盛夏の映画の採点

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ショートターム/ウォールフラワー


 

見づらかったので、今回からBの色を変えますね.

B=黄色で自分の能が認識していたもので.

 

GODZILLA 星を喰うもの』

【採点】D

【監督】静野孔文瀬下寛之

【制作国/年】日本/2018年

【概要】ビルサルドの裏切りに遭い、ユウコは脳死状態に。ハルオの処罰が待たれる中、メトフィエスは着々と信者を増やしていた。ハルオが唐突に現地人の双子の少女の片割れとセックスする間、メトフィエスは「ギドラ」を呼び覚ます禁断の儀式を進め……。

【感想】

 CGアニメである事が裏目に出て映画史に残る退屈を刻んでしまった一作目や、メカゴジラは都市であったという斜め上の設定の特徴をただの落とし穴としてしか見せられなかった二作目の破壊的なしょぼさに比べると、ギドラのデザインは初めてCGアニメであることが活かせて、尚克つハルオの物語としてのラストシーンには微かなカタルシスが。今までで一番マシ。

 難解な語彙が多いので眩惑させられるけど、シリーズ通して『映像だけじゃよくわからないと思いますが皆さん、今は驚きの事態が起こっているんですよ』という言い訳みたいな説明台詞が大半なのがそもそも問題で(虚淵さんこのパターン本当多い)、説明なしでも驚けるようなことが画面上大して起こっていないのだ。アニメなのに。

 

モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』

【採点】B

【監督】江崎慎平

【制作国/年】日本/2016年

【概要】「モンスト」のバトルに明け暮れる高校生のレンたち。異常事態発生により、物語は過去へ遡る。小学生のレンたちは怪しい研究所に迷い込み、ドラゴンを目撃する。失踪した考古学者の父がドラゴンを求めていたことから、レンは事件に深入りし、仲間たちと旅に出る。

【感想】

 『ストレンジャー・シングス』で世界に着火したかに見えたジュブナイルなノスタルジィブーム、日本からも何か出来ないものかと思っていたけど同時期にこういう作品があったのか。レンの気持ちにばかり寄り添うのでチーム物としての旅情には乏しいけど、東宝夏休み映画的な一定の満足感があった。

 

『ラストデイズ・オブ・アメリカンクライム』

【採点】D

【監督】オリヴィエ・メガトン

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】近未来アメリカ。人間の脳にチップを埋め込み犯罪を無くす、そんなディストピア法の執行を目前に控えた荒れた国で、犯罪者フリックが--弟の仇討ち? カナダへの脱走? 運命の女との恋? 銀行強盗? あらすじがなんなのかよくわからない。

【感想】

 必ずしも明確なゴールや演出のメリハリを持たない自由で曖昧な大作が観れるのがネトフリオリジナルの面白さなので、こういう映画も大歓迎なんですけど、それはそれとして擁護するにはあまりに面白くなかった。特に前半の主人公とヒロインのラブシーン、一回でいいじゃんw 演出のチグハグさによってクスクス笑える部分は多い。オリヴィエ・メガトン監督、折角のチャレンジだったのにネクストステージへ行きそびれるどころか馬脚を現してしまったのつらい。

 

『泣きたい私は猫をかぶる』

【採点】B

【監督】佐藤順一/芝山智隆

【制作国/年】日本/2020年

【概要】同級生の日之出賢人に猛アタックを繰り返す無限大謎人間ムゲこと笹木美代。日之出に何度冷たくされてもめげないムゲには秘密があった。とある夜以来、ムゲはお面をかぶることで猫のタロウに変身し、そうと知らない日之出に可愛がられていたのだ。家では継母に作り笑顔でしか接せられないムゲは、いっそこのまま猫のままでいいと願い……。

【感想】

 スタジオコロリドの美しい作画世界で岡田麿理脚本の全力青春劇が一気呵成に突き進む前半一時間の充実感が素晴らしかった。そこからクライマックスにかけてどんどん蛇足感が増していくのは勿体ない。あるいはいきなり猫島篇に突入しても良かったのでは。新海誠×野田洋次郎の数倍コロリド×ヨルシカの組み合わせによるケミストリーは発明だと思った。志田未来の声優業は完全に安定の域。ところでこの監督×脚本の組み合わせ、担当回とは異なるとは言え『ARIA』のケットシー回を思い出します。

 

イコライザー2』

【採点】A

【監督】アントワン・フークワ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】タクシー運転手として生計を立てつつ、ひっそり自警活動を続けていたマッコール。読むべき本のリストも残り一冊。静かな生活は充実していたかに思えた矢先、旧友スーザンが暗殺される。誰か知らないがマッコールさんを怒らせたらただでは済まない。おあつらえ向きの嵐の日、迎え撃つ用意も周到に、奴らとの決戦が始まる。

【感想】

 雨降る夜という観賞環境が映画のクライマックスに臨場感を与える幸運なタイミング。続編なのに、金かけて嵐の街を演出してまで「敵はたった4人」というこの地味な規模感がたまらなくちょうど良かった。一作目より好きかも知れない。『ランボー ラスト・ブラッド』に見せて欲しかったのはこういう映画だったのかも知れないなぁ。

 

