年々記事が短くなっていきますが、今年もベスト作りました
昨年のはこちら
pikusuzuki.hatenablog.com
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まず、寝ちゃったのでランキング除外作品
ウディ・アレン『カフェ・ソサエティ』
伊藤尚住『きみの声をとどけたい』
来年再見します 寝てしまう=駄目な映画だとは思わないって去年の記事と導入が同じだ
では
さて、今年日本で公開された映画の傾向として、前々から評価を受けながら特にブレイクするでもなく、時には10年以上映画を撮れず中堅になってしまった監督たちが、アメコミ映画やアニメ映画という土壌を得てブレイクを果たす、という構造が目立った気がします ずばりパティ・ジェンキンスとガース・ジェニングスですけども そして中堅職人の最高峰に位置するマンゴールドが質的にも興行的にも代表作を更新した年でもありました 内容の充実に比すると、監督の顔ぶれ的には非常に地味なんですね
ランキングを作りながらの個人的な雑感としては、そんなマンゴールドのしっかりした地肩を基準にすると、ハリウッド映画一般の演出が非常にライトになってきているという印象があります.以前まではライトにすべくしてライトにしていた場面が、もはやライトにしているという意識もなくライトになっているような.良くも悪くもイロモノ演出一本勝負であるノーランがすっかり巨匠扱いされてることとも不可分の流行でしょう
果たして自分は映画を見に行っているのかアトラクションに乗りに行ってるのか そろそろ一度アトラクションを降りてみてもいいのではないか
そんなことを考えながら付けた順位が以下のようになりました.上位の作品ほど満足しているので、特にコメントが無いのはそういうことです
監督の名前を覚えると映画は一気に面白くなるので、どうぞ気になる作品や面白かった作品の監督の名前だけでも覚えて帰ってやって下さい
出し惜しみせず、1位から
1位.ジェームズ・マンゴールド『ローガン』
今じゃないと、多分この「あぁ今がフィルムの向こうに焼き付いている」という感覚は得られないだろうという感慨.いつぞやの『ワイルドスピード:SKY MISSION』同様、リアルタイム性の価値を感じたので迷いなく一位です
2位.マーティン・スコセッシ『沈黙 silence』
3位.クリス・マッケイ『レゴバットマン ザ・ムービー』
4位.セオドア・メルフィ『ドリーム』
5位.オリヴィエ・アサイヤス『パーソナル・ショッパー』
6位.ビル・コンドン『美女と野獣』
7位.タイカ・ワイティティ『マイティ・ソー/バトルロイヤル』
8位.パティ・ジェンキンス『ワンダーウーマン』
9位.デヴィッド・リーチ『アトミック・ブロンド』
10位.ガース・ジェニングス『SING』
11位.ヨン・サンホ『新感染 ファイナル・エクスプレス』
「ゾンビが登場するまで本当に映画が始まっていなくて只の説明にしか見えない」とかいかにもアニメ畑の人って印象は抱いてしまったのですが、そんな不器用な手つきから次第に怒濤の展開が生まれていく流れに興奮しました.既存の器用な韓国娯楽作とは手触りが違った.
12位.アンディ・ムスキエティ『IT/それを見たら、終わり』
13位.マーク・ウェブ『ギフテッド』
制作動機の似た『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を思い出す軽妙な快作.大作に疲れたハリウッド監督が取る低予算映画の大当たり率は異常
14位.須藤友徳『Fate/stay night Heaven's Feel. Ⅰ Passage Flower』
(日本映画1位)
15位.吉田大八『美しい星』
(日本映画2位)
16位.デミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』
17位.黒沢清『散歩する侵略者』
(日本映画3位)
18位.ジョーダン・ヴォート=ロバーツ『キングコング 髑髏島の巨神』
あまりに芸の無いワンパターン空撮が気になって、観た時は若干思う所あったんですけど、それは本作のみならず今年見た映画全体的に漂う傾向だなと次第に気づいていく中で、順位は浮上していきました.
例えばそうした「快感を優先したスタイル」が、先述もしたライトさの要因.
シン・ゴジラ的というか、監督の生理感覚では面白いんだろうギミック風映像処理が目立つ作品が多くて、「映画的な持続力」を持った演出への拘りがない.
その点でも、『ローガン』『ドリーム』が持つ「映画的な持続力(=演出が重力を持って映像内の時間を地続きにしていく強さ)」は貴重で.これは私がアトラクション型の映画ばかり観に行っているという問題でもあるし、別に好きな映画見ればいいとも思う反面、もしミニシアターに恵まれた環境にあれば、丸一年くらい「映画的な持続力」にこだわって映画を見続けたいという願望があります(自宅で見るとすぐ停止しちゃうので).
「映画的な持続力」を持った演出と「アトラクション型映画」のスタイル、似て非なる2つの種類の映画の振り幅が今の映画界の在り方だと漠然と感じて、ひたすらそればかり意識して映画を見続けてる気がします(たぶん『宇宙戦争』を観た頃からずっと).
うまく言語化出来なくてもどかしいので批評畑の方にそういう話を書いて欲しさがあります.
