村田沙耶香『信仰』

短編集。

 

 一番長い表題作の導入で、変人と「普通側に属せているコミュニティ」を比較して距離を置いて観察している(冷静に、というよりどうあっても「熱することが出来ない」人間として)、『コンビニ人間』とほぼ同じ構造を見せてきたので「また?」となるかと思いきや。

 一生自分の「思考」から逃げ出せない人がその外側へ出ようと試みるような強迫観念で貫かれた作品集。

 強迫観念にすら至れない。その一歩手前で醒めてしまえるから。その孤独。その鬱屈。狂熱なき信仰=思考の呪縛の地獄。

 でもそういう辛ささえ言語化して残す事ができる、という事が微かな希望なのかも知れない。最後の作品は、やはり対象から遙かな距離を置いた冷たさはあれど、そういう話でもある。

 混乱し続けている自分にはそれが出来る村田沙耶香さえ憧れの対象で、その「ピンポイントに狙いを短編小説に起こせる」という才能を信仰させてほしい。同化させてほしい。

 でもきっと混ざれないんだろうな。孤独は続く。