在が、昨今巷で流行りのフリーゲーム「青鬼」の元ネタではないかと気づき、作者に取材を持ちかける。やがて作者の自殺が報道され、部員たちは校舎に閉じ込められた。そして、地下の秘密部屋が開かれる…

【感想】

 パッと見どうしたものかとなるチープなCGアニメながら、青鬼定番のストーリーや従来のレギュラーキャラから離れた我孫子武丸のオリジナル脚本が「邪悪な『氷菓』」とも言うべきミステリーホラーを巧みに仕掛ける。わずか60分で(しかも青鬼が暴れ出すのは終盤近くなってからなのに!)しっかり恐ろしく、グロく、驚きに満ち、ホラー的お約束とその裏切りを両方与えてくれる。佳作です。

 

『劇場版 ポケットモンスター キミにきめた!』

【評価】B

【監督】湯山邦彦劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲)

【制作国/年】日本/2017年

【概要】マサラタウンの少年サトシは、ポケモントレーラーデビュー当日、寝坊して始まりの三種類ヒトカゲフシギダネゼニガメを全て仲間にし損ねてしまう。代わりにオーキド博士から預けられたのは、ポケモンボールに入るのを拒むピカチュウだった。サトシはトレーナー仲間のマコト、ソウジと切磋琢磨しながら、ピカチュウと共にいつか見上げた幻のポケモン、ホウオウとバトルする日を夢見る。

【感想】

 20周年を機に仕切り直しを行ったポケモン映画。後に『ココ』の監督を務める矢嶋哲生が今作から副監督に入り、サトシの旅立ちの物語を新たに描く。ポケモンの数を最小限に絞ることで世界を豊かに映し出すアニメーションの魅力が前面に。ポケモン世界の問題点である動物の扱い方を自覚した上で引き受けるような描写(野生に返すポケモンもいる)、終盤「ピカチュウが喋る」「サトシが死ぬ」といったタブーも畳みかけ、全てのシンプル過ぎる台詞や展開に何かしら意味が詰まっている。昨今の挑戦的なポケモンアニメの嚆矢だったのかも知れない。

 やはり白眉は中盤サトシが見る夢の世界。そこではポケモントレーナー達は現実の小学校で過ごす生徒たちで、屋上の金網越しに、街の向こう側へと旅立つことに憧れていた。あの日ポケモンを通して冒険していた私たちの、ありえたかも知れない姿が映画の中のサトシたちなのか? エンドロールも全然アニメシリーズ知らないのにウルッときてしまう仕掛け。

 

『劇場版 ポケットモンスター みんなの物語』

【評価】A

【監督】矢嶋哲生劇場版ポケットモンスター ココ)

【制作国/年】日本/2018年

【概要】風車やパビリオンの立ち並ぶ風と坂の街フラウシティでは、風祭りの日に伝説のポケモン・ルギアを呼ぶことで「恵みの風」をもたらす風習があった。入院中の弟の為にイーブイをゲットしに来たリサは、フラウシティで旅の途中のサトシ、そしてそれぞれの思惑や人生を背負った様々な人々と交錯することになる。

【感想】

 いよいよ矢嶋監督がメインに登板しての新生ポケモン第二弾。制作はWIT STUDIOで、シナリオもWITアニメ関係者が多く関わる(構成補佐として『リゼロ』『ViVy』の作者も)。サトシの視点を最小限にした群像劇で、とにかく人と人が絡まるたびに話が動く、という物語構造と、巨大パビリオンを頂点として海へと下っていく坂の街の舞台構造とが絶えず抜けの良さを画面にもたらす。秘匿していた土地の罪を明らかにする、という裏テーマも人/歴史と二重にかかっていて誠実。爽やかな風のような映画。

 

『LAIDBACKERS -レイドバッカーズ-』

【評価】D

【監督】橋本裕之ご注文はうさぎですか?? ~Dear My Sister~)

【制作国/年】日本/2019年

【概要】京都で人知れずあやかしと戦う少女たち。彼女たちはかつて異世界で魔王と戦った者たちーーと、すっかり弱体化した魔王本人だった。少女たちと魔王にはすでに京都で戦う理由はないが一部わだかまりだけは残った状態で、現実を乱しかねない「魔王の欠片」を集めながらも共闘してはそれぞれの日常を送る。けれど五山送り火祭りの夜、多くの願いにうんざりした神様が「魔王の欠片」の力を得て暴れ出し……

