舞/台/機/構 ー 『少女☆歌劇レヴュースタァライト -THE LIVE- #2』感想

『少女☆歌劇レヴュースタァライト -THE LIVE- #2Transition』

 2018.10.13(土)~21(日)天王洲 銀河劇場

 スタッフ

【演出】児玉明子 【脚本/作詞(1部)】三浦香

【音楽(1部)】中村康隆(夜長オーケストラ)

【作詞(2部)/劇中戯曲】中村彼方

【振付(1部)】珠洲春希 【振付(2部)】増田佑里加

【殺陣指導】市瀬秀和 【美術】中西紀恵 【照明】林順之(ASG)

【音響】戸田雄樹(エディスグローヴ) 【映像】荒川ヒロキ 森すみれ

【衣装】小原敏博 【ヘアメイク】宮内宏明 柴崎尚子(M's factory)

【歌唱指導】市川祐子 【舞台監督】堀吉行(DDR

【アンダースタディ】田口実加 米原睦美 山田あやめ 小泉日向

【脚本協力】樋口達人 【運営協力】ファンファーレ・エージェンシー

【音楽制作協力 管弦楽(1部)】夜長オーケストラ

【ロゴデザイン】濱祐斗デザイン事務所

 キャスト

【愛城華恋】小山百代 【神楽ひかり】三森すずこ 【天堂真矢】富田麻帆

【星見純那】佐藤日向 【露﨑まひる岩田陽葵 【大場なな】小泉萌香

【西條クロディーヌ】相羽あいな 【石動双葉】生田輝 【花柳香子】伊藤彩沙

 

【柳小春】七木奏音 【南風涼】佃井皆美 【穂波氷雨】門山葉子

【八雲響子】小林由佳 【走駝紗羽】椎名へきる 【キリンの声】津田健次郎

【アンサンブル】

大胡愛恵 菊永あかり 木原実優 倉持聖菜 後藤早紀 甚古萌 馬場莉乃 保野優奈

 

『少女☆歌劇レヴュースタァライト -THE LIVE- #2revival』

 2019.7.12(金)~15(月)舞浜アンフィシアター

 スタッフ同上

【振付(2部)】Yurika Rakuda 【照明】鈴木健司(ルポ)

【DOTIMAGEプログラマー】飯尾研人(ISA)

【技術監督】堀吉行(DDR) 【舞台監督】須田桃李

 キャスト同上

 

『あらすじ』

 第100回聖翔祭。聖翔音楽学園99期生の華恋、ひかり、真矢、純那、まひる、なな、クロディーヌ、双葉、香子は、9人で演じた『スタァライト』のステージで観客の称賛を浴びた。
 1週間後、舞台の感動の余韻を噛みしめる者、“スタァライト”ロスに陥っている者、すでに来年の第101回の聖翔祭に向けてレッスンに勤しむ者などなど、なんとなく落ち着かない時間を過ごす彼女たち。そんな中始まった、青嵐総合芸術院との交流プログラム。スタートから青嵐のレベルの高さに翻弄される華恋たち。
さらに、誰もが想像もしなかった過酷なオーディションの開催が再び告げられ…。

 

ここが運命を賭けて戦う舞台。

 舞台少女の情熱に、音も光もセットも衣装もすべて応えてくれる!

 だったら、より盛り上がるレヴューにした方が舞台も喜ぶ。そうじゃない?

わかります

 

 気づけば多大な「コア層」を抱える=ファンになると「コア層」にならざるを得ない長期コンテンツとして成長した『スタァライト』。数多存在するその誘引する魅力の一つに、「始まりの舞台を知ることは出来ない」もどかしさがあると思います。

 あくまで円盤や配信で見れる舞台は#1の「revival」、つまり「再演」から。九九組の始まり、今に到る成長へのフリとなるフラットなスタート地点「初演」を、圧倒的多数を占める「後追い」組である舞台創造科は知れない*1

 『#1revival』もまたTVアニメ版との落差でギスギスしている空気感などプロトタイプとしての面白さには満ちているのですが、キャスト自体は既に二度の公演を重ねて、何よりほとんどのキャストが初挑戦だったというアクションをモノにしている、仕上がった状態。

 そこへ到る、最初の九九組を見たかった思いは否めないのです。出来れば最初の横浜アリーナでのブシロフェス顔見せ時の映像も見たい。

 

 そして本作以降のスタァライトでrevival公演はなく、#2だけが「初演(Transition)」と「再演(revival)」の2バージョンを楽しめる貴重なタイトルに。

 それも舞浜アンフィシアターという贅沢な小屋を用いて、極端なまでに進化したステージを楽しませてくれる。

 

 まずは初演、ハコは銀河劇場。個人的に初めてスタァライトの舞台(Delight)を見た思い出のステージで好感度は高いのですが、ここではTVアニメ版スタァライトの続き(の様な)時間軸という事で、ストーリーを追うことがメインに感じられます。

