スタッフ
【監督】ほりうちゆうや
【CGディレクター】辰口智樹 【美術監督】林竜太
【編集】小口理菜 【音響監督】長崎行男
【音楽プロデューサー】武沢由佳子 【音楽】遠藤ナオキ
【制作】サンライズ
キャスト
【朝香果林】久保田未夢 【宮下愛】村上奈津美
【三船栞子】小泉萌香 【ミア・テイラー】内田秀 【鐘嵐珠】法元明菜
『イントロダクション』
東京・お台場にある虹ヶ咲学園を舞台に、スクールアイドル同好会13人の日常を描くショートアニメ! ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のスピンオフコミック『にじよん!(漫画・ミヤコヒト)』がアニメになって動き出す!
ニジガクメンバー13人のキュートな日常をゆるっとあなたにお届けします!
(公式サイトより)
配信 2023.1 - 3月.
ショートアニメ。これが意外とバカにならないのです。と言っても中村亮介監督の『あいうら』の淡く煌びやかな作家性が眩しいとか、押切蓮介原作の『プピポー!』が泣けるとか、大地丙太郎『ギャグマンガ日和』の系譜を継ぐ『てーきゅう!』がもはや金字塔であるといった話ともちょっと違くて*1、本編アニメのオマケのように存在するSDキャラのショートアニメのこと。
というのも昨年『アサルトリリィふるーつ』『ぷっちみく♪ D4DJ Party Mix』『少女☆寸劇オールスタァライト』を立て続けに視聴した際に意外とこれが癖になった為。
アニメと実写との最大の差として、実は画面情報量のほとんどがカメラを回したその場その瞬間の偶然性に拠る実写と違い、(厳密には「声」の芝居は実写のそれと変わらないと思うがともかく)「アニメには作り手の作為しか映らない」という点はよく強調される。
それは制作環境に恵まれた幸運なアニメだけでは……という気持ちも若干あるのだけど、ことショートアニメに関しては本当にその通りなんだなと。
特に舞台のお膳立てが本編で済まされているオマケアニメの、ストレートな作為と見せたいポイントしかない、スタッフと直球のキャッチボールをしているような感覚は悪くないのだ。
『虹ヶ咲』は今まではVOICEコミックという形で4コマ漫画に声を付けてきて、ファミ通App組編、電撃オンライン組編、スクフェス組編とあり、
その後(?)ミヤコヒト作四コマ漫画のVOICEコミックがアニメと並行して4シーズン続き、満を持してショートアニメとなって放送された。
セルルックなCGキャラを立体的に映し、アニメ本編を補完する内容で、正にショートアニメならではの「狙いが明解」な良さが全編を覆い、非常に居心地が良いファンアイテムとなっている。
第一話は長回しで同好会の部室の全員を映し、最後に「あなた」=「侑」が画面に登場する。これが『にじよん』への侑初登場になる。
その後もデフォルメ絵で可愛さを押し出す2話、割と真剣にホラー演出を試みた3話、CGアニメである事を活かし劇中ゲームの世界を本格的に作り出した6話と、何を楽しめば良いのか一目でわかる。
同時に、スクフェスシナリオとの兼ね合いでスローにアニメ2期に参加したR3BIRTHの3人がどういう人物で、どのように愛でればいいのかを改めて端的に伝えてくる回がそれぞれの目的をしっかり果たす他、彼方の妹:遙や美里さんといったサブキャラの立ち位置もわかりやすく伝える。
「端的に虹ヶ咲は今こういう話をしています」を伝える良い仕事と、その可愛さを伝える些細なカットインや芝居の魅せ方が(まるでラ!をヒット作たらしめた無印OPのことりのあの煽角顔のように)SDキャラだからこそピンポイントでほっこりさせられる。これも狙い澄ましていなければ出来ないことだ。
そして遣ることをひとしきり終えた後に、持病のエーラス・ダンロス症候群(関節型)発症により優木せつ菜役の降板を決意した楠木ともりへのリスペクトとエールが第10話に籠められる。
アイドル物という名のスポ根アニメであったラブライブ!の世界に於いて虹ヶ咲だけは個が個である事にエールを送ってきた。だから楠木さんの決断にエールを贈ることも必然であり、ショートアニメのフットワークの軽さ故に楠木さんの降板決意から半年も経たないうちにこのような話数が成立出来たのだろう。
そして最終話、最初にせつ菜のパフォーマンスに出会った事で侑が(あなたが)新しい世界に踏み出せたことを改めて伝え、そして、では『虹ヶ咲』というコンテンツがどうして「あなた」の背中を押すのか。その答えを最後に残してフィナーレ。
「始めて、良かった。って」
気持ちの良い全12話でした。