【感想】

 wikiにある解説文の「自由をベースに構成」「声優たちの演技でキャラの性格付けを行う」「監督はアルバイト感覚で受けた」って、一歩間違えばダダスベリしそうなんだけど見事に一歩間違えてダダスベリしていた。「作ってる方は楽しいんだろうなとは伝わる」という点とテイストの類似性でローリングガールズフリップフラッパーズが浮かんだ。

 

『劇場版 誰ガ為のアルケミスト

【評価】C

【監督】河森正治劇場版マクロスF

    高橋正典(異能バトルは日常系の中で)

【制作国/年】日本/2019年

【概要】ここではない異世界。暗黒竜デストルークに魔法使いのリズ達は立ち向かっていたが、次第に一人また一人とやられていく。世界は暗黒に支配された。一方、現代の日本では女子高生カスミが不思議な声に導かれて、川に飛び降りてしまった。異世界で目覚めたカスミを見て、リズは嘆息する。この世界を護るためにカスミの力が必要で呼び寄せた。でもそのせいで現代世界のカスミは死んでしまったのだと。

【感想】

 ザ「最近のサテライトアニメ」で、立体感溢れるCG、フランス勢の手がける美しい美術世界、水準以上のクオリティの作画をキープしつつ、キャラ造形がデザイン込みでどうにもダサいというか古いというか浮き上がっていて、入り込めない。ソシャゲの映画化としては悪くないような気もするが、どうしたって『エスカフローネ』を想起させる映画オリジナル部分のアイデアの新味の無さは如何ともし難かった。

 

Gのレコンギスタ Ⅰ 行け!コア・ファイター』

【評価】A

【監督】富野由悠季機動戦士ガンダム

【制作国/年】日本/2019年

【概要】TVアニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』を五部作劇場版として再編集・新規カット追加したその第一作目。宇宙世紀の後のリギルド・センチュリー。エネルギー源のフォトン・バッテリーを宇宙から受け取るキャピタル・タワーを護るキャピタル・ガード候補生ベルリは、宇宙から謎のMS「G-セルフ」と共に降下し幼児退行を起こしたラライアや大陸国アメリアから派生した海賊部隊のアイーダとの出会いを経て、戦いの中でその運命を流転。気がつけば宇宙へ飛びだしていく。

【感想】

 TV版との違いはよくわからなかったが、ともかく全編活力が漲っている。理解不能な専門用語が多くさして説明も得られないのは、「実際に未来に飛び込んでそこでカメラを回しているもの」と思えばいい。台詞で何か説明してくれそうな場面になるとわざわざカメラが外に飛んで騒音でかき消してしまう!

 誰かが悩んでようが関係無く周囲ではそれぞれが忙しく自分のことで躍起。人のエネルギーというものが溢れてる。『キングゲイナー』と『Gレコ』で富野由悠季が示してくれたこの活動性とでも呼ぶべきパワーがこれからのアニメの核になれば強いんだけどなぁ。元気になれました。

 

『Gのレコンギスタ Ⅱ ベルリ 撃進』

【評価】

【監督】富野由悠季機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

【制作国/年】日本/2020年

【概要】ベルリ一行を乗せ、海賊部隊と母艦メガファウナは地球圏を脱出。追撃するキャピタル・アーミィと交戦し、混乱の中でベルリは自分を連れ戻しに来たかつての教官デレンセンをMSごと撃ち抜いてしまう。再びの殺人に戸惑うベルリの元へ、事故で飛びだしてしまったフリをして母ウィルミットが合流する。マスクの追撃迫る中、一行はキャピタル・テリトリィを訪れる。そこには現在の地球の中枢を担う機構が敷かれていた。次々戦力が混ざり合う海賊部隊に対して、好戦的なキャピタル・アーミィは直線で戦争へと突き進む。そこには被差別民クンタラとして生まれたマスクの意地があった。

