BLEACHより面白い ー 『BLEACH 千年血戦篇』感想

 2022.10 - 12月 O.A

 

スタッフ

【監督】田口智久 【シリーズ構成】田口智久・平松正樹

【チーフ演出】村田光・サトウ光敏 【キャラクターデザイン】工藤昌史

総作画監督】長谷川亨雄・小松原聖・高柳久美子

【アクション・エフェクト作画監督】酒井智史・菅野芳弘・鄭泳勲

美術監督】谷岡善王 【美術設定】天田俊貴 【色彩設計】合田沙織

【編集】三嶋章紀 【撮影監督】山田和弘 【CG監督】佐々木俊宏・後藤和史

【音響監督】長崎行男 【音響制作】ザック・プロモーション 【音楽】鷺巣詩郎

【アニメーション制作】studioぴえろ

 

キャスト

〈現世〉

黒崎一護森田成一 【石田雨竜杉山紀彰 【井上織姫松岡由貴

茶渡泰虎】安元洋貴 【浦原喜助三木眞一郎 【石田竜弦】成田剣

【黒崎一心/志波一心】森川智之 【黒崎真咲】大原さやか

【黒崎夏梨】釘宮理恵 【黒崎遊子】瀬那歩美 【鰻屋育美】甲斐田裕子

【石田依澄】五十嵐麗 【片桐叶絵】能登麻美子 【コン】真殿光昭

 

〈尸魂界(ソウル・ソサエティ)〉

一番隊【山本元柳斎重國】高岡瓶々 【雀部長次郎忠息】山口太郎

二番隊【砕蜂桑島法子 【大前田希千代】樫井笙人

三番隊【鳳橋楼十郎】樫井笙人 【吉良イヅル櫻井孝宏

四番隊【卯ノ花烈】久川綾 【虎徹勇音】ゆかな

五番隊【平子真子】小野坂昌也

六番隊【朽木白哉置鮎龍太郎 【阿散井恋次伊藤健太郎

七番隊【狛村左陣】稲田徹

八番隊【京楽春水】大塚明夫 【伊勢七緒】生天目仁美

九番隊【六車拳西】杉田智和 【檜佐木修兵】小西克幸

十番隊【日番谷冬獅郎朴璐美 【松本乱菊松谷彼哉

十一番隊【更木剣八立木文彦

    【斑目一角檜山修之 【綾瀬川弓親】福山潤

十二番隊【涅マユリ】中尾隆聖 【阿近】奥田啓人

十三番隊【浮竹十四郎】石川英郎 【朽木ルキア折笠富美子

    【可城丸秀朝】波多野渉

    【行木竜ノ介】山下大輝 【斑目志乃】瀬戸麻沙美

「無間」投獄【藍染惣右介】速水奨

【四楓院夜一】ゆきのさつき 【市丸ギン遊佐浩二 【東仙要】森川智之

 

〈霊王宮〉

【兵主部一兵衛】楠見尚己 【二枚屋王悦】上田櫂司

麒麟寺天示郎】志村知幸 【修多羅千手丸】佐藤利奈 【曳舟桐生】恒松あゆみ

 

〈虚圏〔ウェコムンド〕〉

【ネル・トゥ】金田朋子

【ペッシェ・カティーシェ】子安武人 【ドンドチャッカ・ビルスタン】郷里大輔

【ロリ・アイヴァーン】武田華 【メノリ・マリア】原田ひとみ

【グリムジョー・ジャガージャック】諏訪部順一

【ティア・ハリベル】緒方恵美 【エミルー・アパッチ】佐久間紅美

フランチェスカ・ミラ・ローズ】石塚さより 【シィアン・スンスン】瀬那歩美

 

〈見えざる帝国〔ヴァンデンライヒ〕〉

【ユーハバッハ/???】菅生隆之 【キルゲ・オピー】山寺宏一

【ユーグラム・ハッシュヴァルト】梅原裕一郎 【エス・ノト】松岡禎丞

【アスキン・ナックルヴァール】武内駿輔 【バズビー】小野友樹

【バンビエッタ・バスターバイン】竹達彩奈 【BG9】田中秀幸

【ロバート・アキュトロン】土師孝也 【マスク・ド・マスキュリン】間宮康弘

【ドリスコール・ベルチ】金光宣明 【ナナナ・ナジャークープ】前野智昭

【ベレニケ・ガブリエリ】KENN 【ジェローム・ギズバット藤原貴弘

【アズギアロ・イーバーン】駒田航 【リューダース・フリーゲン】濱野大輝

【蒼都】倉富亮 【ロイド・ロイド】小林裕介【ぺぺ・ワキャブラ-ダ】山口りゅう 

【ミニーニャ・マカロン上田麗奈 【キャンディス・キャットニップ】内山夕実

【グレミィ・トゥミユー】花江夏樹 【ジャズ・ドミノ】高橋伸也

【リジェ・バロ】日野聡

 

 and more...! 書き切った! いや書き切れてはない! もっといた!

