2015年、最後まで見た全アニメをランキングする

 

 映画に続いてアニメでも同様のランキングを。

 2015年に見終わった全50タイトルに無理くり順位を付けていきます。大晦日に書こうとしたきり放置していた記事なのですが、はばたくキツネさんのめっぽう面白いこちらの記事に触発されて、

foxnumber6.hatenablog.com

 やっぱり書くだけ書いておこうと決意。なんとか一作品一文でも埋めました。

 

 2015年のアニメ視聴遍歴は以下のような流れ。

 

 冬=それなりに新作視聴。

 春=そこそこ新作視聴。

 夏=アニメ見ない。

 秋=・そこそこ新作視聴。

   ・今まで途中まで見て放置していたアニメの残りを完走。

   ・春夏話題作の動画一挙配信や地上派再放送などを利用。

  ですので最後まで見たからと言って2015年度中に全話見たアニメばかりではなく、以下のランキングにはこれらに該当する作品が混ざっていて――

 

  • つまらなくて途中で切ったアニメを完走したら意外と好きだった
  • 面白いけど視聴停止してたアニメを完走したら意外と失速してた
  • 一話切りしたけど世評が良いので見てみたら意外と面白かった
  • 一話切りしたけど世評が良いので見てみたがやはりどうにも合わなかった
  • 一期が合わなかったのに二期見てみたらシリーズの良さがわかった
  • 一期が合わなかったので二期見てみたがやはりどうにも合わなかった

 

 ――とにかくどんな作品も最後まで見てみないことにはわからないと、基本ですが改めての重大な気づきがありました。

 他人の評価に100%納得いく人はそうそういないと思いますので、うっかり読んでしまったはいいものの釈然とせずどうしても「こいつ許せねえ!」ってなった方は自分のランキングを考えてみるのも面白いんじゃないでしょうか。

 

 では、以下から独断と偏見によるランキングを始めます。 

 

50位.佐藤順一たまゆら ~もあぐれっしぶ~』

 『ARIA』が大好きなのに本作のOVAや1期にまるでノレなかった理由をド忘れしていて、1期から間の空いた今なら楽しめるかも知れないと鑑賞。結果、本当に自分には合わない事を再確認しました。特定の何かが好きな人向けの餌だけが放り出されているのですが、それが食材のままで調理されていない。

 ただでさえ時が停滞しているような静態の関係が続く中で「一瞬を切り取る写真」をテーマにされても、そこに見る愉しみはありませんでした。話の終盤だから許される視聴者との馴れ合いが最初から続いている。いくら何でも「地元ネタのダジャレが口癖」なんてキャラを出してまで宣伝するのであれば、ご当地アニメはもう結構ですという気持ち。変に感動を打ち出さず笑いやシンプルなゆるふわ系に徹すればここまで苛立ちもしなかったでしょうが、そのダジャレを例に出すまでもなく本当に笑わせる気など無いのです。

 原作に無い最初と最後の手紙が時間感覚を区切ってしまうので鬱陶しかったとは言え、絶えず水やゴンドラという動態のイメージで溢れ、舞台を映すこと自体が新鮮なSFたりえていた『ARIA』とは全くもって似て非なるシリーズ、という認識です。

  

49位.岩崎太郎『一週間フレンズ。

 『50回目のファーストキス』*1というベースがあるのだから、そこに何をプラスアルファしてくるのかなと思ったら、むしろ笑いの要素を失くすマイナス脚色をしてきたので戸惑いを隠せませんでした。

 ――とかいう理屈の問題ではなく、アニメ見ててここまで何度も睡魔に誘われる作品は初めて。こちらの体調お構いなしに、見てると必ず眠くなる。それだけ一貫したテイストで全編を作り込めている証左ですので、話が好みに合えば心地良い作品なのかも知れません。

 

 48位.元永慶太郎デート・ア・ライブⅡ』

  シリーズ通してギャグの間がとにかく悪い。それと、茅原実里(と、水樹奈々)を「歌姫」として設定されると拒否感を覚えます。歌声にも楽曲にも魅力を感じなくって。狂三大好き。

 

47位.高柳滋仁東京ESP

  第一話は最高でしたのに。決してテンプレートではない蛇行する構成がもつれながらクライマックスへ向かっていく、そんな倉田英之脚本/脚色が自分は大好きなのですが、本作の場合、演出や作画がその蛇行するリズムにアドレナリンを放出させるところまではテンションを維持できてないかなと。登場人物のリンクする『喰霊-零-』の刺激には程遠く。

 

46位.佐藤英一ノブナガ・ザ・フール

  ですから茅原実里「歌姫」と・・・・・・

 最後まで見ると、信長・光秀の物語に対して新鮮なオチを与えようとしていてなかなか楽しませてくれる面もあるのですが、せっかく敵方に西洋列強を揃え、すわ東西歴史上の偉人同士の全面ロボット対決か! というこちらの期待を裏切って(そうした要素もあるのですが、どうも盛り上がらない)、まーた信長×光秀で話作るんかい。士郎くんのお家事情よりもっと世界の英霊見たくてもだもだするFate現象がここにも。

 

45位.宅野誠起『山田くんと7人の魔女』

  OPは文句なく昨年のベスト。キャラデも原作より可愛い良い改変。視聴と同時に原作にもハマりまして、基本的には大好きな話。

 学園内にバラバラに配置されていた男女が次々と集まり、性別の垣根すら越えてキスしまくるストレスフリーな世界。2クールで描ききればきっと傑作ラブコメになったろう話を無理くり1クールに押し込む苦しさに、同時期に鑑賞していた『PERSONA3 THE MOVIE #3』*2やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。-続-』への同様の不満も重なって「何がしたいんだ業界人・・・」と次第に落胆していきました。

 何がしたいって、そりゃ販促第一で作品単体としての出来など二の次なのでしょうけどね! ぺっ!

 ファンが勝手に裏事情を推測して物わかり良くなる必要は無いのです。

 やれてないものはやれてない。

 

44位.今泉賢一『生徒会の一存 Lv.2』

43位.佐藤卓哉生徒会の一存

  生徒会モノ、メタギャグモノのラノベ作品の系譜で本作がどう位置づけられているのかわからないので滅多なことは言えないなーと思いつつ、2015年の時点から見たら若干スベっていたかなという印象。

 いかにも1人のヒロインとくっ付くかのようなゴールイベントを用意しながら、次の回では何事も無かったかのようにリセットされているパターン、仮にも萌え豚の端くれのつもりでいますが、全然面白くないです。『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』の終盤みたいな。

 1期と2期を分けてあえて優劣を付けたのは、メタギャグを散りばめた作品であるにも関わらず大人の事情でメインキャストを変更してしまった点、『げんしけん 二代目』もそうでしたがあまりに夢が無いのでやめて頂きたかったからです。

 

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 ↑言い訳として使った瞬間 に駄目になる危険なフレーズ。

 

42位.京極尚彦『ラブライブ! 2nd Season』

  「それもある種、花田十輝先生の作家性なのだ

 そう知りながらも、1期終盤の取って付けたような危機とその回避に、キャラクターで見せるアニメでキャラクター性を放棄してどうするとかなり憤った記憶があったのですが、2期はキチンとキャラクターアニメとして一貫して見えました。パフォーマンスシーンの背景美術もグッと良くなった。

 この時はまだ、後に劇場版を見てドハマリするとは思ってもみず。

 

41位.山川吉樹『キルミーベイベー

  「つまらないけど、一周回って面白くなる」

 との評判から、一度は切ったものを最後まで見てみたのですが、一周回っちゃったので元通りつまらない。ネットの評判が起こす集団催眠みたいなものじゃないのかと言ってしまっては言葉が過ぎますが、新井里美やチョーのナレーション、釘宮理恵のモブといったギャグの予防線が寒くて寒くて、メイン2人の可愛ささえキルするマイナスに見えました。

 続く『リトルバスターズ!』を見ても、やはり山川監督にギャグのセンスは無いとの思い。芝居を動かす演出力は高いとしても、むしろそれゆえに「間」が瞬発的なギャグには向いていないのではないかと。コメディには向いているかも知れませんが。

 

40位.亀井幹太『冴えない彼女の育て方』

  主人公の倫理君が嫌いでした。自分の熱意は押しつけるけど人の恋心には鈍感な主人公が今時の流行りなのは知っていましたが、やっと倫理君が痛い目見るかなと思った場面で英梨々に大して「いや、そもそも昔のお前が悪いんだ」的なことを言い返した場面で「ふぁっ?」。フェティッシュだかなんだか知らないけど体の各部位に寄るカメラも下品で好きになれない。作者のギャルゲー作りが反映されてると思しき話も「勝手にして」と思っちゃう。何よりノイタミナでこういうラノベ原作モノやって欲しくないし

