アニメの映画の採点

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「映画の採点」第5弾です.

自分で設けたルールを早速破りますが、今回は劇場版アニメ縛り.

数年分見逃した劇場版アニメが溜まっているので、重点的に観て行くぞと.

採点は最近見た劇場版アニメの中で相対化しており、比較的甘め.

今年はあまり劇場でアニメを観れなかったので、心が欲してたのかも知れません.

正直まだまだ未見の劇場版アニメは山積.改めてその制作本数に驚いています.

 

 

ムタフカズ

【採点】A

【監督】ギョーム・"RUN”・ルナール、西見祥示郎

【制作国/年】フランス・日本/2018年

【概要】ギョーム監督の同名バンド・デシネを日仏共同でアニメ映画化.L.Aにあるギャングと貧困の街ダーク・ミート・シティ(DMC)で生きる孤児のアンジェリーノは、ガイコツのヴィンス、半獣人(コウモリ)のウィリーとダラダラ生きていたが、少女ルナに一目ぼれしたその時から謎の集団に追われるようになる.

【感想】

 巧みに3Dと手描きの味わいを織り交ぜるSTUDIO4℃のアニメーション、木村真二の魅惑の背景美術を舞台にキャラクターが飛び回るバイオレンス・アクション、つまり『鉄コン筋クリート』の系譜で、こういうアニメがずっと観たかった.後半の勝手に解決していくご都合集団の存在とか脚本はアンバランスなのだけど、そのアンバランスさの中を動き回るアニメの楽しさが全てに勝る.

 西見祥示郎監督のキャリア、かなり遡らないと見当たらないのだけど、次回作はもっと早く観たい.吹替え版では魅力が半減するのでフランス語版での観賞推奨.

 

『劇場版 Free! -Timeless Medley- 絆』

【採点】C

【監督】河浪栄作

【制作国/年】日本/2017年

【概要】TVアニメ『free!』2期総集編2本の内1本であり、『ハイ☆スピード』と3期の間を繋ぐ架け橋でもある.岩鳶高校水泳部、三年生になった遥.同世代の真琴や凛が進路を決めていく中、才能はあっても目標の無い、ただフリーを泳いでいたかっただけの遥は、次第に周囲の期待に押しつぶされていく.

【感想】

 3期以降の、あらゆる要素をブチ込んで統一感のないオモチャ箱化したFree!の混沌を知っていると、まだ随分と話が整ってたんだなぁと懐かしい.ゆるふわモノのメインの性別を変えただけで性格にさしたる(マチズモ的ステレオタイプな)男性性を持ち込まないことが新鮮だったFree!だけど、とは言え女の子メインのゆるふわでもシリーズの途中でちょっとした「気づき」の為にわざわざオーストラリアにまで行ったりしないので、やはり面白い過剰さがある.

 

『劇場版 Free! -Timeless Medley- 約束』

【採点】C

【監督】河浪栄作

【制作国/年】日本/2017年

【概要】TVアニメ『free!』2期総集編2本の内1本であり、『ハイ☆スピード』と3期の間を繋ぐ架け橋でもある.鮫柄学園水泳部、部長となった凛は、遥たちとの確執や父の死のトラウマを乗り越え、部を取り仕切っていた.再会した旧友・宗介も仲間に加わり、岩鳶と切磋琢磨するが、宗介の態度に、そして彼の身体に異変を感じ…?

【感想】

 やはり主人公として明らかに動かし辛い遥に比べて、凛視点になると途端にスッキリした青春劇になる.ただ『絆』と比較すると浮いてるのが冒頭と終盤の「文字」演出で、これはあまりに安易なのでやらない方が良いのではないか.山田尚子石原立也武本康弘監督が演出の遊びとして使えたものを、割りと直球で説明に使ってしまっている危惧を感じた.

 

『特別篇 Free! -Take Your Marks-

【採点】B

【監督】河浪栄作

【制作国/年】日本/2017年

【概要】『Free!』新作四編がセットになった、2期と3期を繋ぐオムニバス.東京の大学へ進学することになった遥と真琴の部屋選び、温泉へ行くことになった鮫柄学園の4人、新入部員勧誘の方法を考える渚ら後輩組、そして勘違いから凛と百が水泳勝負に至るまで.

【感想】

 謂わば感情の波が無い(凛は勘違いで揺れるが)ゆるふわ回だけが平和に続く日常世界を、2時間近い新作映像で綴る(当然京アニクオリティの作画で).この感触、『映画 けいおん!』のあの衝撃を思い出す.すべてのアニメでこういう特別篇を作って欲しいくらい贅沢な「なにもない」時間だった.一話だけじゃなく、四話もあるというのが嬉しいんですよ.

 

『BURN THE WITCH』

【採点】

【監督】川野達朗

【制作国/年】日本/2020年

【概要】久保帯人が放つ新作にしてBLEACH番外編、連動する映像化プロジェクト第一弾.ドラゴンが息づく世界、それはロンドンの裏世界「リバース・ロンドン」。自然ドラゴン保護管理機関「ウイング・バインド」で働く魔女、二ニー・スパンコール、そしてニーハこと新橋のえるの騒々しい日常が幕を開ける.

【感想】

 先に原作読んでテンション上げての観賞.前日譚は飛ばしてるのでバルゴの説明足りてない気はするけど、アクションシーンはスタジオコロリドの丁寧な作画で盛り上がるし、ロンドンの町並みも綺麗.ただ「漫画の丁寧な再現」に留まり、折角のお膳立ての元に映画を作れるのに欲が少なく、「原作読んでた以上の感想」が一切湧きあがらない.漫画表現の映像的な処理というものは必要.

 

『薄墨桜 -GARO-』

【採点】

【監督】西村聡

【制作国/年】日本/2018年

【概要】雨宮圭太の特撮フランチャイズGARO】そのTVアニメ第二シリーズにあたる『GARO 紅蓮の月』の劇場版.但しメインスタッフは一新し、『劇場版TRIGUN -BADLAND RUNBLE-』の西村聡監督×小林靖子脚本タッグが復活.ストーリーは一見でも理解できるよう、TVとの時系列を曖昧にしている点も『TRIGUN』と共通.

【感想】

  平安時代を舞台に、前半は陰陽師モノ、後半まさかの怪獣映画へと変貌を遂げる野心作.『機動警察パトレイバー WⅩⅢ』を思わせるストーリーと、イリス×レギオンな怪獣に変身する巨大樹・薄墨桜のカタストロフィーが平安京で展開するという新鮮さ.アニメでしか出来ない挑戦をやり遂げた.朴璐美さんの演じるツンデレヒロインに萌えるという新鮮な体験に加え、映画オリジナルのヒロインが田中敦子さんで、どの層に向けて作ってるんだ!

 

機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER』

【採点】A

【監督】松尾衛

【制作国/年】日本/2017年

【概要】OVA『サンダーボルト』の総集編劇場版第二作.一年戦争終結後、サイコ・ザクを失ったジオン軍のダリルは地球でアッガイ小隊を率い、連邦軍のイオはジオンの関節も利用した新兵器アトラス・ガンダムの試乗を開始.そんなイオの前に趣味の合う快活な女パイロット・ビアンカが現れる.その頃、連邦は連邦を抜けた何者かが開設したらしき謎の宗教組織「南洋同盟」に警戒心を抱いており、ダリル小隊は偵察を開始する.

【感想】

 特に続編のアナウンスも無い「話の途中」という無責任な内容ながら、ひたすら描写が格好良い.MSのデザインをフルに戦闘に活かしたギミックの数々、そんなギミックすら一瞬で蹴散らされる兵器の暴力性、その危険な戦場をメインキャラが行き来する緊迫感と、次第に複雑な盛り上がりを見せ始める人間関係、そしてジャズ、ポップス、ロック.ひたすら格好良いというシンプルな理由のみによって最高.早く続きが観たい!

 

PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.1 罪と罰

【採点】C

【監督】塩谷直義

【制作国/年】日本/2019年

【概要】サイコパスシリーズ、中篇劇場版オムニバス第一弾.2117年、公安の前に暴走車両が突入し、搭乗している精神錯乱を起こした女が何事かを訴える.彼女の素性が潜在犯隔離施設「サンクチュアリ」の心理カウンセラー・夜坂泉だと判明し、常守朱は監視官・霜月三佳に執行官・宜野座と弥生を付けて出向させる.霜月がそこで見た、「サンクチュアリ」が秘匿する事業とは……

【感想】

 やはり冲方丁がいないとこのテンポに戻ってしまうのか.人格変わったかな、逆にサイコパスかなというくらい霜月美佳が正義感を発揮して活躍.俺が見たかった霜月はもっと「個」としてシビュラに同調し、次第に中枢へ近付いていく、朱の負の合わせ鏡であって欲しかった……というかその為の2期だったんじゃないのか……という不満はともかく、中篇アクションとして一定の満足度.霜月も主役として輝く.サンクチュアリで秘匿されていた「それ」についてもっと突っ込んだ話を観たかった.

 

PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.2 First Guardian』

【採点】B

【監督】塩谷直義

【制作国/年】日本/2019年

【概要】2112年夏、沖縄.まだ国防軍に所属していた須郷徹平は、優秀なドローンパイロット「First Guardian」として特殊任務に参加していた.数ヶ月後、東京の国防省無人ドローンが襲撃し、多数の役人・軍人を殺害.刑事課から訪れた監視官・青柳璃彩と執行官・征陸智己は国防省の妨害をかわしつつ介入し、須郷の取り調べを開始する.事件の背後に、軍事作戦中に死んだ筈の須郷の元上司・大友逸樹の影がチラつき……

【感想】

 過去篇にすることで、死亡キャラ達の同窓会的な雰囲気に.正直アニメ1期では設定上だけ伝説の刑事でひたすら無能にしか見えなかった征陸さんがようやっと格好良い姿や渋みを見せてくれる.ただ「これが半分の上映時間で『攻殻SAC』の中の一話だったら傑作回だったんだろうな」となる、丁寧と言えば聞こえはいいが鈍重な演出が続き、結果真相は常に先読み出来てわかってしまう.作画の高品質が裏目に出るというか.世評はどうあれやはり2期のスピーディーさは大事だった.Case.1に続き、ドミネーターが黄門様の印籠みたいな良い仕事をする.

 

PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に

【採点】A

【監督】塩谷直義

【制作国/年】日本/2019年

【概要】咬嚙慎也は今もアジアを放浪していた.私怨の復讐を果たした身であり、日本に帰れば死刑だろう.やがてチベットらしき国で襲撃されていた難民バスを助け、孤児のテンジンと出会う.日本棄民の娘であるテンジンは両親を殺したゲリラへの復讐を誓い咬嚙に戦いの作法を習いたがるが、咬嚙は人殺しに反対する.次第に打ち解けていく二人だったが、この国で行われている和平交渉の背後にある陰謀に気がついてしまう.

