大晦日の映画の採点

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晦日に間に合いました.

 

『マイル22』

【採点】

【監督】ピーター・バーグ

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】CIAの極秘部隊「オーバーウォッチ」に所属するシルバは、今日も少年を含むロシア人組織を壊滅させ、苦い後味を噛みしめていた。次の任務は東アジア某国。極秘情報を抱える元警官リーを無事に国外退去させる事。不敵なリーの真意を計りかねながら、オーバーウォッチは過酷な戦闘の旅路を開始す。

【感想】

 量産体制バリバリ続行中のピーターとマーク・ウォルバーグが、『ザ・レイド』のイコ・ウワイスと組み、約90分といういつにないコンパクトさでまとめ、実話は基にしていない、と実はかなり攻めの一本。本国では酷評されたようだけど、ブツ切りみたいな終わり方含めて、むしろアクション監督ピーターの本質が(失敗してる部分含めて)剥き出しで刻まれていて悪くない。イコ・ウワイスにちゃんと演技させてるのも好感。

 

『呪われの橋』

【採点】A

【監督】レスター・シー

【制作国/年】台湾/2020年

【概要】2020年の2月28日、落ち目の女性レポーターがカメラマンを伴い、とある大学で過去の事件を調査している。ここで肝試しを行った4人の学生が溺死し、1人が行方不明になったのだ。映画は記録映像から過去に遡る。そこでは6人の学生が、呪いの橋で禁断の肝試しを行おうとしていた……。

【感想】

 幽霊出てくるかなー……? まだでしたー、という緩急の技巧が大変豊かで、ジェームズ・ワン以降のホラーの形を洗練して受け継いでいる。それでいてサービスする時は堂々見せるのも厭わない。ホラーまでレベル高いのかよ加減してくれよ台湾映画。終盤で真相が明らかになると「あれ? じゃあ前半どう映してたんだ?」となる仕掛けアリ。誰に感情移入するでなく、作り手の手腕を楽しむタイプの映画。今年一番の拾いモノだった気が。

 

ゲティ家の身代金

【採点】B

【監督】リドリー・スコット

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】1973年、ローマ。世界屈指の大富豪、石油王J・ポール・ゲティの孫が誘拐され、多額の身代金が要求される。義娘アビゲイルの懇願も聞かず、金を出し渋るゲティ。アビゲイルは交渉人チェイスと共に犯人を捜索。一方、情が移った誘拐犯の一人はなんとかゲティの孫を生還させたく、必死に要求を呑むようアビゲイルに連絡し……。

【感想】

 非常に奇妙な誘拐映画。他方に富める者から奪い取ろうと画策する悪があり、他方に富を独占しようとする悪がある。『悪の法則』では見えざる世界の「システム」が人の命を奪っていったが、本作では悪のシステムが2つ運行し、まったく譲り合おうとしない。結果として「隙間」が生まれる。だから何なのかまでは受け取れなかったが、変な映画だ……と感じる面白さはあった。ケヴィン・スペイシーMetoo運動で告発され、公開直前に急ピッチで再撮影に応じたミシェル・ウィリアムズとマーク・ウォルバーグ、それに代役のクリストファー・プラマーに拍手。その再撮影時のギャラで男優と女優のギャラに圧倒的格差(千倍!)が生じ、その事実を知ったマークはミシェル名義で自分のギャラを全額寄付している。

 

『コンジアム』

【採点】B

【監督】チョン・ボムシク

【制作国/年】韓国/2018年

【概要】CNNによる「世界七代禁忌の地」に選ばれたコンジアム精神病棟跡を舞台にした罰当たりPOVホラー。人気Youtubeチャンネルの配信者ハジュンは、6人の有志を募ってコンジアムに潜入取材を開始する。一人、拠点を作り皆のカメラをチェックし指示を出すハジュンだったが、現場の6人はそれぞれに怪奇現象に遭遇し……。

【感想】

 旧日本軍が朝鮮人の拷問に使い、後に韓国人医師が引き取ってからも精神病棟として虐待が行われたというガチガチにヤバい本物の恐怖スポット。なのだけど、映画はドローンも使いつつ丁寧にPOVを使いこなしていく(でもドローンは恐怖演出には活かされない)、器用な技巧のお披露目回みたいなところがあって、『呪われの橋』の後に見ると何か話にもアクセントが欲しかった。