 ――と、好きになれる要素はほとんどなかったのですが、それらの不満を補ってあまりあるほど、加藤恵というヒロインの造形は素晴らしく、加藤まわりの場面はどこもユーモアと洒落っ気が効いていて魅力的でした。そして何故加藤が輝くかと言えば、上記した嫌いなポイントがあったからこそ。一人だけ明らかにリアリティラインが違います。『神のみぞ知るセカイ』の小阪ちひろ*3を想起したのは自分だけでしょうか。

 エンディングの「一言それで十分なのに」が倫理君の鬱陶しさへのカウンターとして毎回溜飲を下げてくれました。あの坂道で始まったロマンスを2期でうまく完結させてくれたらまた評価は変わりそうです。

 

39位.森田修平『東京喰種√A』

  見始めた時は原作を知らず、作画の心許なさは抜きとすればそれなりに緊張しながら見ていたのですが、いざ原作を読んでしまうと、ルート変更するならするでもっと大胆に変えてくれという不満が。1期より好きなOP、毎回変わるイラストがとにかくたまらないED、挿入歌Glassy skyと音楽面でのフォローは非常に好きでした。


Tokyo Ghoul - Glassy Sky [東京喰種 -トーキョーグール-]

 

38位.イシグロキョウヘイ『四月は君の嘘』

  まさか10年代も折り返す時にまだこういう難病モノが覇権を握っているとはという脱力感です。

 A-1picturesへの認識を大きく上方修正するほどの折角の美麗な作画をモノローグで潰す作りもストレスでした。最終回の演奏を筆頭にハッとするような場面は無数に含まれているので惜しいなという気持ち。

 

37位.橋本昌和ソウルイーターノット!

  『ソウルイーター』は見てません。

 街並みありきで生活感を漂わせながら登場人物が行き交う話が好きです。

 無い筈の余白が立ち上がってくる。

 

36位.加藤誠『櫻子さんの足下には死体が埋まっている。』

  まさかここまで話が進まないとは思いませんでしたが。

 『四月は君の嘘』と違って美麗な作画を邪魔するものが無かった分、落ち着いて見れて目に優しかった。何よりあおきえい絵コンテ回の6話「アサヒ・ブリッジ・イレギュラーズ」が好みで繰り返し見ていました。旭川市の旭橋が『Fate/Zero』の冬木大橋に見える。

 『GOSICK』『Another』『氷菓』『RDG』『ハルチカ』。次アニメ化されるとしたら『ホーンテッドキャンパス』ですか。この路線の継続は有り難いのですがどれも2クールは欲しいですKADOKAWAさん。

 

35位.大槻敦史『白銀の意思 アルジェヴォルン』

  最終回の、バカな表現ですが「映画みたい」な決着の付け方、その時ライバルは勝手に自滅してるといった渋さに佐藤竜雄脚本の地味な狙いが炸裂していてたまらないものがありつつも、キャラデのミスマッチが痛い。
 同時期スタートのワーナー発オリジナルアニメ、本作と『SHIROBAKO』。それぞれのヒロインであるジェイミーと宮森あおい、非常に見た目も性格もポジションも造形が似通っていて、何より共に「働く大人の女性」という点がアニメでは稀少で有り難かったです。

 

34位.Team ニコ『大図書館の羊飼い

  監督5人チーム、ほぼ女性という体制のお陰か、さしたるアピールも無いかわりに安定の可愛さが一貫していて、エロゲ原作なのに画面がやらしく見えない。『ましろ色シンフォニー』見ていた時と同じ心地よさ。どちらも特定の異性と結ばれると即ベッドインしちゃうんですが、可愛いんですよ。むしろいじいじ先延ばししてる方がやらしい(『アルジェヴォルン』のメインカップルはもうちょっと進展しても良いのです、世界観的に)。
 種崎敦美は正義。

 

33位.黄瀬和哉攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』

  新作は2話分しかありませんし、OVA4巻から始まる構成にも首を傾げますが、コーネリアス楽曲カタログが醸し出す「懐かしの近未来」感が、レトロフューチャーを否定したシリーズ前作『攻殻機動隊 Stand Alone Complex』との差異として面白かったです。

 

32位.山本天志『いつか天魔の黒ウサギ

  「15分に7回殺されないと死なない」

 主人公の、徹底して殺られる事でサスペンスとギャグと魅力を呼ぶ設定が見事。鏡貴也先生は『伝説の勇者の伝説』といい本作と言い、素質としては女性向けでありながら男性向けのサービスを装おうとしている違和感があったので、未見ながら『終わりのセラフ』で辿り着くべきところへと辿り着けたのでは?

 

31位.タムラコータローノラガミ ARAGOTO』

  『ノラガミ』原作の魅力はモラル的にギリギリというか、「正直それはどうなの?」と首をひねるような台詞や描写さえ異様に威圧感のある作者の本気で迫られる面にあると思っています。そんな原作の特徴が一番爆発する毘沙門篇、あのモヤモヤする展開に強引にねじ伏せられるカタルシスをどう再現してくれるのかと期待していましたが、その「強引な迫力」を再現出来ていません。話を圧縮し過ぎ。

 

30位.清水健寄生獣 セイの格率』

  ノラガミ ARAGOTO』に比べたら遙かに原作を丁寧になぞっていて有り難いのですが、あの回に触れない訳にはいかない。最初からあの場面が来れば、泣く気満々でいたんです。

 よし、くるぞ、くるぞ、くるぞ。
 来ちゃいました・・・・・・歌が。

 

29位.板垣伸てーきゅう 1~

28位.板垣伸てーきゅうスピンオフ 高宮なすのです!』

  『ギャグマンガ日和』。なすのですの続きが見たいのですの。

 

27位.大地丙太郎神様はじめました◎』

  本家『ギャグマンガ日和』の人。面白いのですが、まさか並行して進んでいたキャラのエピソードが本編で回収されずOVAに続くとは。

 

26位.佐藤光帰宅部活動記録』

  序盤はビックリするほど寒いです。もはやギャグの質がどうというレベルではない。当時まだ全員10代であった主演声優5人の棒演技を、なぜか一切「間」というものをディレクションする事なく、メリハリのない冗長なテンポで垂れ流す。はたしてこれは敢えてであったのかはたまた、とある話数のラストで「この番組人気ないし、エンディング変えてテコ入れするか」といったメタ台詞が飛び出します。ここで切り替わった新EDがそれはそれはツボに入りまして、その効果かどうか次の話数、今までの寒さが嘘のように楽しめました。

 そこから先は怒濤の伏線回収の嵐。こんなどうとでもなるバラエティ的なアニメで伏線を回収している、という時点で既に面白い。見終わる頃には『帰宅部』に飢えて仕方なく、先日原作も読破しました。

 自分にとっての『キルミーベイベー』は、『帰宅部活動記録』だったのです。

 

25位.大沼心『落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)』

  同時期放映の『学園都市アスタリスクと並べてラノベアニメのテンプレートとして語られた事は良かったのか悪かったのか。ただ結果として本作のテンプレートから外れながら、むしろ正しい王道を往く姿勢は引き立ったと思います。要するにフラフラしたハーレム状態や目的の不明瞭なラノベアニメのテンプレがいかに物語として気持ち悪いかという逆説。
 ちゃんと早々に特定のヒロインと恋に落ち、それでいて(「名門である実家からの嫌がらせ」という、恐ろしくドメスティックな倒すべき明確な悪がありながら)「恋人でありライバルである相手とトーナメントの決勝戦で全力で勝負する」という実に清々しい目的が設定されている。
 とは言えそうした基本設定を肉付けする世界観や物語の魅力は弱くて、というか細くて、物足りないのですが、その細い一本道を覆う余白を逆手にとり、作画の見せ場をひたすらアクションに集中。バリエーション豊富な特殊演出が実に爽快でした。

 

24位.池添隆博『SHOW BY ROCK!!』

  何も知らずに見た第一話。現実とファンタジー、等身の違い、さらに2Dと3D、あらゆるレイヤーが織り混ざってもうクラックラ。そのドラッギーな世界観に忠実に、脚本はもっとぶっ飛んでも良かったんじゃないですか。同じボンズ作品の『スペース☆ダンディ』繋がりで2期にうえのきみこ先生入ってくれないかなと希望してます。

 モアが唐突に宇宙人であることを独白するモノローグや、ラストバトルなのに顔芸に徹して活躍しないシンガンクリムゾンズ。こういう不条理なノリを突き詰めれば傑作に。わざとらしく同一画面を極力避けるプラズマジカとシンガンの8人をむしろ積極的に織り交ぜてきゃっきゃさせてくれたら神作に。ポテンシャルは十分です。

