愚昧なる神々。の、神々へ ー 『Re:CREATORS』感想


スタッフ

【監督・シリーズ構成】あおきえい

【原作・シリーズ構成・キャラクター原案】広江礼威

【各話脚本】木澤行人中本宗応菅原雪絵・高崎とおる

【副監督】加藤誠

【キャラクター原案・総作画監督】牧野竜一 【総作画監督】中井準

【メインアニメーター】松本昌子・山本碧

【エフェクトアニメーション】橋本敬史

美術監督】永吉幸樹 【撮影監督】加藤友宜 【編集】右山章太

【音楽】澤野弘之

【アニメーション制作】TROYCA

 

キャスト

◇主人公

【水篠颯太】山下大輝

◇被造物

【セレジア・ユピティリア】小松未可子 【軍服の姫君】豊崎愛生

【メテオラ・エスターライヒ水瀬いのり 【築城院真鍳】坂本真綾

【鹿屋瑠偉】雨宮天 【煌樹まみか】村川梨衣 【弥勒寺優夜】鈴村健一

【アリステリア・フェブラリィ】日笠陽子 【ブリッツ・トーカー】斧アツシ

【星河ひかゆ】夏川椎菜 【白亜翔】岡本宣彦 【カロン・セイガ】小野大輔

◇クリエイターズ

【松原崇】小西克幸 【まりね】金元寿子 【中之鐘昌明】杉崎亮

【高良田概】柳田淳一 【八頭司遼】濱野大輝 【駿河駿馬】寿美菜子

【大西にしお】福島潤 【シマザキセツナ】大橋彩香

◇人間

【菊地原亜希】恒松あゆみ

 

STORY.(全22話)

 自作のイラストをアップするかしないか一つで葛藤するクリエイターの卵、高校生の颯太のタブレットで流していたアニメから、フィクションである筈のキャラクター・セレジアが飛びだして来た。彼女は颯太を巻き込み、今度は別のゲームのキャラクターであるメテオラと共闘して、この現実世界で非現実的な力を行使し暴れる謎の少女・軍服の姫君と代々木公園で交戦を始める。

 同時に数多のフィクションの世界から「被造物」と呼ばれる創作上のキャラクターが現実世界に顕現し、自分を作りだしたクリエイター達と接触を始める。

 軍服の姫君の目的は、彼ら被造物をぶつけ合い、闘わせること。創作物から創作上の神々の世界への反乱。しかしクリエイター達には「軍服の姫君」の出典フィクションが何かわからない。ただ颯太にだけは、心の痛みと共に思い出せるイラストがあったーー。

 

 あおき監督の過去作『Fate/Zero』の大枠を用いながら、歴史上・神話上の著名人ではなく現代の(架空の)創作物の著名人たちを召還して闘う、本作の存在そのものが二次創作的なメタフィクション

 前半ではお馴染みのバトル・ロイヤルを展開しつつ、後半は丸々全部を使ってとある舞台で繰り広げられる最終決戦が一から十まで全部描かれる。オリジナルアニメでその戦略性の高いシリーズ構成は高まるし、そもそもの設定が非常に胸躍るもの。なのだが。なのですが。

 微妙に脱臼していく緊張感の霧散が、大江戸温泉でクリエイター達が和むという休息でピークに達した後に、そこから展開する最終決戦を非常に牧歌的で淡々とした段取りに見せてしまう。

 そもそも前半では人死にが出ているのでまだしも、基本、圧倒的に主人公側の被造物の方が多く、また軍服の姫君のバックボーンが明らかにされても「だから強敵だ」という切迫感が生じ辛い為、ゴジラを迎え撃つような高揚感は生じ得ない。

 

 大枠は面白いがハコ書きが不十分で、またハコ書きが十全に成されていたとしてもやはりこの間延びは避けられなかったのではないか。

 これが『BLACK LAGOON』ならばコマいっぱいに並べ立てられた装飾過多な広江節の台詞はそれもまた愛嬌なのだが、映像に置換した際にはひたすら視聴者を置いてけぼりにして自分の頭の中だけで喋っている。劇中のワードを借りるなら視聴者の「承認力」を得ていない。

 それでも、その台詞上で語られる「すべての創作者へのエール」「創作という罪深さ、引いては自分達を作ったこの世界のへの怨嗟と受容」こそが本作を通して描きたかったことである筈なので、だとすれば「長いダイアローグの間をもたせるだけの演出力が足りなかった」という一点に問題は集約されるのかも知れない。

 あおき監督は『放浪息子』や『id:INVADED』のように情報量の少ないキャラ絵だとノンストップで魅力的に描けるのだが、リッチな空間を保とうとすると途端に棒立ちになり演出が停滞してしまう。

 「言葉だけがあってキャラがいない」ような死んだ画が続くアニメだった。中盤の要である颯太と築城院の会話が(その時点では)何の話してるのか全然わからないあたりのどうでもよさは本当にいたたまれず。

(シンプルに、サポート出来るプロの脚本家が入って修正して欲しかったところ)。

 

 逆に言えば、大枠のアイデアだけはこのたった一度きりの物語を思う存分やりきっており、最終回での「大作を見終わった余韻」みたいなものはちゃんとある。

 何がしたいのかもわからない上にやりきったようにも思えないオリジナルアニメが多い中で、ここまで作り手のやりたい事も、何故そこに追いつけてないのかも、赤裸々にすべて晒してくれている事態が面白く、どうにも愛嬌だけはたっぷりあるのだ。

 その試行錯誤を繰り返していけ、と、すべてのクリエイターへのエールは体を張って立派に表現出来ているので、創作に挑戦する者の端くれとして、勇気だけはしかと受け取りました。

 


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 どうすれば良かったのかな~、と考え。

 台詞をこれでもかってくらい削って全13話に押し込めれば良かったのではないかと思うし、構成は面白いのでそれくらいで削った台詞は死なない。ちゃんと視聴者は、特に創作者たちはその余白を受け取れるはず。

 そして台詞を削ることで、創作者、では特にない大多数の視聴者に対しても、蚊帳の外に置かずより広けた作品になれたのではないかな~。