 でも「そこに立ってる」「振り向くたびに近づいて来る」は定番ながら怖い。

 日本軍兵士の幽霊が襲ってきて生体解剖されちゃう(『TATARI』みたいな)くらいの攻めた内容を期待していなかったと言えば嘘になる。舞台がコンジアムである意味が弱いんですよね。或いはブラッド・アンダーソン『セッション9』のような味わいに振る方向もあった。

 

『灰とダイアモンド』

【採点】A

【監督】アンジェイ・ワイダ

【制作国/年】ポーランド/1958年

【概要】ドイツ降伏直後のポーランド。権力を握るソ連派の労働党にダメージを与えるべく、抵抗組織の構成員マチェックとアンドルゼイは党地区委員長シェーツカの暗殺を実行。しかし勘違いで別人を殺してしまう。次なるチャンスは終戦祝いのパーティ。マチェックはそこでクリスチナと運命の恋に落ちながら、シェーツカ暗殺の隙を窺う。

【感想】

 子供の頃、NHKで放送されたのをVHSに録画したはいいが画面がざらざら過ぎるし全然わからないしで脱落した映画。改めて観てみたら冒頭のシーンからして全く記憶と内容が違った! 理解不能過ぎてやたら「大きな映画」だと思い込んでしまったんだな。実際はほぼ一夜のパーティーで、酔っ払いたちの介入でまるで計画がうまく運ばないスリルとユーモアが良い塩梅。シェーツカの悲哀(検閲逃れの目眩まし要素でもあるのだが)もマチェック達も、ワルシャワ蜂起後であるという前提が結構大事。

 最初に暗殺を失敗した時点で全ては決まっていたような虚脱感と、だからこそ燃える恋と花火が儚く胸に残る。

 

バーニング・オーシャン

【採点】B

【監督】ピーター・バーグ

【制作国/年】アメリカ/2016年

【概要】メキシコ湾にある石油掘削施設「ディープウォーターホライゾン(原題。格好イイのでままが良かった)」で大爆発が起こり、百名以上の従業員が閉じ込められた実話の映画化。ピーター・バーグ×マーク・ウォルバーグの量産体制の中で生まれた一本。

【感想】

 ただ事故に向けて淡々と話は進み、事故が起きたらほぼ人間の活躍の場はなく、ひたすら大火に翻弄されるのみ。この「どうしようもない事態をただ見つめる」という形式が、『オンリー・ザ・ブレイブ』と本作によって生まれた新たなパニック映画の潮流となるのかも知れない。どちらの作品も無力感がハンパない。そして現にその被害に巻き込まれた人たちがいる、という事実だけが胸に爪痕を残す。それでいい。『オンリー~』に比べると若干エンタメ色が強いので、見易くはある。あちらは今も振り返ると胸が痛いし辛いので……。

 

『チョコレートドーナツ』

【採点】B

【監督】トラヴィス・ファイン

【制作国/年】アメリカ/2012年

【概要】1979年、カリフォルニア。ドラァグ・クィーンのルディは検事局に勤めるポールと恋に落ちる。時同じくして、ルディの隣人の薬物中毒であるシングルマザーがダウン症の息子マルコを置いて失踪する。ルディはマルコを可愛がり育ててやれるのは自分だけだと、ポールの力を借りてマルコの養育権を獲得しようとする。3人で過ごす幸せな日々は、やがて法の力で引き裂かれ……。

【感想】

 ハートウォーミングな名作と認識していたので、鑑賞後感のいたたまれなさに呆然としてしまった。言ってよ! 油断してたわ! ルディを演じるアラン・カミングの、最初から全てを知ってそれでも目の前の子供を救うために全力をベットすると決めた力強い存在感が知らず勇気を与えてくれる。「幸福な日々」をルディの歌で流す手法は映画をスマートにするが、そこをもうちょっと見せて欲しかった気もする。

 

『クリスティーン』

【採点】B

【監督】ジョン・カーペンター

【制作国/年】アメリカ/1983年

【概要】キングの同名小説を、発売とほぼ同時に全編ほとんどカーペンターによるオリジナルアレンジで脚色し、急ピッチで撮影されたというB級映画。過保護な母親の下で育つ冴えないイジメられっ子のアーニーが、曰く付きの車クリスティーンと出会い、改修していく中で見る間に自信を手に入れ、そしてアーニーの気に喰わぬ者たちが謎の死を遂げていく。

【感想】

 「B級映画」という字面にこれほどピッタリな作品もなく、主役は潰れたり綺麗になったりまた潰れたりロックナンバーの数々を流したりする車、プリムス・フューリー。一方で「お母さんが僕にかまうのは、自分が年だと認めたくないからだ!」とせめての反発を見せたアーニーのみじめで儚い栄光のひととき、ヒロインよりもアーニーを大事に思ってそうな親友デニスの奮闘も、雑然と描かれてるのにやけに印象に残る。

 素直に車の復元シーンで驚いてしまったのだけど、逆再生?