『Us アス』

【採点】B

【監督】ジョーダン・ピール

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】アデレートは幼い頃、遊園地のミラーハウスで鏡の中の「もう1人の自分」に出会っていた。時は経ち、夫と2人の子供に恵まれたアデレートだったが、家族旅行であの遊園地があるサンタクルーズのビーチへ再び訪れることになる。怯えるアデレートの前に現われたのは、自分たち一家とそっくりの、赤い服着た4人の人間で……。

【感想】 

 ジョーダン・ピールって「とても上手くやってる松本人志」だと思うんですよね。松本がリスペクトしてたギャスパー・ノエもそうだけど、例えば本作ならベルイマンに目くばせをしたりどんなにシネフィルぶってみせても映画の活劇的興味よりも「アイデア」の具現化の方を優先している。自分はそこまで映画原理主義ではないので本作もシュールなコントの一篇として楽しみましたが、退屈と言われても否定できない。

 

『クロール ー凶暴領域ー』

【採点】A

【監督】アレクサンドル・アジャ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】大学で水泳に打ち込むもスカラシップを逃がしかけているヘイリー。地元に嵐が来るため、どうも旧家に向かったらしい父親を迎えにいく。自分に水泳しかないのも、今家族がバラバラなのも、あの父親のせいかも知れない。旧家の地下室で再開した父娘を、浸水とワニの二大ピンチが襲う。父娘はこの「ドン底」から脱出できるのか。

【感想】

 アジャの真価を『ヒルズ・オブ・アイズ』ぶりに観た気がする快作。バリー・ペッパーの主役級抜擢も嬉しい。『イコライザー2』と言い、嵐の中というシチュエーションは滾ります。どうしたって手作り感が表れるせいかも知れない。もしくは『フラッド』に植え付けられたフェティッシュ。限定空間での自在なアクション.素晴らしい。

 EDでSee you later alligatorがかかるジョークは『ゾンビーバー』オマージュです?

 

デス・ウィッシュ

【採点】C

【監督】イーライ・ロス

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】『狼よさらば』から続くデス・ウィッシュシリーズのリメイク(『狼よさらば』がシリーズ作品だったとは知らなかった)。外科医のポール・カージーは、もうすぐ大学へ進学する娘との別れを惜しんでいた。しかしそんな一家を強盗が襲い、妻は殺され、娘も昏睡状態に。やり場のない感情に悶々とするカージーだったが、偶然出くわした悪党を痛めつけたことから正義の暴力の快楽に目ざめ、やがて復讐を決行する。

【感想】

 復讐へ向かう怒りも苦しみも嘆きも全部足りないからカタルシスが無い。ブルース・ウィリスがミスキャストだったのか……と思うけど別に『狼よさらば』だってチャールズ・ブロンソンそんな演技巧者かな?と考えると演出力の差。

 主演ニコラス・ケイジならありだったかも。それただの『ヴェンジェンス』だけど.一般人巻き込みまくりのトイレでの攻防、黒幕かと思わせただ兄思いの良い人だったヴィンセント・ドノフリオが良い味.

 これ脚本ジョー・カーナハンなんですよね。カーナハンの演出で観たかった。

 

『魂のゆくえ』

【採点】

【監督】ポール・シュレイダー

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】小さな教会でシンプルな生活を過ごすトラー牧師は、妊娠した若い夫妻の相談を受ける。夫は地球の気候変動を憂う活動家で、この未来のない世界に子を産み落とすことに罪悪感を覚え中絶を願う。やがてトラー牧師の倫理観を何重にも揺さぶる出来事が続き、牧師は今この世界で生きる一人の人間としての己を見つめだす。

【感想】

 スタンダードサイズで質素な空間を切り取るシンプルさが、カメラが得てして豊かに切り取りがちなこの世界から本質の寂寥だけを切り取る。枠の外に神の存在を/枠の内に神の不在を証明する。ベルイマン『冬の光』の陰鬱さを現代のニューヨーク(とてもそうは見えない)に再現させて、私たち個人が余計な目眩ましなく社会や自身の諸問題と向き合うか合わざるべきかを突きつける、「個人的」な映画。大胆なラストを受け止め切れませんでした。映画に比べ自分がお子ちゃまだった。

 

チャイルド・プレイ('19)』

【採点】

【監督】ラース・クレヴバーグ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】リブート版チャイルド・プレイ。下請け工場で解雇を言い渡された工員が、子供たちの友達となるAI搭載型人形バディの一体からあらゆるリミッターを解除してしまう。バディは自分の主人アンディの心が自分から離れるに従って、リミッターの効かないままに暴走を始める。

【感想】

 オリジナル版の愛きょうが無くなった代わり設定としてはむしろ今までで一番合理的なのに、いきなりチャッキーと名乗って中途半端だったり、最初の殺人が猟奇的過ぎて段階を飛ばしてるようにも見えたり(チャッキーが『悪魔のいけにえ2』の影響受けてるのは笑かす)、挙げ句クライマックスのスーパーへのブツ切りのような繋ぎ。どの方向性でも傑作になり得たのに、「スタジオが編集に口出しした痕跡」が透けて見えてしまって、ホラーとは別の意味で居心地が悪い。

