RRR -RIDING of the REAL REPRODUCTION- ー 『舞台 トワツガイ』感想

 

 これは、私達が生きた記録であり、二度目の死の記憶でもある。

 

 スタッフ

【脚本・演出】松多壱岱 【原作】白本奈緖(ILCA)

【音楽】岡部啓一MONACA)瀬尾祥太郎(MONACA

【オリジナルキャラクターデザイン】雪醒

【美術】松生紘子 【照明】新里翼(マーキュリー)

【音響】田中慎也 【映像】曽根久光 御調晃司

【衣装・特殊造形】マッシュトラント(早瀬昭二・つじさおり)

【ヘアメイク】水崎優里(M's factory) 【演出助手】荻原秋裕

【殺陣振付】門野翔(@emotion)【殺陣アシスタント】斎藤有希(@emotion)

【振付】松本稽古 【歌唱指導】藤川梓 【舞台監督】田中聡

 

 キャスト

 -トリ-

〈運命のツガイ〉【カラス】大西桃香【ハクチョウ】渡辺みり愛

〈双子のツガイ〉【エナガ星守紗凪【スズメ】各務華梨

〈幼馴染のツガイ〉【フクロウ】小泉萌香【フラミンゴ】長谷川玲奈

〈共謀のツガイ〉【ハチドリ】藤井彩加【ツル】野本ほたる

〈正邪のツガイ〉【ツバメ】飯窪春菜

 -CAGE-

【司令】松田彩希 【副司令】倉知玲凰

カッコウ】堀越せな 【ミヤマ】梅原サエリ

 -アンサンブル-

川島芙優 澁谷穂奈美 高野美幸 高見彩己子

PAO 増本祥子 盛一季美香 倭香

 

【あらすじ】

 世界は『黒い海』に包まれ、『魔獣』と呼ばれる異形の存在が人々を蹂躙し始めていた。そんな『魔獣』達と戦うことができるのは『トリ』と呼ばれる少女達だけだったーー。

    『黒い海』に浸食され始めた世界。

       突如海から現れた異形の存在『魔獣』。

         そしてその最たるもの『災禍の魔女』たち。

 魔獣に対抗するべく人々が作り上げた組織『特殊災禍対策本部CAGE』は、作戦を立案する。それは、コードネームに鳥の名前を冠し、異能の力を手に入れた『トリ』の少女達を戦線に送り込むことだった。

 強大な敵。戦い続ける組織。壊れていく心と体。それでも彼女たちは抗う。

 唯一無二の『ツガイ』だけを心の支えにして。

 

 2023.06.16(FRI)- 06.25(SUN) 池袋サンシャイン劇場

 

 この日の為に2023年2月16日のサービス開始日からプレイしていたスマホゲーム『トワツガイ』舞台版を観劇してきました。

 ※キャストではメインのトリの中から【フクロウ】役の小泉萌香、CAGEの【副司令】【カッコウ】【ミヤマ】が声優本人による同役キャスティング。

 

 まずは初日。P席(前5列確約席)の最後列(涙)下手通路側(喜)。

 サンシャイン劇場は『はめステ』『濱ステ』に続いて三作品目、池袋近辺ではスタァライト#4をBrillia HALLで、『やが君』イベントをHUMAXシネマズで見たばかりもあり、もう勝手知った土地。小泉萌香の庭。自宅からは遠いので困る。

 それでもこんな近い席での観劇体験は今までなかったので、開幕からトリ達の実在感--それも間近でまじまじ見れるからこそ立体的にしてリアルな〈衣装〉が形作るフィクションラインに積極的に呑まれていきました。

 

 セットは後景に段差つき、半円形で広がる形状。これが真ん中から二つに割れてグルグルと回転する事で様々なシーンに応用できる。背景と前方に下りてくる紗幕を用いたプロジェクションマッピングも用い、またこの紗幕が非常に薄いので照明の加減によって映像とセット上のキャスト、といった奥行きも作れる。

 襲いかかる魔獣は一部ゲーム映像の流用と、アンサンブル達の前衛舞踏的なアナクロな表現が混ざる。

 ストーリーはゲームに忠実で、フクロウ暴走以降、モズ登場以前まで。

 