 (↓このbot読むのが日課です)
 

 『ソウルイーターノット!』と言い『PERSONA3』と言い本作と言い、自分は「寮生活」モノが大好物のようです。その極みとしての『RWBY』*4の尊さ。RWBYはいいぞ。

 

23位.三浦貴Fate/stay night UNLIMITED BLADE WORKS 2nd Season』

  1期と2期の間にPSVitaにて原作ゲーム(レアルタ・ヌア)をプレイ。Fate蘊蓄に溢れたところでの鑑賞だったので勝手に余白を埋めていく愉悦がありました。

 原作であんなに泣けた/燃えた場面がこんなにあっさり流れるなんて、「原作じゃこうじゃないのになぁ」なんて訳知り顔を出来る愉悦。OPテーマが異様に格好良く、1期OPの甲高い張り上げ声が生理的に受け付けなかったので有り難かった愉悦。

 正直なところ、2時間しかなかったスタジオDEENによる劇場版UBWの方が、2クールもある本作より良く出来てた気はします。このTVシリーズ、どのキャラにも今ひとつ感情移入のテンションが維持出来ない。思い切って0話同様、完全な凛ちゃん目線の物語に切り替えた方が良かったのでは。

 

22位.鍋島修弱虫ペダル』(1期)

  レースと回想の繰り返しに飽きて切っていたのですが、今年に入って観た後半、もう御堂筋君にまつわる全てのホラー描写が最高に決まっていて、悪夢の中にまで出てきました。後方から真横から、あの怪奇的な笑顔が覗き込む瞬間。たった一人でレースの興奮に新たなベクトルを生み出してしまった男、御堂筋君にぞっこんです。

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21位.大森貴弘デュラララ!!×2 承』『×2 転』

  待ちに待ったファン達へのご褒美。忘れていたような1期の細かい脇役たちまで総動員して「これが観たかったんだろ」と登場人物相関図をシャッフルしまくる全自動麻雀卓。でもごめん、自分が観たかったのはシアターブルックを使うような格好いいOPだったんです。そこへのトシ君の起用は、ささいな事のようでいてスタッフとファンの間に大きなズレを感じました。

 MCのイチャイチャが売りだった名物ラジオ『デュララジ!』のトシ君結婚報告回、うまくすればトシ君とワンチャンあったんじゃねえかと思ってた節を大胆に吐露する花澤香菜が最高でしたので、アニメの完結を前にして既にこちらの気持ちはフィニッシュを迎えております。

 

20位.金崎貴臣これはゾンビですか? オブ・ザ・デッド

  現在大ブレイク中『このすば』チームですよ。1期の記憶がほとんど無くて、公式サイトの「俺ら面白いでしょ~」なノリがスベっていたなぁ程度だったのですが、前作『東京レイヴンズ』での、画面に映り込むものが2D/3Dごちゃ混ぜ、さらに視聴者の理解すら置いてどんどん話を加速させていくフィーリングの心地よさにすっかりやられた今、高まった金崎監督への好感度の分だけこの2期もやたらめったら楽しかったです。

 ヒロイン達のキス顔が続くバカなEDも最高です。

 

19位.出合小都美『ローリングガールズ』

  前述した『俺修羅』や『ましろ色シンフォニー』等、アニメのOP/EDで有名な出合さんが、名刺代わりに産み落としたような一作。素敵な記事が。

d.hatena.ne.jp

 特徴的な色彩、輪郭の危うい少女たちの可愛げ。そう、おされ感。出合監督に求められるものだけをひたすら並べて、やけに小ざっぱりとカバーされたブルーハーツの楽曲で包み込む。話はよくわかりませんでしたが、第一話の混沌や京都のライブのように時折「ぐわー、気持ちいい」と作画光線に打ちのめされておりました。

 

18位.及川啓やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。-続-

  こんな垢名で日頃さんざん不満を呟いている粘着野郎の割には結構上位に挙げてるじゃないかという話ですが、もし、そこまでシリーズに思い入れの無い自分が本作を見たら、と客観視した場合、他のラノベアニメ、ラブコメアニメとの比較で結構評価しているのではないかと想像できました。終盤のダイジェストぶりは酷いものですが(中盤だってTLに溢れていた原作未読者の戸惑いの声を決して忘れはしません)途中まではギリギリの範囲で原作のあらすじだけは追える脚色になってはいましたし、俺ガイルFesに参加した際、大喜利コーナーの形を借りてしきりに長尺、スクリーンに映される本編場面が、十分劇場環境に耐えうる作画密度と音響のクオリティを保持していた事も目と耳で確認しました。キャストが実に繊細なベストアクティングをやり通した事を賞揚するのに何ら躊躇いはありません。

 なんなら11位くらいに挙げても構わない。でも、違うんです。こんなランキングどうでもいい。

 原作を読んで2期の内容を想像した時最大限跳ね上がった期待値は、俺ガイル2期は年間ベストなどという小さな枠組みをぶち抜いて、自分史上断トツのオールタイムベストワンという遙かな高みへ到達すべきものだったのです*5

 上がりに上がったハードルの下を器用に駆け抜けていかれても、そんなもんじゃ満足出来ません。そこで裏方の事情をわかったような顔をして呑み込む態度はもうやめました*6

 なぜ、原作の完成度を信じてじっくり描くという選択を決断出来なかったのか。

 なぜ、これほどのビッグタイトルと化し、放映時あれだけ「短い」と声を揃えて不満垂れていたことを一瞬で無かったことにして今でも2期を褒め称えてくれる多くのファンの好意に支えられながら、そのチャンスを不意にしたのか。

 なぜ、小さくまとまったのか。

 ハードルをくぐるな。倒すな。跳び越えるな。

 飛べ!

 

17位.石平信司ログ・ホライズン 第2シリーズ』

  制作会社がサテライトからスタジオDEENに移行してキャラデは激しく残念な結果となりましたが、ストーリー的には1期ではまだ強かった苦手な「なろう臭」が霧散して、いよいよアニメ史でも稀に見る「一大群像劇」へと進化。
 ただ視点が広がるだけでなく、バラバラに散った者たちそれぞれが見ている世界もまた更に異なり、ひたすら物語の位相があらゆる次元へと延びていく抜けの良さがありました。
 作者の脱税問題で揺れておりますが、これだけの風呂敷を広げたのだから責任持って最後まで映像化して下さいNHKさん。「シリーズを最後まで描ききる」、それこそ今のアニメ界に一番欠けているものではないでしょうか。

 

16位.真下耕一『NOIR』

  アニメの歴史。月村了衛の全話脚本。サム・ライミが実写化権獲得。

 全部の回でという訳では無いけれど、アクションの段取りが非常にしっかりしています。

 ガンアクションの世界なのに「爪に猛毒を塗った暗殺者」を強敵として戦わなくてはいけない台湾回、明らかにスタッフがどうしたらいいのかわかってないふわっとした出来になっていて笑いました。
 弱いだろそいつ。

 

15位.神戸洋行『俺、ツインテールになります。』

  ピリリとスパイスの効いたテーマを甘い娯楽要素でコーティングした「チョコ柿の種」のようなものが良質の物語として挙げられる事はままあります。
 テンプレートたるおかきの上に何をまぶすかで勝負する世界。しかし本作には柿の種のおかき部分がそのままチョコそのものである、と言ったようなテーマと娯楽性の完全なる幸福な一致があるんです。いえ、あった気がしました。
 「気がしました」というのは、つまり、あまりに高度にフォーマットが完成され過ぎていて、見ていて何も考えないで笑っていられる分、また見終わった後にも何も残らないのです。視聴中は確かに「これは実によく出来た設定だぞ」と感心した筈なのに、今こうして振り返ろうとしても一向に話を思い出せない。理想的なコメディ。

 

14位.冨野由悠季ガンダム Gのレコンギスタ』

  呼吸、食事、会話、労働、息抜き、遊び――の、積み重ねとしてのドラマ。
 本気の不機嫌、ちょっとした不機嫌、不機嫌なフリ――の、延長上にある戦争。
 簡単に「物語」として把握できる筈など無い、ありとあらゆるしがらみ、思惑、思いつきが入り組んで日々刻々と変化を続ける複雑怪奇なこの世界というものを丸ごと捉えてやろう。
 そこいらのSF映画を遙かに凌ぐ物凄いものを魅せてもらっているのですが、その凄さによって飽和してしまうという贅沢な退屈。常に濃密なアクションを詰め込んだ為に、ただ人が歩いたり会話したりMSの整備をしたりする場面と、毎回律儀に挿入させるMSの戦闘シーンとにテンションの温度差が無いんです。だから飽和してしまう。戦争に負けないくらい人と人が会話するって事はスリリングなアクションなんだぞっていう事を描きたいのだからこれはこれで正解です。
 それを実写でやると「ドキュメント調」がかえってノイズになって不自然なのですが、100%作り物のアニメで自然体な会話を構築することが如何に凄いか。本作の台詞が不自然に感じるとしたら、それは人と人との会話が本来不自然なものであるからです。