 『アトランタ』のペーパー・ボーイが刑事役で登場。キース・スタンフィールド同様今後大量に出演作が待機中らしく、『アトランタ』の余波を知る。

 

『オールドガード』

【採点】

【監督】ジーナ・プリンス=バイスウッド

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】女戦士アンドロマケを筆頭とする少数精鋭の不死身の軍団オールドガード。新たに米軍の女性隊員ナイルが己の体の不死性に目ざめ、その仲間に加えようとする。一方、オールドガードの力をなんとか借りたい元CIAのコプリーは製薬会社CEOメリックに手を貸してしまう。実験目的のメリックの狂気がオールドガードに向けられ……。

【感想】

 アクション映画としては非常に緩いのだけど、長寿故の苦しみや歴史との関与が次々羅列されて、伝奇的な、いやハッキリ言う、FGO的な設定の魅力は抗いがたい作品。露骨にクリフハンガーで終わるので是非とも続編見たいところ。一番の見所はエンドロール。

 

『ラ・ヨローナ~泣く女~』

【採点】

【監督】マイケル・チャベス

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】『死霊館』ユニバースの一本。1973年、L.A。ソーシャルワーカーのアンナは、母親によって監禁されている児童二名を開放する。しかし、その子供たちが揃って溺死する事件が発生。母親はアンナを「人殺し、お前のせいだ」と罵り、アンナの子供たちのもとに奇妙な泣き声と共に白い女が現われ始める。

【感想】

 基本「そっちかと思ったらこっち」パターンがメインでジャンプスケア演出が次々起こり、本家『死霊館』ほど凝り過ぎない(ビニール傘の演出は良かった)。ただサービス精神豊富ゆえに、「そんなあの手この手使ってる割りに子供たちに手を出すの遅いなラ・ヨローナ……有色人種の子供はすぐ殺したくせに」と、久々にハリウッドの欺瞞を嗅いでしまった。アンナ、一言くらいパトリシアに謝ったら? パトリシアはお前のせいで子供たち殺されてんだぞ? 主人公のことが好きになれないと辛いよねという話。

 『アナベル 死霊館の人形』のペレス神父再登場。そして終盤急に登場する強キャラ、ラファエル神父が良い。戦闘能力高そう。今後ユニバースで活躍するんじゃないだろうか。

 

『トリプル・フロンティア』

【採点】A

【監督】J・C・チャンダー

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】民間軍事会社のポープは、かつてデルタフォースに所属していた仲間たちにコロンビアの麻薬王邸急襲、そして隠し資金の横領を持ちかける。人生に光を見失いかけていた男たち5人は作戦を決行するが、事態は予想外の方向へ。

【感想】

 序盤の坂道を使った追跡劇の勾配の捉え方、伝わる役者の息切れに「これは腕のある監督だ」と構えるも、しばしどういう方向性なのかわからない。やがて金に目が眩んだ男たちのはしゃぎようで、「あぁ、これは…」とジャンルが見えてくる。演出の映画。非常にお気に入りです。

 

『ホワイト・ボイス』

【採点】A

【監督】ブーツ・ライリー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】HIPHOPバンドThe Coupのリーダー、ブーツ・ライリーの長年温めていた脚本による監督デビュー作。カリフォルニア州オークランドを舞台に、「白人の声」を使いテレアポでサクセスする貧乏黒人と、進む格差社会の中で起こる暴動を、ナンセンスな笑いで気だるく綴る。

【感想】

 キース・スタンフィールドが主演というのもあって『アトランタ』以降だからこそ成立するような内容、かつ今日の世界の運動とも繋がっているので、これは作られるべくして作られた映画だ、という感動があった。しかしそのシリアスな核の部分を、この上なくふざけたギミックで笑いに変えている為、まったく肩肘張らずに見れる。

 久しぶりに新鮮な感触の映画と出会えた。

 

『見えない目撃者』

【採点】A

【監督】森淳一

【制作国/年】日本/2019年

【概要】韓国映画『ブラインド』の日本版リメイク。警察学校の卒業を控えたなつめは交通事故に遭い、弟と視力を失う。その数年後、盲者として暮らすなつめの目の前で誘拐事件が発生する。半信半疑の警察や、もう一人の目撃者であるスケボー少年と捜査を進めるなつめだが、次第に猟奇的な事件の全容が露わになり……。

【感想】

 先に見た中国版リメイクがポップな余韻へ至ったのと真逆の、凄惨かつ硬質なサスペンス。いかにも邦画的な鈍重な芝居や説明的な台詞もあるのだけど、それらが全部終幕へと効果的に繋がっていくので感動してしまった。犯人の陰惨な儀式が犯人へのトドメの一撃のカタルシスに繋がったり、全編を覆う苦しさが主人公の一言の為に機能したり。見終わると勇気さえ沸くのだから、これは良作。

 

『ドゥ・ザ・ライトシング』

【採点】

【監督】スパイク・リー

【制作国/年】アメリカ/1989年

【概要】ニューヨーク・ブルックリンの一角。黒人街に佇むイタリア人父子によるピザ屋。その店員ムーキーの姿を中心に、周辺に暮らす貧しく傲慢な黒人たち、なあなあで全て見過ごす警察、そしてイタリア人店主の矜持などがユーモラスに綴られる。しかしその微妙な均衡は、ある日呆気なく崩れ去ってしまう。