 初日からP席観劇出来たこともあって、作り込まれた衣装や武器、そしてゲームそっくりに寄せてきた声や、ささやかな立ち姿や振舞までキャラをトレースしてきたようなキャストの芝居に驚かされました。

 キャストの自主努力が尊重される現場といった話をされていたので、各々がゲームをプレイして誠実に研究してくれてたのではないか。

 別に何かを「再現」する訳ではなかったスタァライト2.5次元的な表現への「翻案」の色濃かった『はめステ』、原作に寄せるよりも舞台版キャストの生み出すシナジーそれ自体が魅力と化していた『やが君』、現代的な色でイメージの刷新を行った『濱ステ』etc……。

 実は、ここまで忠実に「原作再現」に特化した、真の意味での2.5次元は今回初めて観た気がしました。

 《再現》される事。それも静止画的な意味ではなく、二次元上に理解していた存在たちがそのままに、今目の前で立体的に動く存在として縦横無尽に暴れ回る様を「現実」として力尽くで認知させられる快感。

 

 なるほどーーーー、です。なるほどこれが純度100%の2.5次元

 

 例えばフクロウ。お目当てなことと初日は下手席だったのもあり、どうしても真っ先に登場時して踊るフクロウが目に入り、目の前に降臨した「本人」ぷりに驚くのですが、しばらくするとその隣りにいる、あくまで舞台版キャストである長谷川玲奈さんのことも脳みそが1ミリも齟齬なくフラミンゴとして受け入れていることに気が付きます。

 誰かが喋る。フラミンゴが大きなタッパでふむふむと話に耳を傾け、その背中に隠れるようにおどおどしているフクロウ。

 誰かに怯えるフクロウ。そっと寄り添って慰めるフラミンゴ、首を横に振ってイヤイヤするフクロウ(かわいい)。

 次第にみんなに近づいていくフクロウ、けれどフラミンゴのマントをそっと掴んで甘えている。などなど。

 こうした積み重ねが、終盤で疲弊し始めたフクロウがフラミンゴから遅れを取っていく様の異常性に活きて(ハクチョウは気づいて心配そうな目線を送るのも好き)、シナリオ上はそこまで尺を取れないクライマックスに、同じ劇場にいてこの流れを見守ってきた観客だからこそのカタストロフィが生じる。

 個人競技ではなく、こうした対となる--ツガイの--二人いることで成り立つ芝居が、単なるそっくりさんショーを越えたキャラの息吹を現前させて、実在感を成立させる。

 後で気づいたのですが二人、身長は本来変わらないのですね。けれどいつもはむしろ背が大きいほうの役を演じてきた小泉さんを初日にはハッキリと「小柄なフクロウ」として認識していました。

 再見して全編体を縮めている小泉さんとヒールを履いた長谷川さんの体格差の表現にようやく気づけた次第。

 

 そして、こうした工夫が他のツガイでも絶えず行われているのです。目が足りない。

 

 

 そうして初日ではどこを観ていいのか迷った経験を踏まえて、昨日(23日)再見してきました。

 

 今度は前から3列目のセンター。

 本筋がどうという以前に細部に宿るキャラクターの息吹を、ツガイの存在感を生成させていく役者コンビのやりとりをこそ味わう舞台だという事を判ってみると、こんなに楽しい体験もない。長いこと行ってないけど凝りに凝ったディズニーのアトラクションに乗り込んだ気分。

 ここぞという時にライドは気持ち良く滑降するけれど、その道中では絶え間なく作り込んだキャラの生態で魅了してくれて、それも当然アニマトロニクスなどではなく〈生きた役者〉が味合わせてくれる。

 

〇カラス&ハクチョウ。

 初日からこの二人の地に足付いた完成度の高さが全体の軸としてあったけれど、一週間置いて再見してみたところ……? どうしたってくらい親密な空気が増し増し。

 序盤で比喩じゃなくカップル成立じみたやりとりがあって、舞台だけだと展開早すぎな筈なのに、キリッとしたカラスの照れた言い回しに謎の説得力があってニヤける。

 近くで観ても至近距離のカラスに送るハクチョウの視線が熱を帯びてる事が如実に伝わって、最後に手をつないでダッシュで「わあー」って登場し、ハクチョウがカラスにイタズラして「わあー」って退場するところまで、少女漫画のコマから抜け出してきたみたい。