 少し不思議な構成で、戯曲スタァライトを演じきったことで腑抜けてしまった華恋を遠くから遠くから迂遠に囲い込むように、八雲先生が青嵐の3人を使って聖翔の輪を乱し、最後に手に入れようと目論む物語。

 華恋の物語かのようなフリが成されつつ、華恋はトロフィーとして一番物語の奧に追いやられる作り。

 銀河劇場も決して小さな劇場ではないのですが、スイッチングのカメラアングルの妙もあってか、青嵐の3人のパフォーマンスと並び立つ姿が、客席の方を向いていても、逆に客席に背中を向けて聖翔に挑みかからんとする構図でも、とにかく様になる。

 後にスピンオフ舞台が作られゲームに逆輸入されるほどの人気となった青嵐、当時を知らずともその流れも必然かなと思える存在感。

 ここに新勢力の魅力を打ち出せたことで、舞台としてのスタァライトが軌道に乗ったのでは?と感じるので、ある種引き立て役となった聖翔、という面白みが味わえるイレギュラーな作品とも思えます。

 

 そして、revival。

 劇団四季の『美女と野獣』ロングラン上演に占有され、今では使用できる機会さえ端からは目処がたたない舞浜アンフィシアター

 半円状のオープンステージ。

 後方二階の高さにセットと、プロジェクション・マッピングが可能な背景。

 時折薄い紗幕がかかる。

 その背景とセンターステージを繋ぐ、3つに分けて移動可能な階段。

 その階段を降りた先に個別に下からせり出し可能なリフターがあり、

 そこから先に伸びた、背景以外のほぼ全方位を観客に囲まれる張り出し舞台。

 その張り出し舞台の中央の円は回転し、円自体もリフターになっていてせり上がったり沈むことが可能。

 加えて、客降りも多彩な効果で使用される。

 スタァライトでイリュージョンを起こす「舞台機構」とは、実際に目にするとすればつまりはこういう事なのだ、という完璧な実演になっている。

 

 聖翔+青嵐+先生方+コロス。ピーク時にはあまりに大多数の人が動き回る内容ながら、階段ステージ、センターステージ、そして客席と3エリアが使用可能なので窮屈にならず、ただただ目が足りないという充実の臨場感に巻き込まれる。

 古参の舞台創造科の中でも根強いファンの皆さんは大体この舞台を経験しているという印象があるのですが、ライブパートでの長い長い客降りパフォーマンス*2含めて、ほとんど客席さえ舞台に取り込まれているように感じるし、もはや切り離せる記憶ではなくなってしまうのは本当によくわかります。

 

 「再演」の強みとして、キャスト一同、動きのみならず演技にも凝縮した感情が宿っていて、ハイライトだけで端的に場面を伝える力業の戯曲がここでようやく成立した印象を受ける。

 まひると涼の過去も、ばななと氷雨の過去も、唐突に飛びだしたメインキャラの重大な過去にしてはあまりに限られた言葉でしか伝えられない。

 けれど4人の芝居が初演を経て既に仕上がっているのと、これだけ熱気がこもり奥行きある舞台だからこそ背景映像の文字と音だけで伝えられる回想シーンとのギャップの温度差で、そこに存在しない行間を、彼女たちの中学時代に流れていた時間を一気に体感で味合わされる*3

 

 ーー役と戯曲への理解を深め、アクションの技量も、恐らくスタミナもピークまで持ってきた舞台少女たちと、

 ーー凝縮された彼女たちの感情を伝える(=劇中の意味で言えば彼女たちの感情に応える)舞台機構と、

 ーーその一部として巻き込まれた観客たちとが、

 みんなで一つの舞台を構築する。まるで天上の神に捧げる奉納劇のように。

 そういえばこの#2の戯曲だけ舞台創造科たちのナンバーがある(客降りで)のも余計に会場全体の一体感への効果を高めているのでしょう。

 

 そして入り乱れる少女たちの中で、ひとり悪役を買って出る八雲先生が、やはりシリーズ屈指と言って過言ではないアクロバティックで視線をさらい、最後にセンターステージの中心でトドメを差されると、舞台最後方、セットの上で走駝先生がこのレヴューの終演を宣言する。

 そこまでグルグル回転して円状に展開してカオスが、不意に縦一直線に引き締まる。

 

 何回だって言います。 「ここに居たかった……」と。

 

*1:いや映像残ってるなら今からでも円盤化してほしいですネルケさんブシロードさん

*2:ステージ上で青嵐が、客席通路で聖翔が踊っている件、パニックになるよね。前と後ろどっち見ればいいんだ

*3:ブックレットの隅に仕掛けてあるコメントによると、大場なな役小泉さん曰く、初演と再演の間にコミカライズの場面で埋めてもらえた描写によって理解が深まっている、というのも大きいらしい