【感想】

 発言のストレートさに反して複雑な映画の多いスパイク・リーの代表作。前半の「ここには全てがあるんだ」と言わんばかりの、老若男女溢れるストリートの日常描写の多幸感が既に一本の傑作分の満足度があり、その調和が崩れるクライマックスの「一体これをどんな気持ちで見ればいいんだ?」という複雑性に前半と正反対の質の充実がある。

 しかしこれを今の日本人が見ても(お前も日本人だろというツッコミはさておき)「やっぱり黒人は乱暴だ」の一言で一蹴されてしまいそうな怖さも感じる。『サマー・オブ・サム』の混沌、暑さに浮かれて狂う人々は本作の系譜だったのか。

 若きサミュエル・L・ジャクソンがストリートと一線を画すラジオブースの向こう側で「DJ」を演じているのも趣き深い。

 

モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ』

【採点】C

【監督】錦織博

【制作国/年】日本/2018年

【概要】13年前、いきなり東京の一部が分離し、宙に浮かんだ。空の「旧東京」と地上の「新東京」に別れた時代。新東京で暮らすカナタは、死に別れたと思っていた母が13年前からずっと旧東京にいること、そして跋扈するモンスターの存在を知らされ、ストライカーと名乗る少女ソラ達と共に冒険の旅に出る。

【感想】

 オレンジのCGアニメの堂々とした質感、肉体と色彩のくっきりとした印象が、東京の実在の土地を舞台に派手なアクションを展開すると、広瀬アリスの棒読みはさておいて目に愉しい。出来れば終盤お決まりの収束に向かわせず、実写ではなかなか出来ない東京のあちらこちらでのアクションをもっと見ていたかった。地下鉄バトルで地下鉄そのものが龍のように動いて襲い掛かってくるシーンは、数多の映画の中でも初めて見たと思う。

 

『ショート・ターム』

【採点】

【監督】デスティン・ダニエル・クレットン

【制作国/年】アメリカ/2013年

【概要】問題を抱えた10代の少年少女を擁護するグループホーム『ショートターム12』を舞台に、施設のケアマネージャーのカップルに降りそそいだとある難題と、様々な心の葛藤を抱えた子供たちの息苦しさが淡々と、しかし真に迫る切実さで描かれる。

【感想】

 この一年で誇張抜きに死ぬほど見たキース・スタンフィールドの出世作。主演はブリー・ラーソンで、ラミ・マレックまでいる豪華な低予算映画。キース演じる、年齢制限のせいでもう施設を出ないといけない少年が歌うこのフレーズが全て。

「普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった……」

 どうかこの痛みを知って欲しい、これ以上は押しつけないから。こういう子たちがいると知って欲しい。そんな、実体験を基に本作を制作した監督の想いが伝わってくる。

 

『プロジェクト・パワー』

【採点】

【監督】アリエル・シュルマン、ヘンリー・ジュースト

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】その謎の薬「プロジェクト・パワー」を使えば5分間だけ超人能力を使えるか、体内が発火して爆死する。そんな秘薬を巡り、誘拐された娘を探す元兵士アートは暴力によって、街の異変に立ち上がる警官フランクは合法的に、ニューオリンズの街を駆け回る。やがて二人は同じ少女ロビンに辿り付き……。

【感想】

 『ラストデイズ・オブ・アメリカンクライム』と微妙に被ってるし、設定もアクションもルックもまるで新味に欠ける退屈な映画である一方、このテのヒロインとしては珍しい太った黒人の貧乏で犯罪者でもある少女ロビンをエンパワーメントしようという裏テーマがラストのラストで明確に浮き上がり、そう思って振り返ると贔屓したくなる作品。「この映画を見て鼓舞される観客は確実にいるだろう」という確信を持てることはそう多くない。良いことだ。

 

『ウォールフラワー』

【採点】

【監督】スティーブン・チョボスキー

【制作国/年】アメリカ/2012年

【概要】ベストセラー小説を原作者自ら映画化。いつも誰かわからない「ともだち」に向けて手紙を書いている、高校で友達のいない「ウォールフラワー(壁の花)」くんことチャーリー。「でもお姉ちゃんいるし…」と思ってたけど、姉にも一緒にいることを嫌がられてしまい、学食で一人で過ごすみじめな日々が続く。けれどある日、少しの勇気を出して話しかけた先輩パトリックと、パトリックの義理の妹サムと出会えたことで、彼の青春はめまぐるしく色を変えていく。

【感想】

 これぞ青春映画というベタを繊細で優しい人間観察で我がことのように感じさせてくれる愛おしい作品。でもそれだけで終わらない哀しみにも最後には触れていく。エマ・ワトソン(吹替え藤井ゆきよ様とのことで、吹替え版も見たい)とエズラ・ミラーというハリポタユニバースの共演にもワクワク。

 

 

2017年映画ベスト/2010年代映画ベスト100への道⑧

この年の秋からNETFLIXに加入しました.まだNETFLIXプリペイドカードも近所に売っていなかったんですよね.

ランキング入りこそしませんでしたが、『オクジャ』『デスノート』『ヒットマンズ・ボディガード』あたりのネームバリューに惹かれてなければネトフリ入らなかったのです.

