『𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖1stアルバム「It's a small world」発売記念イベント トーク&ミニライブ(東京)第二部』感想置き場

《harmoe 1stアルバム「It’s a small world」発売記念イベント トーク&ミニライブ(&FC会員限定お見送り会)》東京(アニメイトゲーマーズ)第二部

 

場所:御茶ノ水一般財団法人 全電通労働会館

 

トーク

 

恐らく「2部」ということもあってか、内輪も内輪のダラダラ感。

こういうのは一見さんをFCに引き込むにあたっては良し悪しだとは思うのですが、前回参加したリリイベは一部で新情報ラッシュのめまぐるしさがあったので、今回初めての「ぬるま湯」体験というか、すごく身内の中に混ぜてもらえている良さがありました。

キャンセはケンタがいることでやはりもうちょっとシャキッとしてるので、リリイベとの差異化も図れてるんですね*1

HAPPY CANDY MARCHのお衣装を着て動く𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の二人、物語の世界から抜け出して来たよう。

 

エチュード

 

孫悟空とライオン。それぞれ合い過ぎる役だったので、もっと設定追加して10分くらい自由に泳がせるのも見てみたい気がしました。

舞台連戦中のはるちゃん、「まほチャンネル」でエチュードノックを受けているもえぴなら、出来るはず。

 

〇ライブ

 

二人とも途中で笑っちゃうのでやはり内輪過ぎるでしょとハラハラするのですが、そんな油断した姿を見せてくれることが尊いという嬉しさもまったく否めず。

 

観客も振付けを憶えての『HAPPY CANDY MARCH』

ハピキャンのお衣装でハピキャンのダンス、もう、それはもうライブであって映像なんですよ。

振りは帰宅して上がってた動画に合わせてようやく憶えました。

 

初めて生で見れた『きまぐれチクタック』

二人体を預け合うことで成立する振りの良さみたいなものがこの日の三曲は共通している気がしたのですが、記憶がフワッとしてるので実際どうだったのでしょうか。そしてそのフリは、こうした観客が近いイベントでこそ本領発揮するなって。

 

最後に『セピアの虹』

もう生で見るのは四度目ですが、「今後何十年経っても振り返ることになるだろうし、みんなにもそうであってほしい」という覚悟で歌われていると知った今、体感時間がとてもスローに引き延ばされて聴くことが出来ました。

しかしサビの最中に音階が高低で別れる瞬間が、実際耳にしても「???」でいっぱいになります。

 

〇お見送り回

 

ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドバクバクバクバクバクバクバクバクバクバク

 

メイクが、すこし垂れ目なの。二人ともめっちゃ顔を近寄せて目を見てくるの。

接近イベント、心がもちません。。。オタクはなんでこれ平気なんだ。

でも、すべてがコロナ禍で始動した𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖が、少なくとも自分がファンになってからはずっと「ファンの声が聴きたい」と言い続けていた小泉さんが、やっとルームメイトと近づけた体験でもあったんですね。

 

「もっとこう伝えれば良かったかな」と反省はあるのですが、どうせ二人を前にしたらそんなこすい計算全部吹き飛んでおしまいなんだ。

 

 

 

*1:ウソです、本当は入場直前に「お見送り会」の詳細を知ってしまったのでそんなにぬるま湯気分ではなく、ありえんくらいソワソワしていました

異世界で死者とダンスを ー 『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… THE STAGE』感想

 

スタッフ

【原作】山口悟

【キャラクター原案】ひだかなみ

【演出】山本タク

【脚本】錦織伊代

【振付】森川次朗

【殺陣】キノシタケイタ

【美術】角田知穂

【音響】遠藤宏志

【照明】鈴木雅貴

【映像】川崎貴司

 

キャスト

【カタリナ・クラエス太田夢莉 【ジオルド・スティアート】TAKA(CUBERS) 【キース・クラエス】三浦海里 【アラン・スティアート】安里勇哉(TOKYO流星群) 【ニコラ・アスカルト】市川慶一郎 【メアリ・ハント】小泉萌香 【ソフィア・アスカルト】高橋果鈴 【マリア・キャンベル】本西紗希帆 【シリウス・ディーク】椎名鯛造 【アン・シェリー】中西彩加 【佐々木敦子春咲暖

 

池袋サンシャイン劇場

6/30(木)マチネ(初回)ジオルドルート

7/5(火)ソワレ(大千秋楽)シリウスルート観劇

 

