log:読破したラノベ(2016-02-29)

はてなダイアリーが終了するそうなので記事を移行.

 

米澤穂信古典部』既刊5冊

 

言わずもがな『氷菓』。低体温で韜晦気味な主人公の独白とその静かな変化。
今あるラノベの一つの形の原型が奉太郎だったりするのでしょうか。
クドリャフカの順番が無ければ俺ガイル6巻のような名作は生まれなかったと思うのです。
日常系ミステリー路線をアニメはもっと純化させて、日本ならではの武器にしてほしいですね。
それにしても『ふたりの距離の概算』の後味の悪さはどうにかなりませんか!

 

米澤穂信『小市民』既刊4冊

 

こちらのほうがより俺ガイル的というか、「本当の真相」を溜めに溜めに溜めるので、
はたしてこの可愛いエピソードの終わりが幸福なものなのか苦いものなのか予断を許さない。
それにしてもスウィーツの描写の素晴らしさたるや。

 

荻原規子『RDG レッドデータガール』全6巻

 

傑作伝奇ジュブナイル姫神山伏陰陽師忍者の子孫らが集う学校で起こる静かな勢力争い。
とにかく双子の弟(たち)と独特な関係性を見せる美少女・真響が魅力的で、、、
一応完結となっていますが、「第一部・完」という感じで、この子たち主人公に
これから壮大な話を始められそうな気がするんですけどね。『新世界より』みたいな。

 

谷川流涼宮ハルヒ』シリーズ・既刊11冊

 

今でも十分活字苦手ですが、その比ではなかったレベルで本に触れてなかった時期に、
本当に一瞬で読み終わって唖然とした1冊目の記憶が印象深いです。
そこから次にラノベ読むまでまた数年間が空くのですが(笑)
もっとも魅力的なヒロイン「佐々木」がアニメ版には未登場なのが悔やまれます。
設定上非常に閉じた世界の物語とはいえ、意外とアニメの後の話でキャラ増えるんですよ。
花田十輝先生あたりに大胆にアレンジしてもらって、続きもアニメ化やれるのではないかと思っているのですけども。

 

渡航やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』既刊14巻(アンソロジー除く)

 

名作・傑作・文句なし。と言いたいところですが、11巻あそこまで抽象化するとは思っていなかったのでまだ少し戸惑いはあります。
その枠に入れられることはままありませんが、「日常ミステリ」ジャンルの究極系だと思うんですよね。
主人公の目線が「何を見過ごしていたのか」が不意に明らかにされる瞬間の暴力性。
願わくば、この子たちが戸惑いぶつかり傷つけ合い寄り添い離れながら高3・大学いずれは社会人へと成長する過程をずっと読んでいたいです。

 

平坂読僕は友達が少ない』全12巻(アンソロジー除く)

 

ここまで振り切れてると色々清々しいですし、時折作品から浮くレベルで作者の「怒り」が発せられて、
平坂先生のアイデンティティそのものが読み物として面白くなってくる。
もしかしたら先生が一番嫌いな層が喜ぶものを全力で描いている、そんなジレンマが。
「CONNECT」という、文体も主観も異なる番外編にこそ本作の真骨頂があります。

 

三雲岳斗ダンタリアンの書架』全8巻

 

不思議な力を持った本「幻書」をめぐるオムニバス
ともかく安定の面白さがずっと続きます、よくアイデア尽きないなって。
普通にハリーポッター級に世界で売れてもおかしくない完成度だと思うのですが。
三雲先生の代表作がストブラになっちゃってる現状に歯がみしてます。
レオナルド・ダ・ヴィンチを主役にした『シャーロック』こと『旧宮殿にて』もヒットポテンシャルは十分。

 

三上延ビブリア古書堂の事件手帖』既刊6巻

 

ラノベなのにラノベに徹し切れてない惜しさを感じました。面白いんですけど、健康的過ぎるというか。

 

奈須きのこ空の境界』既刊4巻+『終末録音』

 

「中二」っていう概念を理解したければこれを読めばいいと思うんです。
最初はあまりにクサく感じてた文体にいつのまにか虜になっていること請け合い。
出来ればアニメで見る→原作読む→アニメ見返すの順がベストです。

 

武田綾乃響け! ユーフォニアム』全4巻

 

アニメ同様、とにかく大穴でした。
第1巻こそ、アニメ版は脚色に助けられているというかやや構成が不格好なのですが、
2巻3巻とみるみる構成が洗練されて、主人公・久美子の三人称主観にも関わらず
この群像劇がそれぞれの視点の交錯によって味わいを深めている、その人物配置の見事さが輝いていきます。
何より隙のない熱気にまみれた一直線の物語にも関わらず、
久美子の視点が異様に同性の肉体への興味に支えられているエロスが
独特の味となっていて、非常に小説的な甘美さがグッドなのです。

 

新木伸GJ部』(無印)全9巻

 

4コマ漫画ならぬ、1エピソードにつききっちり4ページずつの4P小説。
それも学校行事的なイベントは基本スルーという禁欲ぶりで、作者曰く「キャラクター小説」を
極めようというゆるふわものです。
と、作者はフリーダムさをアピールしていますが、しかし劇中の時の流れは意外と早く
刊行開始から2年で部長の代が卒業して終わり。
これは、作者がコンビニの前で忙しそうに晩飯をかっくらう子供を見て
「塾通いなどで忙しい子がちょっとした合間にも楽しめるように」と本作を思いついたという
どっかで目にしたそんな話を思い出すと、ちゃんと読者の学生生活に寄り添おうとしたからなのでは、
などと類推して、ほくそ笑んでみました。
面白いかどうか問われると正直困るのですが、4コマ漫画ってそういうものが多くないです?

 

桜庭一樹GOSICK』第1期 本編全9巻+番外編全4巻

 

第一次大戦後のヨーロッパ、架空の国ソヴュールを舞台に、灰色狼の末裔と恐れられ
巨大な図書館塔の最上階の南国庭園と迷路花壇の奥の屋敷に隠された究極の頭脳を持つ少女
ヴィクトリカ・ド・ブロワが、日本から留学して訪れた帝国軍人の三男・久城一弥と共に
様々な難事件に挑むバディ物
本編ではアドベンチャーミステリー、短編では安楽椅子探偵となる。
私達の知っているそれとは異なる、しかし本質はきっと代わらない「二度目の大きな嵐」の潮流が、
神様に隠されたような世界の片隅の図書館と迷路の奥で密やかな時を過ごす少年少女の幸福な時間を
いずれ流し去るだろう残酷な予兆に満ちた、テンプレのようで実は独特のシリーズ。
『冬のサクリファイス』の第5章が可愛い仕掛けのようで凄く残酷な諦観浪漫で本シリーズを象徴し、
桜庭先生の真骨頂を見た気がしました。
二期はまだ文庫化してないので手を出せません。

本作のような空気感にもっと浸りたい人に『ダンタリアンの書架』もお薦めですし続き書いてください三雲先生。