 

候補作は135本.

 
1位.LOGAN/ローガンジェームズ・マンゴールド

2位.沈黙 ーサイレンスー(マーティン・スコセッシ

3位.パーソナル・ショッパーオリヴィエ・アサイヤス

4位.ドリーム(セオドア・メルフィ

5位.ナイスガイズ!(シェーン・ブラック

6位.SING/シング(ガース・ジェニングス)

7位.アトミック・ブロンドデヴィッド・リーチ

8位.女神の見えざる手ジョン・マッデン

9位.エル ELLEポール・バーホーベン

10位.ハードコア(イリヤ・ナイシュラー)

 

11位.ザ・ベビーシッター(マックG)

12位.マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)(ノア・バームバック

13位.クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的(アレックス・デ・ラ・イグレシア

14位.新感染 ファイナル・エクスプレス(ヨン・サンホ

15位.キングコング 髑髏島の巨神(ジョーダン・ヴォート=ロバーツ

16位.わたしは、ダニエル・ブレイクケン・ローチ

17位.夜明け告げるルーのうた湯浅政明

18位.この世に私の居場所なんてない(メイコン・ブレア)

19位.昼顔(西谷弘)

20位.ジェラルドのゲーム(マイク・フラナガン

 

 好きな監督をTOP3に並べられるのは気持ちいいですね.

それぞれのスタイルが物語にしっかり寄与して昇華されていました.バーホーベン『エル ELLE』や、もしかしたらガース・ジェニングス『SING』も.演出だけ先走ってキャラの生活が無いのもそれはそれで寂しい.逆に演出の映画として、実はそこまでヒューマンではなく「走る」「歩く」動作そのもので全編を彩った『ドリーム』は野心作であったと思います.

『ナイスガイズ!』はこれが巧い映画だの見本みたいだなと、そういう映画じゃないのにちょっと泣きかけましたね.

マックGがNETFLIXにあまり綺麗に収まった『ザ・ベビーシッター』も何気に衝撃作でした.

後に傑作『ドクター・スリープ』を生み出すマイク・フラナガンのネトフリ映画『ジェラルドのゲーム』が変則サスペンスというジャンル物を通して描いたものも、今の世の中決して見過ごせないと思います.

 

以下、ベスト候補です

 

美女と野獣
ベイビードライバー
マイティ・ソー バトル・ロイヤル
サバイバル・ファミリー
レゴバットマン ザ・ムービー
帝一の國
美しい星
22年目の告白ー私が殺人犯ですー
ジーサンズ はじめての強盗
ジョン・ウィック:チャプター2
ノーゲーム・ノーライフ ゼロ
スパイダーマン:ホームカミング
ワンダーウーマン
劇場版Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い
新感染 ファイナル・エクスプレス
散歩する侵略者
ダンケルク
アフターマス
亜人
劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~
Fate/stay night [Heaven's feel.] 第一章「presage flower」
バリー・シール/アメリカをはめた男
ブレードランナー2049
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
予兆 散歩する侵略者
gifted/ギフテッド
勝手にふるえてろ
ありがとう、トニ・エルドマン
A GHOST STORY
Death Noteデスノート
花に嵐

 

響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~』は総集編のようでTVシリーズの換骨奪胎映画として賑やかな快作.

第三の映画の採点

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Twitterを辿るのやや面倒なので、鑑賞直後の感想をまとめて残しておきたくて 備忘録として書き始めたシリーズでしたが、今回前半の感想がまとめて消えてしまって、鑑賞直後の感想を取り戻そうと取り繕って書き直しています、

 

『響 ーHIBIKIー』

【採点】

【監督】月川翔

【制作国/年】日本/2018年

【概要】小説誌編集部に届いた、謎の作家「鮎喰響」の手による天才的な小説。編集者・花井ふみは人気小説家を祖父に持つ女子高生・凛夏を介して響との遭遇を果たすが、立ちふさがる障害に平気で暴力を振るう唯我独尊少女・響はコントロール不能な存在で……。

【感想】

 絶対的長所である響というキャラを立て過ぎるあまりに多くの短所も内在してしまったアンバランスな原作を、おいしいところだけ切り取って響爆発のサスペンスで引っ張り、話のピークで綺麗に切り上げる。完全に実写化の大勝利。初めて作品を見た月川監督、カメラワークの愉快さに留まらず、平手友梨奈という飛び道具を活かすために、むしろ助演陣の魅力に力を注いでいる演出も心憎い。

 

『A GHOST STORY』

【採点】

【監督】デヴィッド・ロウリー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】ある夫婦が暮らしている。旦那が事故で死亡する。旦那の魂は、シーツをかぶって目の部分に穴の開いた簡易な幽霊となって、家に留まる。やがて膨大な月日が、物言わぬ哀しげな幽霊の前を通り過ぎていく。

【感想】

 あまりに評判が高く、その監督の作品が好きなことも既に判っていて、好みと合致しそうな作品だったばかりに見るタイミングが遅れに遅れ、結果いざ鑑賞しても「なるほどねぇ」止まりになってしまう。そんな経験ありませんか。僕はあります。『アンダー・ザ・シルバーレイク』と本作です。ただ『アンダー~』は映画史には残らないと思うけど、本作は残ると思う。