【感想】

 舞台は日本じゃないしドミネーターも出てこない、今までで一番コパスらしさから離れながら、今までで一番オリジナリティを獲得した一篇(つまりオリジナリティの部分にオリジナリティが欠けるシリーズだったと思うんですよね).即席のチーム物でもあって、中篇ながら先の長篇劇場版よりもクライマックスのアクションの満足度は遥かに高い.何より、初めて咬嚙が魅力的な存在に思えたのが個人的に大きい.征陸さん同様、アニメ一期だとすごく思わせぶりなのに無能だったから……

 このテの役はお手の物な諸星すみれも、カラフルな旗がはためく背景美術もとても良かった.

 

『あした世界が終わるとしても』

【採点】

【監督】櫻木優平

【制作国/年】日本/2019年

【概要】クラフターによるオリジナルCGアニメ映画.元となるHuluオリジナル作品があり、キャラや一部バトルシーンは共通しながらも異なる物語となっているとのこと。

 幼い頃母を謎の突然死で失った高校生シンと彼の面倒を見る幼なじみのコトリの前に、シンとそっくりな姿をしたジン、コトリを守ると誓うミコが現れる。この世界は裏側にもう一つの世界があり、最近多発する突然死も裏側の世界の同一人物が処刑されている為なのだという.そして裏世界「日本公国」を支配する公女は、もう一人のコトリで…

【感想】

 何も知らずに見たので序盤の展開は結構面食らって面白かったし、必要最低限のキャラで回していく構成も、中盤でのヒロイン死亡もなかなか「おお」となりつつ、「で、誰に向けて作ってるんだろうこのアニメ…」という冷めた気持ちが消えなかった.なぜアヌシーはこれをコンペに入れたの.中盤まではそれでも整理されてる気がした構成も、終盤ひたすら萎んでいくのでガッカリ.どこがクライマックスだったんだろう.

 

『ニノ国』

【採点】C

【監督】百瀬義行

【制作国/年】日本/2019年

【概要】足が不自由な高校生ユウは、幼なじみのハルとコトナの仲に疎外感を覚えていた.ある日コトナが交通事故に巻き込まれ、救助しようとしたユウとハルは異世界に迷い込んでしまう.そこは現実世界の人間の分身が暮らすファンタジー世界で、コトナにそっくりなアーシャ姫が重い病に冒されており…

【感想】

 あれ? 『あした世界が終わるとしても』となんか、設定が… /但し最小要素で描こうとした『あした』と日野社長がやりたい事全部詰め込もうとして例の如く感情の流れはブツ切り、後付け設定が無数に出てくる『ニノ国』だと全然印象が異なる.どちらが正解ということもないが、映画としては後者の方が楽しい気がする.どうも倫理的に首をひねってしまうラストを大した考えもなく無邪気にやってる感には嘆息してしまうが、それでもそのアイデア自体は面白いし、聞いてた酷評ほど悪い映画とは思えなかった.ヒロインの声優は下手.

 

魔法少女リリカルなのは Reflection

【採点】B

【監督】浜名孝行

【制作国/年】日本/2017年

【概要】シリーズ劇場版第三作.惑星エルトリアが死に汚染されつつあった.父の病の進行を防ぐため、少女キリエは遺跡で出会った少女イリスと共に死の病を防ぐ「夜天の書」を手に入れようと地球へ訪れる.地球で「夜天の書」を持つ少女・八神はやてを急襲したキリエとイリスの前に、はやての友達にして魔導師、高町なのはフェイト・テスタロッサが立ちはだかり--

【感想】

 前後編の前篇ということもあって、とにかくノンブレーキで重量感溢れる戦闘シーンがほぼ全編に渡って展開する、そのボリュームで圧倒.『とある科学の超電磁砲』が溜めて溜めて放つあの重力感を、溜めも無しに浴びせられ続けるのに飽きが来ない不思議.前作はそこが上手くいってなかった気がするのだけど…? 時に一方的な迫力ある見せ場の乱打を浴びるのも映画の醍醐味で、本作にはそれが詰まってた.初登場時は謂わばDV被害者であったフェイトが、なのはとの絆とはまた別に居場所を見つけたことがサブプロットで描かれて一安心.

 

魔法少女リリカルなのは Detonation

【採点】B

【監督】浜名孝行

【制作国/年】日本/2018年

【概要】シリーズ第四弾.前作『Reflection』から地続きの前後編の後編.闘いの真相を知り衝撃を受ける一同の中、なのはだけは再びその天才的な戦闘力で場を切り抜け、みんなが幸せに収まる方法を探しキリエに声をかける.事態の鍵を握る少女ユーリは管理局のみんなを吸収していき……

【感想】

 話を収束させなければいけないので前作ほどのゴリ押しの楽しさは無いが、それでもあらかじめ何重にも真相を仕掛けておいた展開でアクションを繰り出し続ける.前篇の重機、後編のメカと、作り手もアクションの重量感を主眼に置いてるのは明白.行き過ぎて最後には誇張抜きになのはがガンダムに見えてしまった(戦闘服のせい)が、ここまで強い女の子像というのも面白い.

 ただ前篇のフェイトのエピソードと違って、なのはに人間味を与えるため最後に心理世界の話が出てくるのは唐突過ぎたのでは.アルティメットなんとかさんみたい…

 

センコロール コネクト』

【採点】C

【監督】宇木敦哉

【制作国/年】日本/2019年

【概要】2009年の宇木敦哉個人製作アニメ『センコロール』が、10年後に続編『センコロール2』と併せて公開されたもの。片腕に謎の生命体センコを宿す少年テツが巨大な怪獣や同様の能力を持った少年少女に襲撃され、彼に巻き込まれた少女ユキと共に油断ならない、けれど穏やかな日常を過ごす.

【感想】

 「感触」そのものがアニメーション化したような独自の味だった前作に様々な人の手が介入することで、ただのヱヴァフォロワーのような、汎用的な味わいに変わってしまった『2』が少し残念.それでも独自の味わいはまだ生きている。果たして『3』は作られるのだろうか.映画デビュー作でもある10年前の素朴な「声」をなんとか再現しようとする花澤香菜の声が今聞くと新鮮だし、まだこういう引出しあったんだ、と(じゃあ『かんなぎ』ドラマCDでのざんげちゃんの変わりようは一体)。

 

聖☆おにいさん

【採点】C

【監督】高雄統子

【制作国/年】日本/2013年

【概要】中村光の人気コミックをOVAと同スタッフ・キャストで映画化.立川で貧乏アパート生活を続けるイエス・キリストブッダの日常を綴る.キリスト役は森山未來ブッダ役は星野源.原作だと多数登場した神様系関係者の出番は無く、商店街の人々の中で生きるイエスブッダの姿が四季を通じて描かれる.

【感想】

 豪華スタッフが揃い、アニメーションとしては滅茶苦茶豊か、で、あることが欠点になってしまう.ずっと懇切丁寧にギャグの説明を聞かされている状態で、笑うに笑えない.原作と手法が合っていないとしか.コンセプトを日常系に絞ったのだから、いっそ「日本で暮らす外国人」という部分からテーマを膨らませられないかと思ったが(実際そのつもりで描かれているのかも知れないが、あまり伝わらず).

 鈴木慶一の挿入歌、星野源のEDテーマと音楽面は充実.MVみたいなEDこそが本編かも知れない.このスタッフでもっと刺激的な内容の映画が観たい.

 

『ちいさな英雄 ーカニとタマゴと透明人間ー』

【採点】

【監督】米林宏昌・百瀬義行・山下明彦

【制作国/年】日本/2018年

【概要】スタジオポノック制作による短編集。【カニーニカニーノ】サワガニの兄弟・カニーニカニーノが、小川を舞台にスペクタクルな冒険を繰り広げる。【サムライエッグ】卵アレルギーが発症した少年シュンとその母は、食べ物に細心の注意を払って暮らしていく。それでも恐れていた事態は起こり……【透明人間】透明人間の男は、人並みに生きている筈だった。けれど誰にも気付かれず、体重すらなく、僅かなミスで空高く吸い込まれるように浮き上がり……

【感想】

カニーニカニーノ】小さなモノの視点で世界を見上げたら子供はドキドキするだろうという点では正解なのかも知れないが、それ以外の意味が何もないし、小さな「家族」をここまで賛美することが今子供向けアニメでやることなのか、クレしんでさえそこら辺ちょっともう危ういのに。

【サムライエッグ】アシタカが自身の呪いと生きていく姿を宮崎駿は「生まれついてのアレルギーのような不条理」と語っていたが、正にそのようなものと生きて行くしかない母と子の姿が、希望はなくとも力強く描かれる。

【透明人間】透明であることをそのままズバリ孤独のメタファーとして描き、その表現が隅々まで行き届いてアニメーションの快楽と同時に共感からくるもの悲しさが胸を打つ。大傑作。

 結果として、ポノックの看板である米林監督が足を引っ張る形に………でも3本中2本が傑作なのは凄いこと.次は山下監督の長編が見たい.

 

『劇場版 黒執事 Book of the Atlantic』

【採点】C

【監督】阿部記之

【制作国/年】日本/2017年

【概要】3度のTVシリーズOVAを経てアニメ版『黒執事』初の映画化.怪しげな死者蘇生の儀式が行われているという噂を確かめに、シエルとセバスチャンは豪華客船カンパニア号に乗り込む.するとそこにはエリザベスが家族と一緒に乗り込んでいた。何かあってリジーを巻き込む訳にはいかない。けれど気がつけば豪華客船は蘇生した死者の氾濫と氷山衝突による沈没の二大悲劇により阿鼻叫喚の地獄絵図に.そこで暗躍する死神たちそれぞれの目的は…

【感想】

 めちゃくちゃ惜しい映画.タイタニック+ゾンビという題材は面白いし、タイタニックのパロディを例の甲板だけでなく沈没パニック含めて全部やろうという心意気も馬鹿げて良いし、中盤でのあるキャラの覚醒が本家タイタニックより進歩的な面も見せる.モブもゾンビも豪快に死にまくる.ただその題材の面白さと、実は番外編ではなく『黒執事』メインストーリーとして展開する(このアクション作画も凄いのだが)作品でもあってその如何にもマンガタッチな掛け合いの部分とが激しくミスマッチで、一本の映画を観ている気がしない.それでも鬼滅の刃 無限列車編』よりは楽しめたけれど、印象としてはとても似ている二作.