事前情報がとにかく少なく、不安と期待半ばで観劇した『はめステ』。朗読劇ではない小泉さんの舞台を生で観劇する初めての体験。

初演、開巻早々、カタリナが物を投げる「シュッ」の一言だけで作品の軽さがわかると同時にいきなり笑いが巻き起こって、その空気の良さが最後まで途切れない二時間半でした。

 

朗読劇での「フルサイズの人物が並び立つシルエットが格好良い」と感じたことは先日述べましたが、本作は「華麗な衣装を纏った人物が慌ただしく舞台を行き来する様は愉しい」という、ストレートプレイの魅力の一つを感じ取れた気がします。

あくまで映画脳が感じる視覚的快楽という気もしますが、パッと見シンプルなステージ、シンプルかつ最低限の美術なのに、舞台機構がめまぐるしく動き回り、色とりどりの花々のように鮮やかな異世界の人物になりきった役者の群れが出入りを繰り返す中で、いつしかステージに奥行きが生まれて視界が運ばれていくそのライド感は、舞台ならではとしか言いようがなかったと思います。

例えばアニメ見てもカットすると思っていたアドベンチャー・パート。ダンジョンの仕掛け、アイテム、みんなの使う魔法の数々を、プロジェクション・マッピングと舞台機構の推移、そしてバカらしいようなポーズを全力で行うキャストの不思議な説得力で成立させていく流れ。

もちろん、ここは十分バカらしく見えて良いシークエンスではあるのですが、「プロジェクション・マッピング時代に生み出せた効能とその限界」+「この異世界のリアリティラインに気持ちをチューニングさせる観客の意識」の共犯関係によって成り立つような場面で、例えば配信で見ていたらバカらしさのみが勝ってしまったんじゃないかと思うと、2.5次元舞台が今の舞台の主流とさえ化していることにも不思議な納得感がありました。

 

その肉体的リアリティと設定的な曖昧さが両立する不思議な舞台空間だからこそ、アニメ以上に強調される「カタリナとあっちゃん」の物語が主軸にあることが見えてくる後半が効いてきます。

 

『はめフラ』は異世界転生モノ定番のあっさり交通事故死でカタリナが転生した事から始まる物語ですが、同時に「現世に遺された友人あっちゃん」の心情も描かれることが特徴的なお話。

実は「悪役令嬢に転生してしまった」ことより、「あっちゃんとの思い出のゲームの中に転生した」ことが重要で、いつかカタリナにまた会いたいと願った結果、あっちゃんがソフィアになって追って転生してきているという倒錯が起こっているのですが、さらにあっちゃんがソフィアに呼びかけてカタリナの危機を救おうとする場面に至っては、アニメで見ても「どういうこと???」という混乱は若干否めませんでした。

 

そして舞台はここに全てのピークを持って行く。

リアリティラインが曖昧となった、しかし肉体的リアルだけは確固としてそこにある舞台表現の中、階段の上でカタリナとあっちゃんが幻の再会を果たす時、そしてあっちゃんがステージの中央でスポットを浴びて叫ぶ時、ありえなかった死者との邂逅が確かに現出するのです。

「何故」ではなく「事実」としてそこに展開する肉体の暴力。

 

初回と大千秋楽、様々な変化を感じましたが、最大のポイントはあっちゃん役春咲暖さんが演出家の意図を汲み、ここで永遠(寿命を果たしてもソフィアになるとわかっている故に、むしろ残酷で長いあっちゃんの孤独)の中にある一瞬を体現しようとする熱演。

初回観劇時はあくまで原作をなぞっている場面としか想わなかったところ、大千秋楽では比べものにならないくらい胸に迫ってきました。どうしても女性比率の多い客席の中、斜め前方のおじさんがここでずっと洟をすすって号泣されていたのですが、それさえまったく不快ではなく、幻の一瞬が肉付いて劇場空間に共有されている、その実感に浸っておりました。

 

2.5次元というジャンルの成熟の成せる業か、誰もが本当にアニメから飛びだしてきたようにキャラそのまま。中でも主演・太田夢莉さんは見た目や芝居のみならず声までもカタリナをコピーしてみせ、脳内カタリナ五声をも一人再現するシーンまである器用ぶりであるにも関わらず、芝居は力まず、周囲を引き立てるようにラフに演じています。

そのフラットな存在感が、一方で大千秋楽での春咲さんの、涙でお顔が真っ赤になっている様がありありと伺える大熱演との対比となって、「生者(あっちゃん)が望む、異世界で幸せでいてほしい死者(カタリナ)の世界」という構図がありありと見えてくるのです。