 

『花に嵐』

【採点】

【監督】岩切一空

【制作国/年】日本/2017年

【概要】大学に入り、映画研究サークルに入部しようとした「僕」は、いきなり「カメラ」を渡され、自分なりに回すよう先輩に命じられる。何も説明されないままカメラを回す僕は、次第に画面の隅に映り込むとある少女が気になり……。

【感想】

 監督自身が露悪的な被写体となる白石晃士イズムのモキュメンタリーで大学サークルミステリー を描きながら、そこいらのメジャー邦画より遥かにクリアな映像と確信犯でトリッキーなカメラワーク、失敗気味だけどMGS的なステルスゲーム要素、ついでに無名ながら可愛い女優陣(監督マジで役得なんだよな……)と目に飽きがこないエンタメ度の高さ。あまりに調子に乗りすぎてエンドロール後のネタは蛇足。

 

Ryuichi Sakamoto:CODA』

【採点】

【監督】スティーヴン・ノムラ・シブル

【制作国/年】アメリカ・日本/2017年

【概要】坂本龍一の5年間を追うドキュメント。社会問題へのコミットやガンの闘病、世界的な映画への劇伴作りと、個人的な新作アルバムへ込めた実験性の模索などの様が綴られる。

【感想】

 主題が分かり辛いのは難点だが、説明しないのは美点だろう。前半、坂本が『惑星ソラリス』を鑑賞しながら、タルコフスキーの映画の自然音は実は調整されきった一枚のアルバムのようである、彼のようなアルバムを作りたいと野心を零す。そして自然の音を集め始め、映画全体が人生を音楽に集約するような音像を残していく。

 

L.A.ギャングストーリー

【採点】

【監督】ルーベン・フライシャー

【制作国/年】アメリカ/2013年

【概要】1940年代、ミッキー・コーエン率いるギャングに支配されたL.Aで、ジョン・オマラ巡査部長は警察組織にも内密でギャング壊滅の為のチームを結成する。暴力VS暴力、戦いの行方を豪華キャストで綴る。

【感想】

 ルーベン・フライシャー監督、天然で無垢なのか意図的に無垢を装っているのかギリギリのラインを渡ってきたこの人らしく、まるで気付かないような素振りであまりにも堂々と『アンタッチャブルごっこに興じ、不正と巨悪に真っ向挑む男たちを讃える。手放しで楽しいタイプの作品。豪華キャストを若干持てあましてる印象も。

 

ドラゴン危機一発

【採点】E

【監督】ロー・ウェイ

【制作国/年】イギリス領香港/1971年

【概要】親族を頼ってタイの製氷工場まで訪れたチェン。しかし、腐敗した工場長らは横領に気付いたチェンの親族を次々殺害していく。チェンの怒りの導火線に火が点くまでは、かなり長い!

【感想】

 ブルース・リー伝説の一本とは言え、現場の混乱が続き監督も定まらず時代設定さえ統一出来なかったという逸話もあるだけあって、いくらなんでも映画としての形を成していないように思う。見え見えのハニートラップに気付かず綺麗にひっかかる流れは逆に初めて見たので、滅茶苦茶面白かった。

 

死亡遊戯

【採点】

【監督】ロバート・クローズ/ブルース・リー(ノンクレジット)/サモ・ハン・キンポ-(ノンクレジット)

【制作国/年】イギリス領香港・アメリカ/1978年

【概要】トラック・スーツ姿の男が五重の塔を登り、一階ごとに敵を倒していく。この強烈なクライマックスだけ監督してブルース・リーが亡くなった。後を継ぐ男たちがなんとか一本の映画に仕上げたのが本作。

【感想】

 この無茶な企画にもかかわらず『ドラゴン危機一発』より余ほどバランスが取れて見えるのはゴールが見えているからなのか。しかし結果として、あたかもブルース・リーの死はウソであったかのように見えるロマンチックな錯覚が。

 

『蒼き鋼のアルペジオ ーアルス・ノヴァーDC』

【採点】

【監督】岸誠二

【制作国/年】日本/2015年

【概要】TVアニメ劇場版二部作の前篇。こちらはTVシリーズの総集編がメインとなる。地球温暖化の影響で陸地をほぼ失った人類の前に、旧大戦の軍艦の姿をした「霧の艦隊」が出現。少女の姿にも代わる彼女らの一人・イオナは人類の側につき、元海軍士官候補生・千早群像らと共に霧の艦隊に戦いを挑んでいく。

【感想】

 総集編部分をかなり手早くまとめて、オリジナル展開をスタートさせ、ここから本格的に新しい敵との戦いが…という部分まで。TVシリーズの時点で脱落している身なので面白がるにも限界はあるけど、サービス精神たっぷりなのだろうなとは伝わってくる。

 

『蒼き鋼のアルペジオ ーアルス・ノヴァーCadenza』

【採点】

【監督】岸誠二

【制作国/年】日本/2015年

【概要】霧の艦隊総旗艦代理としてメンタルモデル・ムサシが全人類に宣戦布告する。かつて慕っていた群像の父・翔像が軍人に殺された恨みを人類に向けているのだ。イオナと群像、そして戦いの中で増えていった仲間たちはムサシを止められるのか……。