 

13位.大沼心Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ

   大沼心/神保昌登『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』

  2期まで視聴。

 『落第騎士の英雄譚』と同じですね。大沼監督×制作SILVER LINK.、見せ場であるアクションシーンを明確に絞り込み、一点突破で魅せる。しかも本シリーズの場合「毎年、夏に10話だけ」放映するという計画的な制作体制の為、アクション以外のシーンも作画はゴージャスで、そしてひとたび見せ場のアクションに突入すれば話数を跨いでまで延々と展開します。
 『Fate』シリーズ好きの型月厨向け、というよりはハッキリとロリコン(もはやペドフィリアの領域)と百合ファンに向けた衒いの無いサービスにたじろいで引いた視聴者も数知れずいるでしょうが、断言出来ます、ufotableUNLIMITED BLADE WORKSよりも、アクション凄いです。
 クロの出自に関してニコニコしているだけのアイリスフィールはあまり良い母に見えなくて、他にもっと描きようがあったのでは。

 

12位.鎌倉由実WORKING!!!』

  シリーズ通してすれ違う事で成立していたパズルが、次々とはまっていく快感。まるで伏線回収しないままアニメ化終了する多くの(9割近い)アニメで溜まっていたストレスが、一気に解消されるありがたい完結作。

 話としては同原作者のアニメ『サーバント×サービス』の方が好きなので(EDソングはサバサビを意識してますよね)、そちらの完結編もお願いしたいです。

 

11位.津田尚克『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』(1期)

  エジプト編まだ見てません。相変わらず凄い事をしている。

 

10位.松本理恵血界戦線

  EDは文句なく昨年のベスト。出合監督でいうとこの『ローリングガールズ』を既に前作『京騒戯画』で打ち出してしまった松本監督、今度は原作モノを自分色で染め上げるの巻です。

・脇役に徹することで輝く筈の背景美術を主役にしてしまっているので背景として死んでいる。

・原作でヘルサレムズ・ロットをヘルサレムズ・ロットたらしめたエピソードディティールを削り過ぎている。

・ロングショットの使い方が細田守から盗めてるようで盗めていなくて下手。

 欠点をあげつらえば数えきれないのに、最終回のエモさでやられてしまいました。

 監督の好きなモチーフを山と詰め込んでいるようですが、劇中全然説明しないのは格好良い。原作も大事にしなけりゃ自分の作為も大事にしない事で何か巨大なイメージのもやっとした総体だけが、そこにとある「街」だけがどでんと残される。


TVアニメ『血界戦線』PV第3弾(「Hello,world!」ver.)

 OP/ED/OST/PVすべてがビシッと決まっていたという点も高ポイント。出来ればそれが全てのアニメのデフォルトとなって欲しいところです。 

 

9位.水島精二『コンクリート・レボルティオ ~超人幻想~』

 2015年一番応援したいアニメでした。でも敢えて批判点を。

 まず「アメドラ風」だという時系列の操作でギョッとする作品。アメドラは1時間あるからそのややこしさが成立しているんです。30分でやったら性急過ぎます*7

 ただでさえ話が挑戦的でいてぶっ飛んでるので何か一つ世界にリアリティをもたらす画面上の軸が欲しかったのですが、キャラデも背景も挿入歌も各々にアヴァンギャルドで統一性が無い。せめて演奏や歌唱シーンの作画を丁寧にしてくれたら・・・・・・

 と、本作の野心が大好きでありつつ、ピーキーな全体像の調整の足りなさ(宣伝面含め)には非常に歯がゆい思いをするし、失敗作と言われても(現時点では)否定出来ないです。水島精二監督×會川昇脚本コンビの前作『UN-GO』が大好きだった理由は、ひとえにその高度過ぎる奇抜な企画を、絵がしっかり支えていた頼もしさにあったのだなと気づきました。

 とは言え一つの架空の時代を丸々作ってやろう、フィクションを通してこの国の抱える諸問題や文化史、あまつさえ異種族間の恋愛関係まで描いてやろうという壮大な企みに乗らずして自分がアニメファンを続ける理由は無いのです。

がおー。私の中にもいます、怪獣。

いないように見せてるだけです。めちゃくちゃ、戦ってるんです。

/『コンクリート・レボルティオ ~超人幻想~』第5話より

 いびつでも真摯に大きなものと向き合おうとしているストーリーの中から、不意にこんな台詞が飛び出してきた時の快感は、どんな見え透いたサービスアニメよりもたまらないものがあります。

 まだ折り返し地点ですし、正直UN-GOも今でこそ好きですけど最終回見るまでは「これ収集つくのか?」と半信半疑で見ていたので、2期終了時には大絶賛してる可能性も大。

 引き続き、2016年一番応援しているアニメです。

 

8位.神戸守すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』

  「(シリーズ物とは言え)それ一冊のみで完結している非ラノベ小説を丁寧に映像化。スタッフの作家性も全開」。
 こういう作品がもっと増えれば、作り手の野心や創造力がより健康的な血流となって業界全体を循環していくんじゃないでしょうか。一本の作品として真剣に「作りきれた」ものを、こちらも最後まで1対1で真剣に「対峙しきれた」という充足感が凄かった。ラストカットの切るタイミング、「あぁ映像作品を作っているぞ/あぁ映像作品を見ているぞ」という感慨を双方得られるものであった筈。

 善し悪しよりも更に手前、視聴者みんなが同じラインに立って善し悪しを語れる地平に、より多くのアニメが並んで欲しいという個人的な願いが、このランキング上位を形作っています。

 なのでこのTOP10へのコメントはすべて『すべF』とほぼ同じ感想でまかなえます。すべてが『すべてがFになる』になる。個々の好き嫌いや評価は後から付いてくるとして、要は、“視聴者がアニメだけを見て作品と取っ組み合える、一つの完結したパッケージになっていること。”が何より尊いと感じるのです。

 これまたバカっぽい表現で恥ずかしいのですが、自分は結局、映画のようにアニメを見たいのだろうと。幅広いアニメを楽しめるようなフリをしても、いざベストを組めばそこに帰ってきてしまうのだろう。そんな偏狭な趣向を自覚しました。

 

7位.幾原邦彦ユリ熊嵐

  イクニの生理からきていた筈のシンボリックな抽象美術に対して「キャッチーにする為である」という商売的な理屈を本人が付けてしまって、繰り返される記号表現からあたかもイクニの薄い模造品たるシャフトかのような安い作為が画面に宿ってしまった哀しさを感じもしたのですが、最終的に美術が設定する世界観を優に超えてキャラクターの魂が気高い決意を持って飛び去っていったのでやはりイクニでした。

 

6位.谷口悟朗『純潔のマリア』

  『東京ESP』同様、倉田脚色の蛇行し加速する魅力に作画が追いつけてないのですが、ソフト版は作画を補完した完全版となっているようなのでいずれ再見します。ただ大好きな原作をこうもうねらせるか、あまつさえ一番の決め台詞を微妙にズラして大失敗しているというスリルが言い様のない愛着となっています。

 しかし、この原作読んでこういうOP/EDを付けてしまうレコード会社は本当に。OPが合っていないのは誰の目にも明らかですが、EDの方が問題だと感じました。スローバラードならば「なんとなく中世ヨーロッパ風」だとでも思ってるんでしょうか。アニメに敬意が無いことは元より、そもそも音楽に敬意が無いのだと思われます。

 

5位.立川譲『デス・パレード』

  アニメミライの一本をTVシリーズ化した意欲作で、とにかく終始作画がゴージャス。そして実際に巨大セットが組まれたかのように、舞台となる建物の骨組みがしっかりと感じられるハリウッド大作的安心感。話よりもその建物の立体感に感心していました。
 新進気鋭の監督のオリジナル脚本で1クール。頼もしいじゃないですか。野心が漲り過ぎて話を回収しきれていないのは愛嬌。続編も見たい、けれど今は立川監督の新作楽しみ過ぎて。


TVアニメ『モブサイコ100』 ティザーPV

 

4位.山川吉樹『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』

 第一話こそ岡本信彦演じる脇キャラが主人公に強引に突っかかってくる展開に苦笑いしましたが、苦笑いはそこが最後でした。

 いや、なんだこれ、超気持ちイイ!