舞台の演出家は役者自身とはよく言いますが、身を以て実感しました。例えば初演時は常に笑いをリードしたキース役三浦さんが、そして大千秋楽では春咲さんの熱演が、舞台の方向性を明確にする演出家の役割さえ確かに担っていた。

 

いなくなってしまったあの人が、幸せに過ごしていて欲しい世界。

そんな泡沫の願いとして、華やかなお姫様、王子様達の二時間半の舞踏会は、夢幻のような感触と共に幕を降ろしました。

わずかなゲネの映像で振り返ることさえ出来ない宣伝周りの情報量の無さには思うところもあるのですが、だからこそ、本作の見ている間はひたすら賑々しく、終わってしまえば儚い「彼岸の世界」の脆い印象はより引き立ちました。

 

最後に。

王子様お姫様が性差を超えてひとしくカタリナの磁場に惹き寄せられて共にドタバタするその風通しの良さが面白い『はめフラ』の世界で、性差の違いに囚われた笑いが発生したことは、少々、と言いつつなかなか大きなノイズに感じました。

「観客が何も考えず楽しめるエンタメ」ほど、作り手は最大限細やかに考え続けなければいけないのだろうなと思います。

観客の想像力が舞台演出の一部となるなら、共犯者たりうる観客の中にも色んな人がいるという想像力を、舞台の方からもまた向けていただけたなら幸いです。

 

 

 

にしてもです。

大千秋楽、終盤はしゃぎまくり踊りまくる小泉萌香さんの姿、ハッキリ表情の見える席からまざまざと目に焼き付けましたが、可愛いすぎて現実感ないですね。

最後の最後にカタリナ様に猛アピールして顔を合わせてダンスする様、もしかすると「抜けがけしたメアリ」を表現しているということだったのか、にしても楽しそう。

格好が格好なだけに、やはりそれさえも異世界で目にしたどこかのはしゃぎ倒した令嬢の記憶として、朧気な印象だけがこれからも胸に残っていくのでしょう。

――配信や円盤が無かった場合は!

 

カラフルな扉を並べて ー  harmoe 1st アルバム『It's a small world』ファースト・インプレッション

 

     『 大きくなったら、あなたは素敵なあなたになるの 』

                 ー ルーシー・ペベンシー

 

 岩田陽葵・小泉萌香の二人からなる声優ユニット𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖は、『音楽と物語はいっしょに歩く』をテーマに掲げた珍しいくらいコンセプトの明解なアーティストです。

 1stシングル『気まぐれチクタック』は「不思議の国のアリス」、2ndシングル『マイペースにマーメイド』は「リトル・マーメイド」、3rdシングル『アラビアン・ユートピアン』は「アラジン」。

 その時々で既存の「物語」が主役となり、語り部たる𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の二人はむしろ透明な存在となってそれぞれの世界を反映していきます。シングルごとにボーカルディレクションのテーマが変わっている話も象徴的。

 単に古典をなぞる訳ではなく、一度は物語として整った世界の中へと、より自由な少女たちが舞い込んでその世界で遊んでいるような、エレクトロなダンスミュージックを軸とした楽曲世界。

 毎回キャッチーな表題曲、よりその世界に耽溺していくC/W曲、さらにシングルごとの世界観で遊ぶリリースイベント「𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 camvas session」までがセット。

 まさに音楽と物語が一体化して、一冊一冊絵本を残していくような「触れられる音楽」を構築してきました。

 

 ところが1stアルバム『It's a small world』は一枚のアルバムで世界を一周し、地域ごとに全部で10曲のコンセプトが並ぶので、特定の世界に耽溺することはありません。ともすると雑多な内容。

 その上で、ビジュアル世界として作詞家:中村彼方さんの作り上げた物語「It's a small world」を構築し、今まで開いてきた世界もまたその中の1ピースだった、というパッケージングが施されているのですが、純粋にパッケージの内側にもシンプルな物語を感じたので、うまくその話が出来ればなと思います。

 

 ※ところで𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖ティーパーティーを見ながら書いているので、まとまりなかったらごめんなさい。

 

 最初に聴いた印象としては、想像以上にライト、という事でした。絶え間ない宣伝の施策や過去のシングルで作り込んできた世界観に対して、アルバムそのものはほとんど肩肘張らずにサラッと聴ける印象*1