【感想】

 これといった話の区切りは無く前作の延長線上なのだけど、依然、活動的な画面の楽しさがひたすら優先され、あらゆる感情を飲み込んで世界は前へ前へと流れていく。この運動がもたらす楽観性。MSの整備に降下しようとして砂浜に落っこちちゃう整備士、流れで見栄張った後で「嘘ついちゃった」とベロを出すアイーダさん、死にそうになって自分ではどうにもならないのに「私には犬死にというチョイスは無い!」と喚くクリム・ニックetc… みんな確かに生きてるよな。

 鑑賞前に専門用語を覚えておけば、まだ実はそこまで複雑ではない。

 

『劇場版 王室教師ハイネ

【評価】C

【監督】菊池カズヤ

【制作国/年】日本/2019年

【概要】王室教師ハイネが面倒を見る、グランツライヒ王国の4人の次期国王候補の王子たちは今日も絶賛学習中。と、そこへロマーノ王国から絶世の美男である双子の王子が訪れた。グランツライヒの王子候補から何か学べるものはないかとやってきた双子だが、その高飛車な物言いに4人は衝突。仲良くなれる訳がない。ハイネはどこまでも穏やかに見守り、4人が自ずと導き出す答えを待っていた…

【感想】

 not for meではあったのだけど、「この内容で映画にしてしまうのか」「この衒いのないクライマックス逆に初めて見た気がする」という新鮮さは確保出来ている。バトルもなければミステリーもラブもサスペンスもない。見た目に反して幼稚園児みたいなイケメンたちの喧嘩と和解。そのとある和解の表現がクライマックスとなる。そこはやけに快感だった。

 エンドロールであんなものまで展開するのなら、本編でももっとやり過ぎるくらいでも良かったのでは。

 

『劇場版 探偵オペラ ミルキィホームズ ~逆襲のミルキィホームズ~』

【評価】B

【監督】森脇真琴(ドラミちゃん ミニドラSOS!!!)

    桜井弘明アキハバラ電脳組 2011年の夏休み)

【制作国/年】日本/2016年

【概要】旅行先の群馬で、いつものように刑事チームや怪盗チームと争っていた探偵チームのシャロたちミルキィホームズ。そこへ謎の襲来者が現れ、またしてもミルキィホームズは特殊能力「トイズ」を奪われてしまう。続々現れる強敵たちの目的は、シャロの偉大なるおじいちゃん、シャーロック・ホームズとの因縁に絡んでいた…

【感想】

 どれだけアニメーションで遊べるかを競争相手不在のまま全力で競ってるツッコミ不在の世界。まだここまで自由奔放な画面が映画で展開したんだという楽しさ嬉しさがある。比べると『劇場版このすば』はとてもウェルメイドだし、『えいがのおそ松さん』は中途半端だったな感。

 TV版の2期が不条理さの中に独自のグルーヴ感を醸す傑作だったので、本作も最後の敵のトイズを如何に乗り越えるかという部分にそこまでの主人公サイドの無茶を全て投入して「3秒じゃ済まないくらい混乱する」をしてくれれば完璧だったのにな、という無いものねだりがあるけど、それでもお祭りコンテンツの最後に打ち上げた大きな花火、堪能しました。

 

BanG Dream! FILM LIVE』

【評価】C

【監督】梅津朋美(BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage)

【制作国/年】日本/2019年

【概要】ブシロードの人気メディアミックスコンテンツ「バンドリ」の劇場版第一作。ドラマのある作品ではなく、二次元のライブを構築していく。野外コンサート会場に、人気ガールズバンドPoppin'Party、Afterglow、Pastel*palettes、ハロー,ハッピーワールド!、Roseliaが結集。彼女たちの歌と演奏が鳴り響く。

【感想】

 アプリは早々にやめたし先に観たEpisode of Rosalia二部作があまりに映画未満のものだったし劇場版スタァライトを推すべき時期にブシロがこちらにも注力していたのが不満だしで圧倒的悪印象しかなかったバンドリ。でもこの試みは面白いと思った。さながらアニメ版『ブロックパーティー』も可能なんじゃないかと思わされる、バンドリのみならず様々な可能性の試金石。ライブ中に空の色が暮れ、夜になっていくのが良い。