 

『LUPIN THE 3RD 峰不二子の嘘』

【採点】

【監督】小池健

【制作国/年】日本/2019年

【概要】不二子が秘書として使えていた男ランディが暗殺者ビンカムに襲撃され、自宅に火を放ち死んだ.不二子はランディの息子で病気を抱えるジーンと共に逃亡を開始しつつ、ジーンの知る秘密を狙うビンカムの雇い主と5億ドルの争奪戦を開始する.ルパンと次元も参加するが、最強にして情緒不安定なビンカムは奇怪な術を使い……

【感想】

 作画の魅力と裏腹に脚本が煮え切らない劇画調小池ルパン、今回漸く「お話」が機能した感じがする.今峰不二子を描くということはどういう事なのかを余り考えて無さそうな古臭いジェンダー観の台詞がやたら不二子の口から出てくるのはわざとなのか天然なのか、しかし最後は不二子が男を「貫く」.全体的に旧(ブロスナンより前)007の緩い世界観を基にしているシリーズである事が今回のビンカム=ジョーズでくっきりした.

 本作で小池ルパンが一繋がりの物語であることが明らかになったので、そろそろ長編をということなのかも知れないし、実際見たいが、脚本は高橋悠也さんから変えて欲しくもある…

 

『劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRYー』

【採点】B

【監督】南川達馬

【制作国/年】日本/2017年

【概要】劇場版FAIRLY TAIL第2弾.フェアリーテイルのナツ達一行は、新たな依頼として世界を滅ぼすと言われる杖:ドラゴンクライを手に入れる為、ステラ王国へ潜入する。国王アニムスの配下にして残虐なザッシュとその一味相手に苦戦しながら、囚われの魔術師ソーニャと出会うが、ソーニャにはとある秘密があった.

【感想】

 ともかく一気呵成に見せ場だけで繋いでいく、見終わって特に残るもののないB級アクションとして、監督の名前からつい過度に期待してしまった前作『鳳凰の巫女(藤森雅也監督)』より面白かった.前半のお色気要素や残虐要素が浮いてる気がしたり、終盤原作のクライマックスに繋がるという「ナツのルーツ」の一端が明かされるのにそこへ至るテーマ的な伏線が前半に無かったり、脚本はお粗末な気もするが、90分以内に納めた勢いへの好感が勝つ.同じような姿勢なら『スタンピード』や『ヒーローズライジング』の方が面白かったけどもそれはそれ.

盛夏の映画の採点

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ショートターム/ウォールフラワー


 

見づらかったので、今回からBの色を変えますね.

なぜかB=黄色で自分の能が認識していたもので.

 

GODZILLA 星を喰うもの』

【採点】D

【監督】静野孔文瀬下寛之

【制作国/年】日本/2018年

【概要】ビルサルドの裏切りに遭い、ユウコは脳死状態に.ハルオの処罰が待たれる中、メトフィエスは着々と信者を増やしていた.ハルオが唐突に現地人の双子の少女の片割れとセックスする間、メトフィエスは「ギドラ」を呼び覚ます禁断の儀式を進め…

【感想】

 CGアニメである事が裏目に出て映画史に残る退屈を刻んでしまった一作目や、メカゴジラは都市であったという斜め上の設定の特徴をただの落とし穴としてしか見せられなかった二作目の破壊的なしょぼさに比べると、ギドラのデザインは初めてCGアニメであることが活かせて、尚克つハルオの物語としてのラストシーンには微かなカタルシスが.今までで一番マシ.

 難解な語彙が多いので眩惑させられるけど、シリーズ通して映像だけじゃよくわからないと思いますが皆さん、今は驚きの事態が起こっているんですよ、と、いう説明台詞が大半なのがそもそも問題で(虚淵さんこのパターン本当多いよ)、説明なしでも驚けるようなことが画面上大して起こっていないのだ.アニメなのに.

 

モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』

【採点】B

【監督】江崎慎平

【制作国/年】日本/2016年

【概要】「モンスト」のバトルに明け暮れる高校生のレンたち.異常事態発生により、物語は過去へ遡る.小学生のレンたちは怪しい研究所に迷い込み、ドラゴンを目撃する.失踪した考古学者の父がドラゴンを求めていたことから、レンは事件に深入りし、仲間たちと旅に出る.

【感想】

 『ストレンジャー・シングス』で世界に着火したかに見えたジュブナイルなノスタルジィブーム、日本からも何か出来ないものかと思っていたけど同時期にこういう作品があったのかと.レンの気持ちにばかり寄り添うのでチーム物としての旅情には乏しいけど、東宝夏休み映画的な一定の満足感があった.

 

『ラストデイズ・オブ・アメリカンクライム』

【採点】D

【監督】オリヴィエ・メガトン

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】近未来アメリカ.人間の脳にチップを埋め込み犯罪を無くす、そんなディストピア法の執行を目前に控えた荒れた国で、犯罪者フリックが--弟の仇討ち? カナダへの脱走? 運命の女との恋? 銀行強盗? あらすじがなんなのかよくわからない.

【感想】

 必ずしも明確なゴールや演出のメリハリを持たない自由で曖昧な大作が観れるのがネトフリオリジナルの面白さなので、こういう映画も大歓迎なんですけど、それはそれとして擁護するにはあまりに面白くなかったですね.特に前半の主人公とヒロインのラブシーン、一回でいいじゃんw 演出のチグハグさによってクスクス笑える部分は多い.オリヴィエ・メガトン監督、折角のチャレンジだったのにネクストステージへ行きそびれるどころか馬脚を現してしまったのつらい…

 ※NETFLIXオリジナル

 

『泣きたい私は猫をかぶる』

【採点】B

【監督】佐藤順一/芝山智隆

【制作国/年】日本/2020年

【概要】同級生の日之出賢人に猛アタックを繰り返す無限大謎人間ムゲこと笹木美代.日之出に何度冷たくされてもめげないムゲには秘密があった.とある夜以来、ムゲはお面をかぶることで猫のタロウに変身し、そうと知らない日之出に可愛がられていたのだ.家では継母に作り笑顔でしか接せられないムゲは、いっそこのまま猫のままでいいと願い…

【感想】

 スタジオコロリドの美しい作画世界で岡田麿理脚本の全力青春劇が一気呵成に突き進む前半一時間の充実感が素晴らしかった.そこからクライマックスにかけてどんどん蛇足感が増していくのは勿体ない.あるいはいきなり猫島篇に突入しても良かったのでは.新海誠×野田洋次郎の数倍コロリド×ヨルシカの組み合わせによるケミストリーは発明だと思った.志田未来の声優業は完全に安定の域.ところでこの監督×脚本の組み合わせ、担当回とは異なるとは言え『ARIA』のケットシー回を思い出しますね.

 ※NETFLIXオリジナル

 

イコライザー2』

【採点】A

【監督】アントワン・フークワ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】タクシー運転手として生計を立てつつ、ひっそり自警活動を続けていたマッコール.読むべき本のリストも残り一冊.静かな生活は充実していたかに思えた矢先、旧友スーザンが暗殺される.誰か知らないがマッコールさんを怒らせたらただでは済まない.おあつらえ向きの嵐の日、迎え撃つ用意も周到に、奴らとの決戦が始まる.

【感想】

 雨降る夜という観賞環境が映画のクライマックスに臨場感を与える幸運なタイミング.続編なのに、金かけて嵐の街を演出してまで「敵はたった4人」というこの地味な規模感がたまらなくちょうど良かった.一作目より好きかも知れない.『ランボー ラスト・ブラッド』に見せて欲しかったのはこういう映画だったのかも知れないなぁ.

 

『Us アス』

【採点】B

【監督】ジョーダン・ピール

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】アデレートは幼い頃、遊園地のミラーハウスで鏡の中の「もう1人の自分」に出会っていた.時は経ち、夫と2人の子供に恵まれたアデレートだったが、家族旅行であの遊園地があるサンタクルーズのビーチへ再び訪れることになる.怯えるアデレートの前に現われたのは、自分たち一家とそっくりの、赤い服着た4人の人間で…

【感想】 

 ジョーダン・ピールって「とても上手くやってる松本人志」だと思うんですよね.松ちゃんがリスペクトしてたギャスパー・ノエもそうだけど、例えば本作ならベルイマンに目くばせをしたりどんなにシネフィルぶってみせても、映画の活劇的興味よりも「アイデア」の具現化の方を優先している.自分はそこまで映画原理主義ではないので本作もシュールなコントの一篇として楽しみましたが、退屈と言われても否定できない.

 

『クロール ー凶暴領域ー』

【採点】A

【監督】アレクサンドル・アジャ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】大学で水泳に打ち込むもスカラシップを逃がしかけているヘイリー.地元に嵐が来るため、どうも旧家に向かったらしい父親を迎えにいく.自分に水泳しかないのも、今家族がバラバラなのも、あの父親のせいかも知れない.旧家の地下室で再開した父娘を、浸水とワニの二大ピンチが襲う.父娘はこの「ドン底」から脱出できるのか.

【感想】

 アジャの真価を『ヒルズ・オブ・アイズ』ぶりに観た気がする快作.バリー・ペッパーの主役級抜擢も嬉しい.『イコライザー2』と言い、嵐の中というシチュエーションは滾りますね.どうしたって手作り感が表れるせいかも知れない.もしくは『フラッド』に植え付けられたフェティッシュ.限定空間での自在なアクション.素晴らしい.

 EDでSee you later alligatorかかるのは『ゾンビーバー』オマージュです???

 

デス・ウィッシュ

【採点】C

【監督】イーライ・ロス

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】『狼よさらば』から続くデス・ウィッシュシリーズのリメイク(『狼よさらば』がシリーズ作品だったとは知らなかった).外科医のポール・カージーは、もうすぐ大学へ進学する娘との別れを惜しんでいた.しかしそんな一家を強盗が襲い、妻は殺され、娘も昏睡状態に.やり場のない感情に悶々とするカージーだったが、偶然出くわした悪党を痛めつけたことから、正義の暴力の快楽に目ざめ、やがて復讐を決行する.

【感想】

 復讐へ向かう怒りも苦しみも嘆きも全部足りないからカタルシスが無い.ブルース・ウィリスがミスキャストだったのか…と思うけど別に『狼よさらば』だってチャールズ・ブロンソンそんな演技巧者だったかな?と考えると演出力の差.主演ニコラス・ケイジならありだったかも それただの『ヴェンジェンス』だけど.一般人巻き込みまくりのトイレでの攻防、黒幕かと思わせただ兄思いの良い人だったヴィンセント・ドノフリオが良い味.

 これ脚本ジョー・カーナハンなんですよね.カーナハンの演出で観たかった.

 

『魂のゆくえ』

【採点】

【監督】ポール・シュレイダー

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】小さな教会でシンプルな生活を過ごすトラー牧師は、妊娠した若い夫妻の相談を受ける.夫は地球の気候変動を憂う活動家で、この未来のない世界に子を産み落とすことに罪悪感を覚え中絶を願う.やがてトラー牧師の倫理観を何重にも揺さぶる出来事が続き、牧師は今この世界で生きる一人の人間としての己を見つめだす.

