身体は視える ー 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE エーデル- Delight』感想

YouTubeで期間限定放映された『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE- Delight』を視聴。こちらは2月18日(金)初演の模様。

発売予定のBDに収録されるのは千秋楽のものになる予定。

自分が観劇したのは2月23日(水)アフタートーク:小泉萌香の回でした。

 

 

実際に見たものでは胡蝶夫人やメイファンら、もっと自由に暴れてるキャストが多かったり、初日の時点で完成されてるけど尾崎由香さんが神がかってて、触発されるように野本さんが本気を出していくような相乗効果があったり、負けじと門山さん倉知さん、晶を巡る女性陣が異様な熱気を醸していたりしたと思います。

アフタートークのもえぴがホームで仲間たちと語らう楽しさからかMCとしてはダラダラの極みだったことも懐かしい。ずっと表情も姿勢も崩れてました。

 

一方、生で見ると、この脚部の長いX状といった『階段』のセットをめまぐるしく二十名以上の登場人物が行ったり来たりする面白さは幾度となく混乱を呼び、映像で俯瞰して見るからこその良さも大きかったりするので、今回の配信は配信で新鮮に楽しめました。

 

本作、この階段をフルに使って大人数が行き交う見せ場が冒頭、中盤、終盤と三段階も用意されており、ミュージカルパートだけなら83分しかないのが不思議で仕方ないくらい。

 

〇冒頭

宝塚風の煌びやかなショー。

スピンオフではあってもオールスターがここに揃ってるぞ、という開幕宣言としても強いし、そこから投影される反転文字、舞台裏でのミチルと小春の遭遇。本公演で精神的な葛藤の主人公を担う二人の導線をあらかじめここで開示しておいてから、ここが実はエピローグで、過去に遡りラストに再び還ってくるという映画的な構成。

このプロローグだけで一切の無駄なくあらゆる情報を詰め込んでいて、このあとどんなに自由な遊びがあっても回収出来る作り。

 

〇中盤。

シークフェルト中等部お披露目の場。

単なる紹介篇になりそうなところ、ここに聖翔一年も登場させて(さくら達見たかったけれども)、真ん中に翻弄される小春を置くことでこんな群舞として面白い見せ場になるなんて、どういう頭してたら考えつくんだろう。

スタァライト、基本的にどの見せ場も舞台の感覚でしか発想できないもので、そこがもしかしたらアニメの再現を優先する「2.5次元」とも一線を画しているのかも知れない。

階段の下段で新世代がワチャワチャし、中段で小春がビシッと〆ると、その上にいよいよ満を持してクロディーヌが登場し、それに留まらずミチルが登場して「全員VS晶」の構図を示して、と「どこまで人増えるの?」というピークで話を区切ってクライマックスのお膳立てを終える。

構成が、巧い。。。

 

〇終盤。

いよいよ始まるレヴュー『エーデル』

トリックスター・ミチルの仕掛けで晶VSその他大勢という構図の物語が始まる。一見、晶を言い負かす為の舞台装置に見えて、氷雨が晶に助太刀したことで形勢が見えなくなり、そして満を持して『Delight to me!』を全員で歌唱しながら戦う。

ここ。観劇した時は「この曲ライブパートじゃなくて、ここで戦いながら歌うの?」という興奮と、「どこ見ればいいの???」という混乱で感情が迷子だったんですけど、

こうして改めて見ると「どこ」じゃなくて、「敵対し入り乱れている皆が『Delight to me!を歌っているステージ全体」という状況そのものを「浴びる」のが正解だったんでしょうね(配信映像みたいに全体を俯瞰できるハコでは無かったと思う。二階席なら違ったのかな。。。)。

様々な衣装と武器が入り乱れ、このカタルシスがハンパない。

そして落ちサビで最後に登場する文の台詞。

 

「アンタ達が見えないと言った虚像なら、そこで逞しく息してるけどっ?」

 

これが『エーデル』の核だなと改めて。

恐らく古川監督・樋口さん・彼方さん主体で描かれるアニメやゲームのスタァライトであれば、虚像と化した舞台少女は既に死体なので、燃やして次にいかなければいけない。

概念の世界だから。

だけどここ、舞台の上の舞台少女は「生身」なので、たとえ死んだように見えても生きている。目に見えないエーデルが、野本ほたるの身体を通してやけに肉感的に色んな少女にアプローチしてドキドキさせる様も、そこに生の息吹を厭が応にも強調してくる。

歩みを止めた仲間に自死を迫るどこかのクレイジーバナナと違って、追い詰めることで虚像の真価を見ようとしたミチルの目論見。

それが青嵐の背中を押すことにもなる。

プロットで説明しようとすればそれぞれの感情線が破綻してるかも知れないし作劇的にも「ロジックで否定されたものが力でねじ伏せる」という無茶なクライマックスなのに、みんなが共犯となって歌って踊って奪い合うことで成立する。

 

何故、聖翔じゃなくてシークフェルトが「王者」なのか。その答えは提示してくれたステージだったと思いますし、なぜスポットを浴びるキャラと浴びないキャラがいるのかも、今後の流れでもっとクッキリ見えてくるのではないかと感じました。

 

前フリっぽい台詞だけあって特に見せ場なかった栞ですが、ライブステージでポン酢があるから、、、と思っていたけど、最近とのぴさんがめっちゃ踊れる人だと判ったので、なんか勿体ないなとは思ってしまいました。

 

しかしフロンティアはアルカナ・アルカディアで実質主役、シークフェルトは舞台で見せ場があるのだから、凜明館にも何か欲しいですね。

楠木さんに舞台は難しいにしても、朗読劇なら。別に板付きのイベントじゃなく配信でもいいので。ゆゆ子の朗読劇はあったのでそういうつもりなのかも知れませんが。

 

いずれにせよ、まだ心が中等部を応援するには到ってないのがもどかしいです。

なんなら聖翔一年の方が気になってる。

九九組が揃ったところだって一度も生で見れたことないのに。

 

ねじ伏せて欲しい。