 何より終盤インサートされる「バックヤードの長回し」が、合わせて2時間半あったEpisode of Roseliaよりよほど「映画」していたのだ(2nd Stageにも欲しかった)。

 本作を経て2nd Stageでは歌と演奏の生っぽさがより強化されるので、掛け合いにももっと「生っぽさ」が欲しいな。

 

雲のように風のように

【評価】B

【監督】鳥海永行(科学忍者隊ガッチャマン

【制作国/年】日本/1990年

【概要】中華風の架空の王国「素乾」にて、若き親皇帝の妃候補を集める宮女狩りが行われていた。溌剌とした町娘・銀河も妃候補として後宮に呼ばれ、そこで花嫁修業の日々に勤しむ。やがて意外な新皇帝の正体を知り…? 一方、山賊の身から宮仕えにまで上り詰めたイリューダと渾沌は、退屈な日々に飽いて反乱を企てていた。

【感想】

 監督は押井守の師匠たる大御所である一方、ジブリスタッフを引き抜いて作っている為印象はジブリに寄る。本作から『千と千尋の神隠し』に流用されたかに思えるイメージが散見されてニヤニヤ。一部既に古いなと思う価値観があったり、中盤がダイジェストになってしまうので全てが感慨の一歩手前といった寸止め感はあるものの、微妙に記号に収まりきらないキャラクター達の細かい所作や台詞が楽しい。『ユンカース・カム・ヒア』と並んで、ずっと以前からその存在は知りながら見る方法がわからずにいた作品の一本なので、ようやく両方とも鑑賞出来てスッキリ。

 

『劇場版 魔法先生ネギま! ANIME FINAL』

【評価】

【監督】新房昭之魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語)

【制作国/年】日本/2011年

【概要】ほぼ未完のまま省略気味に終わった原作最終章後のエピローグを、原作者・赤松健の原案を元にアナザーエンディングとして映画化。宇宙規模の魔法大戦を終え、卒業を間近に控えた麻帆良学園3年A組では、翌日にはネギ先生がたった一人のパクティオーの本契約者を選び、他の生徒達からは魔法に関わる全ての記憶が消えることが明らかになる。生徒たちは思い思いの決断をするが、上空に火星が出現し…

【感想】

 まどマギの陰で粗雑に扱われたと話題だった劇場版ネギま、冒頭から完全に擁護不可能な作画崩壊を見せ、ただでさえ映像生理的に破綻してるシャフト演出が完全に馬脚を現した状態に。実際には共同制作のスタジオパストラルが原因らしく、アマプラには状態の良いシーンだけを繋げた再編集版も入っているが、そちらを観ても問題の本質は作画崩壊より根本の演出術の方にある気がしてならない。卒業式のシーンがもう目も当てられない…

 とは言え、アニメ版を見たのも声の付いたネギま!キャラに触れるのも初めてだった為、見ている間は原作の記憶を無数に刺激され、オタ活的には楽しめた。麻帆良学園都市の空間的魅力をシャフトで再現することは恐らく不可能と思われる為(背景美術的には健闘)、いずれ原作の学園祭篇をどこか最新のスタイルを備えたスタジオで改めてアニメ化して欲しいという悲願があります。

 

『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION』

【評価】B

【監督】天衝(劇場版 きんいろモザイク Thank you!!)

【制作国/年】日本/2019年

【概要】アニメ化もされた人気ゲーム『グリザイア』最新シリーズを、クラウドファンディングで劇場版アニメ化。全3作の内、エピソード1『SORD』とエピソード2『ソウル・スピード』を併せたもの。国の組織CIRS(サーズ)によって組織された特殊技能訓練校「美浜学園」に所属する女生徒達が、危険も顧みない奔放さで暗殺の仕事を請け負っていく。

【感想】

 あくまで組織の手駒として動くだけなので『ブラック・ウィドウ』以降に真面目に見たい話ではないし、『ガンスリンガー・ガール』の悪趣味の方が設定のグロテスクさに対して誠実だった気はするが、単純にアニメーションが流麗でアクションが鮮やか。ゲーム原作だから仕方ないのだろうけど、どっかでマスター殺さないかなと思って見ていた。この後単独公開されたエピソード3がdアニにない。