【感想】

 スタンダードサイズで質素な空間を切り取るシンプルさが、カメラが得てして豊かに切り取りがちなこの世界から本質の寂寥だけを切り取る。枠の外に神の存在を/枠の内に神の不在を証明する.ベルイマン『冬の光』の陰鬱さを現代のニューヨーク(とてもそうは見えない)に再現させて、私たち個人が余計な目眩ましなく社会や自身の諸問題と向き合うか合わざるべきかを突きつける、「個人的」な映画.大胆なラストを受け止め切れませんでした.映画に比べ自分がお子ちゃまだった.

 

チャイルド・プレイ('19)』

【採点】

【監督】ラース・クレヴバーグ

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】リブート版チャイルド・プレイ.下請け工場で解雇を言い渡された工員が、子供たちの友達となるAI搭載型人形バディの一体からあらゆるリミッターを解除してしまう.バディは自分の主人アンディの心が自分から離れるに従って、リミッターの効かないままに暴走を始める.

【感想】

 オリジナル版の愛きょうが無くなった代わり設定としてはむしろ今までで一番合理的なのにいきなりチャッキーと名乗って中途半端だったり、最初の殺人が猟奇的過ぎて段階を飛ばしてるようにも見えたり(チャッキーが『悪魔のいけにえ2』の影響受けてるのは笑かす)、挙げ句クライマックスのスーパーへのブツ切りのような繋ぎ.どの方向性でも傑作になり得たのに、スタジオが編集に口出しして狙いを定めきれなかった印象を受ける.

 『アトランタ』のペーパー・ボーイが刑事役で登場.キース・スタンフィールド同様今後大量に出演作が待機中らしく、『アトランタ』の余波を知る.

 

『オールドガード』

【採点】

【監督】ジーナ・プリンス=バイスウッド

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】女戦士アンドロマケを筆頭とする少数精鋭の不死身の軍団オールドガード.新たに、米軍の女性隊員ナイルが今己の体の不死性に目ざめ、アンドロマケたちは仲間に加えようとする.一方、オールドガードの力をなんとか借りたい元CIAのコプリーは製薬会社CEOメリックに手を貸してしまう.実験目的のメリックの狂気がオールドガードに向けられ…

【感想】

 アクション映画としては非常に緩いのだけど、長寿故の苦しみや歴史との関与が次々羅列されて、伝奇的な、いやハッキリ言う、FGO的な設定の魅力は抗いがたい作品.露骨にクリフハンガーで終わるので、是非とも続編見たいところ.一番の見所はエンドロール.

 ※NETFLIXオリジナル

 

『ラ・ヨローナ~泣く女~』

【採点】

【監督】マイケル・チャベス

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】『死霊館』ユニバースの一本.1973年、L.A.ソーシャルワーカーのアンナは、母親によって監禁されている児童二名を開放する.しかし、その子供たちが揃って溺死する事件が発生.母親はアンナを「人殺し、お前のせいだ」と罵り、アンナの子供たちのもとに奇妙な泣き声と共に白い女が現われ始める.

【感想】

 基本「そっちかと思ったらこっち」パターンがメインでジャンプスケア演出が次々起こり、本家『死霊館』ほど凝り過ぎない(ビニール傘の演出は良かった).ただサービス精神豊富ゆえに、「そんなあの手この手使ってる割りに子供たちに手を出すの遅いなラ・ヨローナ……有色人種の子供はすぐ殺したくせに」と、久々にハリウッドの欺瞞を嗅いでしまった.アンナ、一言くらいパトリシアに謝ったら? パトリシアはお前のせいで子供たち殺されてんだぞ? 主人公のことが好きになれないと辛いよねという話.

 『アナベル 死霊館の人形』のペレス神父再登場.そして終盤急に登場する強キャラ、ラファエル神父が良い.戦闘能力高そう.今後活躍するんじゃないだろうか.

 

『トリプル・フロンティア』

【採点】A

【監督】J・C・チャンダー

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】民間軍事会社のポープは、かつてデルタフォースに所属していた仲間たちにコロンビアの麻薬王邸急襲、そして隠し資金の横領を持ちかける.人生に光を見失いかけていた男たち5人は作戦を決行するが、事態は予想外の方向へ.

【感想】

 序盤の坂道を使った追跡劇の勾配の捉え方、伝わる役者の息切れに「これは腕のある監督だ」と構えるも、しばしどういう方向性なのかわからない.やがて金に目が眩んだ男たちのはしゃぎようで、「あぁ、これは…」とジャンルが見えてくる.演出の映画.非常にお気に入りです.

 

『ホワイト・ボイス』

【採点】A

【監督】ブーツ・ライリー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】HIPHOPバンドThe Coupのリーダー、ブーツ・ライリーの長年温めていた脚本による監督デビュー作.カリフォルニア州オークランドを舞台に、「白人の声」を使いテレアポでサクセスする貧乏黒人と、進む格差社会の中で起こる暴動を、ナンセンスな笑いで気だるく綴る.

【感想】

 キース・スタンフィールドが主演というのもあって、『アトランタ』以降だからこそ成立するような内容、かつ今日の世界の運動とも繋がっているので、これは作られるべくして作られた映画だ、という感動があった.しかしそのシリアスな核の部分を、この上なくふざけたギミックで笑いに変えている為、まったく肩肘張らずに見れる.

 久しぶりに新鮮な映画と出会えた.

 

『見えない目撃者』

【採点】A

【監督】森淳一

【制作国/年】日本/2019年

【概要】韓国映画『ブラインド』の日本版リメイク.警察学校の卒業を控えたなつめは交通事故に遭い、弟と視力を失う.その数年後、盲者として暮らすなつめの目の前で誘拐事件が発生する.半信半疑の警察や、もう一人の目撃者であるスケボー少年と捜査を進めるなつめだが、次第に猟奇的な事件の全容が露わになり…

【感想】

 先に見た中国版リメイクがポップな余韻へ至ったのと真逆の、凄惨かつ硬質なサスペンススタイル.いかにも邦画的な鈍重な芝居や説明的な台詞もあるのだけど、それらが全部終幕へと効果的に繋がっていくので感動してしまった.犯人の陰惨な儀式が犯人へのトドメの一撃のカタルシスに繋がったり、全編を覆う苦しさが主人公の一言の為に機能したり.見終わると勇気さえ沸くのだから、これは良作.

 

『ドゥ・ザ・ライトシング』

【採点】

【監督】スパイク・リー

【制作国/年】アメリカ/1989年

【概要】ニューヨーク・ブルックリンの一角.黒人街に佇むイタリア人父子によるピザ屋.その店員ムーキーの姿を中心に、周辺に暮らす貧しく傲慢な黒人たち、なあなあで全て見過ごす警察、そしてイタリア人店主の矜持などがユーモラスに綴られる.しかしその微妙な均衡は、ある日呆気なく崩れ去ってしまう.

【感想】

 発言のストレートさに反して複雑な映画の多いスパイク・リーの代表作、初見.前半の「ここには全てがあるんだ」と言わんばかりの、老若男女溢れるストリートの日常描写の多幸感が既に一本の傑作分の満足度があり、その調和が崩れるクライマックスの「一体これをどんな気持ちで見ればいいんだ?」という複雑性に前半と正反対の質の充実がある.

 しかしこれを今の日本人が見ても(お前も日本人だろというツッコミはさておき)「やっぱり黒人は乱暴だ」の一言で一蹴されてしまいそうな怖さも感じる.『サマー・オブ・サム』の混沌、暑さに浮かれて狂う人々は本作の系譜だったのか.

 若きサミュエル・L・ジャクソンがストリートと一線を画すラジオブースの向こう側で「DJ」を演じているのも趣き深い.

 

モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ』

【採点】C

【監督】錦織博

【制作国/年】日本/2018年

【概要】13年前、いきなり東京の一部が分離し、宙に浮かんだ.空の「旧東京」と地上の「新東京」に別れた時代.新東京で暮らすカナタは、死に別れたと思っていた母が13年前からずっと旧東京にいること、そして跋扈するモンスターの存在を知らされ、ストライカーと名乗る少女ソラ達と共に冒険の旅に出る.

【感想】

 オレンジのCGアニメの堂々とした質感というか肉体の存在感と色彩の鮮やかで

くっきりとした印象が、東京の実在の土地を舞台とした世界で派手なアクションを展開するので、広瀬アリスの棒読みはさておいて目に愉しい.出来れば終盤お決まりの収束に向かわせず、実写ではなかなか出来ない東京のあちらこちらでのアクションをもっと見ていたかった.地下鉄バトルで地下鉄そのものが龍のように動いて襲い掛かってくるシーンは、数多の映画の中でも初めて見たと思う.

 

『ショート・ターム』

【採点】

【監督】デスティン・ダニエル・クレットン

【制作国/年】アメリカ/2013年

【概要】問題を抱えた10代の少年少女を擁護するグループホーム『ショートターム12』を舞台に、施設のケアマネージャーのカップルに降りそそいだとある難題と、様々な心の葛藤を抱えた子供たちの息苦しさが淡々と、しかし真に迫る切実さで描かれる.

【感想】

 この一年で誇張抜きに死ぬほど見たキース・スタンフィールドの出世作.主演はブリー・ラーソンで、ラミ・マレックまでいる、低予算の小品だけど今見ると豪華.キース演じる、年齢制限のせいでもう施設を出ないといけない少年が歌うこのフレーズが全て.「普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった、普通の人生が生きたかった…」どうかこの痛みを知って欲しい、これ以上は押しつけないから、こういう子たちがいると知って欲しい.そんな、実体験を基に本作を制作した監督の想いが伝わってくる.

 

『プロジェクト・パワー』

【採点】

【監督】アリエル・シュルマン、ヘンリー・ジュースト

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】その謎の薬「プロジェクト・パワー」を使えば5分間だけ超人能力を使えるか、体内が発火して爆死する.そんな秘薬を巡り、誘拐された娘を探す元兵士アートは暴力によって、街の異変に立ち上がる警官フランクは合法的に、ニューオリンズの街を駆け回る.やがて二人は同じ少女ロビンに辿り付き…

【感想】

 『ラストデイズ・オブ・アメリカンクライム』と微妙に被ってるし、設定もアクションもルックもまるで新味に欠ける退屈な映画である一方、このテのヒロインとしては珍しい太った黒人の貧乏で犯罪者でもある少女ロビンをエンパワーメントしようという裏テーマがラストのラストで明確に浮き上がり、そう思って振り返ると贔屓したくなる作品.「この映画を見て鼓舞される観客は確実にいるだろう」という確信を持てることはそう多くない.