 カラスの力強く振り落とす斬撃、ハクチョウの「溜め」のあるガンシューティングポーズが好きです。例えば魔獣がそのままの画像で投影されても今一つテンションは上がらないのですが、映像上のエフェクトとハクチョウのポーズが融合する射撃シーンの数々は本作の「ゲームまんま~!」って喜びの半分を占めていた。

 

〇スズメ&エナガ

 初日から声優本人ではないにも関わらず声の再現度がハンパなかった二人。目の前にいる二人からその声が発せられてるとにわかには信じられないくらい。

 各務さんの小柄なパンツルックの圧倒的「少年」感は何か法に引っかかるのではないかという(特に後ろ姿)浮遊した重力を帯び、そして舞台巧者さなしの、「何かに気づきとっさに声をあげた最中に魔獣の攻撃を受け止め、最後まで言い切れずに後に引く」ビビッドな芝居のリアルさ。そこに敵の攻撃がちゃんと見える。呼吸をコントロールしていないとああはならない。

 

〇フクロウ&フラミンゴ。

 えー、もう可愛い。ずっと可愛かったしずっとフクロウとフラミンゴがそこにいた。

 フクロウがそのままなんだよなだって本人だし、いや本人だとしてもこんなにそのままな事ある?って思って観てるとふとした時に、「そんなフクロウと並んでもずっと違和感なくやはり本人まんまに見えるフラミンゴ、やばない?」って気づかされる流れ再び。

 *1

 斯様に、あまねくツガイが互いの芝居を作用し合わせることで本人ぽさが倍増する、という相乗効果の魅惑があって、そうした関係性が生み出す化学反応こそは単なるコスプレと2.5次元の間にある似て非なる大きな壁だと思った。*2

 星見純那を思い出すかなと思いきや、フクロウが前見て弓構えるポーズがROtRのレゴラスっぽくてイケ。

 

〇ツル&ハチドリ。

 そして、本舞台圧倒的ダークホース。

 本格的に本筋に合流するのは一幕目ラスト、大量のスモークと共に。センターで観た時はもろにスモークを浴びまして、白煙の中から登場する二人の強キャラ補正が白昼夢めいていました。スモークって本当にちょっと火薬の匂いするんだなぁという発見も嬉しい。

 舞台スタァライトの世界で「王者」として君臨している野本ほたるさんが、あえてしっとり艶めかしいツルを演じる引き算の美学。立ち姿、美脚、シンプルに杖をかざすだけの殺陣なのにその前後のモーションの優雅さで圧倒的な迫力を、赤坂ACTシアターに開設中の魔法学校から迷い込んできました?みたいな魔女感を生み出す。

 サプライズは、そんな王者と並んで一歩も引けを取らないハチドリ。

  巨大なハンマーを携えながらも身軽に、しかしだらしなくフラフラふらつくバトルジャンキー、頭はパー。二次元の世界じゃないと絶対成立しないキャラに与える肉体的説得力。初見も再見も閉幕時ざわつく会場から「ハチドリが……」って声が漏れていました。

 

 「ここではこのツガイを観よう」と決め打ちして観る楽しさと、その上で尚「この時、ハチドリはどんな芝居をしているのかな」と気になってつい視点をセルフスイッチングしてしまう、虚実の薄膜を破って奔放な天才を目撃しているという事実がそこにあり藤井さんヤベえ。

 アウターのジャケットを肩からずり落とした姿のままそれをこなすのがまた。センターでガン見してしまいましたが地味に腹筋も綺麗でして。

 なにより、どこ視てるのかわからないようなとろけた目と、〈静〉のツルに対して〈動〉のダイナミックな動きをしているのにも関わらずヘラヘラしている表情が癖になります。

 