 

『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♩ マジLOVEキングダム』

【評価】B

【監督】古田丈司(DOUBLE DECKER! ダグ&キリル)

    永岡智佳(名探偵コナン 緋色の弾丸)

【制作国/年】日本/2019年

【概要】巨大なキングダムが建造されたステージ【マジLOVEキングダム】に、人気アイドル達が集う。ST☆RISHQUARTET NIGHTHE★VENS。彼らはシャッフルして様々なユニットで、勿論オリジナルメンバーで、最後には全員集合して究極のパフォーマンスを披露してくれるだろう。歌と踊りとトークで、王子様達との絢爛豪華な社交界に酔いしれよう。

【感想】

 何気に興行収入18億円をたたき出し、多くのリピーターを呼びながらもカルト化には至らなかった印象のある作品。前半のパフォーマンスの畳みかけだけでも、アニメで描くライブステージとして現在その極北に位置する金字塔だと思うし、間違いなく一見の価値はあるが、完全に構成ミスで、終盤長いトークコーナーの後に一曲で終わってしまう為、積み上げてきたカタルシスが消失してしまった。上記したバンドリの「バックヤード」に匹敵するワンアイデアも必要だったかも知れない。

 マジLOVEとバンドリが構築した「アニメライブ」という形が今後どう展開していくのか気になる。

 

『劇場版 BEM ~BECOME HUMAN~』

【評価】A

【監督】博史池畠(フリクリ プログレ

【制作国/年】日本/2020年

【概要】リブラシティでの戦いを経て二年後。妖怪人間ベムの面影を追い求める刑事ソニアは、怪しい製薬会社「ドラコ・ケミカル」の捜査を始める。一方、ドラコ・ケミカルに勤める社員ベルムは、人並みの家族、親しい隣人、愉快な同僚に囲まれ幸福な生活を送っていた。何か自分自身に違和感を覚えながら。ドラコ・ケミカルのある都市でバラバラに生きるベラ、ベロに出会ったソニアは、遂にベムの面影をした男に辿り着くが…?

【感想】

 誰もが知ってるあの有名なキャッチフレーズを回収し、完結。久しぶりにアニメ見て推しCPに出会えましたくらいベムとソニアの関係値萌え。TVシリーズは未見だったけれど、どこか薫る『DARKER THAN BLACK』の匂いですぐに浸れる。劇場版GARO(アニメ)二作、或いはI.Gの一連の劇場版アニメにも通じる、「TVシリーズでキャラを完成させ、改めてオーソドックスな物語を映画でしっかり見せます」シリーズ。こういう作品群が当たり前に楽しめるという事はありがたい。

 ゲスト声優のキスマイ宮田が普通に馴染んで、且つハマっている。

 

ストライクウィッチーズ 劇場版 501部隊発進しますっ!』

【評価】

【監督】伊藤史夫(ワールドウィッチーズ発進しますっ!)

【制作国/年】日本/2019年

【概要】ストパンの世界をコミカルにコミカライズした『501部隊発進しますっ!』を、『劇場版ストライクウィッチーズ(2012)』と同じタイムラインのみ切り取って劇場版アニメ化。この世界線に於ける宮藤もネウロイとの戦いを終えて帰郷し無職。人目を気にしていたが、坂本の提案で欧州の学校へ留学を目論見、みんなに会いに行くことに。宮藤に憧れる服部も同行するが、宮藤はとんだむっつりスケベだった。

【感想】

 紙芝居風の省エネ作画でわずか30分の劇場版とは舐めた真似そのものだけど、人型ネウロイをぞんざいに始末して以降、何やっても真面目に見るだけ損をする気がするシリーズに見切りを付け、もう劇場版を最後についていけなくなった身としては、胸がすいた。また、この一年色々見てきた「ぬるぬる動くがキツいギャグアニメ映画」の数々と比べても見やすく素直に笑え、ギャグアニメ(notコメディ)はこのくらいの省エネ作画が最適解の気もする。沢城みゆきさん始め、名だたる声優陣がこの規模のギャグを全力で演じるのも楽しい。