 

『ウォールフラワー』

【採点】

【監督】スティーブン・チョボスキー

【制作国/年】アメリカ/2012年

【概要】ベストセラー小説を原作者自ら映画化.いつも誰かわからない「ともだち」に向けて手紙を書いている、高校で友達のいない「ウォールフラワー(壁の花)」くんことチャーリー.「でもお姉ちゃんいるし…」と思ってたけど、姉にも一緒にいることを嫌がられてしまい、学食で一人で過ごすみじめな日々が続く.けれどある日、少しの勇気を出して話しかけた先輩パトリックと、パトリックの義理の妹サムと出会えたことで、彼の青春はめまぐるしく色を変えていく.

【感想】

 これぞ青春映画というベタを繊細で優しい人間観察で我がことのように感じさせてくれる愛おしい作品.でもそれだけで終わらない哀しみにも最後には触れていく.エマ・ワトソン(吹替え藤井ゆきよ様とのことで、吹替え版も見たい)とエズラ・ミラーというハリポタユニバースの共演にもワクワク.

 

 

2017年映画ベスト/2010年代映画ベスト100への道⑧

この年の秋からNETFLIXに加入しました.まだNETFLIXプリペイドカードも近所に売っていなかったんですよね.

ランキング入りこそしませんでしたが、『オクジャ』『デスノート』『ヒットマンズ・ボディガード』あたりのネームバリューに惹かれてなければネトフリ入らなかったのです.

 

候補作は135本.

 
1位.LOGAN/ローガンジェームズ・マンゴールド

2位.沈黙 ーサイレンスー(マーティン・スコセッシ

3位.パーソナル・ショッパーオリヴィエ・アサイヤス

4位.ドリーム(セオドア・メルフィ

5位.ナイスガイズ!(シェーン・ブラック

6位.SING/シング(ガース・ジェニングス)

7位.アトミック・ブロンドデヴィッド・リーチ

8位.女神の見えざる手ジョン・マッデン

9位.エル ELLEポール・バーホーベン

10位.ハードコア(イリヤ・ナイシュラー)

 

11位.ザ・ベビーシッター(マックG)

12位.マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)(ノア・バームバック

13位.クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的(アレックス・デ・ラ・イグレシア

14位.新感染 ファイナル・エクスプレス(ヨン・サンホ

15位.キングコング 髑髏島の巨神(ジョーダン・ヴォート=ロバーツ

16位.わたしは、ダニエル・ブレイクケン・ローチ

17位.夜明け告げるルーのうた湯浅政明

18位.この世に私の居場所なんてない(メイコン・ブレア)

19位.昼顔(西谷弘)

20位.ジェラルドのゲーム(マイク・フラナガン

 

 好きな監督をTOP3に並べられるのは気持ちいいですね.

それぞれのスタイルが物語にしっかり寄与して昇華されていました.バーホーベン『エル ELLE』や、もしかしたらガース・ジェニングス『SING』も.演出だけ先走ってキャラの生活が無いのもそれはそれで寂しい.逆に演出の映画として、実はそこまでヒューマンではなく「走る」「歩く」動作そのもので全編を彩った『ドリーム』は野心作であったと思います.

『ナイスガイズ!』はこれが巧い映画だの見本みたいだなと、そういう映画じゃないのにちょっと泣きかけましたね.

マックGがNETFLIXにあまり綺麗に収まった『ザ・ベビーシッター』も何気に衝撃作でした.

後に傑作『ドクター・スリープ』を生み出すマイク・フラナガンのネトフリ映画『ジェラルドのゲーム』が変則サスペンスというジャンル物を通して描いたものも、今の世の中決して見過ごせないと思います.

 

以下、ベスト候補です

 

美女と野獣
ベイビードライバー
マイティ・ソー バトル・ロイヤル
サバイバル・ファミリー
レゴバットマン ザ・ムービー
帝一の國
美しい星
22年目の告白ー私が殺人犯ですー
ジーサンズ はじめての強盗
ジョン・ウィック:チャプター2
ノーゲーム・ノーライフ ゼロ
スパイダーマン:ホームカミング
ワンダーウーマン
劇場版Fate/kalaid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い
新感染 ファイナル・エクスプレス
散歩する侵略者
ダンケルク
アフターマス
亜人
劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~
Fate/stay night [Heaven's feel.] 第一章「presage flower」
バリー・シール/アメリカをはめた男
ブレードランナー2049
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
予兆 散歩する侵略者
gifted/ギフテッド
勝手にふるえてろ
ありがとう、トニ・エルドマン
A GHOST STORY
Death Noteデスノート
花に嵐

 

響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~』は総集編のようでTVシリーズの換骨奪胎映画として賑やかな快作.

第三の映画の採点

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Twitterを辿るのやや面倒なので、鑑賞直後の感想をまとめて残しておきたくて 備忘録として書き始めたシリーズでしたが、今回前半の感想がまとめて消えてしまって、鑑賞直後の感想を取り戻そうと取り繕って書き直しています.

それでもほんの一、二週間の差なのに、自分の感想なのに違和感が.

 

『響 ーHIBIKIー』

【採点】

【監督】月川翔

【制作国/年】日本/2018年

【概要】小説誌編集部に届いた、謎の作家「鮎喰響」の手による天才的な小説.編集者・花井ふみは人気小説家を祖父に持つ女子高生・凛夏を介して響との遭遇を果たすが、立ちふさがる障害に平気で暴力を振るう唯我独尊少女・響はコントロール不能な存在で…

【感想】

 絶対的長所である響というキャラを立て過ぎるあまりに多くの短所も内在してしまった、かなりアンバランスな印象のある原作漫画を、おいしいところだけ切り取って響爆発のサスペンスで引っ張り、話のピークで綺麗に切り上げる.完全に実写化の大勝利.初めて作品を見た月川監督、カメラワークの愉快さに留まらず、平手友梨奈という飛び道具を活かすために、むしろ助演陣の魅力に力を注いでいる演出も心憎い.

 

『A GHOST STORY』

【採点】

【監督】デヴィッド・ロウリー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】ある夫婦が暮らしている.旦那が事故で死亡する.旦那の魂は、シーツをかぶって目の部分に穴の開いた簡易な幽霊となって、家に留まる.やがて膨大な月日が、物言わぬ哀しげな幽霊の前を通り過ぎていく.

【感想】

 あまりに評判が高く、その監督の作品が好きなことも既に判っていて、あまりに好みと合致しそうな作品だったばかりに見るタイミングが遅れるに遅れ、結果いざ鑑賞しても「なるほどねぇ」止まりになってしまう。そんな経験ありませんか.僕はあります.『アンダー・ザ・シルバーレイク』と本作です.ただ『アンダー~』は映画史には残らないと思うけど、本作は残ると思う.

 

『花に嵐』

【採点】

【監督】岩切一空

【制作国/年】日本/2017年

【概要】大学に入り、映画研究サークルに入部しようとした「僕」は、いきなり「カメラ」を渡され、自分なりに回すよう先輩に命じられる.何も説明されないままカメラを回す僕は、次第に画面の隅に映り込むとある少女が気になり…

【感想】

 監督自身が露悪的な被写体となる白石晃士イズムのモキュメンタリーで大学サークルミステリー を描きながら、そこいらのメジャー邦画より遥かにクリアな映像と確信犯でトリッキーなカメラワーク、失敗気味だけどMGS的なステルスゲーム要素、ついでに無名ながら可愛い女優陣(監督マジで役得なんだよな…)と目に飽きがこないエンタメ度の高さ.あまりに調子に乗りすぎてエンドロール後のネタは蛇足.

 

Ryuichi Sakamoto:CODA』

【採点】

【監督】スティーヴン・ノムラ・シブル

【制作国/年】アメリカ・日本/2017年

【概要】坂本龍一の5年間を追うドキュメント.社会問題へのコミットやガンの闘病、世界的な映画への劇伴作りと、個人的な新作アルバムへ込めた実験性の模索などの様が綴られる.

【感想】

 主題が分かり辛いのは難点だが、説明しないのは美点だろう.前半、坂本が『惑星ソラリス』を鑑賞しながら、タルコフスキーの映画の自然音は実は調整されきった一枚のアルバムのようである、彼のようなアルバムを作りたいと野心を零す.そして自然の音を集め始め、映画全体が人生を音楽に集約するような音像を残していく.

 

L.A.ギャングストーリー

【採点】

【監督】ルーベン・フライシャー

【制作国/年】アメリカ/2013年

【概要】1940年代、ミッキー・コーエン率いるギャングに支配されたL.Aで、ジョン・オマラ巡査部長は警察組織にも内密でギャング壊滅の為のチームを結成する.暴力VS暴力、戦いの行方を豪華キャストで綴る.

【感想】

 ルーベン・フライシャー監督、天然で無垢なのか意図的に無垢を装っているのかギリギリのラインを渡ってきたこの人らしく、まるで気付かないような素振りであまりにも堂々と『アンタッチャブルごっこに興じ、不正と巨悪に真っ向挑む男たちを讃える.手放しで楽しいタイプの作品.豪華キャストを若干持てあましてる印象も.

 

ドラゴン危機一発

【採点】E

【監督】ロー・ウェイ

【制作国/年】イギリス領香港/1971年

【概要】親族を頼ってタイの製氷工場まで訪れたチェン.しかし、腐敗した工場長らは横領に気付いたチェンの親族を次々殺害していく.チェンの怒りの導火線に火が点くまでは、かなり長い!

【感想】

 ブルース・リー伝説の一本とは言え、現場の混乱が続き監督も定まらず時代設定さえ統一出来なかったという逸話もあるだけあって、いくらなんでも映画としての形を成していないように思う.逆に普段見ている他の映画はどんなに出来は酷くても、映画としての形は成しているよなと妙に感慨を覚える.見え見えのハニートラップに気付かず綺麗にひっかかる流れは逆に初めて見たので、滅茶苦茶面白かった.

 

死亡遊戯

【採点】

【監督】ロバート・クローズ/ブルース・リー(ノンクレジット)/サモ・ハン・キンポ-(ノンクレジット)

【制作国/年】イギリス領香港・アメリカ/1978年

【概要】トラック・スーツ姿の男が五重の塔を登り、一階ごとに敵を倒していく。この強烈なクライマックスだけ監督してブルース・リーが亡くなった.後を継ぐ男たちがなんとか一本の映画に仕上げたのが本作.

【感想】

 この無茶な企画にもかかわらず『ドラゴン危機一発』より余ほどバランスが取れて見えるのはゴールが見えているからなのか.しかし結果としてあたかもブルース・リーの死はウソであったかのように見えるマジック.究極のロマンチックムービーかも知れない.

 

『蒼き鋼のアルペジオ ーアルス・ノヴァーDC』

【採点】

【監督】岸誠二

【制作国/年】日本/2015年

【概要】TVアニメ劇場版二部作の前篇.こちらはTVシリーズの総集編がメインとなる.地球温暖化の影響で陸地をほぼ失った人類の前に、旧大戦の軍艦の姿をした「霧の艦隊」が出現.少女の姿にも代わる彼女らの一人・イオナは人類の側につき、元海軍士官候補生・千早群像らと共に霧の艦隊に戦いを挑んでいく.

