スタッフ
【監督】立川譲
【脚本】NUMBER 8
【原作】石塚真一
【メインアニメーター】小丸敏之、牧孝雄
【ライブディレクション】シュウ浩嵩、木村智、廣瀬清志、立川譲
【プロップデザイン】牧孝雄、横山なつき
【色彩設計】堀川佳典
【撮影監督】東郷香澄
【3DCGIディレクター】高橋将人
【編集】廣瀬清志
【脚本協力】三宅隆太・菅野友恵
【音楽】上原ひろみ
【ピアノ奏者】上原ひろみ 【サックス奏者】馬場智章 【ドラム奏者】石若駿
【アニメーション制作】NUT
キャスト
【宮本大】山田裕貴 【沢辺雪祈】間宮祥太郎 【玉田俊二】岡山天音
【あらすじ】
「オレは世界一のジャズプレーヤーになる」
ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の高校生、宮本大(ミヤモト ダイ)。雨の日も風の日も、毎日たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けていた。
卒業を機にジャズのため、上京。高校の同級生・玉田俊二(タマダ シュンジ)のアパートに転がり込んだ大は、ある日訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(サワベ ユキノリ)と出会う。
「組もう。」
大は雪折をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する大のサックスに胸を打たれ、二人はバンドを組むことに。そこへ大の熱心さに感化されドラムを始めた玉田が加わり、三人は”JASS"を結成する。
楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに、全力で吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初心者の玉田。
トリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演し、日本のジャズシーンを変えること。無謀と思われる目標に、必死に挑みながら成長していく”JASS”は、次第に注目を集めるようになる。「So Blue」でのライブ出演にも可能性が見え始め、目まぐるしい躍進がこのまま続いていくかに思えたが、ある思いもよらぬ出来事が起こり……
情熱の限りを音楽に注いだ青春。その果てに見える景色とはー。
(公式サイトSTORYより)
ともかく公式サイトや各種宣伝で公表されているスタッフ・キャストのクレジットが余りにも少ない*1。そのプロフェッショナルへのリスペクトの無さは本編でもあの…… Blue Note TokyoならぬSo Blueの経営者のあの、名前出てこないあの人も怒ると思いますよ! ほら参照出来ないから役名も思い出せないしキャストも誰か知らない、でもあの人の声がとても良いアクセントだった*2。
『映画 名探偵コナン』をドル箱タイトルとして改めて復活させた立役者、立川譲監督満を持しての単発劇場用アニメ。
『デス・パレード』の鮮烈なデビューから『モブサイコ100』のアニメーションの快楽、そして『ゼロの執行人』で荒唐無稽な物語にソリッドな本格派サスペンスアクションのアーバンな匂いを沁み混ませた、手堅い演出術。
硬軟揃った若手の名手といった期待値が高く、「(『デカダンス』は全然ハマれなかったが……)」という若干の杞憂に目隠しして鑑賞に臨んだのだけれど、ある点では期待通りの興奮をくれて、ある点では杞憂に沿った不完全燃焼も抱き、鑑賞中、えらく感想が複雑に分裂していた。
誰もが指摘するだろうCG場面の弱さ。日本のアニメがそもそもどれほどCGを使いこなせているのか問題があり、普段は割と目を瞑ろうとしている人間なのだけれど*3、全国東宝系公開立川譲作品でこの絵か、、、という「ウッ」な感情は終始消えてくれなかったのが正直なところ。勝算どこ?
どうしても『THE FIRST SLAM DUNK』と比べてしまったというタイミングの悪さもあったかも知れない。
という前提は置いておいて。
アバン、兄を強気に送り出す妹、おにぎりに寄せられた「ば~か」の愛情。或いは「どうして天気に合わせた曲だってわかったのかしらねえ」なレコード喫茶の女店主、又は「本当なら女のコ引っかけて連れ込んでたいのにお前といるぜ」なホモソーシャルな環境。
これは、、、オレの嫌いなタイプの青年マンガ。。。!!と、『宇宙兄弟』フォビアとしてめちゃくちゃむず痒くなってしまった。
素朴だけれど才能があってみんなを引っ張ってしまうO・RE。こういう無自覚な男性性がすごくキツいと感じてしまうんですよね、ギリ許せて『TIGER&BUNNY』の虎徹。なんでだろう、どう考えてもそれを描いてる側にも共感する側にもあるのは素朴さではなくナルシズムだからか。
記号的なキャラも芝居も、変に大人向けアニメのルックをしているからこそ気恥ずかしさが抜けてくれなくて、そういえばこういう人物造形のテンプレへのやだ味を感じたのが『デカダンス』だったんだと思い出し*4、CGとベタな青年マンガ度とでノイズが二重になって襲い来るのでどうにも入っていけない。
転換点は、モンタージュで時間経過する中でかかる劇伴。
視覚情報が流れ去るのみとなったここで、ようやく落ち着いて音楽に耳を澄ますことが出来るようになったと思う。
あぁ、上原ひろみの音楽がこの映画に流れてるんだという意識。
すると面白いもので、それまで視覚情報メインで生理的にムリ~となってた映画が、一気に聴覚情報メインで心地良いMVとして目を滑っていく。
元からロトスコープのCG処理が上手くいってない事は(公開延期もあり)恐らく作り手も自明で、それでもCGに頼らざるを得ない演奏シーンが大部分を占める作品である為、ショットとしての効果さえ捨ててあらゆるレイヤーの映像のバリエーションで音楽の間を埋める、というよりセッションの様に音楽と映像が寄り添って奔流する*5。ここまでやるならロトスコープ越えて実写映像さえ入れちゃって良かったと思う。
最初からジャズを映画化するにあたって「音」を主役にしてアニメで寄り添おうという計算はあったと思うが、そこに予想外に上手くいかないCGというハードルが生じ、より演奏シーンでのモンタージュの混沌がそのバリエーションを豊かにしたのではないだろうか。
勿論演奏シーンのみ突出している訳ではなく、些細なアクションをめざとく捉える芝居の、時に記号を越えるキレ味、東京の実景を移動していくカット繋ぎの楽しさなど、小刻みなリズムが全体を通底しているので、演奏シーンでの時空間の膨らみが前後するドラマシーンからそこまで浮かない。
ストーリーラインではなく、映像技巧そのものが上原ひろみ・馬場智章・石若駿の超絶技巧に合わせてジャムセッションを行っている点において、確かに本作はジャズマンガのアニメ化作品として一つのエポックを打ち立てたのだろう。
それでも--もう十年も前の作品となる『坂道のアポロン』のそれと比べても、CGが変という一点によってそこまで飛躍的に進化したとも言い切れないところが物足りないが、これはもっと音響の良いスクリーンで体感すればまた形を変える作品かも知れないとも思った。
ともかく映画館で観ない手はない一作。
ところでこの曲のHUNGER(レペゼン仙台)のバースがまんま『BLUE GIANT』の話から始まるので、映画見ている最中に「あのラップこのマンガの話してたんかい!」と気づいて笑いそうになっていました。そういう人が実在するのかと思っていた。
せっかくの機会なので良ければ最後まで見てやってください。音源としては2つに分かれてる曲が一本のMVでまとめられてお得。日韓ラッパーが混ざり、最後のMoment joonが強烈。