〇ツバメ。

 飯窪春菜さんのことはYouTubeのハロー!アニソン部MCとしか存じ上げてなくて、ハロプロは女子人気高いこともそれとなく知ってはいたんですけど、イメージ180°変わる男装の麗人がイメージ通りのファンサの塊のパーフェクトスマイルをキープして、終始飛び道具的なサポートキャラとして機能。まだ弱味を見せない段階でもあるので、ある意味一番おいしい存在。キラッキラの白い歯を全開で見せて、こういう健康的な美があるのかと新鮮でした、

 ひとりツガイがいない為、時にアクションをスローモーションで見せて、柄の部分を床にトン、とついてからスピードアップする、映画公開中のフラッシュが過去作で見せたようなアレを実写で生で見れるなんて。

 

〇CAGE。

 フィクションラインの基調を成す後詰めの4人。

 内、副司令・ミヤマ・カッコウはフクロウ同様CVままで、導入部においてそっくりそのままの見た目、声の人たちが作品世界へ誘ってくれる効果は大きい。

 またこの人も普通にCV同じなのではと思っていたら違った司令(ゲーム版はブリドガットセーラ恵美さん)の、観ていて危なっかしくなるほどのピンヒールに映える松田彩希さんのオーラも神々しく、ツバメと並んだ時の眼福度合いが毎度クラクラする。

 

 個人的にはやっぱりカッコウ、ゲームだけだとあんな動き回って飛び回る人だなんて知らなかったけれどw、何をしても違和感なくカッコウのままで居続ける。ビジュの非実在感も屈指ではなかったか(おへそが綺麗)。

 そんなカッコウに翻弄されて笑いを堪えるカラハク溜まりません。

 

 

 呟きに沢山いいねしてくれるアンサンブルさん達も本当に好きになってしまって、パフォーマンスの細かさも回を追う毎に気づけるようになりました。

 

 小泉さんのコンテンツはいつも後追いだったので、初めてスタートから応援できた『トワツガイ』。過去イチ満喫している舞台かも知れません。

 今日のソワレから配信も始まるので現地来られない方には是非是非観劇してほしい。

 

 舞台は毎度のことではあるのですが、「公演期間が終わったらもう見れないんだな。みんな、こんなに〈生きて〉いるのに……」という寂寥感にすでに襲われています。

 

 舞台を通して改めて話を振り返るとあまりに解明されていない謎が多いので、ゲームは引き続き(色んな意味で)頑張ってほしい*3 のですが、それはそれとしてもっと舞台の魅力、実写版キャスト主体で人気を広めていくのも十分アリなのではないかとも感じました。

 いつだってコンテンツの要に存在できる小泉萌香やっぱり強い。

 

 どうかモズを、モズを舞台で見せてください。

 

 明日の大千穐楽も観劇させていただきます。

 もう感想も吐き出せましたし、気楽にエンジョイするぞ。

 最後まで、カンパニー一同誰一人欠けることなく、無事に上演できますように。

 

 

 追記。大千穐楽は無心で全身で浴びました~コンディション一番仕上がってた。

 

 

 今回三回とも少し値はあるけど役者の顔がまじまじ見えて息づかいまで伝わるP席での観劇。

 引きの画で全体を見られない点は難ですが、心ゆくまでキャストのお芝居、一挙手一投足、そして表情をどうコントロールして何に力を入れているのか、ありありと伝わってくる経験楽しかったです。

 最後に全身全霊こめた拍手でスタンディングオベーションしながら見ていた、涙堪えて足バタバタさせるもえぴの姿忘れない。

 

 みんな必ず続編で会おうね。

 

*1:二人がまさかツガイになるだなんて思わず昨年ずっと聴いていた(バンナムフェスでも共演しないかなと願っていた)長谷川玲奈さん演じる電音部・犬吠埼紫杏の曲、とても良いので聴いてください。

*2:再見時、サンシャイン劇場前がコスプレイベントの楽屋になっていて、聖地である『着せ恋』が看板となっていて嬉しくなってしまったので、コスプレ自体をdisるつもりはまったくないです。

*3:アプリのトワツガイ運営さんへ。一部の人しか報酬全取り出来ないようなスタイルは急速に閉じコン化しますよ。僕は詳しいんだ