【感想】

 総集編部分をかなり手早くまとめて、オリジナル展開をスタートさせ、ここから本格的に新しい敵との戦いが…という部分まで.TVシリーズの時点で脱落している身なので面白がるにも限界はあるけど、サービス精神たっぷりなのだろうなとは伝わってくる.

 

『蒼き鋼のアルペジオ ーアルス・ノヴァーCadenza』

【採点】

【監督】岸誠二

【制作国/年】日本/2015年

【概要】霧の艦隊総旗艦代理としてメンタルモデル・ムサシが全人類に宣戦布告する.かつて慕っていた群像の父・翔像が軍人に殺された恨みを人類に向けているのだ.イオナと群像、そして戦いの中で増えていった仲間たちはムサシを止められるのか…

【感想】

 こちらは完全新作.相変わらずお話にはノレないまま、でもバトル演出はそこそこ楽しめた.しかし原作の印象が最後まで結びつかないアニメだ.声優陣がほぼアイドルマスターシンデレラガールズで声を聴く楽しさは大きかった.

 

『チャーリング・クロス街84番地』

【採点】

【監督】デヴィッド・ジョーンズ

【制作国/年】イギリス・アメリカ/1987年

【概要】第二次世界大戦後.NY在住の口うるさい女流作家が、ロンドン・チャーリングクロス街84番地にある古書店稀覯本を注文したことを機に、店主ら古書店の人々と文通を交わすことになる.いつかその店に足を運びたいと願いながら、夢は夢のまま…

【感想】

 往復書簡形式だという原作に忠実なのか、ドラマ的な波はなくひたすら手紙のやりとり、近況報告が続く不思議な構成の映画.でもその顛末のほろ苦さは冒頭で提示されている為、口の悪い女作家が文通を楽しむ様が儚く愛おしい.アン・バンクロフトの名演.そして若い(といっても老境にさしかかりかけてる)アンソニー・ホプキンス

 

関ヶ原

【採点】

【監督】原田眞人

【制作国/年】日本/2017年

【概要】豊臣秀吉が死に、五大老筆頭徳川家康が本性と野心を露わにした.今こそ理想の世を成す為、石田三成は名将・島左近、盟友・大谷刑部らと共に決起する.「不義が正義に勝ってはなりません!」.その頃、小早川秀秋が辺りをうろちょろしていた.

【感想】

 原田作品いつも感想同じだけど、「台詞が聞き取れない事を除けば面白い」ので誰かなんとか監督を言いくるめられないものか.もっと役名テロップ入れて良かった気がするな.伊賀忍者の暗躍を取り入れることで女優陣を単なるお飾りにしなかった采配は賢明.大谷刑部の見た目がひたすら格好イイ.クライマックスが弱いのは史実のせい.

 

『おんなのこきらい』

【採点】D

【監督】加藤綾佳

【制作国/年】日本/2015年

【概要】「可愛い」にとりつかれた拒食症OLキリコの、かなわぬ恋と新たな出会いを、音楽ユニットふぇのたすが劇中世界に現われ演奏し寄り添う姿も込みで可愛く綴っていく.主演は森川葵

【感想】

 いや、今時ただ男に媚びるためだけにこれだけの「可愛い」を収集してる女の子一般的じゃないでしょ…普通、自己実現だと思うんだけど.主人公の人物像が明解なようで、実は偏見に基づいたふわっとしたものになってる.ポップに始めながら、終盤長回しで辛気くさく「本音らしきもの」を吐露する流れも安易過ぎる.森川葵が見事なキャスティングだけに、勿体なかった.

 日本のインディーシーン、岡崎京子の漫画あたりまでで恋愛観が停止したままになってる気がするのですが.

 

『葛城事件』

【採点】

【監督】赤堀雅秋

【制作国/年】日本/2016年

【概要】次男が無差別殺人を犯した葛城家.絶対君主的な振舞で家族を抑圧し続けた父親を中心に、死刑制度反対を訴え塀の中の次男と結婚すると宣言する女弁護士を通して、葛城家の過去と現在が浮かび上がっていく.

【感想】

 地獄エンターテイメント.赤堀雅秋の人間観察眼がこれでもかってくらい人間の嫌な部分、直視したくない部分をえぐり出していく.ただ面白さ(と言ってよければ)がシーン単位で完結しているようで、構成としては存在している映画全体のうねりに繋がっていかない、最近の邦画にありがちな物足りなさが少しあった気が.やはりどこか演劇的なんだよなぁ.

 

クレイジー・リッチ!

【採点】

【監督】ジョン・M・チュウ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】ハリウッドメジャーでありながらアジア人キャストで固め、NETFLIXからの誘惑も拒み、全米興行収入第一位を成し遂げた記念碑的作品.シンガポール華僑の息子と交際するニューヨーカーで中国系アメリカ人レイチェル・チュウが、シンガポールでクレイジーな金持ちたちとのカルチャーギャップに遭遇する.

【感想】

 その実績は讃えられるべきだけど、本編の半分ただ色んな人に出会っていくだけの単調な展開、決して巧いとは言えないし、アジア映画のロマコメの水準からしても微妙な出来なのに、これでハリウッドで絶賛されてしまう事がむしろ哀しいというか、「ハリウッドの中のアジア人」がやはり浮いた存在であることの証左のようだった.

 

『フェイシズ』

【採点】A

【監督】ジョン・カサヴェテス

【制作国/年】アメリカ/1968年

【概要】ジョン・カサヴェテスが私財を投げ打って作った映画.崩壊を迎える夫婦の36時間の出来事を描く.娼婦役の監督夫人ジーナ・ローランズは勿論、それ以上に重要な妻役でロバート・アルトマンの秘書(!)リン・カーリンが熱演.

【感想】

 『オープニング・ナイト』は若干胃もたれしてしまったのだけど、本作は構成が明快で見やすい.役者の生っぽさ全開(それでいて表面的でない、というのはとても難しい)の姿を執拗に捉えるようで、狙い済ましたショットの挟み方、編集のメリハリがとにかく巧いんだなというのをようやく理解出来たかも.あの強烈な「咳」.

 

ご注文はうさぎですか?? ~Dear My Sister~』

【採点】C

【監督】橋本裕之

【制作国/年】日本/2017年

【概要】「木組みの家と石畳街」で喫茶ラビットハウスに住み込みで働いていたココアは、夏休みに母と姉の待つ地元のパン屋へ帰郷する.一方、残されたチノは過去のことを振り返っていた.花火大会の日、みんなは再び集えるかな…?

【感想】

 TVシリーズは世界観とリアリティラインが掴めないもどかしさと相俟って「何回見ても寝てしまう」因縁の作品なので、全部すっ飛ばしていきなり劇場版見ました.副監督にかおり監督も投入されて、完璧な可愛いを表現する豊かなアニメ世界はやはり凄い.

 『のんのんびより』の劇場版もそうだったけど、折角どんなに本編が起伏に乏しいゆるふわでも最後にそれなりの感慨をもたらせられる構成を用意してあるので、どうせならもっと中身も膨らませて長尺であれこれやればいいのになぁという勿体なさを少し感じる.『けいおん!』の冒険に続いてくれないのかな…

 

『CLIMAX クライマックス』

【採点】A

【監督】ギャスパー・ノエ

【制作国/年】ベルギー・フランス/2018年

【概要】1996年.舞踏団に参加した若きダンサーたちが、冬の雪山の合宿所に集まる.加熱する超人的なダンス.打ち明けられるセンシティブな思い.そして、みんなが食べるサングリアに密かに混入していたLSD.やがて一同に薬が効き始め、地獄のダンスパーティーが始まる.

【感想】

 一見やったもん勝ちのアイデアを好き勝手やっているようで、だったらもっと(これ以上に)露悪的にも出来たのに、終盤ののたくりうつようなカメラワークは実は観客の悪趣味とも一線を引いている.『アレックス』を例に出すまでもなく、そのカメラの導線にも意味はあると思うのだが.なので何を見せられているのか本当にわからない.或いは、LSDを服用すれば見えてくる…?(そこまでだ)

 

『ミッドナイト・ラン』

【採点】A

【監督】マーティン・ブレスト

【制作国/年】アメリカ/1988年

【概要】腐敗した警察にいやけがさし現代の賞金稼ぎとして生きるロバート・デ・ニーロが、正義感から賞金首となってしまった会計士の男を目的地まで届けるため、FBI、賞金稼ぎ、ギャング、あらゆる妨害に追跡されながらアメリカ横断逃避行の旅に出る…

【感想】

 いかにも80年代っぽい緩やかなノリでありながら、やはりいかにも80年代っぽい丁寧でウェルメイドな脚本.クライマックスの一斉問題解決の「わっ」となる瞬間やラストの幕引き等、色々と自分が見てきたハリウッド映画に影響与えてるんじゃないかと感じて、初見なのに他人の気がしない作品.

 

『灼熱の魂』

【採点】

【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ

【制作国/年】カナダ・フランス/2010年

【概要】カナダで暮らす双子の姉弟は、母の遺言状を別々に渡され、それぞれ「兄」と「父」に渡すよう告げられる.彼らは難民の子供であった.そして母ナワルの物語が、内戦真っ只中のレバノンから始まる.そこに隠されていた想像を絶する真実とは.

【感想】

 大作作家になる以前のドゥニ印の、なんでもない場面でも欠かさない緊張感に振り回されていると、実はラストの意味がイマイチピンとこなかった.もしかして頭がそれを理解したくなかったのかも知れない.それほど「うへぇ」となるオチなのでかなり覚悟して見て欲しいのだけど、一方に難民たちと共存する現実があり、そこにレディオヘッドが平然と混入してくるカナダの成熟も知れる.

 

銀魂

【採点】C

【監督】福田雄一

【製作国/年】日本/2017年

【概要】空知和秋の人気ギャグ漫画を実写化.宇宙人=天人の襲撃を受け、過去と未来が同居するSF都市・江戸を舞台に、よろず屋三人組含むお馴染みの面々がドタバタギャグを繰り広げ、暗躍する辻斬りの背後に潜む陰謀に立ち向かう.

【感想】

 「銀魂を実写映画化するにあたってしなくてはいけない100のこと」があるとして、そのすべてに手を伸ばし、どれも10点満点中3点くらい、といった印象.100のうち30くらいにしか手を伸ばさない実写化が多い中で、それは美点だと思う.

 努力と工夫の跡は目立つも、しかしその工夫が足りていない歯痒さ.せめて予算が5倍あれば見栄えもよく、ギャグとの緩急も決まっただろうに(でも寒い効果音が台無しにしてるからどうかな).1人除いて役者はみんなハマってる.菅田将暉は凄い.肝心の小栗旬は何言ってるか聞こえないし演技に照れがあってダメでした.