 ダンまちに関しては持ち合わせの語彙がとことん足りないです、完全に大穴でした。『Gレコ』と『ログホラ』を合わせたような。これまた日常シーンとアクションシーンのカロリー量がシームレス。芝居の地続きにアクションがあって、だからモンスター相手に剣を振う芝居と食事シーンでスプーンを持つ芝居とにリアリティの差が無い。本作印象的なのは「路地を逃げる」場面の多さです。宮崎駿ジャッキー・チェンのあいのこのような、そこにある段差や置かれた物とキャラが接触する気持ちの良い実在感。確実にこの世界が実在して、偶々そのどこかにカメラを置いてますよ。そんな撮り方が一貫している。

 最初の放映時は見向きもしなかったダンまちとSB69の再放送が、秋クールの間、週に一度の何よりの楽しみでした。

 (ファンタジーの撮り方をこの上なく理解している山川監督…きこえますか…きこえますか…今… あなたの心に…直接… 呼びかけています…キルミーの2期を作ってる場合では…ありません…ダンまちです…ダンまちの2期を…作るのです…ダンまちです…)

 

3位.赤根和樹天空のエスカフローネ

 「あ、アニメだ」って思いながらずっと見ていました。

 アニメだこれー。アニメ。

 自分がヲタになる前からあって、いざアニメを見始めたら意外と出会えなかった懐かしい「アニメ」のイメージ。今でもみんなが知ってるサテライト組っぽさ、ボンズ組っぽさ、菅野よう子っぽさ、それぞれの当たり前の持ち味が高密度な作画で昇華されているだけなのですが、やけに神々しさを放っています。

 今では本数の増加に応じてバラバラに仕事している才能ある人たちが一同に集結すれば、90年代夕方アニメのような面白い王道はまたいつでも作れるのではないかという希望も抱けました。

 

2位.水島努『SHIROBAKO』

 2015年まで辿り着いたからこそアニメが踏み出せた新しいステ―ジ。絶えず人が行き交い動き続ける究極のアクション。メカ戦の無い『Gレコ』か『キングゲイナー』か。或いはアメドラの匂いもしますね、『ER』や『ザ・ホワイトハウス』系の慌ただしさ。何より『ストレンジドーン』からこっち洗練され続ける横手美智子脚本の「会話」の魅力は見過ごされてはならないと思いますし、見過ごしてはいないからこそ各話タイトルが劇中の台詞から引用されているのでしょう。

 『責めてるんじゃないからね』

 『何を伝えたかったんだと思う?』

 『私どこにいるんでしょうか』

 次回予告でサブタイをキャラが読み上げるだけで泣くっていう経験は後にも先にも無いと思います。丸一日参加したSHIROBAKO秋祭り面白かったよぉ。

 

1位.石原立也『響け! ユーフォニアム

  『SHIROBAKO』はその完成度の高さゆえにどうしても「終わり」=大団円に向かってしまうのですが、『ユーフォ』はみんなでコンクール出場という明確なクライマックスがあるにも関わらず、見事にキャラの視点がバラバラに行き交ったまま、それぞれの行動の原動力がすれ違い続けている、そんな「終わらない」スリルの魅力を感じました。物語の途中だけを切り取ったような、始まりも終わりもまだわからない、ただ近づく夏の暑さだけが高まっていく季節に閉じ込められて抜け出せない焦燥感。

 

 矢印が。

 

 キャラクターそれぞれの感情や目標を込めた矢印があるとして。その矢印がそれぞれバラバラに、思い思いに角度を変えながら動き続けていて、時々交差する一瞬をすくい上げる。そこに面白いドラマが宿るのだと思うのですが、駄目な作品はこの矢印がすぐ同じ方を向いて足並みを揃えてしまったり、あるいは出番が来るまで動くのを止めてしまったりする。

 ユーフォには絶対そうはならない安心感がありました。

 

 

   終 わ り !!

 

 

 以上が、2015年最後まで見たアニメの全ランキングとなります。

 最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 とりあえず今読んでるユーフォ原作続刊、めちゃくちゃ面白いので、放映が決定している2期にも期待しかありません。

 

 

 そして、次の曲が始まるのです。

 

 

*1:ピーター・シーガル監督、アダム・サンドラ―主演のアメリカ映画。ドリュー・バリモア演じる短期記憶喪失障害の女性に恋をした男が、毎日彼女と新しく恋を始めるロマンチックコメディ。2004年製作。

*2:映画ランキングで触れています。

pikusuzuki.hatenablog.com

*3:どちらも、ギャルゲーのように少女たちをパラメーターや属性に当てはめて見ていた主人公にとって、そのパラメーターに当てはまらない、本来ならバカにしていた筈の「普通」の筈だった少女(加藤、ちひろ)が一番摩訶不思議で特別な存在と化していく。

*4:こちらの予告を見ましょう。RWBYはいいぞ。

*5:PVや主題歌で「本物」というフレーズを多用していた時点で、「あ、駄目だこれ」とほぼ察していた事を正直に白状します。

*6:わかってくれと言わんばかりの特典小説aのあとがきは心底格好悪いので勘弁して欲しかったです。

*7:時系列の操作とドン!と唐突に打たれる字幕がすべて1クール目最後の瞬間に至る為の必然であった事、そこが死ぬほど格好良く決まっているのはわかります。

2015年、映画館で見た全作品をランキングする

 

 ほぼハリウッド大作とアニメしか見ていない自分ですら確信するのですから、それらが映画全体からしたら氷山の一角に過ぎないと考えれば明らかに大豊作の年でした。ハリウッド大作が好き、日本のインディーズが好き、あるいはビデオスルーの未公開映画が、まだ映画祭でしか目に出来ない掘り出し物が、ピンク映画が、低予算のVシネが、眠っていたビンテージ、ネット配信による最新作、刹那的なイベント上映体験が。好きな映画の趣味趣向様々なフォロイーさん達のTLから、連日傑作発見を伝える歓喜の呟きオンパレードだったように記憶しています。

 

 傑作映画で埋もれ窒息していく世界。これからはほんの少し探し歩けば素晴らしい映画に出会えることは大前提となって、では国籍や年代も飛び越えて様々に拡充し続ける素晴らしい映画群から、自分はどのような指向性によって傑作を求めるのか。「いかに面白い映画を見つけるか」ではなく「どういった面白さの映画を選ぶか」状況はそんな段階に変化していると感じました。

 

 無駄な序文を書いてしまいましたが、そろそろ覚悟を決めて、2015年に劇場で鑑賞した中で、思い出せる限り*1のタイトル:全41作品に独断と偏見で無粋にも順位を付けていきます。順位を付けて、理由を添えて、時に一度決めたものを並び替えて、それでも尚言い訳したくなるのは映画への申し訳なさではなく、選択基準や順位付け、言語化の領域からはみ出た余白に真の映画しか表現しえない何某かが眠っているから。批評からはみ出たものを見つけるために批評はあり、順位からはみ出たものを見つけるために順位付けには価値があるのではと、批評が不得手な人間の負け惜しみで考えています。

 

 では。

  

41位 元永慶太郎『劇場版 デート・ア・ライブ 万由里ジャッジメント』

 『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』を見た時と同じで、クライマックスに派手なアクションがあるからと言って映画的になる訳でもなく、そこへ至る作画が大きなスクリーン(よりによって鑑賞シネコン最大の劇場)に映されて本当に貧相で哀しかった、「つまらない」超えて「哀しい」は流石に味わいたくなかったとの思いからここに置きました。

 

40位 元永慶太郎『PERSONA3 THE MOVIE #3 Falling Down』

 最初から全4章でいくと決めていて、どうしてこんなダイジェスト回が発生してしまうのか。とにかくプロジェクトそのものを批判的に見る他なくなってしまう、原作ファンとして(それも劇場版から先に触れてゲームにハマった身として)この上なく、やはりこれも哀しい思いをした作品です。アトラスはアニメとのつきあい方をもう少し考えて頂きたく。デトアラに続いて元永監督がワースト1、2フィニッシュ、「こなす」ことと「出来てる」ことは違うの典型でした。

 

39位 石立太一『劇場版 境界の彼方 I'LL BE HERE 過去篇』

 ただの総集編。これが意外とスクリーン映え。悪くないんです。順位低過ぎる気もしますがそのくらいハズレの少ない年だったのです。

 

38位 赤根和樹コードギアス 亡国のアキト 第3章 輝くもの天より墜つ』
37位 赤根和樹コードギアス 亡国のアキト 第4章 憎しみの記憶から』

 あまりに長い制作期間中、監督の中で当初の意図から話が膨らんで章が1つ増えた、その柔軟性だけでペルソナ3に爪の垢煎じて飲ませたいシリーズではあるのですが、結果スタッフがキャラに思い入れ過ぎて敵方の脇役たちでさえ殺せなくなってしまい、ひたすらぬるたい茶番が続く羽目に。。。緊迫感が完全に消えました。映像的な見せ場はふんだんなだけに、何やってんだよ赤根監督と地団駄踏んでます。