19位.クリストファー・ノーラン『ダンケルク』
もはやサスペンスを無くしたシーンまで編集の遊戯をやりたいが為に引っ張っているエピローグは心底蛇足だと思いました.終わり良ければ全て良しの逆で、ずっと面白かったのにラストの「まだ終わらないの・・・?」が印象強く残ってしまう
20位.本広克行『亜人』
(日本映画4位)
まさか本広監督を褒める日が来るなんてと思うんですけど、こちらはダンケルクと違って用が済んだらバンバン切り替えていきましたからね その極みのラスト
21位.山田尚子『映画 けいおん!』(再見)ULTIRA上映
(日本映画5位)
改めて見てビックリした、上記した「映画的な持続力」が全編に漲っている作品.演出がどれだけ映画の世界に没入出来ているかってことになると思うんです.演出がですよ、監督の思い入れがとかではなく 演出が没入して、持続している
22位.いしづかあつこ『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』
(日本映画6位)
23位.永井聡『帝一の國』
(日本映画7位)
24位.古橋一浩『劇場版 はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~』
(日本映画8位)
25位.ドゥニ・ヴィルヌーヴ『ブレードランナー2049』
26位.ジェームズ・ガン『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス!』
27位.ロン・クレメンツ/ジョン・マスカー『モアナと伝説の海』
28位.水島努『ガールズ&パンツァー 最終章 第一話』
(日本映画9位)
29位.湯浅政明『夜は短し歩けよ乙女』
(日本映画10位)
30位.トラヴィス・ナイト『KUBO/二本の弦の秘密』
31位.スコット・デリクソン『ドクター・ストレンジ』
32位.大沼心『劇場版 Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』
33位.ドゥニ・ヴィルヌーヴ『メッセージ』
34位.M・ナイト・シャマラン『スプリット』
35位.小川太一『劇場版 響け!ユーフォニアム 届けたいメロディ』
監督の交代による客観性が功を奏して、実に気持ちの良い換骨奪胎が行われていた作品
36位.湯浅政明『夜明け告げるルーのうた』
37位.水島努『劇場版 ガールズ&パンツァー』(再見)ULTIRAセンシャラウンド上映
38位.村瀬修功『虐殺器官』
39位.ジョン・ワッツ『スパイダーマン ホームカミング』
40位.谷口悟朗『コードギアス 反逆のルルーシュ Ⅰ.興道』
ユーフォ2と本作、総集編なので置き所に迷った末少し控えめな場所に置きましたが、実際のところまったく文句なく面白くって「映画ってこれでいいのか」と混乱しました
---ここまでは十分ベスト10に入れてもいい、楽しめた作品です 多いな.以下から少しずつ不満が膨れあがっていく---
41位(或いはワースト).ライアン・ジョンソン『スターウォーズ エピソードⅧ 最後のジェダイ』
ここまで思い入れ補正が効かないものかってくらい心動きませんでした.
意地でも二次創作にはしないぞという監督の覚悟.ひたすらファンへの逆張りで、「前作から想像し易い続編を裏切った」作為の結果だと思うのですが、それはイコールでドラマトゥルギーへの裏切りでもあるんですよね.二次創作とダブるくらいが本当は続編として自然な姿.
チャンバラシーンが格好良かったのでこの順位ですが、正直ワーストでもいいかなって.スターウォーズにそんなこと思う日が来るなんて思わなかったですよ…
42位.荻原健太郎『東京喰種』
映像的説得力の面で、今年のマンガ実写化でもベストの出来だったかと.そこにプラスで、エンタメとしての見せ場もよりふんだんに入れて欲しかった.そこまでいかないと勝算とは呼べないのでは
43位.ケネス・ロナーガン『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
イギリスの青春映画を真似してみましたみたいなタッチの違和感.故人を美化し過ぎてて全体のリアリティバランスがおかしく感じられてしまった
44位.是枝裕和『三度目の殺人』
意欲作なのですが、シリアスな作品でありうべからざる説明台詞が序盤にあって非常に冷めてしまうという
登場人物に「自分の職場の基礎知識も知らなそうな質問」はさせないであげてほしい
45位.久保茂昭/中茎強『HIGH&LOW THE MOVIE3/FINAL MISSION』
邦画にありがちな破綻だらけなのに、画面に金をかけることによって「破綻していても崩壊はしていない」という邦画新時代へ突入していた
46位.ザック・スナイダー/(ジョス・ウェドン)『ジャスティス・リーグ』
手堅い映画だとは思うんですけど、本当にまったく何一つワクワクしなかった…
47位.瀬下寛之『BLAME!』
48位.山崎貴『Destiny 鎌倉ものがたり』
49位.米林宏昌『メアリと魔女の花』
魅力的なアニメーションを沢山見れるのに、説明的な台詞の掛け合いが壊滅的に足を引っ張る
50位.京田知己『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューションⅠ』
実に評価に迷う身勝手な映画で、冒頭30分の混沌を大音響で楽しめた経験は控えめに申し上げても最の高だったのですが、そこから先の総集編というかミクスチャーというか、はその実験性(別に新しくもないのだけど)を評価したとしても、ユーフォ2やギアス1に比べて単純に気持ちよさで劣るのだよなぁという決着と相成りました
51位.安里麻里『氷菓』
52位.静野孔文/瀬下寛之『GODZILLA/怪獣惑星』
53位.新房昭之/武内宣之『打ち上げ花火 下から見るか? 横から見るか?』
ベースが成立してないのにガワにあれこれ付け足して目眩まし.
54位.神山健治『ひるね姫』
ゴジラや打ち上げ花火よりは好きだし誠実な映画だとも思うんですが、その2作と比べても(いやゴジラはそれなりに期待してたんですけど)期待値との落差が大きすぎて.
今年一番正視に耐えなかったシーンが本作にありました
不審者に侵入された少女が身を潜める場面、作画はぬるぬる動くのにサスペンスを演出できてないので、完全に映画の「死に時間」が流れている.
比べるとやっぱり細田守って物凄く上手いんだなって思いましたよ.
神山作品、年々テンポが悪くなっている気が.
以上でした. 大晦日までに新作を見たら、付け足します.
もうアトラクション型映画ならば十二分に味わったので、来年は観る映画の傾向を少し変えていこうかなと思案中.
近所にミニシアターがあればなどと言い訳しましたが、昨今シネコンのラインナップも注意して見ると面白いですからね.