 世界はその質量を持たず、いとも簡単に巡ることができる。

 一つ一つの世界に耽溺せず、まるでお洋服を次から次へと着替えていくように国を渡り、世界を渡り、物語を渡る。

 浮かんできたイメージは、先が見えないウォーク・イン・クローゼットの中を、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の二人がカラフルなドレスを次々と着こなしては歩いて行く姿でした。

 

 ポニーキャニオン制作チームが𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の二人を起用するにあたって、当然二人が『少女☆歌劇レヴュースタァライト』を通して成長し、どのような物語も演じられる、どのようなドレスも着こなせる、無色透明な舞台少女としての実力を獲得していることを前提に置いているでしょう。

 

 ここに来て、今まで主人公だった個々の「物語」ではなく、たくさんの物語を演じることが出来る、その透明な少女たちこそが本当の「主役」で、実は個々の物語ではなく「彼女たちの物語」を見ていたのだと浮き彫りになる過程がこのアルバムなのだと体感で理解できました。

 

 音楽と物語はいっしょに歩く――それを身に纏う「あなた」が引き連れて。

 

 世界一周はメタファーでもなんでもなく、舞台少女たちの日常なのかも知れない。

 では過去のシングルのようなC/Wでディープな個々の世界へより深く耽溺する醍醐味が無いのかと言えば実はそんなことはなく、スタート地点「日本」をテーマにした「一寸先は光」の軽快さから、あくまでライトに各世界の扉を覗き込んでいるように思わせておいて、気がつけば『ククタナ』までの流れでサウンドそのものは相当にディープなところまで落とし込まれていきます。

 そして既発の『マイペースにマーメイド』のアウトロからシームレスに繋がる最後の曲『セピアの虹』で、やはりこの物語の主役は「物語を纏っていた透明な語り部」たる𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖に還ってくると宣言されるのです。

 

 「ひとつ ふたつ叶えてきた記憶」を振り返りながら、無色透明に近い色褪せたセピア色の中に虹を見る時、本人たちにとって、そして恐らく𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖のみならず岩田陽葵と小泉萌香の活躍を見てきた人たちにとって、ここまで透明な少女として彼女たちが纏ってきた物語のすべてが、その後ろに長い長い軌跡を描いているさまが思い浮かぶことでしょう。

 

 それは同時に、『セピアの虹』のモチーフである『オズの魔法使い』の主題歌の一節にして重要な「虹」が、いよいよ𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の物語のピースとして換骨奪胎して使われた、今まで並行してきた過去と現在が一つに繋がったような感慨を与えてくれました。

 

 ということが言いたかったんですね、このよくわからない呟きは。

 

 ところで𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の曲には古典の語り直し、エンパワメントの側面も強く、個々の物語の世界を越えて共鳴し合う言葉が溢れています。

 

不思議の国のアリス』の世界で「囚われの迷子はもう目を覚ます」

『リトル・マーメイド』の世界で「魔女も王子もいらないわ」

『アラジン』の世界では、タイトル通りヒロインのジャスミンが大暴れするその名も『Jasmine』なんていう曲まであります*2

 

 その延長上として新曲の数々を聴き込むことも面白くて、『ヘンゼルとグレーテル』をモチーフとした『HAPPY CANDY MARCH』の中の一節、

 「恐ろしい魔女は消えてしまったわ お菓子たちは命に目を覚ます」

 が白眉だなと感じました。

 

 セピアの虹=透明な私たちの輪郭を見つけることが出来た少女たち(年齢的な意味ではなく、永遠の舞台少女的な意味で)は、次はどんなステージへ向かうのか。

 かつて迷い込んだワードロープの向こうで大冒険に繰り出し、喋るライオンと出会ったあの少女のように、無数の物語の扉をノックし、カラフルなドレスを次々着替えながら歩き続ける𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の背中をこれからも応援し続けることが出来たなら、とても幸せに思います。

 

 

 ところで今回ダントツ通常盤より限定盤がお薦めで、ついてくるBDの中、theater stage Ⅰ でスタァライトの「fly me to the star」を歌う𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の二人を堪能出来るのですが、その歌詞が不意にこのアルバムと響き合う時に、軽く泣いてしまいました。

 

 スタァライトのファンだけど𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖にはまだ手を出していない皆さん。今が手を出すチャンス。買うてや~。ライブツアーもあるで~。

*1:まず「あっという間に聴けるアルバム」ってそれだけでスゴい好感なんですけど自分だけですかね。

*2:ガイ・リッチーによる実写版『アラジン』で新規に追加されたジャスミンの力強いテーマとも共鳴していますね