 それはそれとして佐伯昭志監督のルミナスウィッチーズは楽しみですね。

 

『劇場版 世界一初恋 ~横澤隆史の場合~』

【評価】

【監督】今千秋(劇場版 美少女戦士セーラームーン Eternal)

【制作国/年】日本/2014年

【概要】親友・高野にフラれてしまった出版社社員・横澤隆史は、やけ酒を呷っている最中に人気少年マンガ誌「ジャプン」編集長・桐嶋禅に声をかけ、そのまま意識朦朧。翌朝目覚めるとホテルでベッドの上にいた。編集部では強面で通す横澤だが、桐嶋の存在が気になって仕方ない。しかし、ある時桐嶋の家に呼ばれると、そこには幼い娘がいて…

【感想】

 映画としての魅力は特に無いのだけど、横澤が桐嶋に惹かれていく過程を丁寧に、そして堀内賢雄×蒼月翔(変名です)というベテラン声優の掛け合いで見せるので、不思議と落ち着く。実年齢問わず自由にキャラを演じられる声優の醍醐味をちゃんと提示出来ている作品だと思った。同じ話を若手人気声優が無理に渋く演じたとして、ここまでの落ち着きを出せるかというと怪しいだろう。

 誰もヘテロかゲイか気にしてない(ように見える)世界なのも面白かった。

 

『劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか -オリオンの矢-』

【評価】

【監督】桜美かつしアリスと蔵六

【制作国/年】日本/2019年

【概要】人気シリーズ劇場版。監督は第一期の山川吉樹からバトンタッチされた他、脚本を原作者大森藤ノが自ら手がけるオリジナルストーリー。ベルくんは、女神アルテミスがヘルメスを使って主催していた「とある矢を引き抜く」催しにて見事、成功する。アルテミスはベルのファミリアを引き連れて、モンスター・アンタレスの討伐に出発。神代よりアルテミスとは旧知の仲であったヘスティアは、次第にアルテミスへの違和感に確信を覚え、時折切ない表情を見せるが…

【感想】

 恐ろしく単調で凡庸。既に記憶が遠いので美化してしまっているかも知れないけれど、山川監督の第一期はストーリーよりも、ファンタジー空間やそこでの些細な芝居のディティールを立体的に捉える、端々のハッとする瞬間が魅力的だった。そうした繊細さは失われ、猥雑さを生み出す筈のレギュラーキャラの圧倒的な多さもまるで真の賑わいを醸し出さず、全ては事務的に処理されていく。監督が替わるとこうも…という。

 また、流石に2019年にもなってまだ「ただの女の子だよ」「女の子は守ってあげなきゃ」「泣いてる女の子は~」的な台詞を頻発させてる原作者のセンスも疑う。

 ガッカリ映画でした。

 

天使のたまご

【評価】A

【監督】押井守うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

【制作国/年】日本/1985年

【概要】ほとんど説明のない世界。地形はこの世のそれでなく、空に昇る異形、街を漂う巨大な魚影、それを追う人々、すべては夢幻の如く。その中を、大事そうに卵を抱えて少女が駆けていく。十字架のようなものを掲げた少年と出会い、少年と少女はしばしの邂逅を見るが、やがて少女は卵が砕けたことを知る。

【感想】

 24時間起きてる状態で「絶対眠くなる」と言われる本作にチャレンジしたけれど、特に鑑賞して眠いということはなかった(『アサルト・ガールズ』とかに比べたらメチャクチャ観客の目を見て作ってる)。天野喜孝の意匠と小林七郎の美術、レイアウトが綺麗に融合して、独特のイメージは非常にキャッチーなものが羅列される。後生大事に抱えた卵の中身は何か。その答えは人の数だけあるだろうが、ミニマルさに逃げず宗教的モチーフを手放さない事で得られるスケール観が残る。

 恐らく10代の多感な頃に見たら繰り返し浸ってしまったのではないかと思う。こうして浸れる空間を持ったアニメ映画は今意外と少ない。タルコフスキーノスタルジア』を想起したが、『惑星ソラリス』の影響があるとのこと。

 仏教モチーフとされてる『宝石の国』の「月人」って、むしろ本作が元ネタでは…?