 

スマホを落としただけなのに

【採点】

【監督】中田秀夫

【制作国/年】日本/2018年

【概要】ある日、だらしのないサラリーマン・富田がスマホをタクシーに落としたことから、富田の恋人・麻美のもとにSNSを通じた不審なコンタクトが続く。麻美は富田の先輩・小柳からのしつこい誘いかとウンザリ。一方、刑事・毒島と加賀谷は連続女性殺害事件を追っていた。そして毒島たちの追う、黒髪の美しい女ばかり好んで惨殺するその「男」は、拾ったスマホの画像フォルダに写る麻美の姿にただならぬ興味を覚え…

【感想】

 もっと北川景子が犯人に追われ右往左往する話かと思いきや意外と本筋が錯綜して何を追っているのか分かり辛く……とかいうレベルじゃなく演出がいちいちダサい……けど、普段映画を見ない層にとってこれは立派にデートムービーとして機能するだろうな、という納得感もあった。

 真相はちゃんと面白く、予告で抱いた印象とは全然異なる2つの「メロドラマ」が後半発動している様は中田秀夫の面目躍如で、『劇場霊』ほど暗澹たる気持ちにはならずに済む。

 

『FLU 運命の36時間』

【採点】A

【監督】キム・ソンス

【制作国/年】韓国/2013年

【概要】救急隊員のジグは、ある日とある事故に巻き込まれた研究者のイネ、彼女の娘ミルと出会う.少しずつ近付きつつある二人の仲。そんな折、彼らの暮らす町で新型鳥インフルエンザが持ち込まれ、瞬く間に辺りは地獄絵図と化す。ミルを救おうとするジグ、研究を進めるイネ。事態は最悪に最悪を重ねて壮絶な様相を帯びていく……。

【感想】

 こんなことになる7年前とは言え、少なくとも『コンテイジョン』の後ではあるのにパンデミックによるパニックを極限まで煽る過剰なエンタメ精神が凄い。ハリウッドでも観たことのない絵を見せてやるという心意気。その前景にベタなロマンスを置いてあるので一応安心感も担保している辺りが巧み、というかキム・ソンス監督は根本的にベタが好きなんだろう。

 軍人役のマ・ドンソクが今と違いガチの悪役で新鮮。そしてあまりに気持ちいいラストショットからの、エンドロールの最初の一文でこんなに納得のいくメッセージは無い。ロケ地の住人たちへの謝辞。

 

アウト・オブ・サイト

【採点】B

【監督】スティーブン・ソダーバーグ

【制作国/年】

【概要】プロの銀行強盗ジャックは相棒の力を借りてフロリダ刑務所からの脱走を図るが、道中で連邦保安官のカレンと遭遇してしまう。なんとかカレンを拘束し脱走に成功するが、ジャックとカレンはお互いのことが妙に気になっていた。やがてジャックは刑務所で知り合った「スヌーピー」なる男との問題に巻き込まれ、カレンは再びジャックを追いかける。

【感想】

 理由は言えないけど、同じエルモア・レナード原作のタランティーノジャッキー・ブラウン』を絶対に事前に見ておくこと。脚本は『クイーンズ・ギャンビット』のスコット・フランク。ソダーバーグの軽さ(たぶん観客にはわからないところで色々な拘りは発揮してるんだろうが結果的に軽くなるいつもの塩梅)とエルモア・レナードの会話劇が『ジャッキー・ブラウン』とはまた違ったハマり方をしていて楽しい。

 

スカイライン ー奪還ー』

【採点】C

【監督】リアム・オドネル

【制作国/年】アメリカ/2017年

【概要】低予算インディーズ系SF映画として話題となった『スカイライン ー征服ー』が三部作として返ってきた、7年ぶりの続編。監督は前作のストラウス兄弟からバトンタッチ。宇宙人の襲来。なすすべなく攫われ、脳みそを吸われていく人類。それに立ち向かう父子と仲間たちの道中を追う。

【感想】 

 前作はインディーズ系で凄いねって話だったのに監督代わっちゃったらあまり感慨ないし、前作の語り直しみたいな展開で半分使ってしまうので退屈なのだけど、前作のラストの続きとも言うべき人類の逆襲にまで踏み込むので三作目には期待。『ザ・レイド』の二人がベトナムの戦士たちとして後半に登場。

