スタッフ
【監督】橘正紀 【シリーズ構成・脚本】木村暢
【キャラクター原案】黒星紅白 【キャラクターデザイン】秋谷有紀恵、西尾公伯
【リサーチャー】白土晴一 【設定協力】速水螺旋人
【プロップデザイン】あきづきりょう
【音楽】梶浦由記 【音響監督】岩浪美和
【美術監督】杉浦美穂 【美術設定】大原盛仁、谷内優穂、谷口ごー、実原登
【色彩設計】津守裕子 【HOA(Head of 3D Animation)】トライスラッシュ
【グラフィックアート】荒木宏文 【撮影監督】若林優 【編集】定松剛
【制作】アクタス
キャスト
【ドロシー】大地葉 【ベアトリス】影山灯 【ちせ】古木のぞみ
『あらすじ』
暗殺された王位継承権第一位のエドワード王子の葬儀が執り行われる中、アルビオン王国の貴族たちは王位継承権第二位のメアリー王女、同三位のアーカム公・リチャード王子のどちらが王位を継ぐか、ノルマンディー公がどう動くのか、という話題で持ちきりだ。
アーカム公はプリンセスに、自分とノルマンディー公どちら側につくか問う。あらゆる民族が平等になる世界へと修正することを願いながらも、エドワード暗殺の黒幕であるアーカム公に、プリンセスは心が揺れる。そんな中、共和国のコントロールから王室の情勢を探るべく、アンジェとドロシーにメアリーの侍女として潜入任務が下る。王位継承権第一位となった重圧に押しつぶされ疲弊するメアリー。混沌とする王位継承の行方、アーカム公の陰謀がついに動き出すー。
アルビオン王国に蠢く闇が、チーム白鳩を呑み込んでいく――。
前作が実質的な新章スタート、話の起点に当たり、笑っちゃうほどの見せ場が唐突に訪れてサービス精神たっぷりだった一方、本作はスパイ・サスペンスとしての潜入と情報捜査を着実に積み重ねる。派手なOPクレジットを省略したのもその作風に併せたのだろう。
ただ安くない(一律1600円)鑑賞料金を払い、最低限の楽しみとして担保しておいたOPクレジットも見れない中で地味な話に付き合えるだけの内容で、それに満足がいったかというと個人的には微妙だったかと。
例えば中盤の見せ場にメアリーが僅かな足場で脱出出来るか否かといった場面があるが、本作の考証の細かさが仇となり、ここでアンジェがメアリー救出に向けて的確に布を足に巻いてから片方をメアリーに投げ渡すくだりがある。
たしかに「へえ、そうやって巻けば安全なんだ」というトリビアはあるけれど!
恐らく「それをしっかり見せたい」という欲望が画面に安定感を与え、高所で少女が危なっかしいことをしているスリルが減衰するのだ。
何はなくても会話一つでスリルは醸成されるものなのだが、前作でもやや怪しかったけれど画面の情報量(≠作画情報量)がTVサイズだな、なんならTVシリーズの方がもう少し緊迫感あったな(映画より死人が出そうな空気が濃かった為)という感覚が今回も若干残っており、終始TVアニメの中継ぎ回をスクリーンで見せられているという居心地の悪さが残ってしまった。
余談ながら第3章からプリプリ上映を始めてくれたイオンシネマ幕張新都心は「通年ガルパンを上映し続けている」という特色がある*1為、同じアクタス+上映一時間の中編でガルパンにはあんなに見せ場があるのに、、、と意識の隅で比べてしまった点も否めない。
極めつけがクライマックス。
アルビオンからの脱出を図る。対岸に見える交通手段。そこまではただ宙があり、そこまでアンジェのCボールを使って浮遊して移動するしかない。
・・・・・・ここでスリルを演出しないでどうするんだろう。
ケイバーライトの仕組みをそこまで理解していないので詳細は分からないけれど、地味でもいい、アンジェがCボールで一人一人この距離を移動させていく。王国に見つかるか、はたまたCボールのケイバーライトが切れてしまうか。なんでもいい。
スパイ・サスペンスにおける脱出の見せ場はここなんじゃないのか。
だからこそここまで地味な演出を繋げてきたのだろう――そこに重力が宿れば宿るほど、淡々と一人一人脱出していく過程はそれだけで緊張感を孕むから――と思っていたのに。『ブルーサーマル』の監督を経た橘監督ならばこそ、よりそこは上手く出来てたはず。
例えばケイバーライトの無い世界で、ここにロープを掛けてぶら下がりながら移動していれば生み出されていただろうスリルが不在で、本作の世界観の特徴であるケイバーライトの存在が、かえって作劇上見せ場を一つ損ねるだけになってしまっている。
その脱出はあっさり出来るんだ、というところでの拍子抜け。
勿論その後に本作一番の衝撃展開は待っているのだけど、それはあくまで「次回」あってのクリフハンガーであって、本作ならではの、ここに流れている一時間という時間をフルに使ったサスペンスは今回成立していなかった事に物足りなさを覚えた。
プリプリ、所謂メディアミックスの「コンテンツ」としてスタートしたながら本家のソシャゲがとっくにサ終しており、つまりアニメだけでどうとでも展開できるという自由度を獲得した作品。
だからこその大胆なスリルというのはいくらでも作れると思うので、まだまだ期待はしております。
EDは今回も健在。偏愛するりんたろう監督『メトロポリス』のED『THERE'LL NEVER BE GOOD-BYE』とサビ終わりのメロが似通っているために、余計思い入れがあったり。