 

36位 マイケル・アリアス/なかむらたかし『ハーモニー』

 船頭は一人で良かったのではないか。CGだからとか関係なく、世界を捉えるカメラが非常に狭苦しく感じました。画面内に社会も世界も見えてこないのに、社会や世界の話をしている居心地の悪さ。「空疎な街」を映すならばディストピア(又は、ユートピア)にも見えるのですが、そうではなくてただデザイン、張りぼてだけが映されているような、広がりの見え無さ。映画的に臨場感を保たせる体力が無い。かと思えばクライマックスで突然魅力的な空間演出がなされていたりして、志ある人たちが沢山参加してる筈なのにどうしてこうなったのか不思議です。要は「2人の監督によるハーモニー」を狙った企画だったのだろうと、そしてその企画を浅薄と罵るのもまたあまりに結果論過ぎて、もどかしいったらないです。

 

35位 石立太一『劇場版 境界の彼方 I'LL BE HERE 未来篇』

 それなりに面白がった筈なんですけど、どうも記憶に残っていません。ただアニメーションそのものが文句なく眺めていて気持ちよかったのは、確か。

 

34位 樋口真嗣進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

 巨人絡みの場面で興奮するか人間絡みの場面で落胆するか、そのどちらに比重を置くかで賛否分かれる作品ではなかったでしょうか。自分は前者でした。

 

33位 ロイ・アンダーソン『さよなら、人類』

 山田尚子監督もお好きなロイの作品、劇場で観るのは初めてでしたが、今までで一番退屈だった気がしないでも。しかし酒場の外を延々歩いて行くパレードとか、スクリーンでロイ作品を観る価値は存分に満喫です。

 

32位 山崎貴寄生獣 完結編』

 傑作!とまでは勿論言いませんが、悪しき前後編商法を採った邦画の中では相当に見れる部類の作品であったのは間違いないのでは。

 

31位 黄瀬和哉/野村和也『攻殻機動隊 新劇場版』

 まだイケイケだった脳筋集団が結集する前日譚である為、攻殻の持ち味である抽象的なテーマを持ち込めないという楔がありながら、それを逆手にとった即物的なアクションの重量感で見せる見せる。IGにずっと歩き続けていて欲しい道です。

 

30位 吉成曜リトルウィッチアカデミア/リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』

 ならTRIGGERにずっと歩き続けていて欲しい道がこちらですね。特に一作目、もう何度も見てるけどスクリーンで観ると「作画崩壊( )サイコー」と快哉の声を挙げたく。ただ上映劇場の問題もありそうですが、音響の設計にはもう一手間必要かも知れません。キャラの声と効果音とが同じ位相で緩急がなく、煩く感じられました。

 

29位 是枝裕和海街diary

 鎌倉を舞台にした四姉妹物語を是枝監督で、という無敵の布陣なのですが、正直原作のイメージがまだ根深く残っていた為に時間の流れの速さ(是枝作品としたって相当に速い)についていくのが必死で、世評ほどは楽しめませんでした。自分が楽しめなかった=駄目な映画では無いのは重々承知ですが、本作ほどそれを痛感するものも無かったですね。評判高い女優陣とはまた異なる箇所で大いにフェティッシュをそそられそうな箇所で満ちていて、それなのに原作という予備知識によって素直に享受できなかった。難しい所です。

 

28位 細田守『バケモノの子』

 逆に作品としては駄目な映画だろうなと途中から薄々は感じつつ――しかし冒頭の演出力の高さは実写でもそうそう見かけないレベルで、過小評価されてるとも同時に思います――盛り沢山はいいけれど、どうにも独特のグルーヴ感に乗る愉しさ以外のものが無いなぁ(細田作品はそれがあるだけで凄いのですよ)と思っていたら、終盤の、評判の悪いヒロインが「様々な境界線を越えて主人公の元へ踏み込んでくる」一連の行動に涙し続けてしまって、それだけで完璧に甘受してしまったのがこちら。本作が異世界/現実世界問わず、無数の、そして幾つもの「グループ」「モブ」を描き続けることとヒロインは対として配置されているのです。そこに今、何よりも切迫した願いを感じましたし、個人的な琴線にも触れました。ところでこのヒロイン、当初は監督の欲望に忠実に少年として設定されていたらしく、個人的には夏休み全国東宝アニメ映画でショタっ子たちの三角関係が見れたのだろうかと想像すると「そっちのが見たかった...」とやや順位を下げざるをえずです。ジブリが『思い出のマーニー』で臆面もなく百合を展開した後だけに、余計。

 

27位 長井龍雪『心が叫びたがってるんだ。』

 初見時はてんでピンとこなかったのですが、「これはミュージカル映画では無い」という監督の言葉を読んでの再見で今度は一気に映画が立体的に手前に近づいてきたような錯覚に陥り、メガネ無し3D体験をした作品。『劇場版あの花』でも同様に初見時「これ、何?」と戸惑って再見時に感動するという経験をしたので、次こそはちゃんと初見時に感動させてねとも。どちらも再見のきっかけは舞台挨拶。生・長井監督&マリーを見れたというのは昨年の極私的事件トップ10に入ります。

 

26位 田口トモロヲ『ピース・オブ・ケイク』

 多部ちゃんファンの贔屓目もあるのでしょうが、「告白」と「浮気発覚の修羅場」、登場人物本人たちにとっては至って真面目な2つのシーンで、満員の映画館(小さな箱ではありました)が笑いに包まれるという状況を今日びの実写邦画で体験できた事の喜びたるやですね。「多部ちゃん主演で見てみたかった作品」の1つの形がここにあって、夢が叶いました。クライマックス、絶対にカットを割って欲しくないところで割られてしまって、ロケーション探しに難航したのは理解するけれど、まずその場面の撮影を確保出来てから制作に踏み込んで欲しかったというトモロヲへのガッカリはあります。

 

25位 ジャウマ・コレット=セラ『ラン・オールナイト』

 数十年来の身内同士で殺し合う為に人生最後の夜を駆ける、そんなどうしようもない連中のどうしようもない状況を、観客にしっかり共感させてくれる。でもどうやって団地から逃げ出したのか説明求めます。ささいな傷かと思ったけど、意外と何ヶ月経っても「アレおかしくね?」ってポイントは忘れないもので。ジャウマの前作『フライト・ゲーム』は巷で言われる「ツッコミどころ」など全く気にならず2014年ナンバーワン映画となったので、やはり気になってしまう分、本作のパワーダウンは否めなません。

 

24位 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ『バードマン あるいは(無知がもたらす予知せぬ奇跡)』

 1シーン1カットの力作。10年前ならキュアロン『トゥモローワールド』に熱狂したけれど、今は「この廊下を移動する時間、どこでカット割って次の場面に移行したら気持ちいいだろうか」とつい考えてしまう変なノイズに邪魔されてしまうんですよね。ソクーロフエルミタージュ幻想』ならば移動するその一歩一歩の間に何十年の時が経過していく歴史が宿っていたし、ギャスパー・ノエ『アレックス』ならば映画がなぞらえた人間の体内器官を彷徨うグロテスクな趣きに満ちていたのですが、本作の移動にただ「移動」以外の意味を見いだせず、非常に無邪気だなぁと。しかしその無邪気さあってのイニャリトゥなのかも知れません。

 

23位 モルテン・ティルドゥム『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

 映画としては非常に退屈です。BBCが作ったTVドラマと言われても納得ですし、だったらシャーロックの1エピソードを見た方が遙かに面白い。でも感動の実話とはほど遠い、物語そのものの悪意に胸を打たれました。こうしてPCに文字を打ち込んでいる自分をはじめ、アラン・チューリングの恩恵を受け続けている観客たちに向けて、「お前らが俺のお陰でどんなに良い目を見ようと、どんなに俺に感謝しようと、俺は何一つ報われてなどいない」というチューリングの呪いのようなものがカンバーバッチの目に宿っていました。いえ、本当は宿っていないのですが(そこら辺が駄目)、しかしもしかしたら作り手の意図すら超えて、そういう呪詛の映画であると思ってます。

 

22位 クリント・イーストウッド『アメリカン・スナイパー』

 最初から最後までスリルで目が離せないのだから映画として文句は無いのですが、年によってはぶっちぎりトップクラスであるイーストウッドさえここ、っていうところに2015年の豊作ぶりが現れているのです。「2015年のお薦め映画は?」と聴かれたら、ここから上位の作品全部!、と自信満々で答えます。

 