 例えば、なんでもない場面でも江戸の遠景にずっと都市部をCGで合成しておくとかだけでも免れたチープさはあったのでは.

 真撰組をキチンと紅桜篇でも活躍させている分、アニメ版新訳よりも脚色は良い.

禁密の映画の採点

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映画の採点第2弾です.

しばし続けようかなと思います.

ルールを設けていきましょうね.

・自宅鑑賞(とは言え最近では移動中含む.非劇場鑑賞作品)

・今回からネトフリ視聴作品も含む(間に合わなかった『その住人たちは』Aです).

・実写/アニメ 邦/洋を問わず、同列の基準上で採点.

・何を見ようが絶対に最低限一言の感想は残す.

・短編、場合によって中篇はスルー.

・当たり前のことなので、わざわざ「独断と偏見による」って書かない.

・一つの記事につき20作品まで.

・映画に点数を付けるべきものではない.

 

前回2本オーバーしたので、今回は18本です.ストックは沢山あるので第3弾も早いかも.

 

 

 

ブルーサンダー

【採点】B

【監督】ジョン・バダム

【制作国/年】アメリカ/1983年

【概要】極秘開発された攻撃用ヘリコプター『ブルーサンダー』。ベトナムでベトコンをヘリから落としたトラウマを持つ警察航空隊のマーフィーは、ブルーサンダーパイロットを務めながら、やがてこのヘリにまつわる米国政府の陰謀に気がついていく.

【感想】

 三宅隆太監督の『スクリプトドクターの脚本教室・初級篇』で逆バコ起こしが行われていた作品がネトフリに入っていたので観賞.無駄のない構成だけど、派手なシーンに挟まれて、三宅監督が指摘していたポイントの良さみは本読んでないと見落としてたかも.良い意味で、普通に面白い.

 

ノーベル賞殺人事件』

【採点】B

【監督】ベーテル・フリント

【制作国/年】スウェーデン/2012年

【概要】華々しいノーベル賞受賞式パーティーアメリカの女アサシンが現われ、堂々と銃撃.狙われた博士は無事だったものの多くの犠牲者が出る.巻き込まれた新聞記者アニカは、この事件がただのテロではない可能性を疑い、調査を始めるが…?

【感想】

 みんな大好きノーベル賞、すべてに意味がある関係者たちの証言、定期的に襲い掛かる真犯人、背景にある歴史の勉強、あとちょっとの社会性.俺たちの見たかった「北欧ミステリー」を地でいき、そこから一歩も逸脱しない.ジャンルに徹するプロの仕事を見た.

 

『鉄男』

【採点】

【監督】塚本晋也

【制作国/年】日本/1989年

【概要】伝説の自主映画.自身に肉体改造を施した「やつ」と、やつをひき逃げしてしまったサラリーマン.全身を鉄に蝕まれていく二人の男の、運命の邂逅とバトル.

【感想】

 今見るとこのテンションは流石にキツいが、80年~90年代の邦画に通底する都市性への眼差し、憧憬にも似た憎悪と妄執が最後に愛となって叫ばれる様は感動.編集の音ハメは気持ち良く、それだけでも拘りの細かさは知れる.でもキツい.

 

 キョンシー

【採点】

【監督】ジュノ・マック

【制作国/年】香港/2013年

【概要】清水崇プロデュースの香港映画.アーティストのジュノ・マックが脚本・監督を務め、キョンシー映画への愛を詰め込んだ一作.落ちぶれた元子役スターが辿り付いた貧乏アパートで、忌々しい恐怖が幕を開ける.

【感想】

 キョンシー映画のキャストを再結集させながら、キョンシー映画の持つユーモアを排し、ひたすらに寒々しく痛々しく禍々しい残酷美が展開していく.リメイク版『死霊のはらわた』のストイックさを更に膨れ上がらせたような快作.かつて見た悪夢への憧れが、すべて幻と消えるような虚無性.久々に映画でヤバいビジュアルを見た.

 

アイム・ソー・エキサイテッド!

【採点】

【監督】ペドロ・アルモドバル

【制作国/年】スペイン/2013年

【概要】上空へ飛び立ったその飛行機のCA達はゲイで、機長はバイ、副機長は自分にゲイの気があるのか興味がある.乗客は処女を憂う超能力女や怪しいメキシコ人etc…個性的な人々ばかり.そしてその飛行機の着陸システムが故障している事が判明して!?

【感想】

 アルモドバルでもこんな弛緩した映画を作る、という点で安堵する艶笑喜劇.『トーク・トゥ・ハー』を見て十数年経つのに主演俳優さんが出てきた瞬間「あの人だ!」って即座に判りましたね、顔の印象が強烈. 

 

『滝を見にいく』

【採点】

【監督】沖田修一

【制作国/年】日本/2014年

【概要】ワークショップで集められた四〇歳以上の女性たちを主演に据えて描く異色作.それぞれの事情から滝を見に行くバスツアーに参加した7人のおばちゃんたち.しかし無能ガイドとはぐれ、深い山中でサバイバル生活を余儀なくされる…

【感想】

 まったく知らないおばちゃん達がギスギスしたり愚痴り合ったりするだけなのに、不思議と面白く見れてしまう、これといってスペクタクルは起こさない、起こせないあたりの限界は少し感じた.このおばちゃん達、他の作品でも見てみたいな.

 

『劇場版 「K MISSING KING」』

【採点】

【監督】鈴木信吾

【制作国/年】日本/2014年

【概要】TVシリーズの劇場版.戦い終えて周防が散り、シロが消えた後.狗朗とネコはシロの姿を探していた.そんな街に狗朗を名乗る男・御杓神紫が軍勢を引き連れ暴れ始める.

【感想】

 最初にPVを観た時の興奮は忘れがたく、そしてPVがピークだったガッカリアニメとしても忘れがたいTVアニメ『K』.その劇場版.よく憶えてないのもあって話は右から左へ流れていったけど、今見ても映像(作画というより映像)の美麗さは圧倒的で最先端といって過言じゃないもの.そろそろ映像に相応しい物語とマッチングしたGoHandsアニメが観たい.

 

『野火』

【採点】

【監督】塚本晋也

【制作国/年】日本/2015年

【概要】大岡昇平の小説を、構想20年、難航する資金繰りを経て漸く完成させた塚本監督渾身の一作.太平洋戦争末期、地獄のレイテ島で肺病から隊を追われた田村一等兵の地獄巡りを描く.

【感想】

 なんとなく見るのに腰が引け、気がつけば何年も経っていたことに少し己を叱責.見応えある力作で、塚本作品の近視眼的な強迫性カメラワークと、塚本作品では珍しい広大な引きの画とのギャップが新鮮.それでもこういう作品にちゃんとお金がかけられ、商業作品として作られる世の中であってほしい.やはり画面の手前でしか事が起こってないような安さを端々に感じてしまうのが悔しい…

 

『エル・クラン』

【採点】

【監督】パブロ・トラペロ

【制作国/年】アルゼンチン/2015年

【概要】アルモドバル製作.1980年、独裁体制崩壊前後のアルゼンチン.富裕地区サン・イシドロで身代金目的の誘拐殺人を繰り返していたプッチオ家.その父の生粋の悪と、父に振り回され犯罪に加担する、ラグビーのスター選手でもあった息子の葛藤を描く.

【感想】

 重々しいシリアスな空気で『グッドフェローズ』的な軽快犯罪劇を描く、という矛盾した説明が実現している怪作.父の仕掛ける凶行に、音楽によって共犯関係に巻き込まれるのは息子か観客か.「有無を言わさぬ暴力の一員」であることの追体験.圧巻.

 

『あやしい彼女』

【採点】B

【監督】水田伸生

【制作国/年】日本/2016年

【概要】各国でリメイクされた韓国映画『怪しい彼女』の日本版.気の強い老婆が魔法の力で若返り、バンド活動に勤しむ孫に力を貸すことに.そんな姿が音楽プロデューサーの目に留まり… 多部未華子倍賞美津子のW主演.

【感想】

 オリジナル版未見.リメイクであると同時に、日本の歌謡映画としてこの上ない設定.肝心のライブシーンのエキストラの演出が弱かったりするのは勿体ないけど、幕の引き方が本当に鮮やか.志賀廣太郎さんの代表作になったと思う.

 

『ファーザー・フィギュア』

【採点】B

【監督】ローレンス・シャー

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】多くのコメディ映画を支え、昨年は『ゴジラKOM』『ジョーカー』とジャンルの幅も広げた名撮影監督ローレンス・シャーが自らメガホンを取ったコメディ.陽気なカイルと陰気なピーター、正反対のまま中年になった双子が、死んだと聞かされていた父が生きていることを知り、全米を横断して父親探しの旅に出る.

【感想】

 カメラマンとして撮ってきたコメディの数々でロードムービーはお手の物なので手堅く見せる一方、むしろ移動よりも次々顔を見せる豪華スターたちの演技を楽しげに捉えていく.ゆるいコメディだけど、意表を突いてくるオチにホロリとしてしまった.

 

『ジャケット』

【採点】B

【監督】ジョン・メイバリー

【制作国/年】アメリカ/2005年

【概要】湾岸戦争の後遺症を引きずり精神病棟に入れられたジャックは、歪んだ医師によるショック療法で拘束衣(ジャケット)を着せられ死体安置所のロッカーに何日も閉じ込められる.その恐怖が、タイムリープのトリガーとなってしまい…

【感想】

 あくまで当人たちにしかその異常が共有されないミニマムさに世界の秘密が握られているのがタイムリープ物の面白さとは言え、ここまでその「矮小さ」を感じるうら寂しいSFも珍しい.ただ今見るとキャストは超豪華.倫理的にアウトだけどタイムリープなら許される(?)合法ロリコン映画でもあって、正直その部分は引いてしまった.

 

『ケイコ先生の優雅な生活』

【採点】C

【監督】城定秀夫

【制作国/年】日本/2013年

【概要】低予算邦画プログラム・ピクチャーを量産する城定秀夫のピンク映画.同僚や不良に体を求められると拒めない気弱な女教師ケイコと、彼女に憧れと嫌悪を抱く男子生徒とが、日常の倦怠を抜けだそうとする甘酸っぱい青春ポルノ。

【感想】 

 城定作品初めて観賞.効率の良い長回し長回しですよという強調ではなく、本当に語りに特化している)がコスプレ感溢れる学園場面にも有無を言わさぬ推進力を持つ.後半色々覆していくとは言えケイコ先生の人物像は古いと思うけど、ネーミングの意味には思わず膝を打った.ラブホの露天風呂の解放感.