「もうこんなシェルターを作ったのかい? 凄いな」

「お前ら(アメリカ)の爆撃から逃れる時に作られたんだよ」

 

『マザーレス・ブルックリン』

【採点】A

【監督】エドワート・ノートン

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】エドワート・ノートンが監督・脚本・製作・主演を務めた念願の作品。1957年のニューヨーク。孤児院で育ったチック症持ちのライオネルは、自分を拾い上げたフランクの探偵事務所で、やはり孤児院出身である他の探偵たちと仕事をしていた。しかし、自分が後を追っていた仕事中にフランクが殺されてしまう。真相を探るライオネルは、ニューヨーク行政と黒人地区の関係に鍵があると睨み……?

【感想】 

 原作は現代が舞台だというが、エドノートンは舞台を50年代のニューヨークへ変更。そのことによって「今日に続くあらゆる腐敗や差別が育つ根っこ」を描き出す野心作に。と同時に、チック症の男が自分でも制御できない癖と共に生き、人並みに探偵としての捜査を行う困難さをどこか愛おしく紡ぐ。なかなか愛着の沸く一本。

 

スカイスクレイパー

【採点】B

【監督】ローソン・マーシャル・サーバー

【制作国/年】アメリカ/2018年

【概要】香港に超高層ビル「ザ・パール」が建設された。10年前、任務の失敗で片足を失った元FBIのソーヤーは、転職してセキュリティ監査として家族とともにイチ早くこのザ・パール高層階で暮らしていた。昔の仲間と再会していたフェリーでテロリストの襲撃に遭い、帰宅するとザ・パールはテロリストに占拠されている。人質は家族。ソーヤーは単身ビルに乗り込んでいく。

【感想】

 監督と主演ドウェイン・ジョンソンのタッグからなる前作『セントラル・インテリジェンス』が惜しいところで野暮ったく間延びしてしまったので、今作はスマートに無駄なく構造的アドベンチャーに挑戦。その無駄のなさゆえに、面白いけど物足りなく感じてしまった。『ダイ・ハード』は無駄なき傑作と言われているけど、実際は主犯格以外のテロリストと戦う全てが無駄で、無駄を最高に面白い必然として組み込んでるからこそ傑作なのだ。

 

『(秘)色情めす市場』

【採点】A

【監督】田中登

【制作国/年】

【概要】にっかつロマンポルノ伝説の名画と呼ばれる作品。娼婦の母よねから路上で産み落とされた娼婦トメ。コンドームさえ洗って使い回し、セックスしてなきゃすぐ酒を呷る世界で、トメはよりによって商売敵として母に邪魔をされながら、障害者の弟の面倒を見、したたかに生き抜こうとする。

【感想】

 大阪・釜ヶ崎のドヤ街、所謂「あいりん地区」で暮らす人々の地べたを這うような生活を生々しく、奇妙なバイタリティとして活写。実際に現地でカメラを回している生々しさと、モノクロ効果による突き放したような距離感とが、ラストで瞬時に反転し、また戻っていく時、「そこで生きている人たちが確かにいる」という実感が残される。相当数の自分が見てきた邦画が本作のエッセンスをパクr…影響受けてることがわかって「繋がっていく」快感もあった。

 やはり同地を描いた大島渚の傑作『太陽の墓場』からのクロニクルとして見ても面白く、今の釜ヶ崎を描く邦画が生まれたら見てみたい。

 

『グッドライアー 偽りのゲーム』

【採点】B

【監督】ビル・コンドン

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】マッチングアプリで知り合った高齢カップルのロイとベティ。だがロイはベテランの詐欺師であった。血腥い手で新たな仕事を終えたロイは、ベティとの楽しい時間に若干の未練を覚えつつもベティからすべて盗み出す算段を整える。そして二人はヨーロッパ旅行へ出かけるが……?