 長年継続してきたシリーズだけが許されるこの情報量。そこに後乗りする図々しい気分は探検家。アニメ版『BLEACH』を見るのはこれが初めてでした。あのキャラもこのキャラもこんな声してるのか!(そして今となっては大御所ばかりや)という発見尽くし。

 原作は後追いで何十巻も一気に追いついて、最新刊に到着した頃には既に千年血戦篇に突入していたように記憶しています。そして申し訳ない、「早く終わらないかな、このマンガ」と思うくらいには、既に心離れてました。それでも付き合いを止められななかったのは、それだけ序盤のルキア奪還編が兎に角ワクワクしたから。後はその期待値のお釣りといった印象のまま、さして盛り上がることなく最終巻まで読了。

 

 なので今さら最終章アニメ化と聞いて、「え、最後の方面白くなかったけど大丈夫?」と思いながらも、近づく放映に向けて一年前から高まるカウントダウンの高揚感。YouTubeを通じてその昂揚を世界的に共有出来ていると理解るのも外野からの根拠なき祝祭感に拍車を掛けます。

  

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 そして始まった本編--実際、祭りでしたね。ただでさえ登場人物の多いストーリーに何を加えるか。そう、要素を「足す」んだよというわかり手。一話一話を盛り上げる為に多数のキャラが現れては景気よく暴れたり散ったりしてまた次の群れに場面が変わる。

 第一話の一護の狭い部屋の中でドッタンバッタンする一連のショットで、あらかじめ画面が無駄なく締まっていることをちゃんと伝えてくれてからの厖大な人物数なので、その安心感は途絶えないのも頼もしかった。

 

 原作苦手だった要因の一つに、ソウル・ソサエティにしろウェコムンドにしろなんにしろ、どこもモノクロ殺風景のイメージで、現世に比べて世界観が寂し過ぎないかと思った点があるのだけれど、アニメ版は意外とここに過度な色をつけず、白と黒ではないにしろ白、あるいは黒ともう一種の単色といったシンプルなコントラストの色彩が舞台毎に用意されている。

 この二色の世界は最終的には過去編で混ざり合い訣別する「死神/クィンシー」の太極図のようだし、OPの大胆なピンクと白の構図ごとそのまま本編に取り込んだラストシーンで一護が自身のルーツに触れて裸一貫、借り物の力を越えてただ自分自身として刀を握る=真のヒーローとして覚醒する瞬間に回収される。

 原作寂しいからもっとカラフルにしてほしいなーと思っていた自分が恥ずかしく、むしろ限られた色彩で際立つ構図という点で原作を捉え、その解釈に則って空間を拡大して紡がれる丁寧さ。

 田口智久監督のペルソナで培ったオシャレなレイアウト、前作『アクダマドライブ』のエッジの効いた画面統制力がそのままフルに発揮されていて、意外と「久保帯人作品」であると同時に「田口智久作品」としての色が濃い(ペルソナ3劇場版シリーズの内、「面白い回」は田口監督です)。昨年の映画『夏へのトンネル、さよならの出口』をスルーしてしまったのが今さらながら痛い。

  

 枠がしっかりしてるからこそ本編の混沌も瓦解はしない。ともかくヴァンデンライヒ第一次侵攻中の、今そこに映っているキャラが1カット後にその位置を確保しているか怪しい、編集の魅力、つまり映像の魅力は賑やかでたまらなかったですね。

 原作で覚えてるドラマチックな要素はほぼ使い切ってしまったと思うのですが、この先も分割で3クール続くのに大丈夫か。。。? という不安は既にだいぶ薄かったり。

 たぶん原作の足りない箇所をガンガンに補ってくれるのではないかという期待があります。(原作より犠牲者増やしてもいいのではないかな。。。ボソ)

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 この作りのPVで杉山さんの声がするともうこっちしか浮かばないw

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 余談。

 それぞれの役割を越えてただ多くのキャラが出る事が生み出すエネルギーがあって、それは緊張感の飽和と紙一重なのだけれど、上手くいくとその世界を隅々まで息づかせてくれる。

 そんな事を最初に教えてくれたのは『灼眼のシャナⅢ〈Final〉』でした。ここまでの過程でどうも原作と小林靖子オリジナルが齟齬を来たしていたらしく、アニメを一気見した自分でも最終章は「初めて見た」作品かのように知らないキャラが無限に沸いて出てきて、話は理解出来ていないにもかかわらずひたすら胸が熱くなって祝祭感に酔いしれていたのを覚えています(主人公が悪の親玉になりヒロインと対立する、という大筋が強いので、細部がいくら複雑でもブレない)。

 先日亡くなった黒崎真音さんがボーカルと作詞を努めたこのED、ただ一枚絵が続くだけなのにエモくて好きでしたね。

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 追記。長寿シリーズの強みである豪華声優が「若き日」の自分も演じるのが『千年血戦篇』の良さでしたが、ほぼ台詞が奇声で固定されているドンドチャッカのCV.が、十年前に自死を選ばれた郷里大輔さんがそのままクレジットされていました。過去素材の流用でしょうが、表現の上では役者としての再生が叶っている訳で、それはまるで霊魂の。