21位 コリン・トレボロウ『ジュラシック・ワールド』

 見終わって何も残らないどころか、見ているその間にも何も残らない。楽しみながら空疎さを覚えて、こちらの感情置いてけぼりで勝手にジェットコースターが進むそのライド感の空しさ。「確かにあっと言う間に過ぎった今の時間、一体なんだったんだろう。オトナはこれの何が楽しいんだろう」と不思議がった、まさに子供の頃テーマパークで遊んでいた時の体感を再現された2時間。いや、最大級の賛辞です。

 

20位 スティーヴン・ナイト『オン・ザ・ハイウェイ/その夜、86分』

 ただ男が電話でしゃべりながら運転してるだけ。これまた体感時間で60分にも満たないような変な映画で、映画館の中にあるものが「椅子とスクリーン」から「少しガス臭い車のシートと流れる夜景」に変貌する、特別な体験を味わえました。「スクリーンの向こう側」を深読みしたり「スクリーンの表層」を観察し抜く事が苦手な自分は、『ジュラシック・ワールド』や本作のように「スクリーンの手前」の客席を変質させてくれる、イベント体験としての映画が何よりの好物みたいです。

 

19位 原恵一百日紅 Miss HOKUSAI』

 『海街diary』が是枝フィルモグラフィにとってそうであったように、ここまでテンポの良い原恵一作品ってもしかしたら初めてじゃないですかね。クレしんの場合は、意外と変な「間」のシュール気味なギャグを入れ込みたがる人だったので、ここまで終始一定のリズムで刻むことに新境地を見た思い。実写作品の監督業を経て、絵を描き込む作業の外側にも映画はある事を実感として掴めたのではないかと。

 

18位 チャド・スタエルスキ『ジョン・ウィック』

 これも『百日紅』と同じと言っては言い過ぎですが、引っかかりなくテンポだけで話が進む、映像の密度が薄まる瞬間など無いのにすべてが軽い、だけど決してその軽さの裡に人の感情が蔑ろにされている訳ではないという、この塩梅。ちょっと理想的な映画だなーと思ったんです。とにかく最後まで敵のボスの側近のリアクションが最高なんですよ。2015年最も好きなキャラクターと言っても過言ではないです。主役でも悪役でも重要人物でもない、こうしたポジションの人間がしっかり描かれることで、その世界が生々しい臨場感を獲得する--これをクロトワ理論*2と呼びたいと今考えました。

 

17位 ペイトン・リード『アントマン

 どう面白いのかと問われて「普通に面白い」としか答えようのない作品って困りますよね。「アリみたいに小さくなれるヒーローの映画」。シンプルに一言で言い表せる映画は素晴らしいとされていますが、語る時に意外と困る。さあ、困りましょう。言葉にするには困るけど、見たら確実に面白い。老若男女が疲れることなく笑って、ハラハラして、そして見終わった時にはすべて忘れてぐっすり眠れます。アイツらとまた会いたいなー、と考えても寂しくはならない。マーベルシネマティックユニバースは、こいつらの生きている時空は、まだまだ、おそらくは無限に――続いていくのですから。

 

16位 マーク・バートン/リチャード・スターザック『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』

 台詞なしで成立するクレイアニメ。という事で場内満席のお客さんの中に、結構外国のお子さん達の姿を見かけたんですね。呟きでも報告しましたが、それなりに国際的な土地柄の中、海外アニメの上映劇場にそうした子たちを見かけない(吹替え版しか上映されない)事態がいつも少しばかり気にかかっていました。またタマフルのいつだったかの回で宇多丸さんが同様の指摘をしていた事でより「気のせいじゃなかったのか」と意識させられまして、それだけに日本の子供たちと外国の子供たちが等しく同じ劇場で同じ映画を見て笑っている、その幸福な時間に身を委ねた体験は忘れられません。映画そのものも、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と並べて語られるべき傑作です。

 

15位 橋本昌和クレヨンしんちゃん オラの引っ越し物語 サボテン大襲撃』

 そんな風に「劇場のリアクション」を気にしながら映画を鑑賞するようになった原体験が映画クレしんシリーズ。「この映画を子供たちが見ている」事が映画が語る「ヒーローと子供」というテーマの一部と化す傑作『嵐を呼ぶジャングル』*3の野心的な実験性は例外としても、退屈な場面で騒ぐはずの子供たちが固唾をのんで見守った『戦国大合戦』の静寂や、また相当遠い記憶なのでボヤけてはいますが『雲黒斎の野望』のダブルプロット*4(終わったと思ったら真のクライマックスが!)では場内のオトナたちが「えっ?」と一斉に声を挙げたこと、そして水島努が全力で子供たちの心を揺さぶりまくった『メイド・イン・埼玉』『ヤキニクロード』『カスカベボーイズ』などなどの幸福な体験が、久しぶりに全力で戻ってきました。今時まさかの『トレマーズ』で『アタック・オブ・ザ・キラートマト』で『ザ・ミスト』。パクパク人が食べられることが映画としてこんなにも、子供たちがはしゃぐ程面白いことだったのかという驚き。むしろ残虐描写を排除した子供向けアニメであることで「人が呑み込まれていくことの映像的快楽」がより純化して抽出された、面白い試みではないかと思うのです。

 

14位 ジョン・ファブロー『シェフ 三ツ星フードトラックはじめました』

 飯! 音楽! 旅! ハリウッドのしがらみを脱したファブローが、あたかも自身の再生の祈りをこめるかのように、全力で気楽に、おどけた結果、「多様性」というテーマをどんな映画もなしえてこなかったレベルの軽やかさによってさらりと提示できてしまった快作。豪華スターがカメオで出たっきりもったいない放置されたりしても、もったいない場面が放置されているという贅沢さによって映画がさらに豊かになっている。ともかく何も考えずただただボンヤリしたい時に見たい映画――『メリーに首ったけ』『リトル・ミス・サンシャイン』『アドベンチャーランドへようこそ』『バス男(現ナポレオン・ダイナマイト)』等々のライン――にまた1つ新たなタイトルが仲間入りした嬉しさですよ。

 

13位 大根仁バクマン。

 情熱を抱えて2人の少年が駆け出す姿に被さるサカナクション『宝島』。そんな予告編を思い出すだけでこれからあと何十回勇気を奮い立たせる事だろう。思い返すそのたびに身内でくすぶる火種を燃え立たせてくれる、ただその為だけに奉仕する映画の有り様が、アンケート主義にも堂々則り売れる為のマンガを描き続ける主人公たちの有り様と重なっている。このシンプルさ。無駄な引っかかりや淀みの無さこそは今の邦画にもっとも欠けているものではなかったでしょうか。潔い、清々しい、そんな言葉の似合う作品。

 

12位 黒沢清『岸辺の旅』

 『ニンゲン合格』こそ胸に響きましたが、『アカルイミライ』にせよ『トウキョウソナタ』にせよ、黒沢映画の中でもパッと見のジャンルとして「ドラマ」に分類されやすいものには惹かれずに来ただけに、今作もあまり期待値は上げずに臨んだのです。が、黒沢映画を総括して1つ上のステージに踏み込むような圧巻の映画に。今まで、それでも「死」は彼岸から此岸を侵食するものであったのに、ここではとうとう2つの領域は曖昧になって溶け合って、アカルイミライのクラゲたちはすっかり回路を通して世界に浸透し、東京をトウキョウたらしめたように、明るくはないけれどアカルイ未来を生きている私たちを祝福し始めました。変わらない作家であって欲しいシネフィルの欲望を無視して、ミスターは変わろうとしているのではないでしょうか。その方が、ワクワクします。しかし、最後の最後にブレるクレーン撮影はどうにかなりませんか。
 

11位 牧原亮太郎『屍者の帝国

 告白すれば一番好きなアニメ映画が『千と千尋の神隠し』で二番目が『メトロポリス』なんですね。話ではなく、細部に宿る「空想なのに、生活の臭いに繋がるディティール」の洪水におぼれていたいと常日頃希求している身としては久しぶり、それこそ『ハウルの動く城』ぶりじゃないかという絵の世界への耽溺を味わいました。きっと本作、いかにも日本のアニメだなぁと苦笑しながら、それでも作画の描き込みによって、挑もうとしているものの大きさによって、何度も映画館に足を運び、「駄目な映画だけど、困ったことに俺は大好きなのだ」と、そんな風に伊藤計劃先生ならば目を細めて慈しむのではないか。なんて、そんな勝手な妄想を抱きつ。冒頭の列車の静止画と、中盤洋上を行く船の揺れが不自然なカットだけが引っかかって、あれは駿や今敏だったら許さなかっただろうなぁとは思うのですが。
 『虐殺器官』死ぬほど期待していますとも。