【感想】

 こちらは完全新作。相変わらずお話にはノレないまま、でもバトル演出はそこそこ楽しめた。しかしクールな原作の印象が最後まで結びつかないアニメだ。声優陣がほぼアイドルマスターシンデレラガールズで声を聴く楽しさは〇。

 

『チャーリング・クロス街84番地』

【採点】

【監督】デヴィッド・ジョーンズ

【制作国/年】イギリス・アメリカ/1987年

【概要】第二次世界大戦後。NY在住の口うるさい女流作家が、ロンドン・チャーリングクロス街84番地にある古書店稀覯本を注文したことを機に、店主ら古書店の人々と文通を交わすことになる。いつかその店に足を運びたいと願いながら、夢は夢のまま時間が過ぎて……。 

【感想】

 往復書簡形式だという原作に忠実なのか、ドラマ的な波はなくひたすら手紙のやりとり、近況報告が続く不思議な構成の映画。でもその顛末のほろ苦さは冒頭で提示されている為、口の悪い女作家が文通を楽しむ様が儚く愛おしい。アン・バンクロフトの名演.そして若い(といっても老境にさしかかりかけてる)アンソニー・ホプキンス

 

関ヶ原

【採点】

【監督】原田眞人

【制作国/年】日本/2017年

【概要】豊臣秀吉が死に、五大老筆頭徳川家康が本性と野心を露わにした。今こそ理想の世を成す為、石田三成は名将・島左近、盟友・大谷刑部らと共に決起する。「不義が正義に勝ってはなりません!」。その頃、小早川秀秋が辺りをうろちょろしていた。

【感想】

 原田作品いつも感想同じだけど、「台詞が聞き取れない事を除けば面白い」ので誰かなんとか監督を言いくるめられないものか。もっと役名テロップ入れて良かった気がするな。伊賀忍者の暗躍を取り入れることで女優陣を単なるお飾りにしなかった采配は賢明。大谷刑部の見た目がひたすら格好イイ。クライマックスが弱いのは史実のせい。

 

『おんなのこきらい』

【採点】D

【監督】加藤綾佳

【制作国/年】日本/2015年

【概要】「可愛い」にとりつかれた拒食症OLキリコの、かなわぬ恋と新たな出会いを、音楽ユニットふぇのたすが劇中世界に現われ演奏し寄り添う姿も込みで可愛く綴っていく。主演は森川葵

【感想】

 いや、今時ただ男に媚びるためだけにこれだけの「可愛い」を収集してる女の子一般的じゃないでしょ……普通、自己表現だと思うんだけど。主人公の人物像が明解なようで、実は偏見に基づいたふわっとしたものになってる。ポップに始めながら、終盤長回しで辛気くさく「本音らしきもの」を吐露する流れも安易過ぎる。森川葵が見事なキャスティングだけに、勿体なかった。

 日本のインディーシーン、岡崎京子の漫画で恋愛観が停止したままになってる気がするのですが。

 

『葛城事件』

【採点】

【監督】赤堀雅秋

【制作国/年】日本/2016年

【概要】次男が無差別殺人を犯した葛城家。絶対君主的な振舞で家族を抑圧し続けた父親を中心に、死刑制度反対を訴え塀の中の次男と結婚すると宣言する女弁護士を通して、葛城家の過去と現在が浮かび上がっていく。

【感想】

 地獄エンターテイメント。赤堀雅秋の人間観察眼がこれでもかってくらい人間の嫌な部分、直視したくない部分をえぐり出していく。ただ面白さ(と言ってよければ)がシーン単位で完結して、構成としては存在している映画全体のうねりに繋がっていかない、最近の邦画にありがちな物足りなさが少しあった。やはりどこか演劇的。

 

クレイジー・リッチ!

【採点】

【監督】ジョン・M・チュウ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】ハリウッドメジャーでありながらアジア人キャストで固め、NETFLIXからの誘惑も拒み、全米興行収入第一位を成し遂げた記念碑的作品。シンガポール華僑の息子と交際するニューヨーカーで中国系アメリカ人レイチェル・チュウが、シンガポールでクレイジーな金持ちたちとのカルチャーギャップに遭遇する。

【感想】

 その実績は讃えられるべきだけど、本編の半分ただ色んな人に出会っていくだけの単調な展開、決して巧いとは言えないし、アジア映画のロマコメの水準からしても微妙な出来なのに、これでハリウッドで絶賛されてしまう事がむしろ哀しいというか、「ハリウッドの中のアジア人」がやはり浮いた存在であることの証左のようだった。

 

『フェイシズ』

【採点】A

【監督】ジョン・カサヴェテス

【制作国/年】アメリカ/1968年

【概要】ジョン・カサヴェテスが私財を投げ打って作った映画。崩壊を迎える夫婦の36時間の出来事を描く。娼婦役の監督夫人ジーナ・ローランズは勿論、それ以上に重要な妻役でロバート・アルトマンの秘書リン・カーリンが熱演。

【感想】

 『オープニング・ナイト』は若干胃もたれしてしまったのだけど、本作は構成が明快で見やすい。役者の生っぽさ全開(それでいて表面的でない、というのはとても難しい)の姿を執拗に捉えるようで、狙い済ましたショットの挟み方、編集のメリハリがとにかく巧いんだなというのをようやく理解出来たかも。あの強烈な「咳」。

 

ご注文はうさぎですか?? ~Dear My Sister~』

【採点】C

【監督】橋本裕之

【制作国/年】日本/2017年

【概要】「木組みの家と石畳街」で喫茶ラビットハウスに住み込みで働いていたココアは、夏休みに母と姉の待つ地元のパン屋へ帰郷する。一方、残されたチノは過去のことを振り返っていた。花火大会の日、みんなは再び集まれるかな……?