【感想】

 ヘレン・ミレンのターンが一向に始まらないので、どう考えても「それは来る」とわかってる逆転劇をラストまで待ち続ける。それはなんとも不毛な時間に思えて、それでもイアン・マッケランとヘレンの芝居合戦でつい見てしまう。歴史を絡めてきたオチも感心半分「後出しじゃん……」という脱力感半分。二段階で別のベクトルで訪れる終幕の切れはなかなか快感。

 

ジェミニマン』

【採点】C

【監督】アン・リー

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】DIA(アメリカ国防情報局)に雇われるベテラン凄腕スナイパー・ヘンリーだが、とある一件を機に引退を決意。だが自分が最後に殺害した人物から知らされていた情報と違うと告げられ、やがて謎の暗殺者につけ狙われる。とうとう敵と対面するが、その正体はまるで若き日の自分に瓜二つで……。

【感想】

 一作毎にジャンルを変えるも、独自の時間間隔を紡ぎ上げるアン・リーの作家性は変わらず。本作も前半は地味ながら個人的にとても心地良い。特にバイクチェイスは間違いなく素晴らしかった。問題は肝心のジェミニマンが登場してからの、「より地味になった『ハルク』の焼き増し」感で、流石に脚本がハリウッドに出回ってから20年以上というブランクは大き過ぎたのでは……。その頃からハリウッドにいたアン・リーとウィル・スミスでの映画化というのは感慨がある。

 「20fpsのハイフレームレート、3Dデジタル撮影され、STEREOTEC 3D リグを装着したARRI Alexaカメラが使用され」たそうで、配信でせこせこ見たところでしょうがないのだけど、映画なんかどれも自宅で観たところでしょうがないというのはあります。映画館行け。

 

『タラデガナイト オーバルの狼』

【採点】

【監督】アダム・マッケイ

【制作国/年】アメリカ/2006年

【概要】ジャド・アパトー組初期全盛期のコメディの一つ。いい加減な父親の教育のせいでスピードと「一位」にとりつかれた男リッチー。いつも支えてくれる親友キャルをないがしろにしながら人気カーレーサーになるが、調子に乗って自堕落な日々へ。そこへF1から強力なフランス人レーサーが現れ、さらにリッチーは大事故を起こしてしまう。

【感想】

 ウィル・フェレル、ジョン・C・ライリー、サシャ・バロン・コーエンがボケ倒すも、その合間合間のカーレース周りの群衆、熱狂、レース、クラッシュはホンモノの迫力。実は末端でどんなアドリブをかまそうが話の起承転結もしっかり練られていて、ラストは謎の昂揚感がある。ただ時代を感じるゲイいじりのギャグは無しです。

 昔ニコ動に本作冒頭だけ上がっていて大爆笑した記憶があるので、今ようやくラストまで見れて良かった。あの動画なんだろうと思ったらまだありましたね.吹替え版だ! 字幕版より面白い!

 

アナベル 死霊博物館』

【採点】C

【監督】ゲイリー・ドーベルマン

【制作国/年】アメリカ/2019年

【概要】『死霊館』ユニバース『アナベル』シリーズ第3弾。ウォーレン夫妻はアナベル人形を自宅の呪いコレクションに納め、除霊と封印を施す。ある日、家を空けることになる夫妻。家に残したのは幼い娘ジュディとしっかり者のベビーシッター・メアリー。そこに遊びに来たメアリーの友人ダニエラが、亡くなった父と再会したいがためにアナベルの呪いを解いてしまい……。

【感想】

 『学校の怪談』みたいだと聞いて楽しみにしていたのに、『学校の怪談』の序盤がずっと続くような抑制された空気。ユニバースで下品なショックシーンが多いタイトルもあったのでその反動なのかも知れないけど(監督はリメイク版『IT』の脚本家なのに)とにかく大人しい。つまんない。言っちゃった、ゴタクはいいや、理屈抜きにつまんない。

 それでいてショックシーンは普通に下品なので抑制した意味もあまり……。

 

 『貞子3D2(2D版)』

【採点】C

【監督】英勉

【制作国/年】日本/2013年

【概要】安藤孝則と鮎川茜が貞子の呪いと戦った5年後。茜の出産した子・凪は孝則の妹・楓子が預かっていた。凪の周囲で不審死が続き、母の自殺を防げなかったトラウマを抱える楓子は負のイメージに囚われる。しきりに凪と遠ざかろうとする孝則。停まらない不審死の連鎖を訝しむ刑事・垣内。凪はこの世にいてもよい子なのか、それとも……?

【感想】

 「映画館で、スマホと連動するギミックを仕込んだ3D映画」をただPCやスマホで暇な時にちょこちょこ見進めただけだったので、俺は本当にこの映画を「見た」と言えるのだろうか……? 

 前半はかなり寒々しいしつまらないのだけど、後半で真相が明らかになってくるとなかなか重層的で、それでいてイマイチ整合性の掴めない展開で結構楽しめる。エヴァ新劇の『Q』のクライマックスと『破』のラストが合わさったような、貞子というガフの扉を開くか開かないかという話が主人公のトラウマと重なっていく。オチはよくわからない。