 

10位 ジェイソン・ムーア『ピッチ・パーフェクト』

 見ている間中最高に楽しかったという点で言えば間違いなく2015年のベスト。世界中でヒットしてから何年遅れで公開してるんだよという苛立ちさえ吹き飛んで、最高に満喫しました。ところで続編の評判が芳しくないのですがどうしましょうか。。。

 

9位 J・J・エイブラムススターウォーズ フォースの覚醒』

 エイブラムスの、良くも悪くも娯楽に全力注入すればする程作品の印象が薄っぺらくなっていく個性は、既に出来上がったシリーズの上に新たに溶け込んでいく上で最適な性質なのかも知れません。過去作では大ネタ一本勝負で攻める脚本術が目立ちましたが、今回は具体的な一本の明確な線が見えづらい。なんなら少しもたつくくらいのゴツゴツした話運びで、そこに古き良きルーカスやスピルバーグ作品が内包していた「冒険」へのときめきが宿っていたように感じました。勿論、ローレンス・カスダン脚本を尊重した結果でしょう。これからこいつらと一緒に旅をしていくのです。

 

8位 クリストファー・マッカリー『ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション』

 上品ですよね。大人のアクション映画。それも、『スカイフォール』がそうであったように、いつか見た何かをなぞるのではない、新時代の大人のアクション映画。マッカリー×トムが前作『アウトロー』ではパロディとしてしか提示できなかった大人のアクション映画を、いよいよ衒いも逃げもなく完成させてしまった、実は映画史としてのエポックメイキングは『マッドマックスFR』以上にここにあったのではないかとさえ。あたかも「かつては大人向けの娯楽大作があった」かのように評論家は語りがちですが、こうしたスマートさを持つアクション超大作はかつて無かっただろうって、しょぼい映画鑑賞履歴を参照し、自分はそう思ってます。

 

7位 デイミアン・チャゼル『セッション』

 音と音がぶつかるように、ショットとショットが、カメラと被写体との距離、そのカットバックによってボクシングさながらに荒々しくぶつかる。これは音楽映画ではなくボクシング映画なのではないか。だからこそ主人公は油断した隙に大きく吹っ飛ばされ肉体にダメージを受ける。映像と身体の融合、そんなむき出しの生々しさに映画が変貌した異形の快作たりえています。つまり、これも3D映画です。あるいは、塚本晋也の世界。

 

6位 ディアオ・イーナン『薄氷の殺人』

 実は話はほとんど把握出来ていません。ただ映像に引きずり回されるだけで気持ちよくって陶酔していました。アニメもハリウッドもいいけど、たまには「あぁ映画見てるなぁ」ってちょっと通な気分にも浸りたいじゃないですか。2015年自宅で鑑賞した映画のベストは本作と同じくグイ・ルンメイ主演の『BF GF』なのですが、かつてアジアで一斉を風靡したデビュー作『藍色夏恋』で鮮烈なインパクトを残しながら、あっさり長期のフランス留学に旅立った彼女。映画復帰後も恐ろしいほど変わらぬ少女性を保ち続け、清純であることが魔性たりうるという化け物女優。そんな「台湾の象徴」を引き受けるにやぶさかでない、強烈にして透明な存在感を持った彼女が、台湾映画『BF GF』と中国映画『薄氷の殺人』でそれぞれ演じたポジションの寓意性。そこにひたすら痺れるのです。

 

5位 ジョージ・ミラー『マッドマックス 怒りのデスロード』

 「行って帰ってくる」シンプルな物語。行って帰ってくる物語にする事で「走り続ける」ことが可能であり、そこに「行って帰ってくる」という最低限のドラマ性を担保出来ているがゆえに観客を置いて行かずに済む。それでいて無駄な説明の手間も省ける。ストロングでスペクタクルな映像が素晴らしければ素晴らしいほど、逆説的にドラマトゥルギーの見事さが引き立つ傑作でした。これと同じことをしていたのが『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』なのです。

 

4位 サム・メンデス『007/スペクター』

 タイミングの問題ってとても大きいもので、007を初代から見返しているその作業の最中に本作を鑑賞した為、かつての、今見ると味も素っ気も無いし、回によってはひたすらしょぼいだけだったりする007シリーズの記憶が、大スクリーンの中に明確に一繋がりとなって広がっている、そんな悠然とした光景の数々にただただ呑まれました。「007の世界が繋がっている」が、文字通り舞台となる世界中を指し、そして実際に過去シリーズを通して世界を飛び回ってきているのだからそこに嘘が無い。いよいよ映画が地球を包括出来てしまった、そんな尋常じゃないスケール感。特に夜のシーンのそのたび、闇の向こうに、どこまでも陰謀とロマンで満ちている007時空が息を潜めている興奮が。偉大なるシリーズに乗っかるのではない、むしろ凡庸なシリーズに価値を与えた作品。

 

3位 ジェームズ・ワンワイルド・スピード SKY MISSION』

 wowowぷらすと年末映画座談会松江哲明監督(監督、俺のブロック外して!)の仰っていた、「オールタイムベストは『マッドマックス』かも知れない、けれど2015年のベストは『ワイルド・スピード』なんだ」に激しく賛同です。死者から死を消し去ってスクリーンの彼方へ解き放つ、そんな反則技を最後に繰り出す作品。それも物量で言わす体育会系バカ映画のシリーズ7作目ですよ、どんなネタ映画になるかと思いきや、いえ表面上起こっている出来事はおバカ極まりないのですが、弛緩したショットが一瞬たりともない、完璧に計算し尽くされた興奮の塊なのです。各被写体ごとに、これとしかいいようのない見せ場と構図がお膳立てされている。ジェームズ・ワンとジャウム・コレット=セラが次代を担う、これはもはや避けようのない必然ですね。

 

2位 岩井俊二花とアリス殺人事件』

 『ワイルド・スピード』が死者から死を消し去るのなら、本作は失われた時を取り戻すどころか遡って、現在進行形のものとして提示してしまう反則中の反則技。到底ヒットには程遠く賞レースでも無視されていた、けれど個人的に何より愛している実写映画が10年の時を経て、同じキャストでその前日譚を描く。なんだそれ、嬉しすぎて意味がわからない。意味がわからない事が現実と化して、勢い余って見に行った舞台挨拶で蒼井優ちゃんが「もっとやりたい」と監督におねだりしているのを見た時、「え、まだ見れるのかも知れないの?」と椅子からずり落ちそうになりました。

 

1位 マシュー・ヴォーン『キングスマン』

 1位は割と迷わずこれでした。

 何もかもがツボ過ぎです。思えば90年代後期、自分はポストタランティーノと呼ばれる潮流が流行った時期に映画ファンになった世代なので、要するに「ほら、タランティーノっぽいでしょ」と他人のスタイル(今思えば割と違うどころか、ルーツは決定的に異なる可能性の方が大きいんですけど)で堂々としているダニー・ボイルガイ・リッチーを筆頭としたUK映画の台頭が物凄く鼻についていた筈なのに、結局のところエドガー・ライトからケン・ローチマイク・リーからウィンターボトム、映画人生通して一番親しんできたのがブリティッシュで、正直英国大好きって事をいい加減認めなければいけないのかなと白旗上げた作品ですね。先日見た『パディントン』でもロンドン映った瞬間に故郷に帰ったようにホッとしてしまいました。行ったことないのに。

 

 

 あーしんどかった。以上が遅ればせながらの、2015年劇場鑑賞作品全ランキングでした。ところで思ったのは、ここに挙げた邦画の監督たちの顔ぶれ――元永慶太郎石立太一赤根和樹マイケル・アリアスなかむらたかし樋口真嗣山崎貴黄瀬和哉/野村和也/吉成曜是枝裕和細田守長井龍雪田口トモロヲ橋本昌和原恵一大根仁黒沢清/牧原亮太郎/岩井俊二――を眺めていると、結果はどうあれ、撮るべき人が映画撮ってるなって、そんな納得感が強いです。一時期の、まず監督の顔ぶれからして何も期待する気の起きなかった、本当にペンペン草一つ生えないような時代に比べて、多少なりとも状況は改善されていたりするのかなと。楽観が過ぎるでしょうか。

 

*1:記録を付けていなかった為、上半期見た映画の記憶が曖昧。

*2:クロトワ。『風の谷のナウシカ』の登場人物。リアクションが最高。世界観のリアリティラインを担っていると言っても過言ではない。

*3:アクション仮面の新作映画試写会が中断された事から始まる、観客=しんのすけの冒険譚。観客にとってのしんのすけと、劇中のアクション仮面とがメタ構造を成す。

*4:この場合、過去と未来2つの時空それぞれに事態が進行していた事を指す。