【感想】

 TVシリーズは世界観とリアリティラインが掴めないもどかしさと相俟って「何回見ても寝てしまう」因縁の作品なので、全部すっ飛ばしていきなり劇場版見ました。副監督にかおり監督も投入されて、完璧な可愛いを表現する豊かなアニメ世界はやはり凄い。

 『のんのんびより』の劇場版もそうだったけど、折角どんなに本編が起伏に乏しいゆるふわでも最後にそれなりの感慨をもたらせられる構成を用意してあるので、どうせならもっと中身も膨らませて長尺であれこれやればいいのになぁという勿体なさを少し感じる.『映画 けいおん!』の冒険に続いてくれないものかな……。

 

『CLIMAX クライマックス』

【採点】A

【監督】ギャスパー・ノエ

【制作国/年】ベルギー・フランス/2018年

【概要】1996年。舞踏団に参加した若きダンサーたちが、冬の雪山の合宿所に集まる。加熱する超人的なダンス。打ち明けられるセンシティブな思い。そして、みんなが食べるサングリアに密かに混入していたLSD。やがて一同に薬が効き始め、地獄のダンスパーティーが始まる。

【感想】

 一見やったもん勝ちのアイデアを好き勝手やっているようで、だったらもっと(これ以上に)露悪的にも出来たのに、終盤ののたくりうつようなカメラワークは実は観客の悪趣味とも一線を引いている。映画そのものが「人体の逆流」であった『アレックス』を例に出すまでもなく、そのカメラの導線にも意味はあると思うのだが。

 なので何を見せられているのか本当にわからない。わかってる人少ないんじゃない?

 

『ミッドナイト・ラン』

【採点】A

【監督】マーティン・ブレスト

【制作国/年】アメリカ/1988年

【概要】腐敗した警察にいやけがさし現代の賞金稼ぎとして生きるロバート・デ・ニーロが、正義感から賞金首となってしまった会計士の男を目的地まで届けるため、FBI、賞金稼ぎ、ギャング、あらゆる妨害に追跡されながらアメリカ横断逃避行の旅に出る。

【感想】

 いかにも80年代っぽい緩やかなノリでありながら、やはりいかにも80年代っぽい丁寧でウェルメイドな脚本。クライマックスの一斉問題解決の「わっ」となる瞬間やラストの幕引き等、色々と自分が見てきたハリウッド映画に影響与えてるんじゃないかと感じて、初見なのに他人の気がしない作品。

 

『灼熱の魂』

【採点】

【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ

【制作国/年】カナダ・フランス/2010年

【概要】カナダで暮らす双子の姉弟は、母の遺言状を別々に渡され、それぞれ「兄」と「父」に渡すよう告げられる。彼らは難民の子供であった。そして母ナワルの物語が、内戦真っ只中のレバノンから始まる。そこに隠されていた想像を絶する真実とは。

【感想】

 大作作家になる以前のドゥニ印の、なんでもない場面でも欠かさない緊張感に振り回されていると、実はラストの意味がイマイチピンとこなかった。もしかして頭がそれを理解したくなかったのかも知れない。それほど「うへぇ」となるオチなのでかなり覚悟して見て欲しいのだけど、一方に難民たちと共存する現実があり、そこにレディオヘッドが平然と混入してくるカナダの成熟も知れる。

 

銀魂

【採点】C

【監督】福田雄一

【製作国/年】日本/2017年

【概要】空知和秋の人気ギャグ漫画を実写化。宇宙人=天人の襲撃を受け、過去と未来が同居するSF都市・江戸を舞台に、よろず屋三人組含むお馴染みの面々がドタバタギャグを繰り広げ、暗躍する辻斬りの背後に潜む陰謀に立ち向かう。

【感想】

 「銀魂を実写映画化するにあたってしなくてはいけない100のこと」があるとして、そのすべてに手を伸ばし、どれも10点満点中3点くらい、といった印象。100のうち30くらいにしか手を伸ばさない実写化が多い中で、それは美点だと思う。

 努力と工夫の跡は目立つも、しかしその工夫が足りていない歯痒さ。せめて予算が5倍あれば見栄えもよく、ギャグとの緩急も決まっただろうに(でも寒い効果音が台無しにしてるからどうかな)。1人除いて役者はみんなハマってる。菅田将暉は凄い.肝心の小栗旬は何言ってるか聞こえないし演技に照れがあってダメでした。

 例えば、なんでもない場面でも江戸の遠景にずっと都市部をCGで合成しておくとかだけでも免れたチープさはあったのでは。

 真撰組をキチンと紅桜篇でも活躍させている分、アニメ版新訳よりも脚色は良い。