 

『タイラー・レイク ー命の奪還ー』

【採点】C

【監督】サム・ハーグレイブ

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】ルッソ兄弟と共にMCUやそれこそ前の記事で書いた中国映画『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』などあらゆる重要なアクション映画を支えてきたアクション俳優サム・ハーグレイブの初監督作.バングラディシュを舞台に、インド人麻薬王の息子を守る為傭兵タイラー・レイクが壮絶な死闘に挑む.

【感想】

 アトラクション映画が大好物なのだけど、最初からテレビやPC画面で見るそれは引き込まれる体感には少し弱く、むしろ画面から引いて落ち着いて見れてしまう、実はNetflixオリジナルには不向きな傾向なのではないかと.『サムも出演している『アトミックブロンド』の長回しは痛々しくてハラハラしたけど、本作のそれは段取りに見えて長回しであることが緊張感を削ぐ.

 でもネトフリオリジナル大作はこのくらいで丁度良いというワガママな気持ちも.

 ※NETFLIXオリジナル

 

『最高に素晴らしいこと』

【採点】D

【監督】ブレット・ヘイリー

【制作国/年】アメリカ/2020年

【概要】姉を事故で失い、茫然自失と毎日を生きていた少女バイオレット.自殺しそうな彼女を見かけた少年セオドアは持ち前の奔放さでバイオレットの憂鬱な気分を解放していくが、次第にバイオレットはセオドアの無邪気さこそ不安定で壊れそうなものだと気が付いていく.

【感想】

 「私をこんなに癒やしてくれる彼の心の闇に気付く」過程の捉え方が、繊細は繊細なのだけど最初からとても気持ち悪い交流に見えてしまっていたのでさしてギャップを感じない.距離感の緩急をより大袈裟にするくらいでもいいのかも知れないが、いずれにせよドラマを放棄した終盤は問題提起のつもりでも雑.

 ※NETFLIXオリジナル

 

 『ウンギョ 青い蜜』

【採点】B

【監督】チョン・ジウ

【制作国/年】韓国/2012年

【概要】自身の老いを嘆く老詩人の下に、無邪気な女子高生ウンギョがアルバイトとして訪れる.あまりに大胆なスキンシップを平気で取るウンギョとの生活に活力が漲る老詩人だが、彼を慕う若きイケメン小説家はウンギョの存在が気に喰わず…

【感想】

 山中の美しい家屋、詩人の夢、陽光の中でサービスシーンを繰り返す女子高生のエロス.言葉にすれば陳腐なロリータ妄想の数々が高度な照明/撮影で展開していく白昼夢に目眩がしてくる.傑作であり珍作.パク・ヘイルの老けメイク主人公のせいか、意外とエロスは生っぽくなく、戯画化された滑稽さも付きまとうのが面白い.

 

『ファイ 悪魔に育てられた少年』

【採点】A

【監督】チャン・ジュナン

【制作国/年】韓国/2013年

【概要】強盗殺人や誘拐を繰り返す5人組「白昼鬼」に誘拐された少年ファイは、その後5人の犯罪者を父親として育ってきた.しかしとある凶行に巻き込まれたことから、自分の父親たちが許されざる悪人であることを直視せざるを得なくなり、反旗を翻す.

【感想】

 究極の「親殺し」の物語.ファイが敵対するのは明らかに血も涙もない外道の悪人たちだが、しかし悪人たちにとってファイだけは殺すに殺せない可愛い息子なのである.このジレンマが壮絶な復讐アクションに発展していく.先が気になって視聴を止められない.韓国映画でありがちなやや甘いエンドロールもハマったと思う.

 

『映画 としまえん

【採点】C

【監督】高橋浩

【制作国/年】日本/2019年

【概要】としまえん全面協力ホラー.大学生の早希は高校時代の仲良しグループととしまえんに訪れる.そこでいつか盛り上がった「としまえんの呪い」を実行してしまったその時から、一人また一人と友だちが消えていく.そしてここにはいないもう一人の友だち、由香の影がチラつき… 

【感想】

 器用な映画だけど、手練手管だけ見せられてるようで、魅力に欠けるヒロイン同様とっつき辛かった.ラブライブ!サンシャイン!!黒澤ダイヤが幽霊となって襲い掛かるが、こちらもまたこれといって特性が無い(いや、オチはなるほどと思うのですが).ゴールとしてのメリーゴーランドとかもっと活かせたんじゃないか.としまえんから校舎への移動が一番グッとくる演出だった.

 

 

2016年映画ベスト/2010年代映画ベスト100への道⑦

想定外でした.

2016年と言うと『シン・ゴジラ』『君の名は。』のヒットに始まり、『映画 聲の形』『この世界の片隅に』と続いた和製アニメ系タイトルのビッグヒットイヤーという認識が自分の中に強くあったんですけど、純粋に映画界全体が大当たりだったんじゃないかという.20本に絞り込むのが至難の業.個人的に刺さった映画が大量でした.

 

候補作は109本.確実に観賞本数は減っているのに、充実感が反比例してます.

 

1位.イット・フォローズ(デヴィッド・ロバート・ミッチェル

2位.パディントンポール・キング

3位.シング・ストリート 未来へのうた(ジョン・カーニー)

4位.君の名は。新海誠

5位.映画 聲の形山田尚子

6位.浮き草たち(アダム・レオン)

7位.ドント・ブリーズフェデ・アルバレス

8位.キャロル(トッド・ヘインズ

9位.ザ・ウォーク 3D(ロバート・ゼメキス

10位.インサイダーズ/内部者たち(ウ・ミンホ)

 

11位.この世界の片隅に片渕須直

12位.テキサスタワー(キース・メイトランド)

13位.スティーブ・ジョブズダニー・ボイル

14位.ちはやふる 上の句(小泉徳宏

15位.オデッセイ(リドリー・スコット

16位.溺れるナイフ(山戸結希)

17位.ブリッジ・オブ・スパイスティーブン・スピルバーグ

18位.ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーギャレス・エドワーズ

19位.ヒメアノ~ル(吉田恵輔

20位.何者(三浦大輔

 

かなりオールタイムベストに近い『イット・フォローズ』か『シング・ストリート』かで迷いに迷った挙げ句、間に『パディントン』を挟むことなんとか落としどころとしました.で、『君の名は.』にしろ『映画 聲の形』にしろ、実はアニメ映画という括りを越えて、『イット~』『シング~』、続く『浮き草たち』『ザ・ウォーク』『ちはやふる 上の句』『溺れるナイフ』も含む青春映画の並びに納めた方がしっくりきますね.

1タイトル1タイトルが屹立して強い中、『何者』だけは割りとショットの重みが不在のまま突き進みつつ、ある一点でカメラがビシッと決まる、その1カットのマジックだけで惹かれました.

 

以下、ベスト候補です

 

PERSONA3 THE MOVIE #4 Winter of Rebirth
白鯨との闘い
残穢 -住んではいけない部屋-
ヘイトフル・エイト
マネー・ショート 華麗なる大逆転
アーロと少年
ズートピア
あやしい彼女
テラフォーマーズ
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
64-ロクヨン-前編-
10 クローバーフィールド・レーン
貞子VS伽椰子
クリーピー 偽りの隣人
ヤング・アダルト・ニューヨーク
ダゲレオタイプの女
劇場版 牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAM-
エクス・マキナ
劇場版 selector destructed WIXOSS
亜人 第2部 -衝突-
GANTZ:O
サラリーマン バトル・ロワイアル
最後の追跡
紅き大魚の伝説
XOXO
バッド・ラップ
HUNT・餌
淵に立つ
ロストシティZ 失われた黄金都市
父を探して

 

個人的に、配信映画に触れる前の年.ここまでは「一つ前の時代の映画」という印象が、今となっては生じつつあります.

(後から見た『浮き草たち』も『テキサスタワー』も配信が無ければ出会わなかったのでしょう)

 

2015年映画ベスト20/2010年代ベスト100への道⑥

今回ベスト選出直前になって個人的に重要な監督の作品がリスト漏れしていることに気がつきました.やはり明らかに「漏れ」は多々存在していますね.恐らく過去のUSBメモリを漁ればもう少し細かく思い出せる筈なのですが、使えるかどうかも怪しいし、使えなくなっていたらショックなので、このままでいきます。

 

候補作は122本.

 

1位.クリード チャンプを継ぐ男(ライアン・クーグラー

2位.キングスマン(マシュー・ヴォーン)

3位.薄氷の殺人(ディアオ・イーナン)

4位.ワイルド・スピード SKY MISSION(ジェームズ・ワン

5位.花とアリス殺人事件(岩井俊二

6位.ボーダーライン(ドゥニ・ヴィルヌーヴ

7位.アクトレス ~女たちの舞台~(オリヴィエ・アサイヤス

8位.007 スペクター(サム・メンデス

9位.岸辺の旅(黒沢清

10位.雪の轍(ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

 

11位.ジョン・ウィックチャド・スタエルスキ

12位.エル・クラン(パブロ・トラペロ)

13位.セッション(デイミアン・チャゼル

14位.バクマン。大根仁

15位.6年愛(ハンナ・フィデル

16位.クレヨンしんちゃん オラの引越し物語(橋本昌和

17位.ブラックハット(マイケル・マン

18位.チャッピー(ニール・ブロムカンプ)

19位.シェフ 三ツ星フードトラック始めました(ジョン・ファヴロー

20位.屍者の帝国(牧原亮太郎)

 

世評では『スカイフォール』の方が高いですが、あちらの撮影の「闇」がスタイリッシュに機能していたのに対して、『スペクター』の画面の「闇」の奥には007シリーズの紡いで来た非常に軽薄な数々のスパイごっこの時間が息づいている気配がして、そこに感動してしまったのですよね.あれは正にスクリーンの暗闇に対峙してこその体感でした.

 

ベスト候補

 

ビッグ・アイズ
テラスハウス・クロージングドア
アメリカン・スナイパー
劇場版 シドニアの騎士
インヒアレント・ヴァイス
駆込み女と駆出し男
ラン・オールナイト
海街diary
マッドマックス 怒りのデス・ロード
映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~
バケモノの子
パージ
野火
パージ:アナーキー
ジュラシック・ワールド
ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
ナイト・クローラー
ピース・オブ・ケイク
Wake Up,Girls! 青春の影
ARIA The AVVENIRE
ババドック 暗闇の魔物
コードネーム U.N.C.L.E
ガールズ&パンツァー 劇場版
リトルプリンス 星の王子さまと私
屍者の帝国
ストレイト・アウタ・コンプトン
オン・ザ・ハイウェイ/その夜、86分
百日紅 Miss HOKUSAI
ピッチパーフェクト
ヴィジット
グリーンルーム
誘拐の掟
皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇
オフィス 檻の中の群狼
雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
タンジェリン
教授のおかしな妄想殺人
皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
知らない、ふたり
サークル

 

豊作? なのです?